最終更新:ID:/Fl/cvtjiQ 2016年05月21日(土) 23:39:05履歴
ニンジャとは、平安時代の日本をカラテによって支配した半神的存在である。
しかし彼らはキンカク・テンプルで謎のハラキリ儀式を行い、歴史から姿を消した。
歴史は改竄され、隠蔽され、ニンジャの真実は忘れ去られる。
しかし! ここに一人のニンジャがいる。名はバンディット。
暗黒ニンジャ組織「ソウカイ・シンジケート」の一員にして、同シンジケートの最精鋭ニンジャ集団たる「シックスゲイツ」に名を連ねるニンジャだ。
茶色の忍者装束をまとい、背に刀を差したバンディットは、常人の三倍近い脚力を誇るニンジャである。
そのバンディットの前には、一人の人間――モータルが佇んでいた。
「ドーモ、バンディットです」
深々とオジギするバンディット。イクサの前に礼儀を示す行為だ。
例えこれから殺す相手であっても、アイサツを欠かしてはならない。古事記にもそう書かれている。
相手はニンジャではない。だが、バンディットにとってただのモータルでもない。
このモータルは、バンディットを召喚したサマナー……つまり、今のバンディットはニンジャでありながら悪魔なのだ。
「どうした、アイサツもできんのか! 所詮はただのモータルか」
バンディットは素早く三回側転を打ち、カタナを抜いてサマナーに突きつける。
サマナーは薄く細めた目でバンディットを見据えるのみで、答えようとも逃げようともしない。
バンディットはいらただしげに毒づく。ニンジャである自分がただのモータルに使役されるなど、到底許せる話ではない。
ここは一発、ガツンと力関係を示してやるつもりだった。ニンジャである自分が上位であり、モータルであるサマナーが下なのだと。
どうやらサマナーはNRS(訳注・ニンジャリアリティショック。非ニンジャの一般人が、伝説上の存在だと思っていたニンジャと接触する事によって発症する精神錯乱。)を発症したらしい。
「恐れで声も出ないか。だが俺は容赦せグワーッ!?」
「時田」
「な、な……何? 今何と言ったんだ?」
「名前を聞いたのではないのですか。だから名乗ったまでです」
脅しのつもりでずいとカタナを突き出した瞬間、バンディットの顔面に強烈なパンチが叩き込まれる!
反撃など予想していなかったバンディットにガードできるはずもなくたたらを踏んだ。
そしてサマナーは名乗った。アイサツ前のアンブッシュは一度だけ許されている。
であればこの攻撃は決して卑怯なものではなく、避けられなかったバンディットに非があった。
バンディットはここでようやくサマナーをまじまじと見据えた。
やや長く伸ばした髪、ノースリーブシャツから覗くしなやかに引き締まった二の腕。その腕には、まるで猛獣の爪で引き裂かれたような痛々しい傷痕が縦に走っている。
時田伸之助。現役高校生、兼ストリートファイター。通称ランカー狩り。
ストリートファイターたちのランキングに突如現れ、破竹の勢いでランカーを薙ぎ倒した謎のハンター。それが、バンディットを召喚したサマナーだった。
「と……トキタだと。貴様、モータルの分際でこの俺に!」
「あなたは僕の悪魔、なのでしょう。なら僕に従うのが道理では」
「モータルごときに頭を下げられるものか! イヤーッ!」
カタナを振り回すバンディット。サマナー――時田は、ふらふらと酔っているかのように身体をよろめかせる。
腕の一本でも切り落とせば自分が誰を敵に回したか思い知るだろう。そう考えたバンディットの思惑は、一瞬の後に容易く打ち砕かれた。
空気を裂いて奔る鋼鉄の刃は、風に揺れる木の葉のような時田の体捌きを捉えることはない。そして気がつけば懐に入られていた。
「イヤ……グワーッ! グワーッ! グワーッ! グワーッ! グワーッ! グワーッ! グワーッ!アバーッ!?」
腹に膝が突き刺さる。顎を拳が打ち抜く。頬に肘、腹に蹴り、側頭部に裏拳、爪先を踏まれ、脇腹に手刀、再び腹に蹴り。
繰り出したカタナの連撃全てにカウンターを叩き込まれ、バンディットは大きく吹き飛んだ。
「あ……アバッ……な、なんだ、貴様は……ただのモータルではないのか……?」
「あなたを召喚したサマナーです」
淡々と述べる時田はまったく息を乱してはおらず、ブザマに地面に転がるバンディットを見下ろしている。
バンディットの背筋に寒気が走る。今の僅かな交錯ではっきりわかってしまった。
このモータルは、カラテにおいてバンディットの遥か上を行っている……!
