極めて容赦のない描写がメインになりますので、耐性のない方、および好きなキャラが残酷な目に遭うのがつらい方はご遠慮ください。

334 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2011/07/24(日) 20:05:10.76 ID:S2XDSTvr [1/29]
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等一切関係ありません。
フィクションと現実を混同してしまう方は読むのをただちにやめてください。

トルネコの大冒険でリョナってみました。


335 名前:レトロ・ゲーム・リミックス[sage] 投稿日:2011/07/24(日) 20:08:05.80 ID:S2XDSTvr [2/29]

『もっと不思議なダンジョン』をクリアしたら、ドラゴンキラーが出てきた。
出てきたと言っても、ゲーム内に出てきたのではない。
現実世界に、俺の目の前に、ふっとドラゴンキラーが現れたのだ。

俺が何を言っているか分からないと思うが、俺も理解できていない。
ともあれ、俺の目の前にはドラゴンキラー(+15)が鈍い光を放ってゴロリと転がっている。
これは事実だ。
指で触れると冷たい鋭さが伝わってくる。
持ちあげると重厚な質量を感じる。
それは紛う事無きドラゴンキラーであった。

とはいえ、「だからなんなのだ」と言われればその通りである。
超常現象であることは間違い無さそうだが、「だからなんなのだ」と俺自身も思ってしまっている。
この社会にモンスターが登場しない限り活躍の機会も無さそうなので、ドラゴンキラーを抱いて、俺は寝た。

発売されてもう30年が経つのか。
古ぼけたスーパーファミコンを取り出して『トルネコの大冒険』をプレイしていた理由は、ただ暇だったからである。
ノスタルジックな気分でサクサクと進み、気付けば99回から無事に生還していた。
そのときだった。意気揚々と実家に帰るトルネコの画面が歪み、目の前に緑色に光るドラゴンキラーが出てきたのだった。

翌日。昼過ぎの陽射しが眩しくて目が覚めた。
荒れたベッドで足を伸ばしたら指先にコツンとドラゴンキラーが触れ、昨日のあれは夢で無かったのかと知った。

「これを売れば金になるだろうか。」
だが俺は、こんなものを引き取ってくれる業者を知らない。
「今から勇者でも目指そうかしら」とも考えたが、倒すべき魔王も見当たらず、また運動不足の42歳には多少きびしいものがある。
寝起きの頭は回らず、とりあえずもう一眠りをした。

・・・子供のころは「つまらない武器屋のおっさん」と思っていたトルネコだが
彼は彼で充実した人生を送っているようだ。少なくとも今の俺よりは。


夕刻、太陽が陰ってきた頃にふたたび目を覚ます。
常時電源が入りっぱなしのPCを前にして、俺の身体は遅れてようやく目覚め始める。
することといえば、2chの巡回程度。
今まで様々なサイトが流行ったり廃れたりしたが、結局行きつく場所はここなのだ。
もっとも、昔流行した『ニコニコ動画』なるものにも俺は一時期熱心になっていた。
だが、とある場で「30過ぎてニコニコやってるとか痛いんだがw」と煽られ、二度とアクセスすることは無くなった。
現在の2chは、俺たちのような「そういう」人種が集まっている。
ある種の吹き溜まりだが、それこそが居心地が良いと俺は思い始めている。
ワクワクもドキドキもせず、低いテンションで俺はマウスを握る。

「トルネコをクリアしたらドラゴンキラー出てきたんだが、どうすればいいwwwww」とでも書き込もうかな。そう思った。
おそらく予定調和のレスしか返って来ないだろうけれど、それで俺の退屈が紛れるならそれでいい。
しかし、トルネコ専用スレの様子は俺の想像と違っていた。

「ちょwwwwメタパニ草出てきたwwww」
「はぐれメタルの盾げっと。リアルで。」
「俺の目の前に最後の巻物があるんだが、どうすればいいの。」
「弟切草おいしいですwwwwwwwwwwwwww」
「なにこのスレ。お前らどうしちゃったの。」
「いや、俺も見てびっくりしてる。なんでこんなことになってんの。ちなみに俺の手にはちからの種があるんだが。」
「誰かチュンソフトに問い合わせろよ。」
「もう一度クリアした。もう一度でてきた。どうやらそういうことみたいね。」
「どういうことだよ。俺はこのイミフな現象に混乱してる。」
「誰かとりあえずVIPにスレ立てて来い。」

