「ここまでのあらすじ――
 OGシリーズでの新キャラ、ウォーダン・ユミルは当然Aには登場しない。
 しかし、実はそれはAの世界には彼が存在していなかったのではなくて
 世界を転移するのに失敗して、別の世界に飛ばされた組に入っていたのです。
 ……そして奇しくも、飛ばされた世界の先にもヴィンデルとレモンがいた。
 彼らも他の世界同様に別の世界に侵攻する計画を立てていて
 その貴重なサンプル例として、転送事故で瀕死のウォーダンを蘇らせたのです」
「口で言うな」
 世界が変わっても、レモンは相変わらずどこかふざけている。
 ……こいつはもう呼び捨てでいいだろう、どうせ違う世界の別人なのだから。
「そういいながら最後まで待ってくれてる辺り、さすがは私のWシリーズねん」
「貴様のではない、私が生み出された世界のレモン様のWシリーズだ」
 むしろ他所のなんとかセレンが入っているような気もする、この世界のレモンは。
「――まあ、そこまではいいだろう。問題は……これはなんだ、これは!!」
 さっきからずっとこれを問い詰めたかった。
 怒りに任せ、さっきまで寝かされていたベッドを叩けば
 すぐ横の姿見の中では青髪の少女がベッドを叩いている。
 年の頃は若いだろうか、などと詮索しようとすればこちらを見返してくる始末だ。
「……あなたの体は次元転移の際に深刻なダメージを受けていたの。
 壊れかけた肉体を修復するよりも、他の肉体に意識を移し替えたほうがいいくらいに」
「だからといってこれはないだろう」
「いえ、たまたま直ぐに使える素体がそれしかなかったのよ。
 既に肉体の崩壊は始まっていたから、新たに作る余裕なんてなかったわ」
「……俺のいた世界では見慣れない外見だが、こんなWシリーズがあったのか?」
 外見年齢は……童顔や小柄な体格を一見小中学生でも通じそうだが
 良く見ると体の線そのものはそれなりに整ってる、実際はそれなりの年かもしれない。
「厳密にはまだWシリーズではないわ、その体は。
 以前この研究施設に、過去から来たって妙な岩っぽい機体が迷い込んでね……
 地震は起こすわ太刀は召喚するわパイロットはギャグ連発するわで大騒動だったの。
 その機体があまりに異端だったから、密かにパイロットと一緒にデータを取らせてもらって」
「……その遺伝子情報を元にした肉体がこれか」
 調子を確認するように腕を振ってみる……感触は悪くない。
 意外と鍛えているようだ、格闘技の経験があったのかもしれない。
「飲み込みが早くて助かるわ、一応心身ともに健全というか頑強な部類のようだし
 新しいWシリーズの基礎にしようかと思っていたところなのだけれど……
 ちょうどいいわ、この世界ではすることもないでしょう?
 しばらく機体と一緒に、その肉体のデータを取る協力をしてもらえないかしら」
「……右も左も分からぬ世界では、是非もないか」
「契約成立ね……ようこそ、ウォーダン」
 かくして俺――ウォーダン・ユミルの、頭の痛くなるような死闘の日々が始まったのだった。

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