見慣れた街、東京。
けれど、人の気配のない寂れたその街は、東京であり東京ではない。
そんな場所に立つ一人の少女は、爪が食い込むほどの力で、握り拳を作る。
無力さと、情けなさ。
彼女を支配しているのは、その二つだった。
突如として訳の分からない世界に迷い込み、魔神皇と名乗る少年に殺し合いを命じられ。
同年代の二人の少年少女が死んでいく様を、見ていることしか出来なかった。
顔は青ざめ、足は震え、指の一本すら動かず、ただ、立ち尽くすのみ。
声すら出ないほどの恐怖に、屈してしまった。
そして、結局あの場で何も出来ないまま、この場所へと来てしまった。
ふと、首元に手を触れる。
手から伝わるのは、冷たい感触。
あの少女の命を奪った物と同じ首輪が着けられていることが、嫌でも分かる。
もし、あの時何か行動に移していたら。
死んでいたのは、自分だったのかもしれない。
安堵してしまいたくないことに、安堵してしまった。
自分じゃなくてよかったと、心からそう思ってしまった。
そんな自分が、情けなくてたまらないのだ。
「怖い」
思わず零れたのは、本音。
世界を救う英雄でもなく、絶望と戦う騎士でもなく、国を支える柱としてでもなく。
ただ一人の少女、獅堂光としての、等身大の本音。
「……でも」
けれど、彼女は"獅堂光"だった。
どんなに挫けそうでも、どんなに絶望しか無くても、決して諦めることはなかった。
そうだ、"らしくない"。
そう思いながら、光は自分の頬を強めに叩く。
今、この場に居るのは自分一人。
かつての仲間は、誰一人として傍に居ない。
それでも、この胸に宿る、今燃えあがろうとしている勇気が、彼女を奮い立たせる。
「海ちゃん、風ちゃん。私、頑張るよ」
そして、嘗ての仲間の名前を口にしながら、空へと拳を突き上げて、誓った。
一段落し、落ち着きを取り戻した所で、光は今の状況を整理する。
辺りはどう見ても東京なのだが、人の姿は見えない。
それだけでなく、使えないはずの"魔法"がここでは使えることから、自分の知っている東京ではないことを確信する。
これも、あの魔神皇の仕業なのだろうか。
思い当たる可能性を頭の隅に置きながら、彼女は袋の道具を確かめ始める。
まず、取り出したのは、一本の剣であった。
戦闘が起きたとしても、ひとまずこれで対処できるだろう。
念の為に数回、実戦を想定して素振りをしてみる。
その感覚は、想像以上に軽い。
セフィーロで使っていた剣には劣るが、手に馴染みやすく扱いやすい剣だった。
それを確かめたところで、道具の確認に戻ろうとした、その時だった。
「貴方が私のサマナーですの?」
何処からとも無く、自分ではない声が耳に入った。
驚いて振り向いてみると、そこには白のドレスに身を纏った、白銀のポニーテールの少女が、自分を見ていたのだ。
「えっ、あなた、何処から……?」
「何処からも何も、貴方が呼び出したんですのよ?」
呼び出した、という言葉を聞いて、光は思い出す。
そういえば、魔神皇がCOMPと悪魔がどうのこうのと言っていた。
ということは、この剣がCOMPで、彼女が悪魔ということなのだろうか。
俄には信じられないが、そういうことらしい。
「ワイス。ワイス・シュニー。この私と共に戦えることを、光栄に思いなさい」
そんなことを考えている光をよそに、現れた少女、ワイスは礼儀正しく一礼をする。
漂う気品さと高貴さ、そしてにじみ出る優しさ。
それを感じた光は、思わずふふっと笑ってしまう。
「何がおかしいのかしら?」
「あ、ごめんなさい。ただ……」
ワイスの指摘に謝罪しながら、光は微笑みながら言葉を続ける。
「海ちゃんみたいだなって思ったから、安心できたんだ」
そう、光はワイスの姿に、どこか、彼女に似ていると、思っていた。
見た目こそ全然違う、けれども、話す感じは、彼女と同じだった。
まるで、大切な友と出会えたようだ、と、光の心は安堵していた。
「私は光、獅堂光だよ。よろしくね、ワイス」
そう言って、光は満面の笑みで片手を差し出す。
けれど、その手は握り返されることはなく。
ワイスは両手を腰に当てて、ため息をついていた。
「……ワイス?」
怒らせてしまったのだろうか、と光は恐る恐る問いかける。
すると、彼女は少し無愛想な顔で、光を見つめて口を開いた。
「なんだか誰かのことを思い出してしまっただけですわ」
それから、ふっ、と笑う。
釣られて光がふっと笑い返したと同時に、ワイスもその手を握り返す。
そして彼女たちは、互いの友を互いの姿に重ねあわせながら。
この、東京の街を歩き出した。
【?????/1日目/朝】
【獅堂光@魔法騎士レイアース】
[状態]:健康
[装備]:COMP(剣型)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:魔神皇を止める。
[COMP]
1:ワイス・シュニー@RWBY
[種族]:超人
[状態]:健康
けれど、人の気配のない寂れたその街は、東京であり東京ではない。
