深く暗い空間の中に、一人の少女が立っていた。
 華奢な体つきのその少女は、カールをした青い長髪を揺らし、足元を見つめた。
「創造主に否定された人……。フラッシュシステムに適正を見せられず、二人だけのテレパスと精神感応能力しか持たなかったカテゴリーF」
 足元には、半身のない、やや面長の黒髪の男。
 悲しげ、というにはいささか感情の足りない翳った表情で呟く。
「失敗作と名付けられ、だから主と世界を否定して……世界に否定された人達」
 その脇には、丁度真逆の半身を失った紺の髪の男が転がっている。
「……デュミナス様」
 一つ呟き、
「……彼らを“肯定”する過ちを、お許し下さい」
 暗闇の中で、身体を落とした。
 闇の中に水音が響く。ひどくぬめった、粘度のある音。
『オ、オルバよ……』
『な、なんだい兄さん』
 カテゴリーF。兄シャギア=フロストは、はっきりしない視界の中で弟オルバ=フロストへとテレパシー通信を送る。
『身体の自由が利かない。そちらから私が見えるか』
『見えるよ兄さん。……身体の半分がなくなってる。それに――』
 通信の途中で“彼女”と目が合った。
「あとで、してあげますからね」
 そう少女は言うと、その声を放った口でオルバの男茎を含んだ。
『ぅおう! オ、オルバよ。何だこの私の愛馬を這い回る凶暴な感覚は!』
『僕も感じてるよ兄さん! こ、これは噂に聞くフェ、フェラチオじゃないかな』
「本当かオルバ!!」
 声が出た。しかしそれはすぐに闇に吸収される。
「ようやく覚醒しましたね」
 笑みとも悲哀ともとれる表情で、少女が語りかける。
「デスピニス……」
「…………」
 名を呼ばれ、そして無言を返した。
「いくつか聞きたい事がある」
「これは私の、自慰行為です」
 言いながら服を着たままシャギアの愛馬にまたがった。
『オルバ! おおおおおオルバ!』
『落ち着いて兄さん!』
 そして側らのオルバの股間へと手を伸ばし、その小さな手で彼の陰棒を握る。
『兄さん! 僕のハーミットクラブが!! にいさーん!!』
『スペルが違うぞ、オルバよ!』
 小さく寂しそうに笑い。
 同時に動かしはじめた。
「おおっおおっ」
「うっうあっああっ」
 腰と手。グラインドは連動し、一回の腰の動きで、手は一回竿を上下した。
 その感覚は、二人の間で共有される。
 布と手。さらさらした感触としっとりとした感触が同時に兄弟を襲う。
『オルバ! もう我慢できん!』
『僕もだよ! 僕もだよ兄さん!!』
 それほどの回数もなく兄弟が達する。が、それより瞬間早く握られる感触が消えていた。
『あっ、ああっ兄さん!!』
 オルバの竿は支えなしにそそり立ってヒクヒクと痙攣を繰り返す。それだけだ。
『おぉ……ふぅ、オルバよ。ああ、オルバよ』
 対照的に。シャギアの愛馬はデスピニスの下で痙攣し、彼女の下着を白く汚していた。
「あれま、お兄ちゃんのほうはイっちゃったよ」
「ティス!?」
 デスピニスが声を上げると、そこには彼女の手を掴んだティスが立っていた。
「あたいは別に心配してきたわけじゃないんだからね」
 そう言ってオルバの肛門の辺りを裸足で揉むように踏みつけ始めた。うめき声が響く。が、それでもオルバは達せず、また二人も気にせず会話を進める。
「じゃあ……」
「同情でもないよ」
 すぐにピニスの股間に手をやり、ぐちゅぐちゅとそこを揉みしだきはじめた。
「やんっ。ティス……」
「こんなグチョネバなパンツ脱いじゃえば?」
 手を開いたままで離せば糸を引き、見ればゼリー状の黄色い物体が闇の中で輝いていた。
「うん……」
 言われるままピニスは下着を下ろす。ティスはその様子を見ながら手に付いたゼリーを嘗めとっていた。そしてピニスが服に手をかけたとき。
「待って。服はそのまま」
「……どうして」
「その方が、萌えでしょ?」
 ね、と言って自分も下着だけを脱ぎ、それをオルバの竿に乗せてやる。
『に、兄さん! これは拷問かい!? 兄さん!!』
『ふっ、オルバよ。なかなか心地よい刺激ではないか』
 一度出したジャギアの愛馬はまだ半勃ち程度。まだ余裕がある。
「んふふー」
 ティスは笑みを浮かべ。
「男の人ってココだけの刺激じゃ射精はできないんでしょ?」
 オルバの肛門へ舌を這わせた。
「ぅあ……」
 有無を言わせずティスはそれを中へと押し込む。
 生暖かい軟体がぬるりと関を突破して、身体の裏側を舌先で刺激される。
「はっ……はぁぁ……」
 乱暴に、奥へ奥へとティスは舌を進めるが、反応はあまり変わらず甘く悶えるようなだけ。そこへ。
「そのもう少し奥だな」
 シャギアが助言した。彼は健在の右手でピニスの頭を撫でている。そのピニスは半勃ちの愛馬をまた奮い立たせようと舌で舐りまわしていた。
