キルレイツが敵将だと知った
ラディアは、着陣した翌日にたった一人で敵陣へと向かう。
それを待ち構えるかのように、こちらも他の将の制止を聞かずに単身姿を現す
キルレイツ。
バイアラスをはじめとする両軍の諸将が見守る中、二人は一騎討ちを繰り広げた。
戦いながらも
キルレイツに、過去の誤解を解こうとする
ラディアだが、もはや聞く耳を持たない復讐鬼と化した
キルレイツは、
ラディアを一方的に押し込む。
このとき
バイアラスが見かねて加勢にくるが、それを
ラディアは制し、やむを得ず自らの剣だけを
ラディアに投げ渡し、
ラディアはこれを受け取り、咄嗟に二刀流の構えを見せた。
これにより両者の剣戟は互角となるが、その瞬間を狙って伏せていた
メスリウ、
ソプラナ部隊が出陣し、砦に総攻撃を仕掛ける。
これは、開戦前に名乗りをあげての一騎討ちの最中は、部隊を動かさないというこの時代の暗黙のルール(開戦後に偶発的におきた場合は含まれない)を無視しての不意打ちであり、
ラディアの知っている
キルレイツは、その様な行動をとる男ではなかった。
だが、
キルレイツは、それをあえて破ってまで、
ノーウェイ砦に部隊を仕向ける。
ラディアの性格からして、自分を信用しきっているだろうと思っての不意打ちであった。
さすがの
バイアラスも、不意打ちで混乱を起こした兵を統率することはできず、砦への侵入を許した時点で
ラディアを連れて撤退する。
ノーウェイ砦は、そこまで重要拠点という訳でもなく、動員された兵数も国境の小競り合いと言ってもいい規模であったが、それでも
ラディアと
バイアラスという当代の名将を二人も揃えながら、
ロードレア国軍は完敗を喫した。
しかし、このままで終わる二人ではなかった。
砦は奪われたものの、すぐさま反撃作戦に出て、全軍撤退したと見せかけて伏せさせ、国境を侵入しようとする
メスリウ部隊を撃退、
キルレイツに手柄を総取りされることを恐れた彼女は、必要以上の兵力を率いていた為、
ソプラナの援護でようやく撤退するが、この壊滅は
リューグ国軍にとって痛手となった。
現在の戦力ではこれ以上の深入りは難しいと考えた
キルレイツは、守備隊だけを残して本国へ引き上げた。
なお、この戦いでは、
ラディアの同郷で共に滅亡する
アゾル国から
ロードレア国に亡命し、彼女に憧れ念願かなって副将の1人となっていた
ヴィムウィークが参戦していたが、この戦いで負傷し、彼女は将軍職を辞することとなる。