「いや、やめておけ。
 俺はさっき部屋でイオの巻物広げてみたんだが、どうやらこれはマジのようだ。
 爆発が起こって部屋中が破壊された。まるでゲームの中みたいに。
 思ったよりシャレにならない事態だ。あまり迂闊に広めるとマジで社会が混乱する。
 とりあえずこの現象に出会ったやつは集まろう。OFF会だ。OFF会を開こう。」

「マジかw勇者乙wところでお前はどこで書き込んでるんだw」

「ネットカフェで書き込んでる。
 PCどころか回線まるごと吹っ飛んだし、消防車が2台も来て大騒ぎになっている。
 いいか、お前ら一人で使うな。巻物系は開いただけで効果が発動するし、効果は実際のものになる。
 だからOFF会を開いてリアルで物を集めて、リアルで相談しよう。場所は東京の―――日時は―――」

その後、「東京まで出る金が無い」だの「出会い厨乙」だの、グダグダとレスが続いていた。
しかし、そのうち一人二人と参加を表明し始めるとスレの住民のほとんどが参加するような事態となった。
それだけみんな混乱してたし、俺も混乱している。
とりあえず俺は「ドラゴンキラーが出てきたんだが、どうすればいいwwwwww」と書き込み、そしてオフ会に参加することを決めた。


俺は電車の中で、スポーツバッグに忍ばせたドラゴンキラーが銃刀法違反になるか否かについて考えていた。
会場は東京郊外の公民館であった。
予定時刻ギリギリになってしまっていたが、小ざっぱりとした広間には、主催者であろう男の他に人はいなかった。
俺はこの素っ頓狂な事態よりも、初めて出会う人間と二人きりになる事態が嫌でたまからなかった。

「トルネコOFFの参加者ですか?」
主催者の男が俺に問いかけた。
俺と同い年だろうか、顔の皺が目立ち始め、オールバックの頭には若干の白髪が混じっている。
そして思ったよりも目は鋭く、一般社会とは違った社会、革命組織にでも属してそうな気配の男であった。
「失礼ですが、書き込み番号何番の方ですか?」
続いた男の問いかけに対して、俺はバッグの中のドラゴンキラーを見せた。
「ああ、ドラゴンキラーの方。私はイオの巻物を読んでしまった主催者の宮野です。よろしく。」
宮野という男は俺に握手を求めてきた。
その切れ長な目の奥には、途方も無い期待がキラキラと光っているように見えた。
「スーファミとソフトは用意してます。テレビも。それぞれ参加予定の人数13人分用意してあります。
 今日は徹底的に検証し、『私たちのこれから』について議論しようではありませんか。」

数分後、予定時刻を過ぎてからようやく他の人が集まり始めた。
作業員風の男。でっぷりと太った男。痩せて骸骨のような男。うつろな目をした男。
すべて、中年。俺と同い年くらいだった。
そして参加を明言した13名のうちの最後の一人が姿を現した。

「ぎゃっ!ミイラ男!」
「いえ、違います。火炎草を飲み込んで顔面の下半分を火傷したんです。
 いや、思ったよりも威力がありますね、あれは。あはははは。あははははははは。」




「さて、本日はお集まり頂きありがとうございます。私、主催者の宮野と申します。
 えー、3日前くらいからでしょうか。みなさんご存知の通り、奇妙な現象が起こり始めました。
 そう、ダンジョンをクリアするとゲーム中のアイテムが現実に手に入る、というものです。
 今日は、この現象について検証するとともに、『私たちのこれから』について議論したいと思います。」

俺はさっきから『私たちのこれから』という言葉が引っかかっていたが、宮野はふたたび使った。
質問したい気持ちがありながらも、宮野の進行を止めるのを遠慮し、黙って話を聞いた。

「どうやら、クリアした時点で保有していたアイテムの1つがランダムで出てくるようです。
 私はあの爆発以降、中古のスーファミとソフトを買い何度も試しましたが、どうやらそのようです。
 しかも、このことから考えるに、特定のハードとソフトで起こる現象ではなく、どのハードとソフトでも起こり得るということが分かります。」

