トロイカ暦1900年頃の話
第一部
第二部
第三部
第四部
第五部
第一部 
ここは近代マウサナの最大の都市、ルレーウッア。共同租界があるオケウとはスエラ川河口を挟んで反対側に位置しており、マウサナにおける近代化の中心として、近代的なレンガ建築や、この時代では黎明期にあたる鉄筋コンクリートの建築もみられる。
ルレーウッアはマウサナで最も多様性のある都市として有名で、第一種族のマウサナ人、第二種族の人間はもちろん、様々な少数種族や外国人など、ありとあらゆる種族が共存している都市だ。 そんな大都市の一角、複数ある繁華街のうちの一つ、そこにある小規模な食堂では、ある2人の人物が会合していた。
「ところで、神隠しって知ってます？」
「神隠し…流石に知ってるわよ？」
「ええ、奇妙な噂を聞いたもので。」
最初に敬語で発言したのが、今回の主人公となるリナ=エルロル大佐で、性別は男性、現在は陸軍の連隊長をやっている。近頃は少将への昇進の噂もある人物だ。 そして続いてタメ口で発言したのが、リナの補佐役であり幼馴染でもあるルテア・ヤナエッアであり、ルーミナ小王国を治める名門ヤナエッア小王家の末娘であり、身分的にはリナよりも上である。
リナ=エルロルの祖母は伝説的な将軍のリン=トーラノ=エルロルである。リンは叔父であり同じ年のシテラ=トーラノ=ソレーヤペと結婚し、何人かの子供をもうけたが、その末娘であるリン=エルロル(小リン)は親と兄弟姉妹から溺愛されたといい、小リンはリンの長男が婿入りした先でもうけた長男のロコ=セーラエノを婿にとって、次男として主人公となるリナ=エルロルを産んだ。
もう1人の主人公であり主人公の幼なじみ兼補佐役として登場予定のルテア・ヤナエッアは、リンの次男カーナ=エルロルが名門のヤナエッア小王家に婿入りし、その末っ子である。
「それで、その噂について教えてくれる？」
「オケウ共同租界の周辺で、神隠しが起こっているという噂があります。神隠しは夜間にのみ発生し、神隠しの対象となるのは、外国人ばかりとかで。」
「オケウ共同租界……世界各国の外国人が雑居するマウサナ最大の租界ね。」
「ルテアでも流石にそれくらいは知ってますか。ともかく、噂によれば住民に対して横暴を働いた外国人が、神隠しの対象になるそうですよ。」
マウサナ統一戦争において、祖母リンの活躍もあってマウサナがスランに対しては勝利したものの、イケニアに対してはほとんど引き分けに近い結果で終わった。その結果、マウサナは最低限の尊厳(領事裁判権は列強国に対してのみ認められ、アヘンの持ち込み禁止や外国人がマウサナ国内を自由に旅行したり内地で経済活動を行うことの禁止など)は守られたものの、不平等条約を結ばなければならなかった。
いかなる条約においてもマウサナに在住する外国人に治外法権を認めたことはなく、領事裁判権においては、「外国人がマウサナ国民に対して犯罪をした場合は領事裁判所で裁き、マウサナ国民が外国人に対して犯罪をした場合はマウサナで裁く」という内容である。しかしながら領事裁判所ではしばしば本国人に極めて有利な判決が下され、特に軽い犯罪においては被害者側は泣き寝入りする他なく、領事裁判権に対する不満が蓄積されていた。
「今馬鹿にされたような気がするけど……それはそうと、外国人ばかりが神隠しの対象になるなんて……」
「ええ、奇妙な点は他にもありますね。曰く、神隠しにあった外国人の多くは、数日経ってからフラッと帰ってくるんだとか。でも、その帰ってきた外国人はすっかりやつれた感じらしく。」
「魂を抜かれたってことかしら？」
神隠しだの魂を抜かれるだの恐ろしい雰囲気の話をしているにも関わらず、食堂では他の客が談笑しており、その向こうに見える街道にはマウサナ人を中心に様々な種族や路面電車が行き交っており、托鉢をやっているマウサナ人やらそれに施しをするマウサナ人やら、日常の風景であり、その日常の裏でそうした事件が起こっているというのは、あまり実感の湧くものではない。
「そうとも言えますが……数日経てば回復するそうです。ただし、それでも神隠しに合う前とはまるで別人になっているとか、そうゆう話です。」
「うーん、違和感を感じるわね」
「ほう、ルテアでも気付けるんですねぇ」
「さっきから馬鹿扱いするのやめてもらえるかしら！？」
「ははは、失礼。」
ルテアは抗議したが、怒っているように聞こえても実際は怒っておらず、笑顔であった。リナとルテアの会話はいつもこんな感じらしい。
「僕が思うに、これは神隠しとは思えないんです。サ(神)ではなくトー(人)の仕業だと思います。」
「その心は？」
「サは、そんなに生易しくて都合の良い存在ではない。生物を創っておいて、気に入らなくなったら洪水を起こすような、気まぐれな存在ですよ。時にルテア、貴女はどうゆう目的で祈りますか？」
「ええと、例えば願いを叶えるため、とか……」
「それだけではなく、災いを避けるためにも祈るでしょう？我々はサによって災いを受けないために、サを拝んで、貢物を捧げる、というわけです。」
