最終更新:ID:ulTObWMuNw 2023年04月18日(火) 22:28:00履歴
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矢を放った。
瞬間、私の世界は変わった。
私は、何処にでもいる普通の人間だった。
普通に育って、普通に遊んで、普通に高校生になって、ちょっと刺激が少ないけど不満ではないような、そんな毎日を過ごしてた。
怪しいスーツのお姉さんにステッキを押し売りされて(何故か連絡先の交換もさせられた。)、なりゆきで魔法少女になっても、日常が変わることは無かった。
お姉さんは、殺しあって願望を叶えろだなんて物騒な事を言っていたが、人を傷つけてまで叶えたい願いもなかったのだ。
そんなある日、突然怪しいお姉さんからメールが来た。「命の危機だ助けてほしい場所は──」と、端的に、切羽詰まった文面で綴られていた。
正直怪しいにも程があったが、無視するのも寝覚めが悪い。半信半疑の私は、小走りで示された場所へ向かった。
地獄が、広がっていた。
頭が砕けた人、腹が破れた人、半ば地面に埋まった人、人、人、人。
多くの死体の中心で、2人の少女が戦っていた。
「──ッ!!ようやく、来たわね!!そこの貴方
!何、しても、いいから!こいつを殺しなさい!!!」
あのお姉さんの声だった。私に助けを求めたのは彼女らしい。
その時、私は激しく動揺していた。多数の死体、異様な光景、殺人を求められる状況。どうすれば良いか分からないから、とにかく言われた事に従おうとした。
ステッキを、弓型のそれを、強く握る。
使い方は変身した時に分かった。弓なんて一度も触ったことは無いが、とにかくやらなければならないと思った。
──弓を構え、矢をつがえ、放つ。
身体が、驚くほど自然に動いた。
放たれた矢は、向かい側の少女の胸を、寸分違わず射止めていた。
──かちり、と。
今まで気づかなかった空白が、埋まったように思えた。自分はずっと大きく欠けたまま生きていたのだと、その瞬間に気がついた。
私は、弓と共に在るべきモノだったらしい。
「は、はは。すごいじゃないの、貴方。ねえ、ちょっと取引しない?お互い協力して、他の魔法少女を…」
お姉さんの言葉を制して、口を開く。
「お姉さん、いえご主人様。私は貴方にかけがえの無い物を頂きました。」
「え?」
「どうか、お側に仕えさせて下さい。貴方にあだなす者全て、全霊を以て、私の弓で退けましょう」
「…貴方そんなキャラだったかしら?」
そうしてアシュラ様(流石に恥ずかしいからこう呼べと言われた)にお仕えするようになったある日。
私は、五人の魔法少女に襲われた。
狙撃を試みたものの、あちらからすでに発見されていた事から、隙を突かれかねないと思い止めた。
…正直、私は恐怖していた。あの瞬間は動揺していたから、身体に身を任せて乗り切れた。ただ、今私は明確な殺意をもって、彼らを殺さなければならない。そして彼らも、私を殺そうとしている。
弓を放つ事は、今の私の生きる意味だ。
それでも、普通だった頃の私の感情は、まだ残っていた。そんな躊躇は、
「本命は君じゃない、あの小娘だ。さっさと情報を吐いてくれ。」
アシュラ様の危機を知って、吹き飛んだ。
私に弓(うんめい)をくれた人、私の人生を捧ぐべき人。
そうだ、アシュラ様のためなら「普通だった頃の私」なんて要らない。
自分の在り方を、定める。
私は「弓」だ。
私は「矢」だ。
私は、「アシュラ様を守るモノ」だ。
感覚を研ぎ澄ます。
先行した魔法少女の攻撃を受け流す。
そして、身体が動く。円滑に、効率的に、目の前の敵を討つために。
──弓を構え、矢をつがえ、放つ。
私の全霊を以て、この脅威を退けよう。全ては私に弓(うんめい)をくれた、アシュラ様のために。