宮野のややくどい説明に若干のダルさを感じた。
だが突然、宮野の細い目がカッと見開いた。

「そう!この超常現象は、行おうと思えば誰にでも出来る現象なのです!
 しかし!この超常現象を知る者は我々だけでしょう!
 そりゃそうです!30年以上前のソフトをわざわざ引っぱり出してプレイする暇人は我々以外にいません!
 つまりこれは、我々暇人にのみ与えられた特権なのです!そう考えて結構!」

宮野の豹変にミイラ男がひゃあと声を上げた。

「我々は、この社会に虐げられてきました!
 なぜなら、全ての既得権益は社会の上層が占めており、我々がそこに参入する余地は無かったから!
 だがっ!しかしっ!プロレタリアートの神は我々を見捨てていなかったっ!
 この奇跡的な超常現象を我々に与えてくれたのです!」

『我々』という言葉には魔力がある。いつしか、俺を含めて他の男たちも宮野の演説に聞き入ってしまっていた。
宮野は俺たちがプロレタリアートであると決めつけてはいたが、たしかに、身なりを見るにブルジョアジーはいないだろう。
そもそも、こんな中年になってレトロゲームなんぞをぼんやりと極めてる時点で、どこか社会から外れてしまった人間なのかもしれない。

「ここまで言えばみなさん!分かりますね!?
 私たちは、この現象を広めてはいけない!VIPに書き込むなんぞもってのほか!
 できる限り少人数で、できる限り秘密裏に、我々の中でのみの既得権益として使用しようではありませんか!」

宮野の演説は、たしかにその通りである。
この現象が公に広まれば、混乱を招くものの、いずれはどうせ社会の上層部や国家権力によって利用されるだろう。
そうなるくらいなら私たちの中で完結させようという気持ちは、わからないでもない。

「メタパニ草を使用したあなた、お名前は?」
「は、はい、大西です。」
「大西さん。あなたお仕事は?」
「現在無職です。」
「それは結構です。では、なんでそうなったか、わかりますか?」
「若いころ頑張らずにゲームばかりしてたからだと思います。」

「否、この腐れきった社会構造があなたを無職にさせて疎外したのです。それ以外に理由などありません。」
「そうなんですか?」
「そうなんです。そして大西さん。あなたはこの現象を使って社会をひっくり返すことができるのです。
 我々が手にしている力で、この社会を変えることは充分に可能!
 あなたが今まで感じてきた惨めな気持ち、ここで晴らすことができるのですよ大西さん!」
「あうっ、あうっ、あうっ、」

話が妙な方向に進んできた。
だが、大西という小太りの男は感化されたのか、大粒の涙を流して喘いでいる。
そして俺は、この宮野という男の意図が飲み込めてきた。革命、ないし反乱である。

「さあみなさん!コントローラーを手に取りましょう!そして立ち上がるのです!
 ダンジョンの99階から這い上がる時は今です!
 ありとあらゆる道具を駆使し、社会というモンスターと戦い、正義を取り戻しましょう!」

うおおおおおおお。うおおおおおおお。
男たちは異様な盛り上がりを見せた。感涙する者多々。
いつしかこのこざっぱりとした部屋には不気味な熱気が渦巻いていた。


それから数日。
私たちは様々な場所で集まっては検証を繰り返した。
今日は大西のアパートを使い、狭い部屋に13人とそれぞれのテレビをぎゅうぎゅうと押し込んだ。

「金の剣の分析をしてきました。」
「素材はどうだった?純金だったか?」
「いえ、金メッキです。少し削ったら銀色の部分が見えてきました。」
「ははは、トルネコはボロい商売をしてたんだな。高木、御苦労であった。」

宮野はいつの間にか、指導的立場にあった。
宮野をトップとして俺たちが動いている、そんな組織の構図が出来上がっている。

「分裂の杖は物体には作用しません。人間で試しましょうか?」
「いや、まだ早い。猫や犬に試すのが安全だろう。おそらく動物にもモンスター判定はあるはずだ。」
「くちなしの巻物を試したいのですが、フロア移動のフラグは現実世界においてどうすれば発生しますか?」
「それはまだ分かっていない。くちなしの巻物は保留しておけ。」
「トルネコスレの件ですが、これまでの話題を断ち切る形で次スレを立てておきました。」
「そうか、御苦労。例の騒動があったスレは俺が1000まで埋めておいたからな。おそらく過去スレをわざわざ見る奴もいるまい。」

