極めて容赦のない描写がメインになりますので、耐性のない方、および好きなキャラが残酷な目に遭うのがつらい方はご遠慮ください。

72 名前:春分天女の最後 1/3 ◆/W8AnhtEnE [sage] 投稿日:2009/04/04(土) 15:59:34 ID:pVAMHc6P [1/3]
前スレでブルーマンデーものを投下していた者です。
春分の日を含む三連休に投下するつもりのネタでしたが、ネタ中にある事情で書く暇が取れませんでしたw
ようやく暇が出来て書き上げることが出来たので、時期がずれましたが保守ネタにでもなればと思い投下させて頂きます。



 人々の安息と希望の源である聖なる秘宝「ホリデークリスタル」、それを護るのは「蓮弓(れんきゅう)天女」。
そして秘宝を狙うのは悪の五人姉妹「ヘイジツーシスターズ」。
今宵も人々を苦しめる魔力ロウドウーを力の源にして戦うヘイジツーシスターズと、クリスタルからもたらされる
聖なる力ホリデーの加護の下に戦う蓮弓天女との死闘が繰り広げられていた。


3月19日、木曜日の夜更け。明日から多くの人々が3連休を迎える夜。
寝静まった街の路上に対峙する2人の女性が月明かりに照らされていた。
一人は弓に矢をつがえ、凛とした立ち姿を見せている。
もう一人は幾本の矢に衣の袖や裾を貫かれ、壁に縫い止められていた。

弓を手にした女性は春分天女、正月、成人に続く第三の蓮弓天女だ。
桃のように瑞々しい美貌を簪で纏めた麗しい桜色の髪で彩っている。
そして身体を覆う薄絹の衣とその手に輝く蓮弓が蓮弓天女であることを表していた。
壁に縫いとめられた少女は「金曜日」。
人々をロウドウーに狩り立てるヘイジツシスターズの末娘だ。
まだ年端も行かない幼女の姿をしている。
だがその顔立ちは憤怒のような表情で春分天女を睨みつけていた。

「これが最後の警告です、おとなしくこの世界から立ち去りなさい。さもないと」
「さもないと『いたいけな幼女の胸を矢で貫く』のね?正義の天女さん?」
たおやかな声を発する春分天女の言葉尻を捕らえ、金曜日が小憎らしく皮肉を返した。
「……そうです。無用の苦痛を与えることは出来れば避けたいですが、聞き入れないなら止む得ません。」
敵から放たれた皮肉に心を痛ませる春分天女だが、落ち着きを取り戻して静かに宣告する。

「信じられないー!酷すぎるよお姉さん。」
「戯言はもう止しておとなしく観念……」
「nendomatsu!」
頬を膨らませ駄々をこねるような言葉をあげる金曜日に、やや苛立ちを覚える春分天女。
だがその耳が金曜日が上げた聞き慣れぬ言葉を捉える。
「くっ!」
瞬時に矢を金曜日に向けて放ち、防御の構えをとった。
蓮弓天女たちにとってヘイジツシスターズが持つ力はまだまだ未知の部分が多い。
先ほどの言葉も何か呪文のような物だと感じた春分天女が即座に取った「闘う者」としての反応だった。

「あぐっ!」
春分天女が放った矢はそのまま金曜日の胸に突き刺さり、血反吐を吐かせる。
止めの一撃を食らった金曜日は血で濡らした口元のニィと歪ませ、凄絶な笑みを浮かべて春分天女と瞳を合わせる。
次の瞬間、がくっと首を傾けた金曜日は光の粒子にその身が変えて消え去った。
(終わったの?確かに彼女はこの世界から消えた、けどあの言葉は?)
納得できないまましばらく金曜日が消えた場所を見つめていた春分天女。
だが振り切るように頭を横に振り、その場から立ち去ろうと踵を返した。

すると彼女の視界に黒い壁が映る。
ハッと見上げた春分天女と彼女を見下ろす甲冑武者の目が合った。
事態が飲み込めず、瞳を瞬かせる天女。
甲冑武者の肩先に鈍い光を捉えた次の瞬間。


ザシュ!
「イぎぃッ!」
春分天女の視界を遮る赤い霧、鳩尾を貫く灼熱のような激痛。
彼女の肢体が武者の手槍に貫き通されたのだ。
一瞬の出来事に耐え切れずに濁った悲鳴を漏らす天女。
手にした蓮弓も取り落としてしまう。
「むっ!」
「アギッイイィィィ!」
甲冑武者が気合と共に槍を引き抜く。
再び身体の中を壊される痛みに苦悶する春分天女。
手前に槍を引き抜かれた勢いに引っ張られてたたらを踏む彼女を槍を手放した武者の拳が襲う。
「フギィッ!」
篭手に覆われた拳が春分天女の美貌にめり込み、鼻をひしゃげさせながら宙を舞う。
「うぐっ!」
そのまま彼女は数メートル離れた床に背中から叩き付けられた。

