Ver、P

伊豆基地近所の本屋。
品揃えのよさが評判で、基地内の本屋では手に入らない物もここには多い。
それは長い航海で一人身の男の必需品、エロだ。
日本地区はロリ規制が緩いことで人気も高く、軍服の男達がロリや熟女、SMなどお目当ての本や映像を必死に探している。
そうそう、俺は部隊を裏で支える名も無いない整備班員Aだ。
有名人でなくて悪いな、しばらくの間我慢してくれ。
今日は仲間と共に、非番と言うことで一日ここで過ごすつもりだったが、携帯の呼び出し音がささやかな夢を打ち砕いた。
『副長のテツヤだ。今どこにいる?』
「基地の外の本屋ですけど、どうしたんです?」
『よく聞け。我々はアインストと交戦状態に突入した。
直ちに出撃するが”最重要軍需物資”が枯渇してこのままでは長期の航海は不可能だ。
そこでお前達を買占め部隊に任命する!援軍も送ったから金は気にするな!』
「りょ、了解しました!直ちに買占め突入します!」
”最重要軍需物資”とはエロ本の隠語だ。
カップルが多くヤリまくりのパイロット様と違い、女っ気の無い整備班や他のクルーにとってコレの不足は士気や作業効率の低下、さらには喧嘩や「やらないか?」の多発など、艦内生活に深刻な影響をもたらす。
なんとしても入手しなければ!

俺達が奥の区切られた一角へと走り、カゴに片っ端から詰め込んでいると、
店員の「いらっしゃいませー」と言う声が聞こえた。早いな、もう援軍の到着か!?
「あっ、カチーナ中尉!?」
人使いの荒さで整備班にあまり人気は無いが、一応女性だ。
山積みのエロ本を見られるのは気まずいし、口コミネットワークで広まれば美人ぞろいの女性パイロットの俺を見る目が…。
睨みつける中尉に、ついてねぇな、と思うと中尉の怒声が店内に響いた。
「バッキャロー!!皆で回し読みするんだ、同じ本を何冊も買ったって意味ねぇぞ!
裏行って返本の確認して来い!
おいねーちゃん、この店のエロ本はたった今連邦軍カチーナ隊が買い取った!」
後ろにいたラッセル少尉が恥ずかしそうにドン、とレジにヘルメットを置いた。
中には大急ぎで有り金をかき集めたんだろう、お札や小銭がぎっしりと入っている。
確かにいつも同じ本じゃ飽きるよなって、カチーナ中尉も読む気満々かよ!
買えるだけの本をコンテナに詰め込むと、カチーナ&ラッセルはゲシュペンストでさっさと飛び去ってしまった。
俺達は置いてけぼりをくらい、とぼとぼ帰ってみると、事情を知らない先輩達には非常時にすぐ帰還しなかったとしてこっぴどく叱られ、二週間のトイレ掃除の刑に処された。
おのれテツヤにカチーナ隊め、この恨みは忘れん…!

そう、この大量のエロ本購入こそが次なる大事件の原因となるのだった。



Ver、Z

あの奇跡的な勝利から××日――。
連邦軍統治下の混迷からようやく抜け出し、国際経済の復興を図るべく、「高度経済成長」の名の下に強行された急速な経済再編成がその実を結びつつあった一方で、この地球は多くの病根を抱えていた。
強引な経済成長が生み出した失業者の群れ、その都市流入によるスラム化を温床として激増した組織的凶悪犯罪、変革を唱えて武装闘争を繰り広げる反政府勢力の台頭。
これらの勢力に対抗すべく創設された地球圏治安警察機構、通称<地球警>は、しかしその誕生の時から苦難の道を歩むべき宿命を負っていた。

わけても地球警の中核をなす特機隊は、その過剰ともいえる戦闘力と、急進的な主張ゆえに多くの敵対勢力との闘争を余儀なくされていた。
当面の敵である反政府勢力の急先鋒、武装集団ノイエDC残党、地球警を解体し連邦警察への昇格を目論む自治警、特機隊を第三の武装勢力として警戒する連邦軍、そして地球警存亡の危機を回避すべく特機隊解体を画策する地球警情報部。

PTと重火器で武装し、侵略者たちを震え上がらせた特機隊の精鋭たちも、その歴史的使命を終え、時代は彼らに新たな、
そして最終的な役割を与えようとしていた―――――。



Ver、U

「はあ〜、今月もやっぱり大変ねぇ。」
通帳を見て思わずため息が出る。
父の研究の足しに給料のほとんどを仕送りにまわし、残りで自分と妹の生活費を工面するようになって数ヶ月。
PT乗りは高給だが私たち姉妹の生活は楽ではない。
「食費どうしよう?」
先週はパンの耳が主食だった。私はいい、ダイエットだと思えば耐えられる。
でもマイは…、育ち盛りにこんな貧しい食事をさせるわけにはいかない。
どうにかしなければと思案していると、ビタビタビターンと足音がした。
「アヤー、タダ飯だ!早く行こう!」
勢いよくドアを開けて、マイが叫ぶ。
「タダ飯!?詳しく説明しなさい。」
涎を拭きつつ聞き返す。美人姉妹(アヤ談)にはふさわしくない会話だ。
「へっへー。これを見ろ!」
マイが突き出した手には、紙が握られている。奪うように取ると、そこには
[ついにヒリュウ改にもコンビニ出店!記念に無料で弁当をお配りしマース!]
た、確かに書いてある!アヤは上着を掴んだ。
「マイ、急ぐわよ!」
「うん!」

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