そんなサが、悪者だけを優先的に隠して、さらに衰弱しているとはいえ回復可能な状態で返してくれるというのは、いささかマウサナ国民にとっては都合が良すぎる。本当の神隠しであれば、むしろ良い人を隠して二度と返してくれないだろう。逆に、そうゆう都合の良いことを画策するのはお人好し傾向のある種族マウサナ人である可能性が高い。
「だから、今回の神隠しの噂は、つまるところ我々にとって都合が良すぎる。だから、サではなくトーの仕業ってことね。」
「やっと理解出来たようですね。神隠しが夜間にのみ発生するのも気になる上、それに噂についても、意図的に流布されている可能性が高いですし。」
「むぅ……でも、そうだとしてもそんなに問題ではないんじゃない？領事裁判権のせいで上手く裁けない外国人の悪事を代わりに制裁してくれるのよね？」
「ところがそうとも言えんのですよ。それは自力救済というもので、国家にとっては良くないものですから。」
「それはどうして？」
「仮にそれを認めてしまったら、神隠しを騙る第2第3の、実力行使を請け負う私兵が現れて、社会秩序は維持出来なくなりますから。」
神隠し事件の黒幕を放っておけば、もはや二番煎じの登場は目に見えているし、そういった組織がみかじめ料を徴収するなどの専横、さらに片っ端から外国人を痛めつけるなどの暴挙に出る可能性は否定できない。
そうなってしまえば、マウサナの近代国家としての国際社会からの評価は地に落ち、祖母リンの時代からコツコツと積み重ねてきた努力が無駄になってしまう。それはリナにとっては最も嫌なことであるし、マウサナ人にとっても良くないことだ。
「確かに、それは良くないわね……」
「良くないどころか、それはもはや、近代国家とは呼べませんね。」
「で、リナはどうするの？これから」
「そんなの決まってるじゃないですか。調査ですよ調査、そして逮捕まで」
「毎度思うんだけど連隊長がやることではなくない？」
「まあ、連隊ってのは地域密着型の部隊ですから。言っときますが私が旅団長になったら、そんなこと中々出来ませんよ？」
「はあ、仕方ないわねぇ。じゃあ今回も付き合ってあげるわよ」
「当たり前です。」
ルレーウッアはマウサナで最も多様性のある都市として有名で、第一種族のマウサナ人、第二種族の人間はもちろん、様々な少数種族や外国人など、ありとあらゆる種族が共存している都市だ。 そんな大都市の一角、複数ある繁華街のうちの一つ、そこにある小規模な食堂では、ある2人の人物が会合していた。
「ところで、神隠しって知ってます？」
「神隠し…流石に知ってるわよ？」
「ええ、奇妙な噂を聞いたもので。」
最初に敬語で発言したのが、今回の主人公となるリナ=エルロル大佐で、性別は男性、現在は陸軍の連隊長をやっている。近頃は少将への昇進の噂もある人物だ。 そして続いてタメ口で発言したのが、リナの補佐役であり幼馴染でもあるルテア・ヤナエッアであり、ルーミナ小王国を治める名門ヤナエッア小王家の末娘であり、身分的にはリナよりも上である。
リナ=エルロルの祖母は伝説的な将軍のリン=トーラノ=エルロルである。リンは叔父であり同じ年のシテラ=トーラノ=ソレーヤペと結婚し、何人かの子供をもうけたが、その末娘であるリン=エルロル(小リン)は親と兄弟姉妹から溺愛されたといい、小リンはリンの長男が婿入りした先でもうけた長男のロコ=セーラエノを婿にとって、次男として主人公となるリナ=エルロルを産んだ。
もう1人の主人公であり主人公の幼なじみ兼補佐役として登場予定のルテア・ヤナエッアは、リンの次男カーナ=エルロルが名門のヤナエッア小王家に婿入りし、その末っ子である。
「それで、その噂について教えてくれる？」
「オケウ共同租界の周辺で、神隠しが起こっているという噂があります。神隠しは夜間にのみ発生し、神隠しの対象となるのは、外国人ばかりとかで。」
「オケウ共同租界……世界各国の外国人が雑居するマウサナ最大の租界ね。」
「ルテアでも流石にそれくらいは知ってますか。ともかく、噂によれば住民に対して横暴を働いた外国人が、神隠しの対象になるそうですよ。」
マウサナ統一戦争において、祖母リンの活躍もあってマウサナがスランに対しては勝利したものの、イケニアに対してはほとんど引き分けに近い結果で終わった。その結果、マウサナは最低限の尊厳(領事裁判権は列強国に対してのみ認められ、アヘンの持ち込み禁止や外国人がマウサナ国内を自由に旅行したり内地で経済活動を行うことの禁止など)は守られたものの、不平等条約を結ばなければならなかった。
いかなる条約においてもマウサナに在住する外国人に治外法権を認めたことはなく、領事裁判権においては、「外国人がマウサナ国民に対して犯罪をした場合は領事裁判所で裁き、マウサナ国民が外国人に対して犯罪をした場合はマウサナで裁く」という内容である。しかしながら領事裁判所ではしばしば本国人に極めて有利な判決が下され、特に軽い犯罪においては被害者側は泣き寝入りする他なく、領事裁判権に対する不満が蓄積されていた。
