ここはSRW学園
校舎から少し離れた道場で
「おぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!」
「やぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
剣道部部員全員が見守る中、道場の中心で裂帛の気合いを放つ二人
カチカチと剣先が触れあい、気合いが途切れると共に紺の胴着を着た大柄な男が床を踏む音が響く
「おめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんんん!!!」
「――っ!!」
対する白の胴着、相手と比べるとまるで弁慶と牛若丸程の差があるが、動じもせずに彼も又、足を踏み出す
額から白い稲妻が出てた気もしないでもない
カンッ!
白の面に向かって振り下ろされた竹刀が空を跳ねた――
「めぇぇぇぇぇぇぇぇんっっ!!」
男の声と共に小気味よい音が道場に響き、キュッと道場の床を擦る音が事の終焉を告げる
「一本!」
主審をしていた青年――ブリットがまだ幼さが残る声で白の勝利を宣言した
「勝負あり」
開始線に戻った二人に、その胴着と同じ白の旗を揚げながらブリットは声を張る
竹刀を収め試合線から出ると、勝利者は素早く面を外し、向かい側の大男に走り寄る
「ありがとうございました!」
「やれやれ、ウィンには勝てん」
「ゼンガー先輩は柔道や空手もやってるから癖が出るんですよ」
端正な顔を崩しもせずに言うから、確かにその通りだと思えるがフォローにはなってないなと、ブリットは思った
「今の、面落とし面か?」
「そーなんですよ!先輩の必殺技!一刀流の極意!」
まるで自分の事のように自慢するブリットに苦笑しながら、大したモンだとゼンガーは誉める
「いえ……ロフに勝つためにはこれくらいは必要ですから」
そう言うウィンの顔は引き締まり、同じ男でも惚れ惚れするほど美しい

「じゃあ先輩、次お願いします!俺もロフと同じ上段だし」
「おいおい、せっかくOBのゼンガー先輩が来てるんだぞ?それに上段って言ったってお前はまだ三ヶげ………」
ブリットを窘め始めたウィンは、彼の肩の先を見て刹那固まり、次には行動を起こした
ダッ――
ガラッ――
ビョーン――
「な……」
ゼンガーさんもビックリのウィン君の行動を記述すると
すぐさま跳ね上がり(ダッ)窓を開け(ガラッ)飛び降りた(ビョーン)
「ここ二階だぞ」
一階は柔道場なのだ
「あ〜っと……この時間は……」
うんうんと頷く部員達を代表してブリットがゼンガーに説明する
「いや、説明するより、もう少し待てば判る……かな」
ポリポリと頬をかくブリットに、ゼンガーはただでさえ気むずかしい顔をさらに強ばらせる
「ウィ〜〜〜〜ン!!!ミルフィーユ作ったんですぅ〜食べてくださ〜〜い!!!」
核弾頭
「……という訳なんです」
「そうか」
「毎日この時間になるとグレース先輩が料理研究会でつくった料理を持ってきてくれるんですよ」
もはやこの剣道部においては恒例行事。汗臭い剣道場に美しい華がやってくるということで男子部員には密かに人気
さらにお腹ペコペコな状態に出来たて料理で色気より食い気ってな訳で通常の三倍人気
「あれ〜ウィンいないんですかーせっかくウィンの為に作ったのに〜」
「さっきまでは居たんだがな」
腕組みをしながらウィンの置いていった手ぬぐいを差すゼンガー。無駄に貫禄
「くんくん……本当ですぅ〜ウィンの匂いがしますね〜」
ちょっと待ちたまえ、花も恥じらううら若き乙女よ
「だろう」
オヤジ……

「う〜しょうがないですぅ〜。ウィンの分はこうやって……取って置いてぇ〜
 皆さん〜残りの分をどうぞ〜。いつもわvたvしvのウィンがお世話になっていま〜すv」
「「「「「「「うぉぉぉ〜〜〜〜!!!」」」」」」」
雄叫び――震度3
「それじゃあ、いただきます!グレース先輩!!」
「めしあがれ〜」
ニコニコと差し出すグレースに、ブリットは少し頬が赤くなるのを感じた
(ウィン先輩も、な〜んで逃げるんだろうな〜。グレース先輩、綺麗だし、料理は上手だし、頭だって悪くないし……
 そりゃ、少し天然っていうか……でも、少しヌケてるくらいが、こう、斜め後ろから見守ってやりたいっていうか……
 っていうか、何時もは隠れる位なのに、なんで今日に限って外に脱出を?)
などと思いながらミルフィーユを口に運ぶブリット
――バタッ。。。
倒れた。
同じく、ミルフィーユを食べた剣道部員が死屍累々の惨劇を道場内に演出する
「うまいな」
「ありがとうございま〜すぅ〜」
例外一名。その名はゼンガー=ゾンボルト、鉄の胃袋、鉄の舌
っていうか、グレース君、ゼンガー以外は無視ですか?
「そうか……ウィン先輩はこの事態を読んで……流石はニュータイプ……」
「残念だけどニュータイプはエスパーじゃないわ!ウィンがこの事態を読んだのは推理!そして推理といえばこの私!」
ウィンが出ていった窓から参上、我らが灰色の頭脳細胞、ミーナ・ライクリング!!
「そう、読者諸君思い出して頂戴。本文開始から31行目にウィンが見たものを!」
言われて思い出し、動かない体に鞭うって何とか首を動かしたブリット
――その先には!!
「け、煙?」
「そうよ!煙!そしてあの教室は只今料理研究会が使っている調理室!そしてあんなドス黒い煙が出ている以上、料理は明らかに……」
「……失敗」
「その通り!!」
ブリットは刻の涙を見る――

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