「ふぅ……」
一人、湯船の中で久々の休息にフェルトは息をついた。
何よりUX内の女性陣が連戦続きで『疲れた』『汗臭い』
『風呂に入りたい』という空気が蔓延していた。
ならば、しばし休息をというわけでUXは竜宮島に停泊中だ。
時間は23時頃か、朝から海で遊んだ面々はすでに夢の中、
大人はバーで静かに飲むか、恋人との一夜を過ごしている頃だろう。
「恋人か……」
フェルトはゆっくりと眼を閉じ、想いに耽ろうとした。
「刹那………」
ふと想い人の言葉を口にした次の瞬間、
「おっ邪魔しまーす!」
「葵さん、誰か先客がいます。静かに入りましょう」
とUXのビッチことビールの束を持った飛鷹葵と
サヤ=クルーガーが入ってきた。
「あ、こ、こんばんは」
「あらフェルトさんじゃない。どう1杯?」
「わ、私は……」
「冷えて美味しいよ」
確かに風呂で冷えたビールは格別だろう。
フェルトは少し、考えて言った。
「じゃあ…お言葉に甘えて」
と葵の差し出した缶ビールを受け取った。
「ぷはー…一日の疲れはやっぱビールとお風呂ねぇ〜」
エルシャンクの大浴場で葵は空になった缶ビールを足で
摘まみ、湯船の外にコトンと置いた。
そして、そのまま新たなビールを足で摘み、
口元へ持ってくると、栓を開けた。
もはや女子力0、ダメ女丸出しである。
「……葵さん、行儀が悪いですよ」
「いいの、いいの、女同士なんだからさ」
「そういえば、フェルトさん御一人なんですか?少し前に
スメラギさんがお風呂に行くと言ってましたが」
「そうそう、この時間帯ってさ、
あのオバさんよく入ってンのよ。どーしたの?」
「ええ……と…そのスメラギさんはロミナ姫に無理を言って、
お酒で満たした湯船を増設してもらって……その…入浴して
全身にお酒が回って危ない状態なので…治療中です」
身内の艦長だけに笑えないフェルト。
「あのババア、もう脳にまで酒がまわってンのね…」
ぐいぐいとビールを飲み干す葵。横目にチラリと二人を見る。
非人間であってもサヤの肢体は非の打ちどころがない。
出るところは出て引っ込むところは引っ込む。
製作者が意図して作ったとしか思えない。
そしてフェルト、こちらも美乳に美尻、加えて髪をショートヘアにしたので
より大人びて見える。ほんのり紅ののったうなじもなかなかにそそる。
「…サヤさんもフェルトさんもなかなかイイ身体してるのね。
色々、経験しちゃったのカナ〜?」
「あ、葵さん…やめてください」
お尻を触られ、フェルトは顔を赤らめた。
「ふふふふ、よいではないか♪どれ、サヤさんも」
「……胸の脂肪がそんなによいのですか?」
むにゅっと揉まれても一向に動じないサヤに葵は言った。
「んん〜…アニエス君とかとそういう事はしてないの?」
「少尉とですか?」
「そそ、だって前までは『サヤさん』だったのに今では『サヤ』って
呼び捨てじゃない?何か進展はあったんじゃない?」
「進展?少尉とは毎晩、淫語の勉強をしているくらいですが…」
「………淫語?」
フェルトはぎょっとした。
「落語……あ〜そういえば…そんな事あったわね……って『淫語』!?」
「ええ『怖い、ダメ、イくわ、助けて、すごい、待って、
熱い、早くちょうだい、死ぬ、火が付く、灼ける、来て、ください、お願い』
これは失○園という物語に使用された、高度な淫語らしく…
短いながらも色気と背徳を感じるそうです。
この戦いが終わった暁には大衆の前で是非、実演も兼ねて披露をしたいとの
少尉の意向です。全国放送なので映像機器越しですが―――」
「そ、それって………エッチな…DVD…」
消え入りそうな声でフェルトが呟く。
「………あの少尉、空間飛びすぎで頭のネジも飛んでやがるわね」
毒づく葵。その時、ガラッと引き戸が開き、
独特のシルエットをもつ少女が入ってきた。
「お邪魔するロボ!エルザもお風呂に入るロボ!」
「あら、フェルトさん、葵さん、サヤさん。私も湯浴みに参りました」
「私も。お邪魔しまーす」
エルザとこのエルシャンクの艦長であり、ラドリオ星の王族ロミナ姫、
さらにレニー=マヤが入ってきた。
「あーあんなにいっぱいビールの缶が散らばってるロボ。葵、行儀悪いロボ」
「も〜うるさいわねぇ……いいじゃない、ここ広い浴場だし」
「いけないロボ。片づけるロボ」
葵がぶつくさ言いながら、ビール缶を片付け始める。
「ちょっとくらいいいじゃない。私だってお酒持ってきたし」
一升瓶を片手にレニーがウインクした
「お前の身体、臭いロボ。貧乏人は一番最後に入るべきロボ」
スペックの低いロボはレニーによって水風呂に叩き込まれ、
どこから持っていたのか、トースターを投げ込まれだ。
「あーコホン……ま、まぁ…フェルトさん、サヤさん、姫様、
レニーさんと女同士の恋話を聞きたいなぁ〜…」
葵が黒こげになったエルザを余所に、話題を振った。
「そうですね。では、議題として『勝ち組は誰か?』などいかがでしょう」
サヤが指を立て、言った。
「勝ち組……とはいったいなんでしょうか?」
世間に疎いロミナ姫が問う。
「あーあれね、一番いいカップル同士とかって意味でしょ?」
「ズバリ、その通りです」
「言い出しっぺの私が思うに、ダミアンさん×カレンさんかと思われます」
「そうね、あの二人ラブラブだもんね。暇があれば見つめ合ってるし」
サヤの言葉にレニーがきゃっきゃと嬉々しながら言った。
確かに……とフェルトも思った。敵同士だった2人が愛の力で
困難を乗り越えたのだ。美しい話だと思う。
「違うロボ。サヤが言いたいのはカレンはくノ一だから
夜の任務がものすごく充実してるってことロボ」
どこから復活したのかエルザが言った。
美談をぶち壊し、猥談に変えたエルザを無視してフェルトは
ビールを口にした。
「確かに仲が良いですわね。毎晩、ダミアンの部屋からは
『も、もうダメだカレン!これ以上!きつすぎる!』
『だめよ、ダミアン。もっときつくしないと!ダメなんでしょう?』
などと聞こえますし、仲睦まじく縄など編んでいるのでしょうか?」
ロミナ=王族=世間知らず。
「そうですね。社会勉強の為にも今夜に2人の部屋を一気に
開けてみてはいかがでしょう?」
「ええ、そういたしますわ」
サヤの提案にロミナは微笑み返した。
(………そんなことしたら修羅場になるのでは?)
