俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。 サマナーズ・バトルロワイアルのまとめWikiです


「ああ、クソ、クソッタレ!」

長谷川千雨は、頭を掻きむしり吐き捨てた。
理由など無い。
ただ、そうしていないと落ち着かなかったというだけだ。

「何だよコレは……何なんだよ!」

突如始まった殺し合い。
突如示された悪魔の存在。

突拍子もなかった。現実味などまるでなかった。
なのに千雨は、直感的に理解してしまった。
これが夢の類ではないと。

「ふざけんなよ……ンで私が……ッ」

千雨はリアリストだった。
例え学園都市まるごと全部クレイジーだとしても、ただ一人常識人であり続けた。
魔法なんてないさ、子供教師なんてウソさ、そんなの絶対おかしいよ!と言える人物だった。

だが、千雨は、一度足りとも目の前の非日常を“夢”だと断じたことはなかった。
起きていることが異常であると認識しつつも、実際に起きてしまっていることとして受け入れていた。
そして、それ故に、狂った状況をどうにもできないことに、誰もどうにかしてくれないということに、苛立ちを覚え続けていたのだ。

「っざけやがって……」

千雨は、この殺し合いを受け入れた。
誰よりも異常性を理解しているが、しかしそれを否定することはしなかった。
今までのように、ただ心の中で異常性に毒を吐いているだけでは駄目だ。
これまでのように流されていては、命を落とすのが目に見えている。

(仮に殺したとしても、緊急避難ってやつになるよな……)

率直に言って――千雨にとって、他の参加者の命など、“どっちでもよかった”んだ。
人殺しそのものには抵抗があるが、しかしながら誰かが死ぬことそのものにはさほど抵抗を感じていない。
見たこともない人間で、なおかつ自分を殺すかもしれない人間で、更に言うなら最後の一席を賭けたゼロサムゲームの相手だ。
死亡を喜ぶことこそあれど、悲しむ余裕なんてない。

(問題は……この悪魔ってやつだよな……)

直接殺したくはないが、それでも生き残るためならば仕方がない。
何せ千雨は、どこにでもいるただの中学生なのだ。
いや、コンピューターウイルスの作成技術や、コスプレ衣装製作能力、フォトショ加工技術なんかは一流のソレではあるが、そんなものこの場においては何の役にも立たない。
ここに居るのは全てのネットワークを統べる電子の王などではなく、別人になりきれる衣装も己の信者も失くしてしまった哀れな裸の王様だ。

(クソッ、冗談じゃねえ……冗談じゃねえが……呼ぶしかねえ、か)

何の冗談か、支給されたのはアッツアツのおでんだった。
はんぺん、ちくわぶ、こんにゃく……様々な具材が入っている。
勿論食べようなんて気にはならないが、それでも恐る恐る手を伸ばす。
確かに熱いが、しかしこれは、千雨のよく知る精密機器が発するソレと同じものだった。

(そうだ、しょうがねえ。こんな状況なんだ。“私”は悪くねェ……!)

現状を受け入れ、そして死にたくない千雨にとって、選べる選択肢など1つしかなかった。
“責任転嫁”
それだけが、己の心を壊さずに済む方法。

(どんな悪魔が出てくるか……それによって、行動を決めるッ……!)

死なないための大事な選択を第三者に投げることで、自責の念から逃れようという愚かな行為。
それでも、そうするより他なかった。
普通だからこそ千雨には絶対的な正義の心などなかったし、普通だからこそ迷わず殺しに走ることすら出来なかった。

(圧倒的な力を持つ悪魔が出たら、この殺し合いに迷わず乗る。
 それが搦手系だとしても、なんとか有効活用して殺し合いに乗る。
 だが――勝てそうにないような奴が出てきたら、殺し合いは諦めて、誰かと徒党を組んでとにかく命を守るッ)

まるでコインでも弾くかのように、熱々おでんに触れる。
ネギ――奇しくも、忌々しい子供教師の名前と同じソレだ――に触れた時、COMPが光を発した。
そして、千雨の命運を決める、悪魔が姿を表した。

「なッ……!?」

現れたのは、スラリとした体型の女性。
禍々しい化物じみた姿でなく、限りなく人間のような姿。

「何っ……!」

しかしながら、彼女は人間でない。人間ということはありえない。
鋭い爪に角といった人間にはない部位が、彼女の非人間性を高める。
それに、そもそも普通の人間が、COMPの操作で召喚されるのはありえない。

故に、目の前の少女は悪魔である。
少なくとも、悪魔に類する、人間外の生物である。
それは分かる。分かってしまう。なのに、どうしても、理解が追い付くことはない。

「おまっ……何、で……」

誰も知ってるヤツなんて居ないと思っていた。
仮に居ても、顔を合わせない内に死んでいくだろうと思っていた。
思い込もうとしていた。

そうでないと、殺し合いをする決意が揺らぐと思ったから。
でも、あの善人どもを盲信出来るほど、自分は強くないから。
きっと彼女達の手を取ることも出来ず、でも振りきれる事もできず、中途半端になってしまうから。
――仮にクラスの連中がいても、自分にとって良い方向には転ばないから。
だから、クラスの連中と会うことだけは、警戒していたというのに。
なのに――

「お前がここに居るんだよ!」

なのに、能面のようなその表情に、千雨は見覚えがあった。
今しがた召喚した、自分の相棒たる悪魔に、見覚えがあったのだ。
こんなこと――想定すら、していなかった。

「ザジィィィ!」

道化師は何も答えず、いつものように、ほんの僅か口元を緩めるだけだった。



【長谷川千雨@魔法先生ネギま!】
[状態]:健康
[装備]:COMP(アッツアツのおでん型)
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[思考・状況]
基本:死にたくねェ……殺すのはしょうがないとは思うが……どうすりゃいいんだ……
[COMP]
1ザジ・レイニーデイ:魔法先生ネギま!
[状態]:健康

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

管理人/副管理人のみ編集できます