「今馬鹿にされたような気がするけど……それはそうと、外国人ばかりが神隠しの対象になるなんて……」
「ええ、奇妙な点は他にもありますね。曰く、神隠しにあった外国人の多くは、数日経ってからフラッと帰ってくるんだとか。でも、その帰ってきた外国人はすっかりやつれた感じらしく。」
「魂を抜かれたってことかしら？」
神隠しだの魂を抜かれるだの恐ろしい雰囲気の話をしているにも関わらず、食堂では他の客が談笑しており、その向こうに見える街道にはマウサナ人を中心に様々な種族や路面電車が行き交っており、托鉢をやっているマウサナ人やらそれに施しをするマウサナ人やら、日常の風景であり、その日常の裏でそうした事件が起こっているというのは、あまり実感の湧くものではない。
「そうとも言えますが……数日経てば回復するそうです。ただし、それでも神隠しに合う前とはまるで別人になっているとか、そうゆう話です。」
「うーん、違和感を感じるわね」
「ほう、ルテアでも気付けるんですねぇ」
「さっきから馬鹿扱いするのやめてもらえるかしら！？」
「ははは、失礼。」
ルテアは抗議したが、怒っているように聞こえても実際は怒っておらず、笑顔であった。リナとルテアの会話はいつもこんな感じらしい。
「僕が思うに、これは神隠しとは思えないんです。サ(神)ではなくトー(人)の仕業だと思います。」
「その心は？」
「サは、そんなに生易しくて都合の良い存在ではない。生物を創っておいて、気に入らなくなったら洪水を起こすような、気まぐれな存在ですよ。時にルテア、貴女はどうゆう目的で祈りますか？」
「ええと、例えば願いを叶えるため、とか……」
「それだけではなく、災いを避けるためにも祈るでしょう？我々はサによって災いを受けないために、サを拝んで、貢物を捧げる、というわけです。」
そんなサが、悪者だけを優先的に隠して、さらに衰弱しているとはいえ回復可能な状態で返してくれるというのは、いささかマウサナ国民にとっては都合が良すぎる。本当の神隠しであれば、むしろ良い人を隠して二度と返してくれないだろう。逆に、そうゆう都合の良いことを画策するのはお人好し傾向のある種族マウサナ人である可能性が高い。
「だから、今回の神隠しの噂は、つまるところ我々にとって都合が良すぎる。だから、サではなくトーの仕業ってことね。」
「やっと理解出来たようですね。神隠しが夜間にのみ発生するのも気になる上、それに噂についても、意図的に流布されている可能性が高いですし。」
「むぅ……でも、そうだとしてもそんなに問題ではないんじゃない？領事裁判権のせいで上手く裁けない外国人の悪事を代わりに制裁してくれるのよね？」
「ところがそうとも言えんのですよ。それは自力救済というもので、国家にとっては良くないものですから。」
「それはどうして？」
「仮にそれを認めてしまったら、神隠しを騙る第2第3の、実力行使を請け負う私兵が現れて、社会秩序は維持出来なくなりますから。」
神隠し事件の黒幕を放っておけば、もはや二番煎じの登場は目に見えているし、そういった組織がみかじめ料を徴収するなどの専横、さらに片っ端から外国人を痛めつけるなどの暴挙に出る可能性は否定できない。
そうなってしまえば、マウサナの近代国家としての国際社会からの評価は地に落ち、祖母リンの時代からコツコツと積み重ねてきた努力が無駄になってしまう。それはリナにとっては最も嫌なことであるし、マウサナ人にとっても良くないことだ。
「確かに、それは良くないわね……」
「良くないどころか、それはもはや、近代国家とは呼べませんね。」
「で、リナはどうするの？これから」
「そんなの決まってるじゃないですか。調査ですよ調査、そして逮捕まで」
「毎度思うんだけど連隊長がやることではなくない？」
「まあ、連隊ってのは地域密着型の部隊ですから。言っときますが私が旅団長になったら、そんなこと中々出来ませんよ？」
「はあ、仕方ないわねぇ。じゃあ今回も付き合ってあげるわよ」
「当たり前です。」
第二部
さて、こうなればまずは仲間集めだ。まずは路面電車に乗りこんで連隊本部へと向かう。連隊本部は練兵場を併設した学校のような建物である。木造の建物は老朽化しつつあった。リナはリオーヤラ少尉という人物を呼び出した。
「大佐殿、今回はどのような事件で？」
「例の神隠し事件だ。リオーヤラ少尉には、小隊から分隊を選んで率いてほしい。」
リオーヤラ少尉はリナの弟分のような存在であり、少年期に近所に住んでいたマウサナ人だ。当然、ルテアとも知り合いだ。
「ヤナエッア様も、お久しぶりです」
「様だなんて大袈裟よ。とにかく、よろしくね」
「それで大佐殿、作戦はあるのでしょうか？」
「まあ、ある程度は。それには、ある知り合いが必要だ。」
兵を手配させるために一旦リオーヤラ少尉と別れると、リナはある家を訪ねた。
「おーいジール！居るのか？」
「リナか？俺に何の用だ」
若い人間の男が家から出てきた。名前はジールと言うらしい。