そんな場所に立つ一人の少女は、爪が食い込むほどの力で、握り拳を作る。
無力さと、情けなさ。
彼女を支配しているのは、その二つだった。
突如として訳の分からない世界に迷い込み、魔神皇と名乗る少年に殺し合いを命じられ。
同年代の二人の少年少女が死んでいく様を、見ていることしか出来なかった。
顔は青ざめ、足は震え、指の一本すら動かず、ただ、立ち尽くすのみ。
声すら出ないほどの恐怖に、屈してしまった。
そして、結局あの場で何も出来ないまま、この場所へと来てしまった。
ふと、首元に手を触れる。
手から伝わるのは、冷たい感触。
あの少女の命を奪った物と同じ首輪が着けられていることが、嫌でも分かる。
もし、あの時何か行動に移していたら。
死んでいたのは、自分だったのかもしれない。
安堵してしまいたくないことに、安堵してしまった。
自分じゃなくてよかったと、心からそう思ってしまった。
そんな自分が、情けなくてたまらないのだ。
「怖い」
思わず零れたのは、本音。
世界を救う英雄でもなく、絶望と戦う騎士でもなく、国を支える柱としてでもなく。
ただ一人の少女、獅堂光としての、等身大の本音。
「……でも」
けれど、彼女は"獅堂光"だった。
どんなに挫けそうでも、どんなに絶望しか無くても、決して諦めることはなかった。
そうだ、"らしくない"。
そう思いながら、光は自分の頬を強めに叩く。
今、この場に居るのは自分一人。
かつての仲間は、誰一人として傍に居ない。
それでも、この胸に宿る、今燃えあがろうとしている勇気が、彼女を奮い立たせる。
「海ちゃん、風ちゃん。私、頑張るよ」
そして、嘗ての仲間の名前を口にしながら、空へと拳を突き上げて、誓った。
一段落し、落ち着きを取り戻した所で、光は今の状況を整理する。
辺りはどう見ても東京なのだが、人の姿は見えない。
それだけでなく、使えないはずの"魔法"がここでは使えることから、自分の知っている東京ではないことを確信する。
これも、あの魔神皇の仕業なのだろうか。
思い当たる可能性を頭の隅に置きながら、彼女は袋の道具を確かめ始める。
まず、取り出したのは、一本の剣であった。
戦闘が起きたとしても、ひとまずこれで対処できるだろう。
念の為に数回、実戦を想定して素振りをしてみる。
その感覚は、想像以上に軽い。
セフィーロで使っていた剣には劣るが、手に馴染みやすく扱いやすい剣だった。
それを確かめたところで、道具の確認に戻ろうとした、その時だった。
「貴方が私のサマナーですの?」
何処からとも無く、自分ではない声が耳に入った。
驚いて振り向いてみると、そこには白のドレスに身を纏った、白銀のポニーテールの少女が、自分を見ていたのだ。
「えっ、あなた、何処から……?」
「何処からも何も、貴方が呼び出したんですのよ?」
呼び出した、という言葉を聞いて、光は思い出す。
そういえば、魔神皇がCOMPと悪魔がどうのこうのと言っていた。
ということは、この剣がCOMPで、彼女が悪魔ということなのだろうか。
俄には信じられないが、そういうことらしい。
「ワイス。ワイス・シュニー。この私と共に戦えることを、光栄に思いなさい」
そんなことを考えている光をよそに、現れた少女、ワイスは礼儀正しく一礼をする。
漂う気品さと高貴さ、そしてにじみ出る優しさ。
それを感じた光は、思わずふふっと笑ってしまう。
「何がおかしいのかしら?」
「あ、ごめんなさい。ただ……」
ワイスの指摘に謝罪しながら、光は微笑みながら言葉を続ける。
「海ちゃんみたいだなって思ったから、安心できたんだ」
そう、光はワイスの姿に、どこか、彼女に似ていると、思っていた。
見た目こそ全然違う、けれども、話す感じは、彼女と同じだった。
まるで、大切な友と出会えたようだ、と、光の心は安堵していた。
「私は光、獅堂光だよ。よろしくね、ワイス」
そう言って、光は満面の笑みで片手を差し出す。
けれど、その手は握り返されることはなく。
ワイスは両手を腰に当てて、ため息をついていた。
「……ワイス?」
怒らせてしまったのだろうか、と光は恐る恐る問いかける。
すると、彼女は少し無愛想な顔で、光を見つめて口を開いた。
「なんだか誰かのことを思い出してしまっただけですわ」
それから、ふっ、と笑う。
釣られて光がふっと笑い返したと同時に、ワイスもその手を握り返す。
そして彼女たちは、互いの友を互いの姿に重ねあわせながら。
この、東京の街を歩き出した。
【?????/1日目/朝】
【獅堂光@魔法騎士レイアース】
[状態]:健康
[装備]:COMP(剣型)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:魔神皇を止める。
[COMP]
1:ワイス・シュニー@RWBY
[種族]:超人
[状態]:健康
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