何でこんな事になったんだ…? 

俺は目の前にある焚き火を見ながら、自分に問い質していた。
向い方ではリムが啜り泣きをしている。
…俺は一人、友人を失ってしまった。
その友の名は…ジョシュア・ラドグリフ。
さっきから焚き火の向い側で啜り泣きしている、二重人格のクリアーナ・リムスカヤの義兄である。

アイスランド。
そこにルイーナの総本部があると、ジョシュアは言った。
これが今の全ての始まりであった。
ジョシュアは予知能力とかいった特別な能力があるわけではない。
何故、わかったのか。
奴はルイーナの気配が感じられる、と言う。
確かに、奴はこれまでルイーナの増援を何度も読み取っている。
それは、俺がよく知っている事だ。
さらに奴の話は続く。南極の遺跡についての事、奴の親父の研究…。
全ては南極で起こった事故が、ルイーナを生み出した原因だと、奴は推測していた。
俺は別に信じた訳ではなかったが、やつが言うのなら事実だろう。
…世の中不思議なものだな、と俺は今更ながら思ってしまった。
俺らブルー・スウェアにとって、ルイーナは厄介な勢力の一つであった。災厄の芽は、早めに摘み採る方が良い。
それに今の所、敵対しているザンスカール帝国とは休戦協定が結ばれている。
しかし、これはあくまで一時的なものであった。
あの、ザンスカール帝国の事だ。破られるのは目に見えている。
だが、気にしていられない。やるのなら今だ。

さらに、ジョッシュが示した場所がルイーナの総本部であると確認された。
早めに総本部を叩くのが得策という事になり、数時間後に総本部を攻撃する事が決定した。
その話し合いの後、俺は大佐から受け継いだ機体(大佐のお下がりとか言った奴は前にでろ。(怒)、サザビーの整備を行なっていた。
その時にジョシュアに「なぁ、ちょっといいか?」と話し掛けられた。
奴は真剣な眼差しで俺を見ていた。何かあるのか…?だが。
「…何だ?用件があるならさっさと言え。」
と、俺はいつもの用に言った。
すると、いきなりこう言われた。
「もし、俺に何かあったら…リムを頼む。」と。
俺はびっくりしたが、あえて表情に出さず。
「おいおい、いきなり何の冗談だ?」と聞こうとした。、
が、奴は新型機、ジェアン・シュバリアー(以下、空騎士)へ逃げるように走っていった。
「…?」と思ったが、その時は、メカニックのアストナージとミノスフキークラフト装備の相談があった為、あまり気にしてはいられなかった。
そして数時間後、艦内に警音が鳴り響いた。
…出撃だ。ついに、ルイーナ総本部の攻撃が、始まった。
苦しい戦いが予想されたが、出口付近で待ち構えていた敵は楽に撃破でき、侵入もたやすく出来た。
…が、これは敵の罠だった。

基地内部に俺たちを侵入させ、その基地(?)を破棄、そして俺らを閉じこめ、爆破する…シンプルな作戦だが、罠としては結構有効なモノだ。
しかも、後10分で爆発する、と言う事だった。
俺らはすぐに脱出しようとした。
が、そうは世の中、そう思い通りにはいかない。
ルイーナに、足止めをくらってしまった。
俺たちはすぐに迎撃態勢に入った。

狭い空間の中、少々苦戦を強いられたが爆破する時間までに何とかルイーナを撃破。俺らは急いでここを脱出した。
そして、ブルー・スウェア旗艦「ラー・カイアム」に帰還しようとした。(ここが爆発する事は連絡済みだ)
俺はミノスフキークラフト装備サザビーを動かしながら、他の帰還する機体を確認した。(空を飛べるのは、いいものだな…。)
多少、損壊している機体もあったが潜入した全機は無事である事は間違えない…。が、俺はそこで重要な事に気がついた。
……ジョシュアの機体が見当たらん。
奴の空騎士は俺のサザビーよりは足が早いはずだ。
俺は慌ててジョシュアの機体に通信を入れた。
が、応答ナシだった。あの言葉の意味は…まさか…!
と、俺は悟った。
あの時の言葉は単なる冗談ではなく…今の事態なると悟り、言った言葉だったのだ。
…冗談ではない!
俺は奴に対し、怒りが込み上げたが、爆発の時間が迫っていた。
それ所ではなかった。

その時だ。
横に巨大なものが横切った。
まだ敵がいたのか…!俺は思わず迎撃態勢に入ろうとした。
が、それは味方機だった。フォルテギガス。
確か、リムの新型機、とかいったか。
と、なると操縦者はリムに違いない。
しかも、ルイーナ本部方面に向かっている。

…まさか、あの馬鹿、とり残されたジョシュアを…!

俺はジョシュアにリムの事を頼まれている。
もしもの事があっては…奴に顔向けが出来なくなる。
俺は急いでUターンし、フォルテギガスを止めようとした。
が、フォルテギガスはサザビーより出力・馬力が高い。
しかし、機動性ではサザビーが勝っている。…蛇足、だな。
それはともかくして、俺は何としてもリムを止めなければなかった。
俺は奴にリムの事を頼まれているのだ。
ましてや、死なせる訳にはいかない。
俺はフォルテギガスに後から取りつき、すぐさま通信を入れた。
「リム!貴様、何をやっている!早く下がれ!ここはもうすぐ爆発するぞ!」と俺は怒鳴った。
「だって、あそこにはまだアニキが…!」
と、強気で言いつつも、少し気弱な言葉を返した。
そして、俺のサザビーを引き離そうとする。

…それは分かっている、分かっている。
まだ、あそこにジョシュアがとり残されてるに違いない。
確証はなかったが、ほぼ間違えなかった。
奴を助けたい気持ちは、俺にも良くわかる。見捨てるのはごめんだ。
同じ部隊の仲間として、そして友人として…。
だが、俺らにはザンスカールや異星人の侵略軍といった敵がまだ残っている。ましてや、俺は奴からこいつの事を任されている。
死なせる訳にはいかない。
「…馬鹿か、貴様は!ジョシュアが何を考えているかは知らないが、
奴が死ぬはずがない!必ず戻ってくる!
もし貴様がここで死ねば、仮に生き延びたとしたジョシュア、それにブルースウェアの奴らが悲しむ事になるぞ!それでもいいのか!?」
俺はおそらく制止出来るであろう言葉を選び、叫んだ。
確証もない、嘘も。
が、リムは強気な顔を崩していない。
そして、いきなり通信がブツリと切れた。
「…!?」
何だ、と思ったその時、急にフォルテギガスの力が強くなった。
(っく!どうしても押し切るつもりか…!)
押さえるにしても、時間のと問題だ。
MSと特機。
あまりにも力の差が大きすぎる。
こう押さえていられるのも時間の問題だ。
それに…さっきも言った通り、爆発の時間が迫っている。
(タイムアップまでに何とかしなければ…!)

俺はそれでも、フォルテギガスを押さえるのに精一杯だった。
サザビーはもう既に限界に近かった。
さっきからコックピットに警告音が鳴り響いている。
が、俺は出来る限りの力をふりしぼった。
(何とか持ちこたえろ!サザビー…!)
俺は思わず、「困った時の神頼み」をしてしまった。

だが…その時だった。俺を絶望に陥れる事が起きてしまった。

大きな爆発音。
その大きな音が耳に入った瞬間…俺の回りは白くなった。

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