「ちょっと依頼があってね」
「すると、またおとり捜査か。まあ話は聞いてやろう。あ、ヤナエッアさんもお久しぶりです」
「ジールさん、元気そうで何より。」
ジールは変装の達人である。リナは事件の概要を話した後、具体的な作戦の話に移る。
「それでここからが作戦の大枠ですが、外国人に変装したジールを囮にして、我々が夜間に張り込んで現れた誘拐犯を尾行する、というのが作戦です。」
「尾行してどうするの？」
「そこで分隊の出番です。敵を一網打尽に出来ますから。」
「おいそれ、俺が一番危険じゃねぇか。」
「なら他を当たるか？」
「いや、俺がやってやるよ。ただし、報酬はたんまり出してもらうからな。」
「おやおや、前回の報酬はもうスってしまったのか？」
「く、リナも言うようになったぜ。とにかく報酬の保証があれば、俺はやったるよ。」
「まあ心配すんなジール。ここのルテアが、金銭のことは保証してくれるさ。ですよね、ルテア？」
「仕方ないなぁ……まあこの中で金持ちなの、私だけだし。」
「じゃあ、決まりってことで。俺は早速準備するぜ。」
「詳しい作戦内容はこの紙に書いておいた。よく読んでおいてくれ。作戦の決行は明日からだ。」
「大佐殿、今回はどのような事件で？」
「例の神隠し事件だ。リオーヤラ少尉には、小隊から分隊を選んで率いてほしい。」
リオーヤラ少尉はリナの弟分のような存在であり、少年期に近所に住んでいたマウサナ人だ。当然、ルテアとも知り合いだ。
「ヤナエッア様も、お久しぶりです」
「様だなんて大袈裟よ。とにかく、よろしくね」
「それで大佐殿、作戦はあるのでしょうか？」
「まあ、ある程度は。それには、ある知り合いが必要だ。」
兵を手配させるために一旦リオーヤラ少尉と別れると、リナはある家を訪ねた。
「おーいジール！居るのか？」
「リナか？俺に何の用だ」
若い人間の男が家から出てきた。名前はジールと言うらしい。
「ちょっと依頼があってね」
「すると、またおとり捜査か。まあ話は聞いてやろう。あ、ヤナエッアさんもお久しぶりです」
「ジールさん、元気そうで何より。」
ジールは変装の達人である。リナは事件の概要を話した後、具体的な作戦の話に移る。
「それでここからが作戦の大枠ですが、外国人に変装したジールを囮にして、我々が夜間に張り込んで現れた誘拐犯を尾行する、というのが作戦です。」
「尾行してどうするの？」
「そこで分隊の出番です。敵を一網打尽に出来ますから。」
「おいそれ、俺が一番危険じゃねぇか。」
「なら他を当たるか？」
「いや、俺がやってやるよ。ただし、報酬はたんまり出してもらうからな。」
「おやおや、前回の報酬はもうスってしまったのか？」
「く、リナも言うようになったぜ。とにかく報酬の保証があれば、俺はやったるよ。」
「まあ心配すんなジール。ここのルテアが、金銭のことは保証してくれるさ。ですよね、ルテア？」
「仕方ないなぁ……まあこの中で金持ちなの、私だけだし。」
「じゃあ、決まりってことで。俺は早速準備するぜ。」
「詳しい作戦内容はこの紙に書いておいた。よく読んでおいてくれ。作戦の決行は明日からだ。」
第三部
翌日の朝、改めて集まって作戦の再確認を行った。
その日から、ジールは外国人に変装し、日中は民間人に扮した兵士に対して横暴を働いた。横暴とは言っても実害がほぼないようなもので、双方納得した上で大袈裟にやっている。
とはいえ少々面倒なことも発生した。一連の演技をしている際に、全く関係ない民間のマウサナ人が割り込んできていらぬお節介を焼こうとするのだ。普段はそれで助かっているのだろうが、今回ばかりは正直邪魔だと思った。
そして夜には彼の屋敷(という設定の空き家)の周囲を交代で監視し、異変を察知するというものだ。とはいえマウサナ人はさほど夜目が効く種族でもないので、正門と裏門の近くに街灯のガス灯があって最低限の明るさがあるような物件を選んだ。
しかしながら、1日目、2日目の夜には特に異変がなく、空振りに終わり、3日目の夜となった。街灯が悪影響を及ぼしているのかもしれない。
「今日も空振りかな……」
「残念ですがルテア、3日目に何も無ければ計画は失敗した可能性が高いですね。」
「うーん……ん？」
「どうかしました？」
「いや、もしかしてあれは……」
屋敷の裏門、昼間ですら通行の少ない裏通りの側に、怪しい2つの人影が、薄暗いガス灯の光に照らされながらぼんやりと浮かび上がる。
「あれは……マウサナ人？」
「それにしては様子がおかしくないですかね……」
外見は完全にマウサナ人なのだが、その姿にはどこか不気味さを感じさせる。だが、連中は街灯の光を恐れている様子はなさそうである。そうこうしているうちに、どこからともなく煙とともに漆黒の人力車が現れて、眠ったジールを乗せて移動を開始した。
「目の錯覚？それにしてもまさかこんなことがあるとは……」
「とにかく、追いましょう」
リナが合図を出すと、兵士たちが後に続いて、総勢13人で走って人力車を追いかけ始める。