俺は爆弾物製造班に配置され、きたる革命の時に備えてひたすらイオの巻物を集めていた。
しかし、いくら極めたとはいえダンジョンを往復するには相当な時間と労力を消費する。
俺は、以前勤めていた会社での、イヤというほどの単純作業を思い出した。
この作業はそれに似ている。
トップが強大な権限と権力が集まっているあたりも、そっくりだ。
やはり革命組織といえども、結局は既存の組織と同じ枠組みに収まるだけなのかもしれない。
だとすれば新しい社会とやらも、新たな権力構造を生み出すだけであり、それは歴史が証明している。

「宮野さん!食糧調達班のミイラ男が見当たりません!」
「なに!トイレに行ったはずだろ!探せ!奴がいないと俺らのパンが手に入らないじゃないか!」
「それが、トイレを探しても見つかりませんでした!」
「外を探せ!あの外見ならすぐに見つかる!大西、お前には外出の許可を出す!行ってこい!」


やがてミイラ男は帰ってきた。
しかし、その脇にはマネキン人形のように硬直した、少女を抱えていた。

「はははは。この小学生にですね、背後からラリホーの杖を振ったんです。
 さらに分裂の杖を使って小学生を分裂させました。そこでまたラリホーの杖を使い眠らせました。
 そしてかなしばりの巻物を開いて、金縛り状態にしたまま持ってきましたよ。」
「き、き、貴様ミイラ男!なんのつもりだこれは!」
「実験材料です。この小学生、あっ、美希ちゃんっていうらしいです。ランドセルの中の持ち物に書いてありました。
 そんなことはどうでもいいんですがね、この検証では必ず実験体が必要になってくると思うんです。
 そこで一体、拝借してきたという次第なんです。ははははは、ははははは、はははは。」
「無断でするな!許可を得ろ!俺に従え!」
「はははは、すいません。それでどうします?この美希ちゃんは?」
「・・・もう一方は無事に帰ったんだろうな?」
「はい、かなしばりの効力はちょっと背中を叩く程度で解除されたので、ラリホーの効力も消えて無事帰ったようです。
 なので、この美希ちゃんをどう扱おうが、警察沙汰になることは無いでしょうね。」
「くっ、それならば、それならば、いや、待てよ、これはどうなんだろう、うむむむむ」

なにやら怪しい展開になってきた。
古今東西、この手の組織では犯罪行為は行われてきたし、革命のための犠牲として部外者をも暴力やリンチの対象としてきた。
そして、宮野もこの歴史のとおり、最終的には少女を実験体として使うことを許可した。
ミイラ男が少女の背を叩くと

「・・・いや!いや!実験ってなに!やめて!家に帰して!」
「あっ、聞こえてましたね。金縛り状態でも意識はあるんだなぁ。ははは、ははは。」
「おい、資料収集班、メモとっておけ。」
「やだ、おじさんたちなんなの、怖いよ、怖い。」
「美希ちゃん、とりあえずこの巻物を開いてごらん。」
「え、やだ、意味わかんない、なにこれ、怖いよお、どうすればいいの、怖っ―――」

少女はくちなしの巻物を使った。
声も出すことが出来なくなった無力な少女に、男たちは残忍な目を向けた。

喉を押さえながら口をパクパクとさせるが、声は失われていた。
少女は逃げ出そうと暴れたが、ちからの種を10粒ほど飲み自衛隊員のような身体になった山口に取り押さえられた。

「宮野さん、こいつを試してみましょうよ。」
「封印の杖か、それは効力が知りたかったところだ。よし、山口試してみろ。」
「その前にこの子から特技を聞かなきゃ、おい、鉛筆を持て。お前の特技はなんだ。」

組み伏せられた少女は従うしかなく、怯えながら紙に「たいそう」と書いた。
たしかに華奢な体格をしており、細身ながらも張った身体をしていた。
少女は男に命ぜられるまま、逆立ちや開脚をさせられていたが、スカートがめくれて幼い下着が見えるたびに、男たちは唾を飲んだ。

