最終更新:ID:PcaMvOXMag 2016年05月21日(土) 17:30:29履歴
『COPPELION(コッペリオン)』――それは、原子力発電所の事故から人々を救うために作られた人類の救世主。
彼らは遺伝子操作によって、放射能を無効化させるイオン交換体の体細胞を持っているのだ。
故に、彼らは、幼少期から人助けのための訓練を行ってきた。
瓦礫が散乱した場所の迅速な移動法から、意識を失った人への応急処置まで一通り何でもできるように。
そのうえ遺伝子操作の際に、一人一人に特殊な能力が付加されている。
そんな人命救助のエリート、それがコッペリオンなのである。
*
「なんなんや、この状況……」
コッペリオンの中でも、特に人命救助に優れた者達で結成された部隊――通称『保健係』。
その保健係のリーダーである成瀬荊は、唐突に巻き込まれた殺し合いに困惑を隠せなかった。
あまりにも自分の常識とはかけ離れた状況である。
「うちらの助けを待ってる人達がおるのに、殺し合いなんかしてる場合やあらへん」
復興を待ち望んでいる人々を助けなければならないのに、こんなふざけた事で停滞しなくてはいけないなんて間違っている。
成瀬は歯痒い気持ちを抑え、まず何をしなくてはならないのかを冷静に判断することにした。
「連れてこられた全員が殺し合いしたがっとるわけはないはずや……あたしみたいなんも少なからずおるやろうし」
この会場には殺し合いに乗る者、殺し合いを止める者、状況がわかっていない者など様々である。
当然、か弱い存在は凶悪な存在に淘汰されてしまう危険性がある。
「……いや、どんな状況でも、助けを求める人達を助けるんがコッペリオンや」
原発の被災地ではなくとも、自分以外に手を差し伸べる人々が居るとしても、助けを待っている人を見て見ぬふりをしていい理由にはならない。
成瀬は決心した。帰りたがっている人達を助けて、みんなで一緒に帰る事を。
「あの男は悪魔がどうとか言うとったな……この荷物に入っとるんか?」
成瀬は遺伝子操作によって平均的に一般人を超えた身体能力を持っているが、本当に悪魔なんて存在がいるとしたらどこまで通用するかはわからない。
内心恐々としつつも、判断するためには接触せざるを得なかった。
荷物を確かめると、腕に巻けるようになっている小型のノートパソコンの様な物が見つかった。
成瀬は恐らくそれがCOMPなのだろうと推測し、腕に装着する。
すると、画面が起動して詳細なメニュー画面が出現した。
「悪魔召喚プログラム……これやな」
一際目につく悪魔の文字。
このプログラムを起動してしまったら、何かが変わってしまう気がした。
しかし、もう会場から出ることは叶わないのだ。
おそらく悪魔は生き残るために重要な存在、押すしかない。
「うりゃ!」
起動ボタンを押し、身構える。
溢れる光から視界が晴れると、そこには――何もいなかった。
「は?」
周囲を見渡しても、それらしき姿は見当たらない。
てっきり角が生えてバサバサと羽ばたく悪魔が出てくると思っていた成瀬は、上空を見上げる。
しかし、そこには鳥さえ飛んでいない空虚な空が広がるばかりである。
すると――ちょこん、と成瀬の足に何かが触れた。
見下ろすと、明らかに生物ではない革製のテディベアが立っていた。
「なんや?――もしかして、おまえが悪魔なんか?」
テディベアは喋ることも頷くこともせずじっと立っている。
成瀬はしゃがんでテディベアに軽く触れるが、一切動く気配はない。
よく観察しようと、成瀬が抱き上げた――その時
「重っ!!」
通常のぬいぐるみ感覚で持ち上げようとした成瀬は、思わず転んでしまった。
それもそのはず、このテディベアは実に9.4キログラムもあるのだ。
「な、なんやお前、機械でも入っとるんか?」
パンパンとスカートについた汚れを払い、成瀬は再びテディベアを抱え上げる。
一度重さを知ってしまえば、10キロ以下の重さなど成瀬にとっては軽い物である。
「うーん、ホンマに悪魔なんか? よく出来たロボットにしか見えへんけど……」
冷たく首にまとわりつく首輪も相まって、最先端の機械だと言われたほうがまだ説得力がある。
このテディベアだけでは判断がつかないので、成瀬はとりあえず他の参加者を探そうと歩き出した。
その腕の中にテディベアを抱えたままで。
成瀬荊は知らない、そのテディベアはとある財団によって管理されている危険な存在であることを。
成瀬荊は知らない、そのテディベアは一度自分から離れれば致死量の放射線を撒き散らしながら人を殺して周ることを。
成瀬荊は気付けない、出現した瞬間から周囲が汚染され始めていることを。
人類の救世主である故に。コッペリオンである故に。
――成瀬荊は、気づくことが出来ないのだ。
腕の中にいるそれが、一番の敵だということを。
【?????/1日目/朝】
【成瀬荊@COPPELION】
[状態]:健康
[装備]:COMP(通常型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:助けを求めている人々を救い、生きて脱出する。
[COMP]
1:SCP-1145(ナガサキ・テディ)@SCP Foundation
[種族]:SCP
[状態]:健康
※クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP FoundationにおいてLucavex Ayanami氏が創作されたSCP-1145のキャラクターを二次使用させて頂きました。
