「く、そ……」

 怨みのつぶやきをこぼしながら端末へ向かい、レポートを打ち込み続ける。
今日は大事な日だというのによりにもよって……。


「ウィン〜」
「……グレース」

 自分の名を呼ぶ声に振り向くと、そこにはコーヒーカップを持った愛しい人がいた。
だが、ウィンの表情に張り付いているのは申し訳ないという想い、それだけだった。

「すまない、誕生日だというのに……」
「仕方ないですよぉ〜、教官の課題ですしぃ」
「それは分かっているんだが……」

 そう、今日はグレース・ウリジンの誕生日。
…だが、肝心のアーウィン・ドースティンは積み重ねられた課題を前に悪戦苦闘の真っ最中であった。
そんな彼らの背後から更に声がかけられる。

「どうだ、ウィン。状況は」
「……カミヤ教官」
「はっはっは、どうしたかね。そんな顔をして」
「……別に。なんでもありません」
「あ〜、教官ひどいですよぉ。今日、私の誕生日だからウィンがお祝いしてくれる約束でしたのに〜」

 ニコニコと笑いながらメガネをかけた壮年の男性が歩み寄る。
彼の名はカミヤ、件の教官と言われた男である。
不満たらたら、といった体でウィンもグレースも彼を見る。


「おや!そうだったのかね、それはすまない!」
「……」

 端末を打ち込む音が大きくなる。

「そうだ、ウィンの代わりに私がお祝いしよう!」
「へ……?」
「なんだと……」
「私の行きつけのホテルの最上階の寿司屋があるんだ」
(ホテルだと……)
「わぁ、素敵ですねぇ」
「そうだろう、そうだろう、はっはっはっ」
(まさか、このエロジジィ……)
「というわけでウィン、君の分も私が祝っ」
「終わりました」
「へ?」
「終わりましたと言いました。こちらのメディアに入っています」


 ひょい、と記録メディアを投げ渡すウィン。
そしてグレースの肩を抱き寄せるとぴしゃりと言い切る。

「では、俺はグレースと帰りますので!失礼します!!」
「え、あ、は、はぁい。教官〜また明日〜」
「ああ、さようなら…………まったく、ウィンのやつめ」


 手のひらの上でスティック状のメディアを遊ばせてカミヤは寂しそうな笑顔を浮かべて二人を見送る。
ウィンの自室に戻ったグレースはウィンに体重を預けて甘える。

「ふふっ、ウィン。すごいですねぇ〜」
「フン……俺を誰だと思っているんだ」

 そう言いながら優しくグレースにキスをする、ふわふわの柔らかい髪を優しくときながら唇を吸う。
柔らかい彼女の唇をなぞり、舌を送り込み口内をなぶり、むさぼる。
鼻にかかったようなグレースの鳴き声を聞きながら彼女をベッドに押し倒す。
やがて部屋の明かりが消え、幼い容姿の彼女から想像もつかない程艶のある切ない喘ぎが夜通し響いた…。



アホだ、誕生日内に間に合わせようとしたらエロが無くなった…執筆は計画的にorz

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