「よし、山口、封印の杖を振れ。」
山口が杖を倒立状態の少女に向けて降った途端、少女はぐしゃっと崩れた。
そして、二度と逆立ちができなかったし、開脚もできなくなった。

「分かったか。お前は二度と体操ができないんだ。ざまあみやがれ。」
山口は少女の小さい耳元でささやいた。
おそらくは、たくさんの指導を受けて、たくさんの汗をかいて、身に付けた技術は封印された。
失われた夢を自覚したのか、少女の目から涙がぽろぽろと零れ落ちた。
この姿は男たちの嗜虐心をおおいにくすぐった。
おそらく、その杖を振られても封印される特技も無いであろう男たちは、少女に実験を繰り返した。

まずはメタパニ草を喰わせた。
これは少女が口を閉じたまま飲み込むのを拒否したため、かなしばりの巻物を使った上で無理やり喉の奥に押し込んだ。
金縛りを解くと、少女の目は左右に揺れ、酔っ払いの千鳥足のようにふらふらと歩き始めた。
この様子を見て男たちは大いに笑い、効果が切れても何度か喰わせては少女を歩かせた。
その中で、歩数がターン数に置き換えられているのではないかと仮説を立てた。
目潰し草でも実験したが、飲んだ瞬間に少女の目は視力を失い、パニックに陥った。
しかしこれも、特定の歩数を歩かせることで回復することが実証された。
その上でラリホーの杖をあらためて振った。
ここでのターン数はどうやら、振った者の歩数がターン数として換算されるらしく、振った男が動かない限り少女の意識は戻らなかった。
他の男が少女の頬をいくらひっぱたいても、少女は起きず、面白がって暴力がエスカレートした。
ちからの種の山口が少女の脇腹に思い切りパンチを入れた時、ごっ、と肋骨の折れる音がした。
これがきっかけとなったのか、男たちは次第に少女の殺害を前提に実験をするようになった。

ラリホーを解いた瞬間、少女は脇腹を押えてのたうち回った。
ふたたび金縛り状態にして弟切草を飲ませた。これは不思議にも少女の痛みを消し、折れた肋骨をも復元させていた。
これがさらに暴力を加速させ、こん棒+1とこん棒+10ではどのように殴り心地が良いのかなど、どうでもいいことまで実験は及んだ。
鼻骨を陥没させ、指をへし折り、血を吐くくらい腹を叩いた。背骨を叩き折ったときは下半身をピンと伸ばし痙攣を始めた。
そのたびに弟切草を口に押し込み回復させるのだが、全回復すると少女は力の限り暴れ出すので毒草を喰わせた。
もはや痛む部分を庇う力も無く、少女は滅多打ちにされた。
苦悶の表情を浮かべる少女の口からはひゅーひゅーと激痛を訴える息が漏れていた。
意識を失いそうになると薬草を飲み込ませ、いくつで全回復するかを計り少女のHPを算出した。

その上でいかずちの杖を振った。HPから計算すると3回が限度であるとのことである。
これは「いかずち」と呼ばれるものの破壊の仕方がどのようなものかと検証するためではあるが、どうやら電気ショックに近い様子であった。
男たちが一振りするたびに少女は声にならない絶叫をあげ、命を3分の1削られる衝撃と痛みを受ける。
限度の3回目を振ると、少女は身体中の穴から血を流し、細く引き締まった体がガクガクと震えだす。

男たちはやがて剣の切れ味を吟味し始め、少女を風呂場に運び全身をメッタ切りにした。
肌はズタズタにされ、胸の肉がべろんと剥がれそうになるくらい何度も何度も切り刻んだ。
回復アイテムで肉体は回復するが、着衣は回復せず、やがて少女は全裸も同然の状態になった。
こうなるといよいよ男たちの興奮は増し、切断した部分が回復するかどうかを試し始めた。
少女は拘束され、指を一本二本と切り落とされた。
切り落とすたびに身体をのけぞらし、肺から振り絞るような息が吐かれたが、声にはならなかった。
結論としては、何故か切断部分は復元されず、弟切草をもってしても断面をつるんと肌組織で覆う程度であった。
しかし実験という名の狂気は止まらず、鉄の斧で手首、足首、膝、股関節、と叩き斬られ、あっという間に少女は四肢切断された。
そして一人が耐えかねて肉棒を出すと、レイプが始まった。