ttp://www.scp-wiki.net/scp-1145
彼らは遺伝子操作によって、放射能を無効化させるイオン交換体の体細胞を持っているのだ。
故に、彼らは、幼少期から人助けのための訓練を行ってきた。
瓦礫が散乱した場所の迅速な移動法から、意識を失った人への応急処置まで一通り何でもできるように。
そのうえ遺伝子操作の際に、一人一人に特殊な能力が付加されている。
そんな人命救助のエリート、それがコッペリオンなのである。
*
「なんなんや、この状況……」
コッペリオンの中でも、特に人命救助に優れた者達で結成された部隊――通称『保健係』。
その保健係のリーダーである成瀬荊は、唐突に巻き込まれた殺し合いに困惑を隠せなかった。
あまりにも自分の常識とはかけ離れた状況である。
「うちらの助けを待ってる人達がおるのに、殺し合いなんかしてる場合やあらへん」
復興を待ち望んでいる人々を助けなければならないのに、こんなふざけた事で停滞しなくてはいけないなんて間違っている。
成瀬は歯痒い気持ちを抑え、まず何をしなくてはならないのかを冷静に判断することにした。
「連れてこられた全員が殺し合いしたがっとるわけはないはずや……あたしみたいなんも少なからずおるやろうし」
この会場には殺し合いに乗る者、殺し合いを止める者、状況がわかっていない者など様々である。
当然、か弱い存在は凶悪な存在に淘汰されてしまう危険性がある。
「……いや、どんな状況でも、助けを求める人達を助けるんがコッペリオンや」
原発の被災地ではなくとも、自分以外に手を差し伸べる人々が居るとしても、助けを待っている人を見て見ぬふりをしていい理由にはならない。
成瀬は決心した。帰りたがっている人達を助けて、みんなで一緒に帰る事を。
「あの男は悪魔がどうとか言うとったな……この荷物に入っとるんか?」
成瀬は遺伝子操作によって平均的に一般人を超えた身体能力を持っているが、本当に悪魔なんて存在がいるとしたらどこまで通用するかはわからない。
内心恐々としつつも、判断するためには接触せざるを得なかった。
荷物を確かめると、腕に巻けるようになっている小型のノートパソコンの様な物が見つかった。
成瀬は恐らくそれがCOMPなのだろうと推測し、腕に装着する。
すると、画面が起動して詳細なメニュー画面が出現した。
「悪魔召喚プログラム……これやな」
一際目につく悪魔の文字。
このプログラムを起動してしまったら、何かが変わってしまう気がした。
しかし、もう会場から出ることは叶わないのだ。
おそらく悪魔は生き残るために重要な存在、押すしかない。
「うりゃ!」
起動ボタンを押し、身構える。
溢れる光から視界が晴れると、そこには――何もいなかった。
「は?」
周囲を見渡しても、それらしき姿は見当たらない。
てっきり角が生えてバサバサと羽ばたく悪魔が出てくると思っていた成瀬は、上空を見上げる。
しかし、そこには鳥さえ飛んでいない空虚な空が広がるばかりである。
すると――ちょこん、と成瀬の足に何かが触れた。
見下ろすと、明らかに生物ではない革製のテディベアが立っていた。
「なんや?――もしかして、おまえが悪魔なんか?」
テディベアは喋ることも頷くこともせずじっと立っている。
成瀬はしゃがんでテディベアに軽く触れるが、一切動く気配はない。
よく観察しようと、成瀬が抱き上げた――その時
「重っ!!」
通常のぬいぐるみ感覚で持ち上げようとした成瀬は、思わず転んでしまった。
それもそのはず、このテディベアは実に9.4キログラムもあるのだ。
「な、なんやお前、機械でも入っとるんか?」
パンパンとスカートについた汚れを払い、成瀬は再びテディベアを抱え上げる。
一度重さを知ってしまえば、10キロ以下の重さなど成瀬にとっては軽い物である。
「うーん、ホンマに悪魔なんか? よく出来たロボットにしか見えへんけど……」
冷たく首にまとわりつく首輪も相まって、最先端の機械だと言われたほうがまだ説得力がある。
このテディベアだけでは判断がつかないので、成瀬はとりあえず他の参加者を探そうと歩き出した。
その腕の中にテディベアを抱えたままで。
成瀬荊は知らない、そのテディベアはとある財団によって管理されている危険な存在であることを。
成瀬荊は知らない、そのテディベアは一度自分から離れれば致死量の放射線を撒き散らしながら人を殺して周ることを。
成瀬荊は気付けない、出現した瞬間から周囲が汚染され始めていることを。
人類の救世主である故に。コッペリオンである故に。
――成瀬荊は、気づくことが出来ないのだ。
腕の中にいるそれが、一番の敵だということを。
【?????/1日目/朝】
【成瀬荊@COPPELION】
[状態]:健康
[装備]:COMP(通常型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:助けを求めている人々を救い、生きて脱出する。
[COMP]
1:SCP-1145(ナガサキ・テディ)@SCP Foundation
[種族]:SCP
[状態]:健康
※クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP FoundationにおいてLucavex Ayanami氏が創作されたSCP-1145のキャラクターを二次使用させて頂きました。
ttp://www.scp-wiki.net/scp-1145
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