「気付かれたか！加速しているぞ！」
「連中、速い！まるで路面電車だ！」
「人力車をあのスピードで引くとは、尋常ではない。」
流石にそれだけの人数に追いかけられたら誰でも気付くもので、人力車は急激に加速して路面電車のようなスピードとなった。マウサナ人であれば最初は追い付けるが、長くは続かず、息切れして距離を離されていく。このままでは見失ってしまう。そこで、当初の作戦通りリオーヤラ少尉が命じる。
「やむを得ない！ヌウセーン伍長、車夫の足を狙え！」
「まったく、少尉殿は狙撃兵使いが荒いこった！」
ヌウセーン伍長(種族は人間)は連隊随一の射撃の名手として有名だ。彼は立ち止まってライフルを構えると、瞬時に射撃した。もう照準してしまったらしい。
バアン！という射撃音と同時に、バス、という音がして人力車夫のふくらはぎを銃弾が貫通した。
「さすが伍長だ。だが、やはりあれはマウサナ人ではないな。」
人力車夫は、脚を撃ち抜かれたにも関わらず、何事も無かったかのように走り続けていき、結局見失ってしまった。しかし幸いにも、血痕と足跡が残された。
「よし、追いましょう！」
その日から、ジールは外国人に変装し、日中は民間人に扮した兵士に対して横暴を働いた。横暴とは言っても実害がほぼないようなもので、双方納得した上で大袈裟にやっている。
とはいえ少々面倒なことも発生した。一連の演技をしている際に、全く関係ない民間のマウサナ人が割り込んできていらぬお節介を焼こうとするのだ。普段はそれで助かっているのだろうが、今回ばかりは正直邪魔だと思った。
そして夜には彼の屋敷(という設定の空き家)の周囲を交代で監視し、異変を察知するというものだ。とはいえマウサナ人はさほど夜目が効く種族でもないので、正門と裏門の近くに街灯のガス灯があって最低限の明るさがあるような物件を選んだ。
しかしながら、1日目、2日目の夜には特に異変がなく、空振りに終わり、3日目の夜となった。街灯が悪影響を及ぼしているのかもしれない。
「今日も空振りかな……」
「残念ですがルテア、3日目に何も無ければ計画は失敗した可能性が高いですね。」
「うーん……ん？」
「どうかしました？」
「いや、もしかしてあれは……」
屋敷の裏門、昼間ですら通行の少ない裏通りの側に、怪しい2つの人影が、薄暗いガス灯の光に照らされながらぼんやりと浮かび上がる。
「あれは……マウサナ人？」
「それにしては様子がおかしくないですかね……」
外見は完全にマウサナ人なのだが、その姿にはどこか不気味さを感じさせる。だが、連中は街灯の光を恐れている様子はなさそうである。そうこうしているうちに、どこからともなく煙とともに漆黒の人力車が現れて、眠ったジールを乗せて移動を開始した。
「目の錯覚？それにしてもまさかこんなことがあるとは……」
「とにかく、追いましょう」
リナが合図を出すと、兵士たちが後に続いて、総勢13人で走って人力車を追いかけ始める。
「気付かれたか！加速しているぞ！」
「連中、速い！まるで路面電車だ！」
「人力車をあのスピードで引くとは、尋常ではない。」
流石にそれだけの人数に追いかけられたら誰でも気付くもので、人力車は急激に加速して路面電車のようなスピードとなった。マウサナ人であれば最初は追い付けるが、長くは続かず、息切れして距離を離されていく。このままでは見失ってしまう。そこで、当初の作戦通りリオーヤラ少尉が命じる。
「やむを得ない！ヌウセーン伍長、車夫の足を狙え！」
「まったく、少尉殿は狙撃兵使いが荒いこった！」
ヌウセーン伍長(種族は人間)は連隊随一の射撃の名手として有名だ。彼は立ち止まってライフルを構えると、瞬時に射撃した。もう照準してしまったらしい。
バアン！という射撃音と同時に、バス、という音がして人力車夫のふくらはぎを銃弾が貫通した。
「さすが伍長だ。だが、やはりあれはマウサナ人ではないな。」
人力車夫は、脚を撃ち抜かれたにも関わらず、何事も無かったかのように走り続けていき、結局見失ってしまった。しかし幸いにも、血痕と足跡が残された。
「よし、追いましょう！」
第四部
2時間近く歩き続けただろう、既に一行は家も疎らな郊外に来ていた。まだ血痕が続いている。そのうちに、血痕は道を逸れて雑木林の中に入っていくので、一行もあとに続く。
「そろそろ怪しくなってきましたね」
「ええ、なんとなく不気味に感じるわ。」
雑木林の獣道を数分ほど歩くと、目の前にある建物が見えた。その建物はマウサナの伝統的な様式で造られた豪華な宿屋のようだった。その他に建物はなく、林に囲まれている。
「こんな所に宿があるとは。」
「ちょうどいい、休ませてもらうとしましょうか」
とはいえこれは冗談だ。兵士も疲れが見えているとはいえ、こんな明らかに怪しい立地の宿屋では休めない。だいいち、例の血痕はこの宿屋に続いているのだ。
「私はこの辺りに住んでいたことがありますが……こんな宿屋があるなんて聞いたこともありません」
