「なっ、なあアリスどうしたんだよ、その赤ん坊は・・・」

  「一鷹さん何を言ってるんですか?私と一鷹さんの子ども
  に決まっているじゃないですか」

  そういってアリスは赤ん坊を抱いている、赤ん坊はアリスに懐いているようだが
  カトルや浩一と共に博士に会いに来た一鷹にはそんな覚えなど一切無かった

  確かにアリスは可愛いとは思うけど、俺にとっては家族みたいなものだ。
  アリスとの子作りなんて身の覚えも心当たりも一切無い
  家族としての超えてはいけない一線というものは分別できるはずなのに、
  しかもいくらアリスはあくまでアンドロイドであって人間ではない。
  だからといって人間と別扱いするような真似はするつもりは無いが・・・
  というか子どもを作る事ができるアンドロイドなんていくら博士でも無理というものだ。
  ひょっとして博士が作った新しいアンドロイドか?
  そう思って赤ん坊のほっぺを触ってみたが間違いなく人間の肌そのものであった。
  赤ん坊も触ってくる一鷹を嫌がる様子を見せずに笑顔を見せている。

  「ぱーぱー」

  やはり俺の子どもなのか?いいやそんなはずは無い
  赤ん坊のパパと呼ばれ、一鷹の不安をいっそうと増す・・・

  「一鷹がお父さんか、ナイスな展開だぜ」
  「それにしても南雲君、いつのまにアリスさんとしちゃったんですか?」

  おい!浩一にカトル!そんなこと言われても何も返せないぞと
  言いたそうだが、すっかり赤ん坊に懐かれてしまって今ひとつ説得力に欠けてしまっている。
  そんな中部屋の奥にいたハルノが現れてアリスに伝言を伝えていた。

  「アリス、お隣から預かっている赤ん坊の事だが予定が早まって今夜には家族の元に返す事に
  なりそうだ」

  「!!ハッ、ハルノ、そういうのはもっと小さな声で・・・」

  そういってハルノはすぐに部屋を後にする。アリスの忠告が耳に入っているのかどうかも
  判らないが、アリスと一緒にいた3人は事情を聞かれてしまった。

  「まあ一鷹がアリスに手を出すとは思わなかったけど、先に一人で大人の階段を登ったわけじゃ無くて安心したぜ」

  「あっ、一鷹さん、変な事言ってスイマセンでした。問題だらけでした。」

  一鷹はその話を聞いているのかいないのか、さっきから赤ん坊の方を向いていた、
  そしてアリスに話しかける

  「流石に俺の子どもって言われた時にはビックリしたけど、この子も俺やアリスに懐いてるみたいだし
  今日は俺がこの子の父親でアリスが母親って事でいいのかな?」

  そういって一鷹はアリスの抱っこしている赤ん坊を受け取り笑顔で赤ん坊と向き合っている。
  一鷹の笑顔につられたのか赤ん坊も一緒に笑顔になっている、
  とにかくアリスは俺を赤ん坊の父親替わりにさせたいようである。
  だったらここはアリスの案に乗ってみようと思ってみたのだ。

  「は、はい私がユイちゃんのお母さんで、一鷹さんがユイちゃんのお父さんで
  まったく問題ありません」

  「へー、この子ユイちゃんって言うのか、よろしくな、ユイちゃん」

  どこか両親としては幼く見えるものの3人はまるで本当の家族のような仲になっていた。
  最初はアリスが言った冗談から始まったほんの些細な出来事でしかない。

  しかし赤ん坊を間においた一鷹とアリスはまさに仲のいい夫婦のようであった。
  ここには浩一とカトルが来ている事を忘れているのかもしれない・・・

  「ったくあいつら俺たちがいること忘れてるんじゃ・・・・・・ってカトル、どうしたんだ
  不安そうな表情をして」

  「なんでもありません、ただあの赤ちゃんの将来に一抹の不安が・・・」

  ユイという名前を聞いたカトルの表情からはなんとも言えない不安がにじみ出ていた


  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


  「なんて事があってビックリしましたよ」

  「フフ、その赤ん坊が名前通りヒイロ・ユイみたいになったら是非プリペンダーに入れたいものだな」
  「その時は俺が鍛えてやる、戦士としてな」

  プリペンダーとして活動内容をレディ・アンへ報告をしているカトル、隣には五飛もいるらしい、

  「こちらからの連絡は以上ですって、あれ?無線の調子がおかしいな?」

  「ああ、それならこちらが原因だな、急な任務でプラントのザフト基地に来ているからだ。
  現在は基地の無線局の機器を借りているからな、では任務ご苦労だった、引き続き監視を任せる」

