「……とは…そんなに…なのか?」
「え?なんですかぁ?」
「だから、その……ックスとは……、〜〜〜っ!男女の交わりとはそんなにいいものなのか?」
「へ?」

 相談があると言うことでグレースのマンションに立ち寄ったリン、
またイルムの浮気癖の事だろうと思っていたグレースは、このクールでありながら、いつも優しい親友の予期していなかった質問に
大きな瞳を点にして口をぽかんと開けるしかなかった。

「その…この前、あのバカがそういう行為をしたい、したいとずっと煩かったから一度やらせてやれば静かになるだろうと思って、そういうことになったのだが…」
 素直じゃない婉曲的な言い方に微笑しながらも、こんな楽しい話題はそうそう無い、とグレースは興味深深で次の言葉を待つ。
「あいつの…その…あのバカの…そのアレ…が、考えてたよりも大きくて…あんなものが入ってくるのかと思うと怖くて…」
「あぁ〜、そういうことですかぁ。で、どうでしたかぁ?初めての経験はぁ?」

「いや、まだ、していない」
「へ?」

 親友の初めてのSEXがどういうものだったか、これほど興味を引かれるものは無いというようにグレースは楽しそうに聞いていたのだったが、
意外な答えに笑顔のまま表情が固まる。そんなグレースなどお構いなしにリンは言葉をつむいでいく。
「その…怖くなってしまって、つい、こう脚で…」
「……蹴っちゃったんですかぁ……」
「ああ…」
 リンが赤くなりながらコクリ、と頷くのを見て、グレースは股間を押さえて青ざめながら悶絶しているイルムの姿と、
半泣きになりながら乱れた着衣を整えながら部屋を逃げ出そうとするリンの姿が思い浮かび苦笑する。

 きっとイルムに対する怒りの言葉を幾分かの後悔とともに吐き出しながら逃げ出したのだろう、と頭の中にありありと想像が出来て彼女たちらしいと思えて仕方が無かった。
一方、恥ずかしい告白を済ませて口を真一文字に結びうつむいていたリンだったが、意を決したように突然ガバッと顔を上げると今回の訪問の目的を述べ始めた。

「そ、それでだな…仲のよいお前たちなら、そういうこともしているだろうから聞こうと思って、な」
「そんなぁ〜、一番ラヴラヴだなんて照れちゃいますよぉ〜」
「で…で、どうなんだ?」

 頬を押さえふわふわのピンクの髪を揺らしてキャンキャンと照れるグレースに対してジト汗をかきながらもリンは真面目に聞く。
その問いに顔の前で両手を重ねて初めての夜を思い出すグレースは再びドリームな世界に入りつつあった。

「そうですねぇ〜、やっぱり初めてのときは痛かったですし、私もウィンもエッチした経験が無かったんでぇ全然わからなくて
 困りましたけどぉ、段々お互いのことがよく分ってきて、すっごく気持ちいいですよぉ♪」
「は、初めてのときはやはり緊張したか?」
「そうですねぇ。…でもぉ、やっぱり嬉しいっていう気持ちの方が大きかったですよ、ウィンと一緒になれるんだって思うと…」
「そ、そうか…」

 安心させようと自分の体験を伝えるグレースだったが、リンはまだ悩んだような難しい表情を晴らしていない。
どうにかして自分と似たような境遇にあるイルムとリンにももっと仲良くなってもらいたいと考えていたグレースは、
その外見や喋り方からは想像もつかない恐るべき早さで回転する頭脳をフル稼働させて様々なケースを想定しつつ最良の答えを探す。
 (これですぅ!!)
ピキーン、とNTのような閃光がグレースの頭の中にほとばしった。