参加者のほぼすべてがさえない人生を送っており、多くが童貞だった。
失われた青春の全てをぶつけた精子は、どす黒いようにすら思え、少女の胎内に何度となく注ぎ込まれた。
少女はもちろん処女であり、回復させるたびに破瓜の痛みを味わうので、どこまで行っても快楽ではなく激痛であった。
特に異常な性癖を持っていた男もいて、喉を縦に切り裂き男根をねじ込み、そこから少女の口内を犯すという信じがたい行為も行われた。
あまりの苦痛に耐えかねてぱっくりと開いた口の奥に、男のペニスの先端が覗いた時は歓声が上がったほどだ。
ピストンするたびに、どういう加減か、少女の口からはげーげーという異音が漏れた。
また、秘部に剣を挿入し、切り裂かれた膣内に腕をねじ込み、腸間膜を裂いて大腸を引きずり出すということも行われた。
その際はどういう加減か、少女の顔面の右半分だけが痙攣し、人間のものとは思えない表情を浮かべていた。

宮野は、宮野はその様子をただ見ていた。
もはや目的を見失っているにもかかわらず、支配欲にも似た恍惚を顔に浮かべていた。

「あっ、ちなみに言ってなかったですけど、こっちがオリジナルです。
 家に帰ったのは、分裂させて現れたコピーなんですよ、はははは、はははは、はははははは」

ミイラ男以外の全員がぎょっとした。
ばかな、これでは完全に犯罪者ではないかと、男たちは顔色を失くした。
返り血でどろどろになった、ホラー映画そのもののミイラ男が悪気も無く笑い続ける。

「はははは、こういうことしちゃうから私は前の会社をクビになっちゃったんですよね、ははははは」
「貴様!何故それを早く言わなかった!これでは、これでは、我々は、我々は、きい、きいききい、」
「いまさら何言ってるんですか。別にいいじゃないですか。ははは、コピーは家庭でふつうに暮らしてますよ。はははは」
「そういう問題ではない!きい、きい、貴様は我々の、我々の、革命の、志高き革命の、きい、きいきい、」

いよいよ発狂した宮野は、ザキの杖を持ちだした。
ザキの杖は宮野のみが所持することを許された、最終的な制裁のための道具である。

「おっと、そうはいきませんよ。私は『私たちのこれから』を誰よりも知ってます。おそらく宮野さんよりもね。
 この手のドタバタ作品の行きつく先はいつも決まっているんですよ。それではオサラバです。はははははは」

笑い声を残して、ミイラ男は消えた。
手一杯のアイテムを抱えて、時の砂の巻物を使い、量子力学の彼方へ飛び去ったのだ。
これは誰もが使用をためらった道具の一つであって、どこの時間へ飛ぶのか、誰も分からなかったせいである。
たしかに時間が戻るのは魅力的なのだが、効果があまりに常人の想像の範疇を越えてしまっていたのだ。
火炎草のときもそうだが、そういう危険アイテムを平然と使ったミイラ男は、おそらく元々大物になる素質があったのだと俺は思った。
取り残された俺たちは、ミイラ男がいた虚空を見つめて呆然とするしかなかった。



少女は、ダルマ状態のままバスルームで転がっている。
とっくに精神が崩壊したのか、黒目の部分がすでにぼんやりと異常な色をしている。
処分の方法はすでに決まっていて、レムオルの杖で透明にしたあと、ザキの杖を振って死体を抹消するのだ。

「じゃあな、美希ちゃん。君はこんな残念な結末となったが、もう一人の美希ちゃんは幸せになるよ、きっと。」

ずっと傍観者でいた、俺は少女を始末した。
息絶える瞬間に透明の向こう側から「きゅっ」と小動物のような断末魔が聞こえた気がした。
男たちは無言だった。もちろん宮野も。