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矢を放った。
瞬間、私の世界は変わった。
私は、何処にでもいる普通の人間だった。
普通に育って、普通に遊んで、普通に高校生になって、ちょっと刺激が少ないけど不満ではないような、そんな毎日を過ごしてた。
怪しいスーツのお姉さんにステッキを押し売りされて(何故か連絡先の交換もさせられた。)、なりゆきで魔法少女になっても、日常が変わることは無かった。
お姉さんは、殺しあって願望を叶えろだなんて物騒な事を言っていたが、人を傷つけてまで叶えたい願いもなかったのだ。
そんなある日、突然怪しいお姉さんからメールが来た。「命の危機だ助けてほしい場所は──」と、端的に、切羽詰まった文面で綴られていた。
正直怪しいにも程があったが、無視するのも寝覚めが悪い。半信半疑の私は、小走りで示された場所へ向かった。
地獄が、広がっていた。
頭が砕けた人、腹が破れた人、半ば地面に埋まった人、人、人、人。
多くの死体の中心で、2人の少女が戦っていた。
「──ッ!!ようやく、来たわね!!そこの貴方
!何、しても、いいから!こいつを殺しなさい!!!」
あのお姉さんの声だった。私に助けを求めたのは彼女らしい。
その時、私は激しく動揺していた。多数の死体、異様な光景、殺人を求められる状況。どうすれば良いか分からないから、とにかく言われた事に従おうとした。
ステッキを、弓型のそれを、強く握る。
使い方は変身した時に分かった。弓なんて一度も触ったことは無いが、とにかくやらなければならないと思った。
──弓を構え、矢をつがえ、放つ。
身体が、驚くほど自然に動いた。
放たれた矢は、向かい側の少女の胸を、寸分違わず射止めていた。
──かちり、と。
今まで気づかなかった空白が、埋まったように思えた。自分はずっと大きく欠けたまま生きていたのだと、その瞬間に気がついた。
私は、弓と共に在るべきモノだったらしい。
「は、はは。すごいじゃないの、貴方。ねえ、ちょっと取引しない?お互い協力して、他の魔法少女を…」
お姉さんの言葉を制して、口を開く。
「お姉さん、いえご主人様。私は貴方にかけがえの無い物を頂きました。」
「え?」
「どうか、お側に仕えさせて下さい。貴方にあだなす者全て、全霊を以て、私の弓で退けましょう」
「…貴方そんなキャラだったかしら?」
そうしてアシュラ様(流石に恥ずかしいからこう呼べと言われた)にお仕えするようになったある日。
私は、五人の魔法少女に襲われた。
狙撃を試みたものの、あちらからすでに発見されていた事から、隙を突かれかねないと思い止めた。
…正直、私は恐怖していた。あの瞬間は動揺していたから、身体に身を任せて乗り切れた。ただ、今私は明確な殺意をもって、彼らを殺さなければならない。そして彼らも、私を殺そうとしている。
弓を放つ事は、今の私の生きる意味だ。
それでも、普通だった頃の私の感情は、まだ残っていた。そんな躊躇は、
「本命は君じゃない、あの小娘だ。さっさと情報を吐いてくれ。」
アシュラ様の危機を知って、吹き飛んだ。
私に弓(うんめい)をくれた人、私の人生を捧ぐべき人。
そうだ、アシュラ様のためなら「普通だった頃の私」なんて要らない。
自分の在り方を、定める。
私は「弓」だ。
私は「矢」だ。
私は、「アシュラ様を守るモノ」だ。
感覚を研ぎ澄ます。
先行した魔法少女の攻撃を受け流す。
そして、身体が動く。円滑に、効率的に、目の前の敵を討つために。
──弓を構え、矢をつがえ、放つ。
私の全霊を以て、この脅威を退けよう。全ては私に弓(うんめい)をくれた、アシュラ様のために。
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