アーズ国第4艦隊は本来防衛を専門とし、長い間国境に配備された為、戦闘に参加する回数自体がそれほど多くはなかった。
だが、この艦隊の指揮官であり
神器衆の一人
トミラスは、将来を見据えて自分の地盤を固める為、手柄を望んでいた。
隣国である
モルト国は
アトレティア国陣営ではあったが、大部隊も優秀な指揮官も存在せず、
アーズ国、
ビーストバリア国に関わる激戦区に存在しながら、これまで何もしないことで「見逃されていた」形でこの戦乱を生き延びていた。
トミラスは、この
モルト国を攻略し、自身の地盤とするべく、独断で出陣を決意した。
トミラスは、指揮官としては
神器衆でも指折りの名将であり、同時に優れた戦士であった。
しかし、遠縁とはいえ王位の血を引き継いでいる為、実力ではなく家柄で現在の地位を得たと誤解している者は多かった。
留守部隊は、本来遠征軍と同じくらいの実力をもっているからこそ勤まる重要な任務であるが、同僚の
サウラ達が華々しい手柄を上げる中、彼が本来の実力をアピールする機会を失い続けた事も彼の不満として蓄積されていた。
そんな状況で、敵将とはいえ、
ロザンドが王を名乗ったという情報は、彼を違う方向で奮い立たせていた。