「そうだ!いい事思いつきましたぁ!リンの緊張をほぐすためのナイスアイデアですよぉ!」
「?」
 携帯をポケットから出すとすばやく操作し誰かに掛けている

 
 trrrr…trrrr…ガチャッ

『俺だ。どうした?何かあっ…』
「きゃぁああん!あなたどなたですかぁ!?いやぁん、やめてくださぁい!ウィン、助けてくださぁ〜い!」

 ピッ…

 突然悲鳴を上げてウィンに助けを求めてよく分らない内容の電話をかけたグレースに怪訝な表情で問いかけるリン。
「お、おい…何を…」
 だが、そんなリンの背中を押してグレースは自分の寝室の方に連れて行く。
寝室に着くときょろきょろと部屋を見回すグレース、リンは何をする気なのか読めずにその横で彼女を見つめている。
しばらくしてグレースは思いついたようにクローゼットの方に近づくとリンを手招きした、怪訝な表情で呼ばれた方へ向かう。
その間にグレースはクローゼットの中の服や、置いてある靴やかばんの箱をどけて、人一人が入れるスペースを作っていた。
「はい、この中に入ってくださぁい!」
「は!?な、なんのためにだ!?」
「いいですからぁ、早くしないとウィンが着いちゃいますよぉ」
「バカなことを言うな、あいつは今夜は研究所でデータの整理をするといっていただろう。基地からここまで四十分はかかるぞ

キィィィィィィィィィイイイイイイン………… 

「…………って、なんだこの音は」
 冷静に基地からの距離を判断すると少なくとも三十分はかかる。
その間にリンはグレースの考えが何か問い詰めようとしていたがその思考を遮った轟音が響いた。
「あ!きちゃいましたよぉ!早くこの中に入ってくださぁい!」
「お、おいグレース!!ちょっ、押すな、って、きゃぁっ!…お、おい、グレース!」
「お静かに待っててくださいねぇ♪」

 無理やりリンをクローゼットに押し込めるグレース、それと同時にマンションのドアが開く音がしてウィンの声が響いた。
クローゼットのドアを閉めて玄関の方へ向かうグレース、リンはクローゼットの中で「どうしろと言うの…」とひとりごちるしかなかった。

「グレースッ!!無事かっ!?何があった!!?」

 緊張に強張った表情のまま、自身の合鍵でドアを開けて部屋の中へ入ってきたウィン、
その声を聞いて(ば、バカなッ!?電話してからまだ五分くらいしか経っていないのに!!)とリンは暗く狭いクローゼットの中で困惑していた。
だが、玄関先から聞こえるグレースの言葉に納得…ではなく更に混乱した。
「わーい、いらっしゃーい♪あ、今日はウィングガストでいらっしゃったんですねぇ♪ゲシュっちでもよろしかったのにぃ♪」
(ウ、ウィングガストォ!?)
 確かにそれならばこの短時間に到着したことも納得できる、だが、グルンガストを私用で持ち出すなどという異常な事態に混乱しきっているリン。


一方玄関先ではこのような事態は珍しいことではないのかウィンとグレースはいつもの雰囲気のままやりとりをしていた。
「…グレース…貴様…」
「はい?」
「…また、おまえはぁ〜〜っ」
「いひゃっ、いひゃいでひゅよぉ〜」
 グレースの頬をつねあげるウィン、普段のグレースのペースに振り回されたときの困ったような笑顔ではなく少し眉間に皺がより険しい表情だ。
「えへへ〜、ごめんなさぁい。だけど、最近ずっとウィン冷たいんですもの〜」
「あのな、グレース、お前も分かってるだろ?新型機の製作のために俺は今一番忙しいってこと!!」
「きゃん!!ウィンとげっちぃですよぉ。もっとのんびりいきましょうよぉ、ほら、笑って笑ってぇ〜♪」
 