「ほほ?」
 舌を突き入れたままのティスはさらに奥へと舌を入れようとする。
「まだ先だ」
「ほはらほのへふ?」
「まだまだだな」
 しかしこれ以上舌は進まない。
「――ならっ」
 菊座から口を離し、自分の指二本に唾液をたっぷりまぶして。
「これでどうだっ!!」
 ぐりっ、と先ほどまで舌が入っていた場所に指が侵入した。
「あっ、ああっ!?」
「そうだ、そのもう少し先――!」
 丁度男性器の裏側。その辺りに手ごたえを感じ、ティスは一気に指を暴れさせ始める。
「あっ、あっアーッ!?」
 びくりびくり。オルバの性器が痙攣を始める。しかしそれはいつの間にか萎れ、ティスの下着を汚すことも無かった。
『ドライオーガズムなんて初めてだよ、兄さん』
『ああ、良かったな、オルバよ』
 惚けた意識の中で二人は一応の満足を得る。
 そして。
「んじゃ、ここからが」
「……“本番”です」
 悲しそうに、寂しそうに。二人の少女が蠢く。
 オルバの肉茎の上にティスは自分の股間の割れ目をあてがった。
「我慢できたご褒美。きんもちいいよぉ?」
 言うと同時、背後にデスピニスが回る。
「手伝ってあげます……」
 言いながら中指と薬指でオルバの亀頭を挟み、手のひらでティスの陰部を包みながら親指の付け根を陰核へと押し付ける。
「ちょ――ンッ」
 逆の手の指を口にねじりこまれ、ティスはそれを舌で愛撫。その間に、ゆっくりとティスの陰唇は押し広げられる。
「ぅうん……」
 唇が開き奥への入り口にあてがわれ、二〜三度前後する。その刺激にティスは腰を逃がすが、後ろからピニスに押さえつけられて上手く逃げられない。股間から伝わる甘い疼きに、ティスは自らの服を掻き寄せるようにたくし上げた。
「ほら、入りますよ……」
「くぅ……んん……あっ」
 陰唇を押し分け、亀頭が膣の中へと進入した。同時ピニスは親指の付け根でティスの肉芽を刺激し出す。
「ちょ、やぁ! あはぁ!」
 膝立ちになってゆっくり腰を下ろしていたが、突然の刺激に腰をうねらせる。その動きに亀頭が暴れ、鈴口が膣の内部をぐるりぐるりと嘗め回した。
「ダメダメ。もうちょっとゆっくり――!」
「したければご自由に」
 言いながらピニスは、ティスの耳をはみ、片手で胸をまさぐり、残りの手で結合部と陰核を激しく刺激しはじめた。
「ダメダメダメ! あっ――! あぅん……」
 がくがくと膝が振るえて腰が落ちる。膣が収縮し、包皮を剥くように強い圧迫を与えながら竿を飲み込んだ。
「奥まで届いてる? 私も……」
 言うと、シャギアもピニスの後ろについて立派な愛馬を突き入れた。
「はぁん!」
 中腰の状態のままティスに覆いかぶさり、耳元で喘ぐ。
「もっと、突いて下さいっ。激しくっ」
「だめっ、今揺すられたら――ッ」
 ピニスの身体が揺れる。彼女は切なそうに後ろからティスを抱きしめ、ティスもそれにつられて腰を前後しだした。
「っめ! ダメぇ! お腹の裏ゴリゴリ――ッおっきくなってるよぉ!」
「激しく――激しく――ッ!」
 しがみつき、揺すられ、汗が落ちる。
「熱い! 熱いよ! イっちゃ――あ――ああっ出てる……奥で……出て……」
「あうん。ダメ。まだ。抜いちゃ。これからだよ」
「待ってよ。そんな――んっ」
 ピニスに上から押さえつけられるようにされてティスは腰を浮かせることが出来ない。そこへ。
「うわっ、っは!? っ!? んっ」
 下からの力強いピストン運動が始まった。
「そんっなっ。身体っ、浮いちゃう!? っに。それにっ」
 中で出されたばかりだというのに、その硬さは少しも衰えていない。
「もっもう、なんどっ出してもっ硬いままですっ――はぁぁん」
 後ろから激しく突かれながらピニスはティスにしがみ付き、揺れる中で唇を求める。
「むっ無理っ。はあっ、は……んくっ……んはぁ! 中で、ぐちゅぐちゅが、掻きまわってるよぉ!」
「私もっ、でっかいのがっ、はああああん!」
 ピニスの身体が痙攣すると、大きく二度ほど腰を打ちつけ、一度引き抜く。ティスも一度ピストンを止められ膣に入れたまま向きを変えられた。
 向かい合ったティスは脱力するピニスの手をとりキス。胸もあばらの辺りまで押し付けて――。
「――っはぁ!」
 そこでまたシャギアのモノがピニスの中へと進入する。二人は向かい合って抱き合い、揺すられる。
「んっんっんんんっ!!」
「ふむっ、んあっあっああんっ!!」
 一方は強く。激しく。一方は小刻みにテンポ良く。
「ふぁ、あっあっああんっ!」「あああああああっあっあっああん!」
 そして。
「あっあっあああああ」「ああああああああッ」
 強く抱き合い。

