俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。 サマナーズ・バトルロワイアルのまとめWikiです

矢車は高架下の道路に手足を投げ出すように横たわり、ぼんやりと高架橋を眺めていた。
彼は「完全調和」の信念のもと、ZECTの精鋭部隊「シャドウ」のリーダーとして栄光に満ちた日々を過ごしていた。
だがスタンドプレーでシャドウを出し抜くカブトに固執していたばかりに愛用のザビーゼクターに見限られて闇に堕ち、終いにはネイティブと化した相棒…影山を懇願されたとはいえ、この手で殺めた。

二人で約束した白夜を見に行く旅の途中で、この殺し合いに巻き込まれたのだ。
闇の中を転がり続けて、落ちた先は修羅の地獄。何の気なしに首に嵌められた金属の輪に触れる。

「ふふふっ……今の俺には丁度いい」

自嘲めいた笑みが矢車からこぼれる。
招かれた者達はさぞ輝いているのだろう。そんな眩しい者達に照らされるのは御免だった。
だから矢車は市街地に放たれた直後、逃げるように高架下に滑り込み、こうして寝転がっていた。

そういえば魔神皇を名乗る少年が何か言っていた気がする。
微睡んでいるような心地で魔神皇の宣言の内容を思い出した矢車が片手で支給品を探っていると、携帯電話が出てきた。

「……はぁー」

携帯電話を持ったまま、しばし硬直していたが矢車は大きく息を吐いたのち、プログラムを起動させる。
稼働音を鳴らす携帯電話を横に置き、うつ伏せになってアスファルトに頬を密着させる――冷たい。
身体に触れた小石が刺さり、地面が矢車の熱を奪い去っていく。今の自分に相応しい心地悪さだと思う。

眠るように目を閉じた矢車の内に奇妙な焦燥が走る。
目を開いてみたが視界には何も無い。反対側に顔を振り向けると、鎧を着こんだ人物が彼方に立っている。
但しその人物は皮膚が赤く、腕が四本ついている。異形の鎧戦士もこちらに気づいたらしく、矢車の方へ走ってきた。
しかし矢車は逃げない。
何も叶わないなら、せめて眠るように沈んでいきたい。ゆえに矢車は再び死体のように横たわり、ただ運命を受けいれる道を選んだ。

「俺もすぐそっちにいくよ……影山」

光輝く夜をお前と見たかった。日陰者を照らす光もあるのだと確かめたかった。二人だけの光を掴んで、ほんの少し救われたかった。
大きな虚無感と小さな無念を噛みしめた矢車は眼を閉じ、定められた死を待った。








――?音がする。

水気を伴った何かが爆ぜる音だ。
微かな疑念を抱いた矢車が目を開くと、巨大なキノコが傍に立っていた。
傘は赤く、部位としては柄に当たる白い胴体から左右一対の手足が生えている。
キノコの両拳は血に塗れ、足元には頭部を失った四本腕の戦士が縋り付くように倒れていた。
何が起こったのかは、たちどころに理解できた。

化けキノコが大儀そうに身体を動かす。化けキノコはこちらを振り向いたようで眉間に皺を寄せているような青い眼が矢車を見下ろしている。
数分程、矢車は化けキノコと向かい合っていた。

「お前も……何かを失くしたのか」

矢車は化けキノコに見覚えはなかった。
だが、化けキノコの眼の中に矢車は闇を見た気がした。

「……」

化けキノコは何も言わない。
見下ろされても苦しくない。
むしろその突き刺すような視線に、その両拳に――矢車は相棒の影を見た気がした。

「……一緒に来い。俺と一緒に地獄を巡ろう」

矢車はゆらりと立ち上がり、幽鬼のように高架下から抜け出した。
眩い光が矢車を突き刺す。焼き尽くされるような心地がする。矢車は大きく息を吐いた。

「……」
「……」

景色が変わった事を認めた矢車が一旦立ち止まって振り向くと、化けキノコが高架を背に立っていた。
化けキノコの歩行は鈍重そのものだったが、矢車の足取りも似たようなものだったので二人の距離は適度に保たれている。
ひょっとしたら自分達と同じように光に捨てられた者達もいるかも知れない。夢破れ、闇を理解する敗北者。
みんなで一緒に地獄へ行くのもいいか、と矢車は前方に視線を戻すと、闇を抱えた者を求めて再び歩き始めた。


【?????/1日目/朝】
【矢車想@仮面ライダーカブト】
[状態]:健康
[装備]:携帯電話型COMP
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:闇の住人を探す。
※参戦時期は48話終了後。
※キックホッパーには変身できません。

[COMP]
1:キノコ人@DARK SOUL
[種族]:妖樹
[状態]:健康

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