どうして、こんな事になったんだろう、と思う。
何がどうなって、こんな。

「…な、なぁ。やっぱ、マズいんじゃ…」
「……ん、む(…味ですか? しょっぱくて苦いですけど、そんなにマズくは…)」
「そういう意味じゃなく、っ、ぐ」

遠くからは、皆の騒ぐ声と、微かに川の流れる音が聞こえる。
高架下の薄暗がり、時折通る車のライトに照らされて浮かぶ、痴態。
薄汚れた壁に背を預けて、デュオ・マクスウェルは闇の溜まる天井を見上げる。
だらしなく乱された衣服の前から、外気に晒されて少し寒い下腹部と、狂いそうなほど熱い生殖器。
それから。

「…ん、む。…ぷはっ……(…カチコチですよ、凄い凄い♪)」
「あ…あのさ。これ以上続けたら、どうなるか判ってんの?」
「……(むぅ、そんなに馬鹿じゃないです。知ってますよ)」

ちゅぽん。音を立てて奉仕を中断して、アルミサエル-XXが顔を上げた。
頬にかかった水色の髪が揺れる。青臭い匂いをかき消すように、甘い汗の香りがした。
涎とカウパーでぬらぬら光るそれに唇を寄せ、アルミサエルはさも楽しそうに瞳を覗き込む。

「……(さきっぽから、出てくるんですよね。白くてトロトロの、デュオさんのLCL)」
「そこまで判ってるんなら、もう判るだろ…? 俺、これ以上されたら、もう」
「…♪(ここまでしたら止められないっても知ってますよー? 気持ちよくなって下さいな♪)」

薄く開いた唇の間から、赤い舌が見せ付けるように伸びて、充血したペニスの先端に絡みついた。
硬く尖らせた小さな舌先が鈴口を執拗に突付き回し、デュオは思わず息を呑んで背を強張らせる。

「なん…なんで、こんな」
「……(んー…好奇心…ですかね? デュオさんを気持ちよくさせて、見てみたいんですよ)」

見せ付けるような動きで、舌が先端を伝い、くびれた部分をなぞって幹を舐め上げた。
情けなく笑い始めた膝と連動するように、壁に伝って腰がずるずると落ちていく。
逃げた腰をあえて追わず、アルミサエルはデュオと視線を合わせてぺろりと舌なめずりをした。

「…(デュオさんが気持ちいい時って、そういう表情するんですね…)」
「お気に召したなら、光栄…」
「…(はい、すごく色っぽいです。でも、出さないと苦しいんですよね?)」
「ああ。…最後まで、責任持ってくれると嬉しいんだけどねぇ…」
「…♪(お任せなのです♪ …そういう、苦しそうな表情も捨てがたいんですけどねー)」
「勘弁…、最後まで、してくれたら…もっといい表情、見れるかも知れないんだぜ…?」
「……(はーい、がんばりまーす)」

痛むほどに立ち上がったペニスの熱は、いつの間にか脳にまで達していたように思う。
強請るように腰を揺らして、アルミサエルの与えてくれる快楽を望む。
すっかり地面に落とした腰の間、潜り込むようにしてアルミサエルが再び唇を寄せた。
息を吹きかけられ、また背がしなる。息が苦しくて瞳が潤み、視界がぼんやりと滲む。

「……っ」
「……(ピクピクしてて可愛いですね、でも、なんか強そうー…)」
「…あ、あ。一見可愛くても、暴れん坊だから、なぁ、っ」
「……(暴れっぷりが楽しみですよー、それじゃ…)」

音を立てて先端を弄んでいた唇が、急に緩慢な動きを見せた。
埋め込まれているような錯覚を感じるほど丁寧に、生暖かい口内に飲み込まれる。
喉の奥で先端を弄ばれ、吐き出される。間も空けずまた吸い付く、赤い唇。
…何度かそんなことを繰り返すうちに、いつしか根元の部分に指が絡みついているのに気付いた。
緩やかに動く口の動きとは対照的に、忙しく幹を擦りあげる、ぬめる指先。
堪らずに、股間に埋められた水色の髪を掴む。
引き離そうとしてるのか押し付けようとしているのか、自分でも判らない。

