最終更新:ID:ulTObWMuNw 2023年07月23日(日) 21:05:15履歴
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私の魔法が放たれる。人形が弾け飛んだ。
私が拳を振るう。空を切り人形は砕け散った。
私が魔剣を振るう。人形は切り裂かれた。
だか、それは全てブラフに過ぎない。全ての身代わりを失った私を、奴は確実に反射で仕留めに来る。そこに対応し切れない量の武具を叩き込めば…!!
奴に剣が、槍が、無数の弾が殺到し──
「────ッ」
(あぁ、クソ)
胸骨が砕ける音、肉が裂ける音、血飛沫が散る音。無数の武器が奴を貫いた。──が、あいつの目は、光が消えるその前に、奴は『私を見ていた』。
「…ガッッッッ、フッゥ゛、グァァァァァァッア゛ッッッ」
胸骨が砕ける音、肉が裂ける音、血飛沫が散る音。先程と同じ音が、私から聞こえる。
つまり、これは。
「私の、負け、か」
足から力が抜け、そのまま地面に倒れ伏した。
「……」
「……」
無音の時間が流れる。奴も少々呆然としているらしい。
トドメを刺しに来ないならちょうどいい、最期の問答でもさせてもらおう。
「なあ」
「……!」
「これからお前は、何を、願う?」
掠れた声で問いかける。
───奴が答える。世界を、戦いの前に巻き戻すと。
「世界の、巻き戻しか、なんとも、つまらん。」
「いいのか?巻き戻せば、私も、他の狂った連中も、元通りだ。」
───奴は答える。人々をまた傷つけるなら、私の手でもう一度倒すだけだと。
「そんな事を、せずとも、だ。これからの世界を、お前が支配すればいい。善なる、世界を、お前の手で。」
───それは違う。善っていうのは、みんなの手で成されないといけない。私も、みんなも頑張ってこそだと思うんだ。
「傲慢、だな。」
「…巻き戻った世界で、私は同じ事を、成すだろう。また世界を、この手に、収めようとする。」
───その時も、負けないよ。同じように。
「…そう、か。それ、は…」
少しは、退屈しなさそうだ。
そう思いながら、私の意識は薄れていき───
「…寝ていたのか。」
目を覚ますと私は、超文明都市の中央部、天上の玉座にいた。どうやら、文明観察の途中で寝てしまっていたらしい。
(しかし、なんともまあ…)
先程の夢は虫唾が走る内容だった。私が負けるなど考えたくもない。…だが。
奴との戦いを、何処か楽しいと思っていたのは事実だ。あるいは、あの瞬間だけは、負けても良いとさえ思っていたのかもしれない。
(…この世界に、奴はいない。)
現状に不満はない。この世界に後悔は無い。
ただ、たまに思うのだ。アレのように、愚直で、恐れを知らず、私に向かってくる人間が一人ぐらいいれば、もっと世界は楽しくなるのかもしれない、と。
寝ぼけた目をこすり、魔力を込め遠い地の文明を見つめ、手を伸ばす。
「そら、また人が死ぬぞ、正義のヒーロー。出てくるなら今のうちだ。…なんてな。」
そうして、ふっと、手を振り下ろした。
───この日、一つの文明が土塊と化した。
まるで全ては、泡沫の夢であったように。
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私の魔法が放たれる。人形が弾け飛んだ。
私が拳を振るう。空を切り人形は砕け散った。
私が魔剣を振るう。人形は切り裂かれた。
だか、それは全てブラフに過ぎない。全ての身代わりを失った私を、奴は確実に反射で仕留めに来る。そこに対応し切れない量の武具を叩き込めば…!!
奴に剣が、槍が、無数の弾が殺到し──
「────ッ」
(あぁ、クソ)
胸骨が砕ける音、肉が裂ける音、血飛沫が散る音。無数の武器が奴を貫いた。──が、あいつの目は、光が消えるその前に、奴は『私を見ていた』。
「…ガッッッッ、フッゥ゛、グァァァァァァッア゛ッッッ」
胸骨が砕ける音、肉が裂ける音、血飛沫が散る音。先程と同じ音が、私から聞こえる。
つまり、これは。
「私の、負け、か」
足から力が抜け、そのまま地面に倒れ伏した。
「……」
「……」
無音の時間が流れる。奴も少々呆然としているらしい。
トドメを刺しに来ないならちょうどいい、最期の問答でもさせてもらおう。
「なあ」
「……!」
「これからお前は、何を、願う?」
掠れた声で問いかける。
───奴が答える。世界を、戦いの前に巻き戻すと。
「世界の、巻き戻しか、なんとも、つまらん。」
「いいのか?巻き戻せば、私も、他の狂った連中も、元通りだ。」
───奴は答える。人々をまた傷つけるなら、私の手でもう一度倒すだけだと。
「そんな事を、せずとも、だ。これからの世界を、お前が支配すればいい。善なる、世界を、お前の手で。」
───それは違う。善っていうのは、みんなの手で成されないといけない。私も、みんなも頑張ってこそだと思うんだ。
「傲慢、だな。」
「…巻き戻った世界で、私は同じ事を、成すだろう。また世界を、この手に、収めようとする。」
───その時も、負けないよ。同じように。
「…そう、か。それ、は…」
少しは、退屈しなさそうだ。
そう思いながら、私の意識は薄れていき───
「…寝ていたのか。」
目を覚ますと私は、超文明都市の中央部、天上の玉座にいた。どうやら、文明観察の途中で寝てしまっていたらしい。
(しかし、なんともまあ…)
先程の夢は虫唾が走る内容だった。私が負けるなど考えたくもない。…だが。
奴との戦いを、何処か楽しいと思っていたのは事実だ。あるいは、あの瞬間だけは、負けても良いとさえ思っていたのかもしれない。
(…この世界に、奴はいない。)
現状に不満はない。この世界に後悔は無い。
ただ、たまに思うのだ。アレのように、愚直で、恐れを知らず、私に向かってくる人間が一人ぐらいいれば、もっと世界は楽しくなるのかもしれない、と。
寝ぼけた目をこすり、魔力を込め遠い地の文明を見つめ、手を伸ばす。
「そら、また人が死ぬぞ、正義のヒーロー。出てくるなら今のうちだ。…なんてな。」
そうして、ふっと、手を振り下ろした。
───この日、一つの文明が土塊と化した。
まるで全ては、泡沫の夢であったように。
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