『――っああッ!!』

 同時に昇りつめた。

「結局、デスアーミーにもならなかったね、あの兄弟」
 つまらなそうにティスが言う。その後、何度も揺られ抱かれていたため、服も股間もぐちゃぐちゃだ。
「…………」
 デスピニスは布で身体の液体を拭いながら、それに無言を返す。
「デスピニスの蘇生術でも生き返ることが出来ないって、よっぽどこの世界に嫌われてたんだ」
「……うん」
 頷く。
「だから」
 うん? とティスが問い返す。
「私たちも……」
 全てを否定された者。“過ち”から生まれた者。
 それらも、世界から排除されるのか。
「だから、“肯定”した? たった一つでも一人でも認められれば、世界から許してもらえるって」
 頷く。
 それを見てティスは苦笑いを返した。
「アタイは勝手に生きて……生き抜くけどさ。肯定されてるよ。デスピニスは」
「?」
 笑う。
「デュミナス様に。それに、アタイも、ラリアーも、デスピニスのこと大好きだよ」
 アンタもでしょ? と小突いた。
 ピニスも笑う。
「……うん」
 そうだ。
 私は肯定されている。
 だから、大丈夫。

「私も、みんなのことが大好き」

 二人だけで肯定し合ってた彼らより、ほんの少しだけ広い世界に生きているのだから。

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