一発一発はさほど重くないパンチだったが、バンディットの攻撃全てに同時にカウンターを合わせることで、巨大な一発のパンチを見舞ったようなものだった。
これこそが、時田がインドでの修行の果てに開眼した闘技、同撃酔拳。
既存のセオリーに囚われない創造的な格闘センスと圧倒的な散打を以って、敵の攻撃に対して同時に複数のカウンターを叩き込む絶技であった。
ダメージで立ち上がれないバンディットに対し、時田は無造作に踏み込んだ。
「ま、待てグワーッ!」
軽く助走をつけ、空中で一回転し遠心力を乗せた蹴りがバンディットを襲う!
鼻の骨を文字通り粉微塵に粉砕され、バンディットはいよいよ血反吐を撒き散らしてのたうち回る。
とどめを刺さんと近づいてくる時田に向かってバンディットは必死に両手を突き出し、止まるようにドゲザする。
「待て! なぜ俺を攻撃する!? 俺はお前の悪魔だ、敵ではない!」
「先に攻撃してきたのはそっちですよ」
「うグッ……あ、あれは違う! 手違い、そうミステイクだ! 俺はお前に逆らうつもりはない!」
宣告までの尊大な態度から一転、バンディットは血を頭にこすりつけて時田に恭順の意を示した。
そもそもバンディットは斥候ニンジャだ。カラテに優れているわけでもなく、こうして追い詰められればプライドなど瞬きの間に失せてしまう。
「誓う! 俺はお前の悪魔として全力で働く! だから許してくれ!」
「……よくわかりませんが、戦う気がないのならもういいです」
時田は怒りや侮蔑、あらゆる感情を見せることなくバンディットから視線を切った。もはや思考する価値など無いというように。
その無関心に屈辱を覚えるバンディットだが、カラテで上回る相手に不満を述べるわけにも行かない。
時田の機嫌を損ねないよう、彼に取り入るように卑屈に言葉を選んだ。
「さ、サマナーよ。これからどうするのだ?」
「……まずは誰か探しましょうか。出会った人を全員倒していけば、あの魔神皇という男に辿り着くでしょう」
「アイエッ!? 全員倒すだと!?」
やはり淡々と恐るべき方針を述べる時田。
出会ったものを全員倒すということは、彼の従者たるバンディットもまた、熾烈なイクサへ突き進むを意味している。
これではまったく助かっていない。暗澹たる心持ちでバンディットは主に問う。
「な、何故そんな困難な真似を?」
「何故……?」
ここに来てようやく、ともすれば眠たげに細められていた時田の瞳が鋭く絞られる。
まるで目の前の宿敵を睨みつけているように。
「こんなことをしている暇なんてないんです。僕はマキさんを壊さないとならない……」
ぼそりと呟かれた言葉、後半部分はバンディットの耳には届かない。
魔神皇の言葉になど一切興味が無い。ただ、己の道を邪魔された苛立ちだけがある。
敵意でも殺意でもない虚無。暗く冷たい執着こそが、時田を突き動かすただ一つの想い。
生死の狭間で見出した一つの真理。
人を愛さず死すもまた一局。それもまた人間の世の勝者なり。
かつて憧れた女の影を求め、時田伸之助は闘争の渦に身を投じる。
望み得た力と意志で、愛した者を壊すために。
【?????/1日目/朝】
【時田伸之助@エアマスター】
[状態]:健康
[装備]:ガラケー型COMP
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:相川摩季=エアマスターを探し、壊す。いないのなら速やかに殺し合いから脱出する。
[状態]:健康
[COMP]
1:バンディット@ニンジャスレイヤー
[種族]:ニンジャ
[状態]:爆発四散寸前
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