この辺りに住んでいたという一兵卒の証言によれば、この雑木林は不気味なのでそもそも近付こうとする者も少ないらしい。それによって、ますます怪しさが増した。
「どうやらここがアジトである可能性が高いですね。総員着剣せよ。突入するぞ…」
屋内戦闘が予想されるため、訓練通りの慣れた手つきで兵士たちはライフルに銃剣を装着した。リオーヤラ少尉が先行して扉をゆっくりと開けると、突入！という号令によって、総勢13人でドタドタと建物に駆け込んだ。
「な、なんだここは！？」
「これは洋館か…」
だが、マウサナ風の外装とは対象的に、内装は西洋風の豪華な屋敷といった感じである。逆はマウサナではよくあるが、こうゆうのは珍しい。まるで対照的だ。
「ルテア・ヤナエッア様にリナ・エルロル大佐。お待ちしておりました。」
「な、誰だ貴様は！」
部屋の奥の暗くなっている場所からふらりと、1人のマウサナ人が現れた。そのマウサナ人は露出度の高い独特な服装をしており、もしやここは売春宿なのかと思う程だった。しかし、その不気味な雰囲気が、その独特な服装の効果を半減させていた。
「まあまあ、我々はあなた方に敵意はありません。どうか銃を下ろしてくださいませんか？」
「リナ」
リナの後ろにぴったりとくっ付いて半分隠れているルテアが、リナに何か促したようだ。
「大丈夫ですよルテア。総員、銃を下ろせ。」
「ご協力感謝いたします」
「ところでお前、なぜルテアの名前を知っている？」
「ルテア様のご実家とは昔、付き合いがありましたから。エルロル大佐にいたっては軍服にそう書いてあるではありませんか。」
結局詳細は、はぐらかされてしまった。とても不気味であり、恐ろしい。特に軍人でもないルテアにとっては、リナや兵士たちが居なければ恐怖でおかしくなっていたかもしれない。
「それで、お前たちは我々を歓迎してくれるのか？」
「ええ、もちろんでございます。お代は今回はルテア様に免じてタダ、というのはどうでしょう？」
「ふん、要するに新たな付き合いが欲しいわけだな」
するとルテアは何かに気付いた様子で、リナに耳打ちした。
「リナ……あの奴の尻尾、何か変だわ……2本あるみたい…」
「なるほど、そう言うことでしたか」
リナはその不気味なマウサナ人、否、マウサナ人に似た何かを睨みつけて、声をはりあげた。兵士ですら恐怖を感じているのに、リナは流石大佐といったところか、まったく恐れを感じさせない声でこう言い切った。
「お前の尻尾、先端が二又に分かれているぞ！さあ正体を晒せ！“又ウサナ人“！」
「ククク……私としたことがバレてしまいましたか。」
件のマウサナ人、いや又ウサナ人は、瞬時に姿を変え、漆黒の髪の毛に純白の肌、そして血のように真っ赤な瞳の、黒い尻尾の先端が二つに分かれている、マウサナ人に良く似た外見の妖怪という、自身の正体を晒した。
又ウサナ人という妖怪については古来より様々な伝承がありその内容も多種多様だが、総じて変化と呼ばれる化かしの能力があり、そしてマウサナ人や人間にとって何らかの不利益なことをする、というのが伝わっている。
「巧妙に化けても、尻尾は上手く隠せないと見える」
「ククク……そこのルテア様の件で欲を出してしまい、気を抜いてしまったところです。その一瞬を見破るとは、流石ですね。」
「お前、なぜ外国人を攫う！攫った外国人をどうしている！」
「先程の人間のことなら、まだ手をつけてないので心配なさらず。そうですねぇ……あるマウサナ人の組織に依頼されて、それに協力してるだけです。攫った外国人は、その対価としてその魂の1部を貰い、代替品に差し替えてます。」
「な、依頼人は別だったか……」
「なぜ協力した！」
「面白いでしょう？理由はただそれだけです。ええ、あなた方みたいな“雑種“どもで遊ぶのって、凄く楽しいですから……ククク」
「！クソッ！やれ伍長！」
「へいへい！」
ヌウセーン伍長が瞬時にライフルを構えて射撃し、又ウサナ人を弾丸が貫いた。だが……
「ククク…乱暴なのは嫌いではありませんよ」
「幻影の類か」
弾丸が貫通したあとは、文字通り穴か開いていたのだが、その幻影は微動だにしないのだ。
「ご明察。それでは私はお暇を。」
「ま、待て貴様！」
「まあ、連中にも飽きたところですし、土産に連中の情報をプレゼントしましょう。それではさらば。ククク……ハハハハハハ！！」
幻影はそう言うと、不敵に笑いながら消えていった。 ぐらり、と建物が大きく揺れたかと思うと、視界は暗転した。
「な、今度は何だ！」
視界が再び見えるようになると、そこは月明かりに照らされた小さな池であり、一行とジールは全員無事だったが、その池の中に立ってずぶ濡れになっていた。
「くそ、又ウサナ人め。次会った時は許さないぞ。」
「助かった……のよね？正直恐怖で立てないかも……」
リナはルテアに肩を貸して、立つのを手伝ってやった。
「ところでリナ、その手に持っている紙は何かしら… 」
「おや、これは……例の情報とかいうものらしいですね。癪だが、例の組織の本部の場所らしいです。」
