「うおっ!この唐揚げうまっ!」
  「そうですか?一鷹さんの好みに合わせて作ってみたんですけど…」
  「そうなのか?マジうまいよ!レモンの風味が利いてて最高!!」
  「お口に合ったみたいで良かったです」
  俺はアリスの作ってくれた唐揚げを夢中で頬張り、アリスはそれを嬉しそうに見つめている。
  俺、南雲一鷹は両親がおらず、一人暮らしをしている。
  そのため、アリスがよくこうやって差し入れをもってきてくれるのだ。
  「そういや、博士と悠兄さんは留守なんだろ?ここにいて大丈夫なのか?」
  「はい。今はハルノが留守番してくれているので、まったく問題ありません!」
  「そっか、なら安心だな。」
  他愛もない話を続けていると、突然、
  「…………」
  アリスが無言になり、うつむき始めた。
  「…どうした?アリス。」
  気になって聞いてみると、アリスはゆっくり顔を上げた
  「あ…あの…私、一鷹さんに聞きたいことがあるんです…」
  「聞きたいこと?」
  「はい…あの…」

  「い、一鷹さんって、どんな女性が好みなんですか?」

  「…へ?」
  突然のアリスからの質問に驚く俺。なんでそんな事を聞くんだ?
  「な、なんだよ急に…」
  「え、えと…その…とにかく教えてください!!」
  「わ、わかったよ…好みのタイプか…」
  俺はとりあえず考え、そして、ザフトに所属していたあの人の顔が浮かんだ。
  「ル…ルナマリアさんみたいな人が…タイプかな?」
  「そ、そうですか…」
  俺の答えを聞いたアリスはまたうつむいてしまった。どうしたんだ?いつものアリスっぽくないぞ?そう思った俺はまたアリスに聞いてみる。
  「ほ、本当にどうしたんだ?俺の好みのタイプなんか聞くなんて…」
  「…です…か?」
  「え?」
  アリスの発したか細い声に聞き返してみるとアリスは顔をあげまっすぐこっちを見据え、叫んだ。

  「私じゃ、ダメなんですか!?」

  俺は一瞬アリスが何を言っているのかわからなかった。
  「今…なんて…?」
  「だから…私じゃ…一鷹さんの好みには合いませんか?」
  アリスの突然の告白に俺は戸惑うしかなかった。とりあえず再度確認してみる。
  「えーと…それはつまり、アリスは俺のことが…好きって事か…?」
  「はい!!」
  即答するアリス。俺はどうしていいかわからず固まってしまった。
  確かにアリスはかわいい。御崎中学にいたら、きっとクラスのマドンナ的存在になる事は間違いない。だが…
  「えーと…その…あの…」
  言葉が出てこない俺にアリスは、
  「もしかして、私がアンドロイドだから戸惑っているんですか?大丈夫ですよ!愛の前には人間とアンドロイドなど関係ありません!だから、まったく問題ありません!!」
  「……」
  アリスのポジティブ発言に再度言葉を失う俺。するとアリスは、
  「そうですよね…」
  と急に悲しそうな顔になった
  「私なんか…一鷹さんの好みには合いませんよね…私はドジも多いし、天然だし、ルナマリアさんみたいに大人っぽくもない…それどころか子供っぽいですし…」
  「だ、誰もそんな事は言ってないだろ!」
  自分を責め始めたアリスに俺は思わず口が出てしまった
  「そりゃたしかにアリスはドジも多いし、天然だし、子供っぽいかもしれないけど、俺はそんなアリスが好きなんだ!!ちょっとドジだけど優しい、そんなお前が好きなんだ!!もっと自信持てよ!!」
  「一鷹さん…」
  俺はアリスを元気づけるために言ったのだが…それが間違いだった。
  アリスは顔を赤らめながら俺の側へと寄ってくる。
  「私も…そんな一鷹さんが、大好きです!」
  そう言ってアリスは俺に抱きついてきた。
  「……!!!」
  異性と付き合った経験のない俺にはアリスのハグはものすごく刺激的だった。しかも…アリスの胸が俺に当たっており、俺の股間の主に血が集まる場所が反応している。
  (博士…精巧に作りすぎだろ…)
  このままでは本当にやばい。なんとか俺は理性を保つためにアリスに抱きつかれながらも話題を振ってみた。

  「あ、あのさ、アリスはなんで俺なんかを好きになったんだ?」
  「ふふふ…聞きたいですか?」
  と、アリスは抱きついたまま俺の耳元へとささやきかける。うっ…耳に息が…
  「私、ずっとラッシュバードの中で一鷹さんの側にいて一緒に戦ってましたよね。
  そうやって一鷹さんと一緒にいる内になんだか気になる存在になっていたんです。
  それに私が道具扱いされた時も一鷹さんは、アリスは道具なんかじゃない、俺の家族だって言ってくれた…
  それから私は一鷹さんの事を思うと、なんだか体が熱くなって…これが恋っていうのかなって…」
  「アリス…」
  アリスの好意の理由を聞いた俺は何かを感じていた。アリスは確かにアンドロイドだ。でも、一人の女の子とまったく変わらない。俺はアリスがだんだん愛おしく思っていた。
  そのときだった。何かが唇にあたる感触がしたのだ
  「…!!!」
  そう…アリスが自分の唇を俺の唇に当てる行為…いわゆるキスだった。
  アリスの不意打ちに言葉を失う俺。そしてアリスは唇を離す。
  「確かに私はアンドロイドです。でも…こういう事はできるんですよ?」
  ふふっと笑うアリス。その笑顔はいつものアリスに比べてとても艶やかだった。
  (本当に…目の前にいるのはアリスなのか?)
  いつもと違うアリスに心を奪われてしまった俺。後はアリスの、なすがままだった。


  「じゃあ、私、そろそろ帰りますね。博士たちが帰ってくる頃ですから…」
  「…ああ」
  「じゃあ、また明日。」
  バタン、と扉が閉まる音とともに、アリスは帰って行った
  「…フゥ」
  結局あの後アリスは気が済むまで俺にキスを続けた。さっきのような浅いキスから、ディープ的な物まで、何回も何回も。
  (まさかアリスにあんなことされるなんて…でも…アリスの唇…柔らかかったな…)
  俺はその感触を思い出しながら明後日の方向を見つめていたのだった。

  終

編集にはIDが必要です