俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。 サマナーズ・バトルロワイアルのまとめWikiです

兎を抱えた少女が一人、きょろきょろと怯えた視線で周囲を伺いながら魔境と化した街を歩く。
何故こんなことになってしまったのか、少女・橘ありすには皆目検討もつかない話だった。
ただのアイドルでしかない自分が何故連れてこられたのか?
プロデューサーや他のアイドル仲間は無事なのか?
自分はどうなってしまうのか?
恐怖と混乱に押し潰されそうな心を、タブレットにインストールされていたアプリで召喚した兎を抱き締める事でまぎらわす。
ぷう、と微かに苦しそうな鳴き声を兎があげた。

「あっ、ご、ごめんなさい」

力を込めすぎてしまったのだろう。ありすは慌てて抱き締めていた力を緩め、兎の頭を撫でる。
ほわほわとした柔らかな毛並みが、微かにありすの心を癒してくれた。
悪魔として喚ばれたせいか、兎はありすの一挙手一投足にも無闇に暴れる事もなく大人しくしている。
無人の雑居ビルに逃げ込み、周囲に気配がないことを確かめて人心地つく。

(帰りたい、プロデューサーさん……事務所の皆……)

精神的な疲れから座り込むと、気が緩んだのか目元にじわりと涙が浮かぶ。
12歳の少女に、この環境はあまりにも過酷だ。脳裏には彼女を担当しているプロデューサーや、仲のいいアイドルの仲間が浮かんでは消えていく。

(会いたい……帰りたい……死にたくない……殺したくなんか、ない)

体育座りになり、声を押し殺して涙を流す。
死にたくない。アイドルになって開けた、かつての彼女では到底体験することなど出来なかった新しい世界。もっとその先に行ってみたいから。
だからといって誰かを殺すことなど出来はしない。倫理的な問題などではなく、誰かを殺せば自分はもうあの輝く世界に帰ることが出来なくなると、直感的に理解していたから。
必死になって覚えた歌とダンスも、タブレットで収集した知識も、この場所ではなんの役にも立ちはしない。
無力な少女はただ一人、泣きはらす以外の方法を見出だせない。
悪魔の兎は、そんな少女に黙って寄り添っている。

不意に、物音がなった。
弾かれるようにありすが頭をあげると、涙でぼやけた視界に成人らしき人影がひとつ。彼女の存在を認識したのだろう、1歩1歩ありすへと足を進めていく。
真っ先にありすの中にわきでた感情は恐怖だった。

「だ、誰ですか……?」

震える声で話しかけるも、人影は応える気配がない。
涙を拭い、目をこらす。クリアになった視界に映ったものを見たありすの口から恐怖にひきつった声が漏れた。
そこにいたのは男が一人。
目を真っ赤に充血させ、その手には西洋剣。身にまとうは中世ヨーロッパからタイムスリップしてきたかのような革の鎧。そして、背中から肩に突き刺さった無数の矢。
獲物を前にした人型の悪魔は、まるで獣の様な笑みを浮かべる。

(――あ)

このままでは殺される。
慌ててありすは立ち上がろうとするが体が動かない。
許容量をオーバーした恐怖により腰が抜けてしまったのだ。

「やだ……。や、だぁ……!!」

もがくように体を動かす。
少しでも遠く。
一刻でも早く。
気が逸るばかりで体は満足に動かない。
愛らしい顔は涙に濡れて恐怖に歪む。
その様が悪魔の嗜虐心を煽り舌なめずりをしながら凶相を喜悦に歪ませる。
歯の根が合わずガチガチとぶつかり、絶望が視界を染める。

不意に、白い何かがありすと悪魔の間を遮った。

(兎、さん……?)

涙に濡れたありすの瞳が丸く見開かれる。
彼女を守る様に彼女の召喚した兎が悪魔の前で威嚇の姿勢を取っていた。

「駄目……! 逃げ、て……!」

成人男性相当の悪魔に対するは、小学生のありすでも抱えられる程度の兎。
それはさながら象に立ち向かう蟻の様に絶望的な構図。
それを悪魔も理解しているのだろう。無駄なことをと言わんばかりに兎に対して嘲笑を浮かべる。
満足に動けない体を必死に向けてありすが兎に逃げるように促すも、兎は頑として逃げるそぶりを見せない。
悪魔は厭らしい笑みを浮かべながら抜いた剣を振り上げる。
見せつける気なのだ。たった一人の観客に、少女を守ろうとした健気なナイトが無惨に、残酷に散る様を。

「駄目ーーーーーッ!」

少女の絶叫と、悪魔の哄笑が重なった。





ボーパルバニーは ラームジュルグに とびかかった
2かい あたり 6の ダメージ

ラームジュルグは くびを はねられた!





「……え?」

その刹那に起こった光景を見て、ありすは呆けた声をあげる。
剣が振り下ろされるのと、兎が跳躍したのはほぼ同時だった。
剣撃をすり抜けた兎はそのまま悪魔の首筋へと向かう。
兎が口をあける、鋭く尖った前歯が危険な光を放った。
歯が二度閃き、紅が舞う。
ごとり、と音を立てて驚愕に満ちた表情を浮かべた悪魔の頭が落ちて転がった。
頭を失い、切断された首から噴水の様に血が吹き出して周囲を濡らす。
距離があった為か、ありすにかからなかった事は幸いだっただろう。

呆然と眺める事しかできないありすと、振り向いた兎の視線が重なる。
純白の体を朱に染めた兎の、血のように赤い目を見た所で、ありすの脳はこれ以上の精神的負荷を防ぐため、彼女の意識を強制的にシャットダウンさせた。
急に倒れたありすに駆け寄ろうとして兎、狂える魔術師のダンジョンにおいて数多の冒険者の首を切り落としてきた魔獣・ボーパルバニーは動きを止める。
この血に濡れた姿で近寄っても主である心優しき少女には逆効果である事を理解する程度の知能は持っていた。
ひくひくと鼻を動かし、困ったように虚空を見上げる。

アリスを導く時計ウサギというには、それは少々以上に血生臭すぎた。

【?????/1日目/朝】

【橘ありす@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(タブレット型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:死にたくない。殺したくない。帰りたい。
[状態]:気絶
[COMP]
1:ボーパルバニー@wizardry
[種族]:魔獣
[状態]:健康、血塗れ

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