「…ぅむ、ぷぐ」(…そろそろ、ですか?)
「しゃべんな、…頼むから、っ、あ」
「……うむー…」(はぁい…)
「っ…、く、もう、イク…」

根元に絡む指ごと握り締め、夢中のまま何度か擦る。結末はあっけなく訪れた。
アルミサエルの口の中、ペニスが何度か跳ねて精液を撒き散らす。背がぶるりと震えた。
涎が零れていた口の端から、熱い息が漏れる。…男の終幕なんて、あっけないもんだ。

「……んむ(…ゴチソウサマデシタ、なんちゃって)」
「いえ、お粗末様でした…っていうか、結構なお手前で…」

こくりと喉を鳴らし、アルミサエルが顔を上げて笑う。
唇の端から引いていた体液の糸が切れ、手の甲に冷たい感触を伝える。
ペニスとアルミサエルの右手を掴んだままな事に思い至り、デュオは慌てて手を離した。

「わ、悪ぃ」
「……(いえいえ。それよりみて下さい、コレ)」

アルミサエルが上体を起こし、デュオの見えないところにあった左手を晒す。
指先を濡らす、ねっとりと泡立った体液。ふわり、雌の匂いがした。

「…(デュオさんの表情見てたら、こんなにトロトロになっちゃいましたよ)」
「自分で、シてたのか?」
「…(えへへ…なんだかジンジン欲情しちゃって、我慢できませんでした)」

見せ付けるように指を開いたり、曲げたり。糸を引く粘液が、正気を狂わせる気がする。

「…俺も、シようか…?」
「…(え、でも)」
「…いーから、ちょっとだけ。…さっきのお礼に、気持ちよくしてやるから」
「……(そうですか? …それじゃ、ちょっとだけ…)」

落ち着いたはずの血流が、またどんどんと身体を下っていく感触がする。
場所を交代。アルミサエルは言われるがまま下着を脱いで壁に手を着き、尻を差し出す。
右手の指を、蜜壷に埋め込んだ。指の脇からトロリと落ちる愛液。知らず、左手がペニスに伸びる。

「…なぁ、アルミサエル。俺のこと、好き?」
「…っ、…?(はぁ…っ、え? …好きですよー、んっ、それが、どう、したんですか?)」
「…そういうんじゃなくて、なんて言うかさぁ」

人差し指と中指で押し開くようにして、柔らかな双丘の間に顔を埋める。
舌を突き出すと、酸味のある体液と内臓の生ぬるい感触がした。
左手でアルミサエルの濡れた部分を撫で回し、指に絡んだぬめりを自分のペニスに塗りつけて擦る。
敏感に快楽へ反応を返し、アルミサエルの身体が喜ぶように戦慄いた。

「…っく、ぅ…(…ねぇ、デュオさん)」
「……なんだ?」
「……っ、ひ、うん(…デュオさんは、私のこと、好きですか?)」

問われた言葉に、いくつかのビジョンと言葉が甦る。
ヒルデ・シュバイカー。メリーベル・ガジット。
どうして、こんな事になったんだろう、と思う。
何がどうなって、こんな。

「………っ」
「ひゃ…!? ……っ、ぅ(やっ、急にそんな激しくしちゃ、ダメです…!!)」
「…ダメ。俺だってされたんだから、今更怖がんなって」
「っう、……ぁ、うあ(…そんな事、言われても…! あ、ダメ、ダメです、んっ…!!)」

問いに答えは出なくて、アルミサエルに答えられない自分をごまかすように彼女を責めた。
自分が最低な人間に思いながらも、それすらも許しそうなアルミサエルに甘えている。
波打ち際を漂うように、罪悪感と肉欲の海に溺れながら。

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