「とりあえず、一旦本部に戻りましょう」
「ああ、ここを立ち去った方が良さそうだ。」
こうして一行の13人は来た道を戻って雑木林から脱出し、連隊本部に帰還した頃にはもう夜明け前だったが、ともかく全員無事だったのは幸運だ。
「そろそろ怪しくなってきましたね」
「ええ、なんとなく不気味に感じるわ。」
雑木林の獣道を数分ほど歩くと、目の前にある建物が見えた。その建物はマウサナの伝統的な様式で造られた豪華な宿屋のようだった。その他に建物はなく、林に囲まれている。
「こんな所に宿があるとは。」
「ちょうどいい、休ませてもらうとしましょうか」
とはいえこれは冗談だ。兵士も疲れが見えているとはいえ、こんな明らかに怪しい立地の宿屋では休めない。だいいち、例の血痕はこの宿屋に続いているのだ。
「私はこの辺りに住んでいたことがありますが……こんな宿屋があるなんて聞いたこともありません」
この辺りに住んでいたという一兵卒の証言によれば、この雑木林は不気味なのでそもそも近付こうとする者も少ないらしい。それによって、ますます怪しさが増した。
「どうやらここがアジトである可能性が高いですね。総員着剣せよ。突入するぞ…」
屋内戦闘が予想されるため、訓練通りの慣れた手つきで兵士たちはライフルに銃剣を装着した。リオーヤラ少尉が先行して扉をゆっくりと開けると、突入！という号令によって、総勢13人でドタドタと建物に駆け込んだ。
「な、なんだここは！？」
「これは洋館か…」
だが、マウサナ風の外装とは対象的に、内装は西洋風の豪華な屋敷といった感じである。逆はマウサナではよくあるが、こうゆうのは珍しい。まるで対照的だ。
「ルテア・ヤナエッア様にリナ・エルロル大佐。お待ちしておりました。」
「な、誰だ貴様は！」
部屋の奥の暗くなっている場所からふらりと、1人のマウサナ人が現れた。そのマウサナ人は露出度の高い独特な服装をしており、もしやここは売春宿なのかと思う程だった。しかし、その不気味な雰囲気が、その独特な服装の効果を半減させていた。
「まあまあ、我々はあなた方に敵意はありません。どうか銃を下ろしてくださいませんか？」
「リナ」
リナの後ろにぴったりとくっ付いて半分隠れているルテアが、リナに何か促したようだ。
「大丈夫ですよルテア。総員、銃を下ろせ。」
「ご協力感謝いたします」
「ところでお前、なぜルテアの名前を知っている？」
「ルテア様のご実家とは昔、付き合いがありましたから。エルロル大佐にいたっては軍服にそう書いてあるではありませんか。」
結局詳細は、はぐらかされてしまった。とても不気味であり、恐ろしい。特に軍人でもないルテアにとっては、リナや兵士たちが居なければ恐怖でおかしくなっていたかもしれない。
「それで、お前たちは我々を歓迎してくれるのか？」
「ええ、もちろんでございます。お代は今回はルテア様に免じてタダ、というのはどうでしょう？」
「ふん、要するに新たな付き合いが欲しいわけだな」
するとルテアは何かに気付いた様子で、リナに耳打ちした。
「リナ……あの奴の尻尾、何か変だわ……2本あるみたい…」
「なるほど、そう言うことでしたか」
リナはその不気味なマウサナ人、否、マウサナ人に似た何かを睨みつけて、声をはりあげた。兵士ですら恐怖を感じているのに、リナは流石大佐といったところか、まったく恐れを感じさせない声でこう言い切った。
「お前の尻尾、先端が二又に分かれているぞ！さあ正体を晒せ！“又ウサナ人“！」
「ククク……私としたことがバレてしまいましたか。」
件のマウサナ人、いや又ウサナ人は、瞬時に姿を変え、漆黒の髪の毛に純白の肌、そして血のように真っ赤な瞳の、黒い尻尾の先端が二つに分かれている、マウサナ人に良く似た外見の妖怪という、自身の正体を晒した。
又ウサナ人という妖怪については古来より様々な伝承がありその内容も多種多様だが、総じて変化と呼ばれる化かしの能力があり、そしてマウサナ人や人間にとって何らかの不利益なことをする、というのが伝わっている。
「巧妙に化けても、尻尾は上手く隠せないと見える」
「ククク……そこのルテア様の件で欲を出してしまい、気を抜いてしまったところです。その一瞬を見破るとは、流石ですね。」
「お前、なぜ外国人を攫う！攫った外国人をどうしている！」
「先程の人間のことなら、まだ手をつけてないので心配なさらず。そうですねぇ……あるマウサナ人の組織に依頼されて、それに協力してるだけです。攫った外国人は、その対価としてその魂の1部を貰い、代替品に差し替えてます。」
「な、依頼人は別だったか……」
「なぜ協力した！」
「面白いでしょう？理由はただそれだけです。ええ、あなた方みたいな“雑種“どもで遊ぶのって、凄く楽しいですから……ククク」
「！クソッ！やれ伍長！」
「へいへい！」
ヌウセーン伍長が瞬時にライフルを構えて射撃し、又ウサナ人を弾丸が貫いた。だが……
「ククク…乱暴なのは嫌いではありませんよ」
「幻影の類か」
弾丸が貫通したあとは、文字通り穴か開いていたのだが、その幻影は微動だにしないのだ。