 ぶち
 
「グレェェースッ!!!!!!」

「「っ!!」」

 彼女のマイペースぶりに仕事上のストレスもあったためか、とうとうウィンの声が怒気をはらんで放たれた、
その声量のあまりの大きさにウィンの前で、クローゼットの中でビクッと緊張するグレースとリン。
「…ごめんなさぁい…」
 その言葉にしゅん、とうつむくグレース、ここまで怒らせた事は久しぶりだったためか本当に落ち込んでいる、大きな瞳がウルウルと滲んで今にも瞳から涙がこぼれ落ちそうだ。
もし彼女に犬かウサギのような耳が付いていたら、それはきっとぺたんと倒れこみうなだれているだろう。
声を荒げたウィン自身も少し声を荒げ過ぎたと感じたのかバツが悪そうにポリポリと頬をかいてグレースにかけるべき言葉を探す。
「ひっく…ぐしっ、ひん…」
「あー……そのー……すまないな、グレース。怒鳴ったりしてしまって…」
「ふぇ……もう……怒ってませんか?」
「ああ、もう怒ってない。ここ最近はラボに詰めっぱなしだったからストレスもたまってたんで外に出て気分転換になったし……それに、その、あのな、お前の顔も久しぶりに見れたし……」
「……ほんとにごめんなさぁい」
「だから泣くな……泣かせた俺が言えたことじゃないが、お前のそういう顔を見ていると俺も気が沈んでしまう。
 久しぶりにこんな間近で顔見れたんだ、さっきみたいに笑ってくれ」
「ぐすっ…くしくし…はい♪」
 目じりに拭った涙をぬらしながらにっこりと微笑むグレース、その笑顔にウィンの鼓動がドクン、と大きく高鳴った。

「……」
「えへへ……」
 無言のままグレースを手繰り寄せる。
彼女のやわらかくて細い腰に手を回してやさしく抱き寄せると、ふわふわとした彼女の巻髪が頬に当たりなんとなく気持ちよかった。
「グレース……」
「あ……はい……ん……」
 そしてそのまま優しいキス。
しばらく互いの暖かさを感じながら、。長く、甘い口づけを交わし続けて互いを交換していく。
「ん……く、グレース…………したい」
「……はぁい」
 銀糸を引きながらウィンは唇を離すと、グレースに甘えるように抱きつきながらグレースの耳元でささやく。
この低くて耳元に残る彼の声がグレースは大好きだった、もちろん慌てたときのかわいい感じの声も。
吐息がかかるほど近くで届いた彼の声だけで背筋がゾクゾクとしてきて、彼にもたれかかる。
ウィンの背に回した手をぎゅっと握り締めて、もっと、もっと彼との距離を縮めようとする。
ぐいっ、とウィンが首元からネクタイを外し、そのままグレースの体をお姫様抱っこの形で抱き上げる。
「わぁい、これってやっぱり女の子のロマンですよねぇ〜」
「そういうものか?」
 抱き上げられて寝室へ移動しながらグレースが嬉しそうに首元に手を回してウィンの胸に顔を押し当て嬉しそうに言うが、
いまいちピンとこないウィンが怪訝な表情で聞き返す。
「ほらぁ、男の子のロマンが裸エプロンとかと一緒ですよぉ」
「……俺はそんなもの好きじゃないぞ」
 心の中で、そのようなことをしなくても俺にとってお前がいてくれることが最良なんだと付け加えるが、当然言葉には出さない。
「え?残念ですねぇ〜、今度そのかっこうでお料理ごちそうしようと思ったんですけどぉ」
「りょ、料理は一人でするな!パットか俺と一緒に作ろう!」

