蛇に睨まれた蛙というのは、こういう状況を言うのかもしれない。
「あの、ですね、葵さん」
「何よ」
「何故僕は葵さんの部屋に監禁されているんでしょう?」
「鍵を閉めてるだけで、別に手足縛ってる訳じゃないでしょ」
 そういう問題かなぁ、とアーニーは力無く笑う。怒るなり力ずくで出て行くなり方法はあるのだろうが、そんな気力は出て来なかった。
(下手に動けば、何をされるのか解らないな……)
 話がある――そう呼び出されてのこのこと部屋に入ったのが、運の尽きだった。もう少し警戒すべきだったのだろうが、一緒に戦う仲間同士で滅多な事を想像する方が無理な話だろう。
「話って、一体何ですか?」
 飽くまでも自分は話をしに来ただけだ。そのスタンスを示すが、葵は鼻で笑う。
「話だけで済むと思う?」
 肯定も否定も出来ない。
 じりじりと葵がアーニーに迫る。
「あ、葵さん?」
 後ずさった足が、ベッドの端に引っ掛かった。そのままベッドに倒れ込む。
 慌てて身体を起こそうとするが、葵の腕がアーニーを押さえ付けていた。
「葵、さん?」
 赤みがかった髪が、アーニーの顔をくすぐる。
「あなた、まだサヤとは何もしてないんでしょ?」
「へ?」
「サヤの事好きなら、さっさとモノにしちゃえば良いのに」
「そっ、そんな事出来る訳ないですよ! サヤさんは僕の大切なパートナーです!」
「だから、何もしないって訳?」
 ニヤニヤと笑いながら、葵が顔を近付ける。押し退けようとするが、上手くいかない。
「葵さ……ッ」
 やめてくれ、の言葉は葵の唇で封じられた。愕然とするアーニーの口内を、葵はじっくりとなぶる。
「ん……。もしかして、キスも初めて?」
「そういう訳じゃ、ありませんけど……」
「ふぅん。その割には、ウブな反応ね」
 葵は意地悪く笑った。
「どうしてこんな事を?」
「別に、理由なんて無いわ。強いて言えば、面白そうだからよ」
「そんな理由で、僕を――ん」
 貪るようなキスが、アーニーを押さえ付ける。唇が離れる頃には、抵抗する意志はもう殆ど残っていなかった。
「葵さん、これ以上の事は……」
 最後の気力を振り絞るが、葵は聞かない。くすりと笑って、アーニーの服に手を掛ける。
「やっぱりあなた、真面目よね。少しは気楽に考えなさいよ。サヤとの前に練習出来るとかさ」
「無茶な事言わないでください――ッ!」
「……へぇ、やっぱり軍人さんだけあって、良い身体してるのね」
 どこを触ってそんな評価になるのか――漏れそうになる声を抑えながらアーニーは思う。
「ほ、本当にマズイですって! う、く……!」
「身体は正直みたいよ? ほら、あなたも素直になっちゃいなさいよ」
 アーニーの目の前で葵が服を落とし、均整の取れた肢体が露わになっていった。

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