このwikiはあにまん掲示板の安価スレ『安価ダイスでエグい魔法を使う魔法少女同士が戦うやつ』(https://bbs.animanch.com/board/860594/)を始めとした一連のスレについてSSなどをまとめたwikiとなります。

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いつ頃からそうだったか自分でもよく覚えていないけれど、仕事の都合で両親とも居ない時、私が妹達の為に料理を作るのが当たり前になっていた。
それで、今も私はせっせと晩御飯の調理に勤しんでいる。とはいえ特に凝った料理を作る訳でもなし、我ながらすっかり手馴れた作業、いつもと変わらない、どうということもない日常だった。
楽しげにこっちを見つめている自称天才名探偵が居座ってさえ居なければ。

「十四音ちゃんばっかりズルい!私も幽歌の手料理食べたい!」

などと喚き散らしたかと思えば、急に押し掛けてきて今から作れとせがむのだから、コイツはつくづく普通じゃないと思う。
しかもじっとこっちを見ているせいで、常に背中に視線を感じて鬱陶しい。何がそんなに面白いのか。
そして、あらかた調理を終えて後片付けをしている最中、はるかが声をかけてきた。

「今日は何を作ったの〜?あ、待った。当ててみせよう!まずその鍋は……人参、じゃがいも、玉ねぎ、豚肉、そしてそれらを煮込んでいる……つまり、カレーだね?」
「肉じゃが」
「あ、そうなの」

名探偵じゃないのかお前は。鍋に加えられる醤油と砂糖をコイツは一体何だと思って見ていたのだろう。

「それと他にも適当な野菜炒めと味噌汁。もうほとんど出来上がってるけど、霊歌達が帰ってくるまでちょっと待ってくれる?霊歌が、一番下の妹1人で出かけるのは心配だって、無理やりついて行っちゃって。そういやアンタってあの子に会ったことある……」

そこまで言った途端、くぅーっと、どこか情けない音が響いた。

「……先、食べる?」
「はい……」
あんなに大きく腹の虫の鳴る事なんて本当にあるんだな。顔を赤くして俯くはるかを見ながら、私はそう思った。

うん、おいしい!」
「……そう」

いざ料理を目の前にすると、この腹ぺこ探偵はさっきの羞恥なんてすっかり忘れて、夢中で箸を口に運んでいた。
口に入れる度に一々おいしいおいしいと言うから、こっちがなんだか気恥ずかしいような居た堪れないような、妙な気分になってしまう。
十四音ちゃんはずっと病院食みたいだったし喜んでくれるのは分かるけど、コイツは私の料理の何がそんなに気に入ったんだろう。

「別にそんな大したもんじゃないけど、まぁ……美味しいなら、良かった」
「本当においしいよこれ!ワタシ好きだなぁ……幽歌の料理」

好き、か。この、頭からつま先まで非凡という言葉で出来ているような少女は、普通に憧れている。普通でありたいと願っている。だから、好きなんだろうか、こんな、なんでもない普通の料理が。こんな平凡な私にやたらに近付いてくるのは、その願い故なのだろうか。
私には、やはり理解出来ない。

私は、はるかを妬んでいた、とある瞬間に至っては憎んでいたと言ってもいいかもしれない。殺しかけた事さえある。今では一応、和解はしたのだけれど。
私は彼女の側に居ても良い人間なのだろうか。私達の関係とは一体どういうものなんだろう。そんな事をたまに考えてしまう。
確かに状況が状況だったから共に過ごすことは多かったし、互いに本音をぶつけ合ったとはいえ、実際に共に居た時間は短い。
敢えて言うならば友達、で良いんだろうか。向こうはどう思っているのだろう。目の前でじゃがいもを頬張っているはるかに目を向ける。

「ハムッ ハフハフ、ハフッ!!」

なんだその間抜けな顔は。なんだか色々考えているのが一気に馬鹿らしくなった。
変に考え込むような事でもない。私とはるかは普通の友達。
たまに羨んだり、妬んだり、嫌になることもある、そんな普通の友達ってことで良いんだろう。そんな気がした。
目の前でこうしてじゃがいもの熱に翻弄されている姿を見ると、結局いくら「特別」だろうと「普通」の少女なんだと感じる。我ながら単純だけど、これまでよりも素直にはるかの事を受け入れられそうだった。

自分で勝手に悩んでおいて、勝手に解決してるなと内心苦笑しながら視界に意識を戻すと、はるかが箸で掴んだ肉をこちらに向けている事に気付いた。

「えっ、なに?」
「いやじーって見つめてきてるから、食べたいのかなって」
「いやいやいや!別に良いから。後でどうせ食べるし」
「えーどうせだから食べちゃってよ。ワタシ、前から友達と食べさせ合いっことかしたかったんだよね〜、普通っぽくて素敵だなって!というわけで〜、はい、あーん!」

普通の友達はあーんとかしない。いや、私の常識が狭いだけでこれは実は普通の行為なのか。というかその箸さっき散々口付けてたよな。つまり間接的とはいえ唾液を交換する訳で、衛生的にどうなんだ。ああっ身体を机の上に乗り出させるな、服にご飯粒がつく。しかしコイツ胸がデカイな。改めて見ると顔も良いし、いや、違うそうじゃない。
思考をこんがらがらせたまま、私がしばらく固まっていると、はるかは露骨に悲しそうな顔をした。

ええい、ままよ!

「ただいまー!ごめん姉さん帰り遅くなっちゃっ……て」

やはりコイツは、普通じゃない。

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