……やばいものを見てしまった。
 深夜、俺は腹が減り、食堂に行ったのだが。先客がいた。
 ホリスと――
「おいおい、ウソだろ」
 ――チィ姉が、ヤッていた。
 故障したまま直していない、少しだけ開いたまま閉じれなくなった扉の隙間から漏れる、チィ姉の喘ぎ声。
 俺が聞いたこともないような――当然だが――甘く、切ない、かすれるよな吐息。
 裸のチィ姉は食卓にしがみつき、声を上げ続ける。
 地球に行って以来、少し日焼けしたままの肌を汗が流れ落ちている。
 首から鎖骨、小さな乳房を這い、乳首から落ちる。――その一連の流れに、チィ姉の胸を凝視している自分に気づいた。
 ――ダメだろ。
 突き出された腰を、ホリスが掴み、何度も、何度も突き上げる。
 その度、揺さぶられるたび、チィ姉が悲鳴をあげる。背がエビ反り、チィ姉の表情に歓喜が満ちる。
 ダメだ。なに見てんだ俺。
 見たらダメだ、忘れろ。別にいいだろチィ姉とホリスがどうなろうと。そんなの本人同士の勝手だ。覗きなんて。
 理性の叫びが聞こえた。
 ダメだと分かりながら、目が離せない。
 俺の手が、自分の下半身に伸びていた。
 見ていただけなのに、熱く堅く、既に先走りが溢れていた。
 俺は、ダメだと、最低だと分かりながら……
 チィ姉が立っているのが辛くなったのか、食卓の上に持ち上げられた。
 蛙のような格好で、チィ姉は先程よりも烈しく身悶え始めた。
 手の動きが早まる。
 チィ姉は、やがて、いったのか一際高い声をあげたあと、痙攣した。
 二人が何かを囁きあい、笑いあう。
 チィ姉は食卓より降りると、ホリスのナ二を咥えた。俺のなんかと比べ物にならないほど膨張したそれを、チィ姉は蕩けた表情でしゃぶる。
 俺は自らがそれをされたらと妄想しはじめていた。
 手が半ば、自動的な動きになっていく。
 チィ姉は何度かむせながらも、ホリスをいかせると、その熱い白濁した液体を顔に浴びた。
 それを見た瞬間、俺も――




 脚がガクガクと震えた。
 射精の感覚に、身体全体が痺れるような、しかし、何故か俺の手は停まらなかった。
 絞りつくそうとするかのように、手が動き続ける。
 脚が冗談じゃなく震える。
 立っていられないほどの快感、膝の裏を
「えい」
 と何かが触れ、俺はこけた。
 次の瞬間、廊下の固い感触を覚悟していた俺を待っていたのは、柔らかな弾力。
「――え?」
 驚きそうになった俺の口を、背後から伸びた手が押さえた。
 なんだ?
 俺は何事かと、その手の主の顔を見て、冗談じゃなく驚きの余り意識が遠のきかけた。
 立っていたのは、
「少し静かにしててね」
 ――シホミ姉ちゃんだった。


***


「これは、その違うんだ」
 姉ちゃんに手を引かれ、歩きながら、俺は言い訳をしていた。
「たまたま、ズボンがおちただけで、その、深い意味なんかないんだよ」
 ……自分でも無理だと分かる、言い訳に
「はいはい」
 姉ちゃんは聞く耳をもってくれない。
 俺は何か妙案はないかと考え…………何も思いつかない自分に絶望し、降参した。
「…どこいくんだよ」
 叱られるのは分かっていた。
 自分でも馬鹿なことをやったとわかっている。
「これからはこんなことしねぇから、だから」
「出来ないことは言うものじゃないわ、カズマ」
 姉ちゃんは振り返らずに言った。
「まだ、カズマは子供なんだから、自慰するのは謝ることじゃないの。でもね、覗き、それも実の姉がしているところを見ながらなんて、そんな子に育てた覚えはありません」
「……うん、ごめん」
「分かればよろしい」
 姉さんの脚が止まる。ここは
「身体洗って、早く寝なさい」
 シャワールームだった。
 姉ちゃんは、半ば無理矢理に俺の服を脱がせると、シャワールームに俺を押し込み。バスタブにお湯を入れ、洗濯機に汚れた俺のパンツを放り込み。
「替えの下着持ってくるわね」
 そう言って、部屋から出て行った。
 俺は姉ちゃんが出て行ったのを確かめてから、シャワールームの壁を叩いた。
「――っ!」
 壁は思いのほか堅くて、手が痺れた。
 そんな、何でもないことが可笑しく感じた。
 ――なにやってんだ、俺。
 チィ姉たちがやってるとこ覗いて、オナニーして、それ姉ちゃんに見られて。
「ダッセェ」
「そうね」
「馬鹿みてえ」
「大丈夫、元からよ」
「そうそう、俺は元からば――――え?」
 あれ? 俺自分で自分に相槌してる?
 ……いや
 いやいや、そんなまさか。
 でも、だったら誰が――
「カズマちゃんは少しお馬鹿さんな方が、お姉ちゃんは好きよ」
 ――シホミ姉ちゃん
「う、うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
 姉ちゃんが、俺の隣に立っていた、しかも
「いいい、いつからそこに、ていうかなんで裸なんだよっ!!?」
「お風呂に入るんだから、裸になるのは当然じゃない」
「そりゃそうだけど――って、そうじゃなくて。なんで、今なんだよ」
 姉ちゃんはこてんと首を傾けると
「カズマちゃんと久しぶりにお風呂に入りたかったから?」
「だから、なんでだよ。つうか、疑問系!?」
「まあ、そんなことはいいじゃない。それとも、お姉ちゃんと一緒にお風呂に入るの恥ずかしい? ――家族なのに」
「そりゃ、そうに」――決まってる。
 言おうとして、俺は気付いた。ばっちりはっきりくっきりと、それはもうページ数の都合だとか、導入部長すぎて添削した結果とか、そんなもんじゃなく。
 そうか。
「つまり、これは家族の裸見ておっ勃てた俺を、鍛えなおすための試練なんだなっ!!!」