(うっ…ぐっ!……一体何が?あれは何者?……ヒッ!)
春分天女は鳩尾、背中、鼻梁から走る激痛に苦しみながら必死に思考を巡らす。
だがその冷静な精神も、肘を付いて身体を起こそうとする彼女の瞳が近づいてくる甲冑武者の姿を捉えると
恐怖に染まる。
「?……ガハハハハハッ!」
傷付いた天女の美貌に走った怯えの表情に気づいた甲冑武者が高笑いをあげる。
「立ち上がろうとする気概は認めてやろう、じゃがお主が怯えるのも当然じゃ。我が名は『休日出勤』!」
歩みを進めながら話を続ける武者。
「週休2日制などというものに囚われている平日姉妹のような乳臭い小娘どもとは違う。真のロウドウーを
勤め人どもにもたらすのがワシじゃ!」

「あぐっ!」
そのまま春分天女に近づいた休日出勤は、彼女の頭を髪ごと鷲掴みにして無理やり持ち上げる。
「金曜日も早くにワシを召還しておけばむざむざ殺されることもなかったろうに。」
そのまま春分天女の息の匂いが嗅げるほどの距離に顔を近づける。
「お主、鼻を潰してしまったのは残念じゃが良い器量じゃの。どうじゃ、ワシの妾にならぬか?
なったら命だけは助けてやるぞ?」
顔を覆う黒い鉄製の面頬越しにまじまじと天女の美貌を見つめながらため息を漏らす休日出勤。
「そんなの御免ですっ!」
好色そうな武者の視線にキッと睨みを返した春分天女。
右腕を曲げて、武者の顔に肘当てを食らわす。
「オグっ!」
面頬越しに鼻がひしゃげた確かな手応えが天女の肘に伝わる。
「これでおあいこですね!」
一矢報いたことで思わず笑みがこぼれる。
頭を掴んでいた、痛みに悶える休日出勤の腕をも振りほどいて距離をとって床に着地する春分天女。

そのまま髪を束ねていた金色の簪を手に取り、呻く武者の鎧の隙間に刺し込もうと飛びかかる。
「こしゃくな!」
「ぐっ!」
簪を握る右腕を態勢を立て直した武者の豪腕に取られてしまう。
クロガネの腕と白絹の腕が絡み合い、一瞬の後捻りあげられた白い腕が乾いた音を立てる。
「イギィッ!」
天女は右腕から伝わる激痛に目を見開かせる。


 折れた右腕を左腕で支え、痛みをこらえる春分天女。
休日出勤の間合いの中で大きな隙を見せてしまった彼女。
「刺突はこうやるのじゃ!」
それを見逃すことなく絶対的優位に立った甲冑武者が脇差を抜いて、彼女を抱き抱えるように背に手を回す。
そして密着させた天女の肢体、その胸のふくらみに凶刃を突きいれた。
「いぎいぃぃぁぁぁっ!」
刃に衣を裂かれまろびでる乳白色の果実。
その左の膨らみに黒い刃が刺し込まれた瞬間、パッと赤い液体が弾ける。

「どうじゃ!心の臓まで貫き通す勢いじゃろう?」
「ァ……ガハッ!……ハッ、ゴ……」
勝ち誇るような休日出勤の問いに春分天女は答えることが出来ない。
胸の傷、そして口唇から失われていく赤き血。普通の人間なら致命傷になるような傷を負った彼女は
ホリデークリスタルの加護があっても命を繋ぐのがやっとの状態だった。
簪を抜いたことで桃色の髪も解け、胸元にかかった髪は流れ出る血で汚されていく。
力無く仇敵に抱かれてしまっている春分天女。その瞳は虚ろな光を宿し、何も映していない様だった。
休日出勤が腕を離すとそのまま彼女の肢体は地面に仰向けに転がった。

「もう一方も貫いてくれるわ!」
荒い息がつかれる度に上下する右の胸、そのまだ美しさを保った膨らみに休日出勤が脇差を突きこむ。
「ガ、ギィッ!」
肌を裂いた瞬間、息がとまる激痛が春分天女に走る。
そして刃は右胸の奥深くに宿った赤き宝玉、ホリデークリスタルを貫いた。
「アギィィィィイイイッッッ!」
生命の根源を破壊され、断末魔の雄叫びをあげる春分天女。
「おお、そこがお主のクリスタルの隠し所か。残念じゃ、もう少し嬲りたかったが。」
休日出勤が落胆したような声を漏らして天女の肢体を見下ろす。
やがて、春分天女の両胸の傷口、そして口唇から流れ落ちる血の勢いが弱まっていく。
痛みで大きく見開かれた瞳の光も次第に薄らぎ、肌の色が透き通るような白さを増していく。
その彼女の口唇が僅かに動いた。

「……こ、ご…めんな…さい……き、休日を……もたらす……こと、が……できな…くて……」

人々に自らの無力さを詫びる声を漏らす春分天女。
言葉を紡ぎ終えると彼女の頭はがくりと力無く横に傾いた。


こうして春分天女は休日出勤の凶刃に倒れ、人々は休み無しに悪の力ロウドウーに囚われる事となった。

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