極めて容赦のない描写がメインになりますので、耐性のない方、および好きなキャラが残酷な目に遭うのがつらい方はご遠慮ください。

桜舞うその日、俺、大蔵直人は公園で一人の少女に出会った。
今時見かけない道着のような飾り気のない着物姿で、髪は後で束ねてからツインテールに分け、腰に帯剣をした少女剣士だ。
慎重は僕よりも30センチも低く、どう見ても小学生か中学生くらい。
ちょっとした経緯で、ほんの少し話をしただけだったけど、彼女はとても可愛らしく、深く印象に残った。
こんな娘が欲しい、本気でそう思えるような素適な娘だった。
そして、それはすぐに叶った。財閥の一人息子である自分につけられた新米SP、それがその少女だった。
彼女の名は、五条都といった。正直、運命を感じた。


「おーい、都」
広い屋敷の自室で都を呼ぶ。
「はい。なんでしょうか? 直人殿」
ツインテールの髪を揺らしながら、ドアの前で待機していた都が飛びこんでくる。うっとりとした目付きで、口の端からよだれを垂らしている。
無理もない。テーブルの上には彼女の好物のメロンパンを山盛りにした大皿が、デンと置いてある。
「うん。そろそろ休憩の時間だろ? だから一緒におやつでもどうかなって思って」
「かたじけのうござる。直人殿」
都は食費とは別に月に数万を費やす程のメロンパン好きだ。テーブルについて、お預けの終わった犬みたいに早速がっつく。
その笑顔を眺めながら、俺もにこにこと微笑む。
そして都は、その満面の笑みのまま何も知らずに穏やかな眠りについた。


「ん……、ここは?」
目を覚ました都がベッドの上で呟く。
「ハッ。不覚。つい眠ってしまった…」
目をこすろうとして、出来ないのに気付いた。すぐに左右を見渡して、包帯を捲かれた両腕に、いや、元両腕のあった場所に気づく。
「ぴぎゃーーーーーっ」
涙をこぼしながら、けたたましく可愛らしい悲鳴を上げる。
「なななな、な、直人殿。腕が。私の腕が……」
「うん。ここだよ」
そう言って、後ろ手に隠していた右手を差し出す。
剣術で鍛えたため、筋肉がついて引き締まってはいるものの、女性らしく小柄できめの細かな美しい肌の腕だ。その剣技に相応しく掌には剣術ダコができているが、それすらも愛しい。思わず軽くキスをする。
「ななななな、直人殿、ななななな、ナニ、ナニ、ナニ……」
よっぽどショックだったんだろう。マトモに言葉にならない。
「だって、モノには必要ないだろ?」
取っておきの、意地悪な笑みを浮かべる。都の前ではずうっと隠していた笑みだ。
「モ、モノとは、何でござるかぁぁぁぁ」
涙ながらに叫ぶ。
「決まってるだろう、都の事さ。君はこれから、一生俺のオモチャとして過ごすんだよ。大丈夫。優しくするからさ」
「な、なんで…こんな事をするのですかぁぁぁぁ」
ぶわっと涙を流して絶叫する。
「あはは、決まってるじゃないか。都が大好きだからだよ」
「そそそそ、そんな私など……、じゃなくて……」
いきなり両腕を失って、俺に告白されて、さながら地獄と天国の板ばさみって感じか?
ちなみに都が俺に並々ならぬ好意を抱いているのは、俺も周囲もよく知っている。知らぬは本人ばかりなり、だ。
あまり混乱させるのは可哀想だ。ここは一つ、ちゃんと説明せねばならない。
「あのさ、都。いくら剣の腕が立つからって、中卒のお子様がSPになれると思うかい?
 他の皆は、都はSPらしいお堅いところがないのが良いって言ってるけど、それはつまり、SP失格ってことだよ。それなのに採用されるなんて、変じゃないかい?
 その上、俺みたいなVIPの専属護衛なんて大役を任されるなんて、普通あり得ないだろ?
 しかも、都みたいな可愛い娘が、よりにもよって俺みたいな同じ年頃の男のコの護衛なんて。間違いを起こしてくれって言ってるようなもんじゃないか?
 つまり、さ。都は最初から、俺の為に採用されたんだよ」
「ななななな」
都は状況を理解しきれず、いや、少なくとも言った事に関しては理解できたからこそすっかり混乱している。
「何の為かって? もちろん、俺にオモチャとして所有されるためさ」
「ひ、ひ、酷いですぞおおおっ、直人殿。私は、私は、直人殿の事を生涯の主君として忠誠を誓っておりましたのに……」
滝の様に涙を流して喚く都は、とても可愛い。やっぱりモノにしてよかった。
「うん。俺もね、結婚するなら絶対都だって思ってたんだ」
都はパクパクと口を動かすが声にならない。二重のショックにすっかり打ちのめされたのだろう。
「でもね、都。それよりも、都の事をモノとして所有したいって思う気持ちの方がずっと強かったんだ」
口元が自然と綻んで、俺は、涙でぐしょぐしょに濡れた愛しい都に飛びきりの笑顔を向けた。
「今までSPなんかさせてゴメンね。これからはこの俺しか入れない地下室で、大事に大事に扱ってあげるからね」

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