とフェルトは思ったがそのままスルーした。
「じゃあ、次!私ね。私はね、ショウさんとマーベルさんかな?
背中を預け合うパートナーって感じがするじゃない?私とジョウみたいに!」
「レニーさん、貴女が何を言っているか理解できませんのでしたので
もう一度、言っていただけませんか?」
ロミナ姫が般若の形相で姫が問いかける。
「ええ、いいわよ。どこかの折鶴みたいな役に立たないクソ戦艦より、
ジョウと合体できる私の鳳雷鷹の方が何倍も使えるって言ったの。
きっと身体の相性もいいだろうし♪」
般若の形相をしたロミナ姫が無言でピストルを持ち出したのでフェルト、
葵、サヤ、エルザの4人で羽交い絞めにして止めた。
「え、ええと…ロミナ姫様はどう思ういますか?」
フェルトがロミナに振った。
「私はジョウが好きです!」
いきなり何を言い出すんだこの田舎姫は!?
という顔でフェルト、葵、サヤ、エルザが言葉を失った。
「ね、ロミナ姫…私ね、姫が何って言ったか聞こえなかったの。
もう1回、言ってくれるかな?」
「はい。汗臭くて無駄に露出している上、破廉恥な赤い機体を
乗り回している淫乱売女より、傷ついた機体(飛影のみ)と
パイロット(ジョウ限定)を癒し、補給するエルシャンクの
艦長(私)こそジョウの生涯の伴侶にふさわしいと言ったのです」
風魔手裏剣を取り出し、ロミナ姫に投げつけようとしているレニーを
葵、サヤ、フェルトの三人がかりで止めた。
「話を戻しますが…私はファフナーの皆さんがよろしいかと」
「た、確かに……道生さんと弓子さんは結婚する前に子供作ってるし」
葵が顎に手をあて、うんうんと頷く。
「いえ、一騎さんをはじめ、生き残った方々と後輩の皆さんで祝賀会と
称して裸で抱き合っていたところを目撃しましたので」
「…………」
「…………」
「…………」
「それって祝賀でもなんでもない、大乱交パーティーロボ」
一同、絶句しているところに復活したエルザが割って入った。
「そうなのですか?一騎さんの上に翔子さんが乗り、歓喜しながら
『騎上位できるなんて夢みたい』と泣きながら言っていましたし、
歩けない咲良さんに剣司さんがのしかかって『咲良!咲良を組み敷くことが
できるなんて最高だ!』と真矢さんは『一騎の子供は私が産む!お姉ちゃんみたいに
認知させる!』と叫んでいましたし、
さらに後輩の皆さんは若いので猿みたいに激しくしていました」
「いや〜若いっていいねぇ…ね、ね、ロミナ姫、ジョウって伝説の忍者だったんでしょ?
分身の術とかで、その分身の分だけ夜の回数しちゃってるんじゃないの?」
「はい、そうです…そのジョウは…激しくて」
ロミナが顔を赤らめて言った。
「そんなことないよねぇ…ジョウってああ見えて回数より質なんだ〜」
レニーが言った。ロミナ姫とレニーの壮絶なガン垂れ。
「本当ロボ?さっきジョウとイルボラが手をつないで1つの部屋に入っていく
とこ見たロボ」
エルザが首をかしげながら言った。
「急用を思い出したからさきに失礼いたします皆さんごきげんよう!」
「わたしもおさけあげるからみんなおやすみ!!」
ロミナ姫とレニーは光の速さで浴場を後にし、残った4人は唖然とした。
「ナ、ナイスフォロー…あのままだったらどっちかが死んでいたわね」
「見事な機転でしたエルザさん」
葵とサヤがエルザを讃えた。
「………?エルザは本当のこと言っただけロボ」

力尽きた、続くかも

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