  「はい」

  そういってレディとの通信を終える。

  「やれやれ、これで全員分が終わったな、まあトロワは相変わらずの潜入任務で連絡が無いがな」

  そういってレディ・アンは通信機器をメイリンに返却する

  「それにしてもアリスさんも大胆ですね、いきなり赤ちゃんをあなたの子どもだなんて言い出すなんて」
  「お姉ちゃんもやってみれば?心当たりさえあれば相手も引っかかるかもよ」
  「メイリンだってやってみたらいいじゃない」
  「ったくこいつらは」

  姉妹の妙な会話が続く中、急遽プラントにまでやって来た理由、明日のオーブの幹部との会談の護衛として
  デスサイズとアルトロンの2機をパイロットを含めて護衛に頼みたいとの事だった。
  現在オーブにはフリーダムやレジェンド、デュエル、バスターといったガンダムはいるもののロゴス残党との戦いが
  続いており現在基地で護衛任務を行えるのはインパルスのみといった状況である。
  もっとも、今回オーブの代表、カガリがプラントに来る際に護衛として来るシンがステラを連れてディステニーガンダムと
  共にオーブに残る予定もあるため、そんなに問題にはしていないようではあったが明日シン達が来るまで、そして会談の間の
  護衛任務としてデスサイズとアルトロンが選ばれたのである。

  ちなみにカガリの帰路にしてもインフォニットジャスティスを擁するアスランがいて、そしてアカツキも持ち出すとの事である。

  「何をやっているお前達、まだ今日の任務終了の報告は受けていないぞ」

  グラディス艦長に言われて持ち場に戻るホーク姉妹だったがこの時、二人が何か企んでいる事に気づけたものはいなかった。


  翌日

  「プラントに着いたぞ・・・ん?」

  「どうしたんだ?」

  謎の異性人に取り付かれたような感覚が気にながらも久しぶりに来たプラントにステラを連れてやってきたシンの姿がそこにはあった。
  そして二人と一緒にアスラン、カガリの計4人はかつての戦友でありシンにしてみれば再びここで戦う仲間であるミネルバのクルーの
  所へやってきたのだ。レイはキラやイザークたちと共にロゴスの残党と戦いに出ているためにいないものの、タリアやアーサー、
  ルナマリアやメイリンが迎えてくれるはずだったが・・・・・・。

  「みんな、久しぶりってル・・・ルナマリア、その赤ちゃん、どうしたの?」
  「私とシンの赤ちゃんに決まってるじゃない」

  いやいや、そんな心当たりなんてないしどうしてそんな赤ちゃんなんて、というかステラが横にいるのに何言ってるんだ
  大体俺そんな赤ちゃんを作る心当たりなんてなかったぞ、本当に俺の子どもなのか?レイとかディアッカさんとかじゃないのか?

  「赤ちゃん、カワイイ・・・ステラ・・・赤ちゃん、好き」

  シンの心配とは裏腹にステラは早速赤ちゃんと仲良くなっている、いやステラが俺とルナマリアの間に赤ちゃんがいるとか
  問題じゃないのか?

  「まったく、シンの奴何やってるんだ」
  そういって後ろにいたアスランがシンに話しかける。

  「アスランさんお久しぶりです。」

  「ああ、メイリンか、久しぶ・・・・・・お、おいその赤ん坊、まさかメイリンもシンと・・・」

  「何言ってるんですか、私とアスランさんの間に出来た子どもに決まってるじゃないですか」

  何を言っているか、それはアスランが聞きたかった、メイリンとはそんな事して・・・・・・・・ない“はず”

  「ふむ、詳しく話を聞かせてもらおうか」

  「カ、カガリ、いや、それはだな、メイリンの勝手な言いがかりであって、俺は全く知らないんだ」

  「まあそこらへんのことは後でしっかり聞かせてもらうからな」

  そういってカガリは部屋を後にする、アスランも慌てて追いかけようとするが誰かが背中を引っ張る
  振り返ると服を掴んでいたのはメイリンの抱っこしている赤ちゃんでアスランの方を見ながらつぶやく

  「ぱーぱー」

  その一言にアスランは凍りつく、見に覚えなんて全然無い、俺は・・・俺は・・・俺は無実だー。

  アスランの心の中での悲痛な叫びが部屋中に響き渡る、一方のステラはルナマリアが連れてきた赤ちゃんを
  抱っこして子守唄を歌っている横で、気まずそうなシンとルナマリアが妙な笑みを浮かべていた。

  不穏な空気の流れるミネルバクルーをよそにレディ・アンはこの混乱を面白そうに見ていた、
  まさかカトルからの通信を聞かれた結果がこんな事になるとは思いもしなかったからだ。

  「ん?ダンナーベースにいるヒイロとサリィから通信?」

  もしここで今回の騒動を伝えたらダンナーベースでも同じ事になるのか?
  妙な好奇心に取り付かれながらヒイロからの通信の回線を受け取った

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