 以前、自分の誕生日にグレース一人で作ってくれた謎の物体と、F完スペックのバラン・シュナイルが大暴れしたかと思うほど
荒れ果てた厨房を思い出しながら必死で止めようとするウィン。
 もちろんせっかく作ってくれたそれを無下に捨てることも出来ず、その謎の物体を口に放り込んだ瞬間病院に直行する運命にあったが。
(あ……戻ってきた)
 寝室のドアがガチャリ、と開いてウィンとグレースが入ってきて、膝を抱えてどうすればいいんだろうと考えていたリンはクローゼットの庇からそちらを伺う。
(!??……あのウィンがあんなこと……)
 グレースを優しく抱き上げて、人前ではほとんど見せない素直な笑顔を浮かべている。
自分がイルムにはどうしても見せられない表情……、うらやましいな、とリンは心の中で思いながら二人を眺める。
「えいっ!」
「……っと、こら」
 グレースがウィンの腕からポン、とベッドに飛び込む。
キシィと音を立ててたわむベッドの上で、ウィン(とクローゼットの中のリン)に向かって満面の笑みを浮かべながら手を広げてウィンを誘うグレース。
もう少しグレースの暖かさを感じていたかったのに、手元から逃げられてすねた様に声を上げるウィンだったが、そのまま彼女の腕の中に潜り込む。
「グレース……ん……」
「んく……んふ……ふっ……ウィン……」
(ちょ……ちょっと待て!何やってるんだお前ら!ど、どうすればいいんだ!?ここは出てっていいのか!?え?ええ!?) 
 鼻にかかった甘い声を上げながらウィンの名を呼びながら舌を絡ませるグレース。
(あ……あんなキス……あいつら……)
 顔を真っ赤にしながら睦まじい二人の口付けを眺めるリン、ドキン、ドキンと心臓が大きく鳴って彼らに聞こえないかと心配するほどだった。
普段の子供っぽいグレースの表情がどんどん妖艶になっていく。
長い付き合いだが、子供のような幼い印象しか持っていなかったグレースの変わりように驚くことしか出来なかった。
「ぷは……ん、あっ、ぅん……きゃうん……」
「……」
 ウィンの手のひらがグレースの首筋をそっと撫でる。
すっと、彼女にとって敏感なソコに指筋が滑るたびにびくっ、びくっと小さく刺激に震える。

「かわいいな、おまえは」
「やぁん……はずかしぃです……」
(グレース……なんて声を……)
 口付けを交わしながらウィンの指先は首筋から鎖骨を通ってグレースの乳房を彼女の服越しに愛撫する。
甘い声はどんどん高くなっていき、その声がリンすらも興奮させていく。
「あ……」
(あ……)
 グレースの白いシャツのボタンがひとつずつ外されていき、幼い容姿にアンバランスなほどの豊かな乳房を包む布すらも外されて、
とうとうほのかに桃色づいた胸がウィンとクローゼットの中のリンの前に晒されて、同時に声をあげるグレースとリン。
 普段シャワールームなどでも見ているが、このような状況で見つめることもあってかその乳房がひどくいやらしく見えた。
「はぁ……はぁ……」
 狭いクローゼットの中にリンの荒くなり始める息が木霊する。
おへその下辺りがきゅぅぅ…っとうずく感じがする、そのあたりにそっと手を置くと軽くしびれるような感覚を受けて怖くなってくる。
一方ウィンはそのままグレースの乳房の先端、固くなり始めた乳首に口付けを落とす。
「ひゃっ……」
 周りの乳輪ごと口に含んで吸い上げる。
ちゅぱっ、と高い音がしてそれがグレースとリンの羞恥心を高める。
「さきっぽ……きもちいいですぅ……」
「ん……グレースのここはあったかいな」
 乳房にふにゅ、と頬を当ててつぶやくウィンの頭を優しく撫でながら優しい瞳で見つめるグレース。

(……)
 リンの乳房の先端も下着の中で硬度を増して、少し体を動かすと僅かだけだが衣擦れてしまいその刺激がさらに興奮を高める。
こねられているグレースのウィンの手につながったように自分の乳房にそっと手を置く。
このまま指に少し力を入れて乳房に絡ませれば甘美な感覚を味わえるはずだが、
友人宅であること、さらに親友のソレを見てそのような行為を行うというのはどうにも気が引ける。
(くそっ……こんなの……)
 収まらないもどかしさをごまかすように少し体を動かした瞬間、狭い空間にしばらくいたためかバランスを崩してしまう。
体を支えようとした瞬間、その手を押し当てたのはクローゼットの戸……そして

がちゃり


「あ゙。」」」
 三人の声が重なる……直後アーウィンの怒号がグレースのマンションに響き渡ったのだった。

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