***


「試練、……なんだよな」
 五人で入っても大丈夫なように、大きく作られたバスタブの中。
 俺は、何故か姉ちゃんの膝の上に座っていた。
「重くない?」
「まだまだ軽いから安心して、それより、もうちょっとひっついて」
 姉ちゃんの女にしては、ふと<検閲>腕に引き寄せられる。
「お……おう」
 なんと、いえばいいのか。
 むぎゅう、うにゅにゅにゅにゅう。そんな感じの柔らかさが、背中に! 背中に!
「ねえ、カズマちゃん」
「HAHAHAHAHAHAHA(アメリカンホームコメディ風の爽やかな笑い)ななんだい、姉ちゃん」
「向かいあって座らない? その方が抱っこしやすいから」
 向かい合って、抱っこ…………っ!!
「駄目、それ絶対駄目っ」
「あら、なんで?」
「それは、その」
 そんな体勢で抱きしめられたら、胸に顔があたっちゃうじゃないかぁ。
 ――とは言えなかった俺の代わりに、姉ちゃんが答えた。俺の返答を。
「ここが、もう、堅くなってるから?」
 むぎゅっ(迂遠な表現)
「ちょっ、姉ちゃ――」
 きゅううう(ぼかし気味な表現)
「握らないで、力込めないで、痛い、痛いから」
「あら、ごめんなさい」
「謝ったんなら、放せよ」
 姉ちゃんの顔は見えないが、耳に湯気ではない、熱いものが触れ、姉ちゃんの声がエライ傍で聞こえる。
「だって、握り心地がいいんだもの」
 握っていない手が、丸い先端を爪で弾いた。
「カズマちゃんの、お・ち・ん・ち・ん」
「知るかよっ!」
「カズマちゃんが、いつも自分で握ってるからかなぁ?」
「握ってない! ……たまに、ほんの、週に七回くらいしか」
 姉ちゃんがくすくす笑う、耳元で。
「ねえ、しよっか」
 冗談みたいに言った。
「お、俺ら姉弟だろ、んなことすんの変だよ」
「あら、そう? 気持ちいいわよ」
「し、しらねえよ。んなこと」
「身体の洗いっこ」
「――――へ?」
「小さい頃、よくしたじゃない。背中流したりとか」
「あ、ああ、なんだ……」
「なんだって、カズマちゃんは何を想像したのかな?」
 ……なにも言えなかった。
 でも、まあ、身体洗うくらいならいいか。
「ほら、身体洗うんだろ」
 俺は湯船から出た。おおきくなっていた前は手で隠して。
「じゃあ、まずはカズマちゃんを洗ってあげるわね」
 言われ、座椅子に腰掛ける。
 股は閉じて。
 何故か姉ちゃんは、俺の真正面に座った。何故対面。
「じゃあ、お邪魔します」
「へっ?」
 一瞬の早業だった。
 姉ちゃんは俺の股を割ると、素早くその間に割り込み。
「じゃなくて、いただきますかしら、こういう場合」
 ――くわえた。
 ぱくっと。
「ちょっ、駄目、そこ、汚いから」
「ふぁふぁら、ふぁらっふぇふぁふぇふふぉふぉ(意訳/だから洗ってあげてるのよ、ふふ馬鹿ねえ)」
「――っ、あっ、放し――そレっ! むっ、ねえちゃっ」
「ふぁら?ふぉう? ふぉんふぉうのふい(意訳/根性なしねえ)」
 言葉にできない――というか、なにをどうされてるのかわからず
「――――っぷは。気持ちいい? カズマちゃん」
 そう聞かれて

「まるで、温めたコンニャクみたいだった」

 そう率直に答えた。


 何故か、その後の記憶がない。


おわり

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