「なあ宮野さん。やめないかこんなこと。俺らには向いてないんだよ。
 これで分かったと思うが、40も過ぎてゲームばっかしてる人間はこうなるしかないんだよ。
 奇跡のような力が手に入ったって、大袈裟なことなんてできやしない。こうして醜い欲望を解消する以外に無いんだ。」
「違う。我々はこのくだらない社会に復讐するんだ。」
「復讐といっても、結局は人殺しに走るんだろ?行われるのはどうせ無差別殺人だ。
 ザキの杖で殺すか、包丁で殺すかの違いはあれど、俺らのような人間が行動を起こそうとすれば、結局そんなことになるだろう。」
「・・・じゃあどうしろっていうんだ。」

「俺の想像じゃ、もうどうしようもないね。」
「そんなバカな話があるか、まだ、まだ、俺らには可能性があるんだ。」
「それなら、社会に出て真面目に仕事をするのがいい。
 宮野さんの言うとおり、くだらない社会だが、それに耐えて適応できたっていうのが自信に繋がるんだよ、きっと。
 俺もあの狂気を見て、再就職を目指す気になった。ああなるくらいなら社会に虐げられていたほうがマシだって思ってね。
 まあ、この超常現象は決して俺たちにとって無益じゃなかったってことだ。」
「そうか、だったら―――」





俺たちは『風来のシレン』を始めた。
せっかくのオフ会だということで、最後に何かやって別れようということになったのだ。
これが思いのほか盛り上がり、各々が各々の知識や体験を語り合った。
ゲームを通じてそれらを共有する作業。実に楽しく、実に充実した時間である。
まるで遠い昔、小学生や中学生のころに味わったあの感覚に似ている気がした。
数十分後、最速で『フェイの最終問題』をクリアした男が現れた。

「この努力を他の場所に使ってりゃな、俺も、今頃は、」
「おい、言うなよ山口。」
「いや、それに気付けただけマシだ、なんとかなるよ。」

バスルームでは透明になったダルマ少女の死体がまだ転がっていて、徐々に死臭を放ち始めていた。
そんな異常な事態が忘れ去られているのは、俺らが無意識の中でリセットボタンを押す癖がついたからだろう。

「あっ、妖刀かまいたちがでてきた。」

俺らの目の前に一本の刀がごろりと現れた。


宮野は慌てて風来のシレンスレを見た。

「うはwwwww変化の壺おもしれwwwwwwwwww」
「どうなってんだよこれw剛剣マンジカブラの実物が出てきたんだけどwリアルにw」
「誰か三行で説明できる奴はいないのか。」
「俺も目の前にガマラの肉が出てきた。食べる勇気無し。」
「おにぎりおいしいですwwwwwwww」
「真空斬りの巻物出てきた。なんか怖いんだけど。」

やばい。『風来のシレン』はやばい。俺はそう思った。
宮野もそれに気付いたらしく、急いでキーボードを打った。

「お前らやめとけ。お前らみたいな人間が超常現象的な力を手に入れたって、どうせロクなことに使わないだろ。
 そのアイテムはリアルにシャレにならない効果を持つから絶対に使うな。とりあえず集まれ、俺らの話を聞け。OFF会だ。」

違う、そうじゃない。煽ってどうする宮野。
俺は宮野を突き飛ばし、代わりにキーボードを叩いた。


「いいか、いくら社会に不満があっても、奴らを皆殺しにしてやろうとか考えちゃだめだ。
 他の人間はこんなくだらない社会の中でも必死に耐えながら生きてるんだ。
 それをナンセンスと思うかはお前ら次第だ。しかし、全てをぶち壊しにしてやろうとか、終わらせてやろうとか考えるのはやめろ。」

送信ボタンを押す寸前で、指先がすぅっと消えてきた。
「しまった!遅かったか!」
つま先から、足首から、膝の下まで、物理的に消えるというより、俺という概念が徐々に消滅していく。
宮野も、山口も、大西も、腰のあたりまで消えてしまった。
俺も残りが首だけになりながらも、叫び続けた。
「ちくしょう!俺はまだ生きるぞ!再就職だってしてやるし、結婚だってしてやる!ここで終わるなんて――――」

誰かがジェノサイドの巻物を使ったのだろう。
その効果は部屋やフロアを越えて全体に作用する。
人類の存在は封印された。


362 名前:反省文[sage] 投稿日:2011/07/24(日) 21:59:48.85 ID:S2XDSTvr [29/29]
こんなに長くなるとは思いませんでしたorz
内容が内容なだけに、こっそり投稿するつもりがこのありさま。気を付けます。

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