「ご明察。それでは私はお暇を。」
「ま、待て貴様！」
「まあ、連中にも飽きたところですし、土産に連中の情報をプレゼントしましょう。それではさらば。ククク……ハハハハハハ！！」
幻影はそう言うと、不敵に笑いながら消えていった。 ぐらり、と建物が大きく揺れたかと思うと、視界は暗転した。
「な、今度は何だ！」
視界が再び見えるようになると、そこは月明かりに照らされた小さな池であり、一行とジールは全員無事だったが、その池の中に立ってずぶ濡れになっていた。
「くそ、又ウサナ人め。次会った時は許さないぞ。」
「助かった……のよね？正直恐怖で立てないかも……」
リナはルテアに肩を貸して、立つのを手伝ってやった。
「ところでリナ、その手に持っている紙は何かしら… 」
「おや、これは……例の情報とかいうものらしいですね。癪だが、例の組織の本部の場所らしいです。」
「とりあえず、一旦本部に戻りましょう」
「ああ、ここを立ち去った方が良さそうだ。」
こうして一行の13人は来た道を戻って雑木林から脱出し、連隊本部に帰還した頃にはもう夜明け前だったが、ともかく全員無事だったのは幸運だ。
第五部
皮肉にもその後は恐ろしいほどトントン拍子に進んだ。証拠を集めたあと、リオーヤラ少尉の部隊が情報にあった組織の本部に突入し、十数人の構成員と、首謀者まで捕らえてしまったのだ。 彼らは証拠とともに警察に突き出され、見事に現行犯逮捕、そして起訴となった。
「ところでリナ、尻尾が二又になったのは一瞬だったのに、どうして気付いたのかしら？」
「ああ、それはルテアの言葉を信じたからですね。要するにハッタリだったわけです」
「もし間違ってたらどうするつもりだったのかしら」
「まあ、ごまかしますかね」
リナは一見すると理性的で合理的な人物に見えるが、実際には今回のような博打打ちのような行動に出ることも多い。その結果として成功することは多いが、以前には何度か失敗したこともある。
「ところで、例の組織の構成員たちはどうなるのかしら……」
「裁判官をやっている友人によれば、連中には情状酌量の余地がある上に、国民感情も考慮して、無罪ということはないだろうが、重罪にはならないだろう、とのことですよ。」
「これで重罪になったら、少し後味悪かったわね」
警察との間でいくつかの事務作業を完了させた後、リナとルテアは、繁華街の飲み屋で祝杯をあげることにした。 繁華街はソクレレ(マウサナ人用の水タバコ)の匂いが強い。
「まったく又ウサナ人ってやつはむかつく。連中にとって、契約だの約束だのは娯楽のための方弁にすぎんのだ！」
「飽きたら捨てられるなんてまるで玩具だね……あとリナ、酒は程々に…」
マウサナの酒は度数が低いのだが、マウサナ人の中でも酔いやすい部類に入るリナは一杯でもうベロンベロンになってしまい、敬語も忘れている。
「おいルテア、お前騙されやすいからなぁ、妖怪には気をつけるんだぞ〜」
「分かってるわよ！ああもう、そのお酒没収！」
「ええ〜」
完全にいつもと逆転している。ルテアは、たまにはこうゆうのもいいかと思って、もう少しこれを楽しむこととした。
さて、このお話はここまで。
「ところでリナ、尻尾が二又になったのは一瞬だったのに、どうして気付いたのかしら？」
「ああ、それはルテアの言葉を信じたからですね。要するにハッタリだったわけです」
「もし間違ってたらどうするつもりだったのかしら」
「まあ、ごまかしますかね」
リナは一見すると理性的で合理的な人物に見えるが、実際には今回のような博打打ちのような行動に出ることも多い。その結果として成功することは多いが、以前には何度か失敗したこともある。
「ところで、例の組織の構成員たちはどうなるのかしら……」
「裁判官をやっている友人によれば、連中には情状酌量の余地がある上に、国民感情も考慮して、無罪ということはないだろうが、重罪にはならないだろう、とのことですよ。」
「これで重罪になったら、少し後味悪かったわね」
警察との間でいくつかの事務作業を完了させた後、リナとルテアは、繁華街の飲み屋で祝杯をあげることにした。 繁華街はソクレレ(マウサナ人用の水タバコ)の匂いが強い。
「まったく又ウサナ人ってやつはむかつく。連中にとって、契約だの約束だのは娯楽のための方弁にすぎんのだ！」
「飽きたら捨てられるなんてまるで玩具だね……あとリナ、酒は程々に…」
マウサナの酒は度数が低いのだが、マウサナ人の中でも酔いやすい部類に入るリナは一杯でもうベロンベロンになってしまい、敬語も忘れている。
「おいルテア、お前騙されやすいからなぁ、妖怪には気をつけるんだぞ〜」
「分かってるわよ！ああもう、そのお酒没収！」
「ええ〜」
完全にいつもと逆転している。ルテアは、たまにはこうゆうのもいいかと思って、もう少しこれを楽しむこととした。
さて、このお話はここまで。
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