俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。 サマナーズ・バトルロワイアルのまとめWikiです




 逃げられれば、どれだけ良かっただろうか。



 都会独特の空気の重さ、立ち並ぶビル、隙間から差し込む太陽の光。
 何度か来たことはある東京によく似た景色の街の一角に、一人の少女が座り込んでいる。
 頭を抱え、小刻みに震え、目には涙を浮かべて蹲る。
 しがない高校生である彼女、真鍋和にはそうすることしか出来なかった。

 思い出せるのは、自分の家で眠りに就いた事。
 鍵は閉めているし、特に違和感を感じることもなかった。
 けれど、目が覚めてみればご覧の有り様。
 学校の体育館のような場所で目を覚まして、服は何故か制服に着替えさせられていて。
 一体ここがどこなのか、と理解する前に、同い年くらいの一人の男の子が現れて。
 そして、にわかには信じがたい言葉が告げられた。

「――――君たちに、最後の一人になるまで殺し合いをして貰うためだ」

 何を言っているんだろう、正直そう思った。
 けれど、その意味はすぐに理解した、いや、させられる事になった。
 アニメみたいな紫の炎が、一人の男の子を焼き払って。
 それからけたたましい警告音の後に、一人の女の子の首が吹き飛んだ。
 たったそれだけ、ほんの数分も無い間に、人間が二人死んだ。

「う、げえええっ……」

 飛び散る赤、鉄と人の肉が焼ける匂い。
 思い出してしまったそれらから来る、不快感。
 拒否反応を起こす体は、胃液を逆流させ、喉へと到達させていく。
 それを止められる訳もなく、地に蹲ったまま、和はそれを吐き出していく。
 際限なく吐出される、透明な胃液。
 それがようやく落ち着いた時、嫌にクリアな意識が、現実を認識させようと迫る。

「い、嫌……」

 無心で手を伸ばしたのは、側に置かれていた袋。
 助けを求めるように、中身を手当たりしだいに探っていく。

「ひっ……」

 真っ先に現れたのは、黒く光る、冷たい、固形物。
 映画でしか見たことのないそれを、和はよく知っている。
 それは、銃。人の命を奪う、武器。
 殺し合いを生き抜くための、力。

「う、うわ、わわ」

 まるで汚いものを触ってしまったかのように、和はそれを投げ飛ばす。
 何も見なかった、そう言い聞かせているかのように、袋を漁り続ける。
 そして、和は袋からあるものを取り出す。
 それはなんてことはない、普通のヘッドホンだった。
 けれど、今の彼女には普通であることが何よりも有りがたかった。
 ここには無い、これまで過ごしてきた、自分の日常。
 それに近い物を、手に出来たのだから。

 しかし、一つの大きな誤算があった。
 和が縋るように身につけたヘッドホン。
 それは、只のヘッドホンではなかった。
 目を開けて、しっかりと見ていれば、気づけたかもしれない。
 そのヘッドホンが、僅かな光を放っていたことに。

「べろべろばぁーーーーーーっ!!」

 突如として、大声が響く。
 心臓を吐き出してしまいそうなほど驚きながら、慌てて後ろを振り返る。
 そこには、空のような色の髪をした、オッドアイの少女が立っていた。

 ぷつん。

 それをきっかけに、何かが切れる音が聞こえて、ふっと視界が白んでいった。

「やった! 大成功!!」

 そんな彼女の事もつゆ知らず、呼び出された悪魔――――多々良小傘は、喜びに満ち溢れていた。
 誰かを驚かせること、長らく成功していなかったそれに、久々に成功することが出来たからだ。
 そして、久々の感覚を隅から隅まで味わうように、頬を抑えながら"食"べつくした。

「……………………ありゃ?」

 自分が引き起こした事がきっかけの気まずさに気がつくのは、少し後の話である。

【?????/1日目/朝】
【真鍋和@けいおん!】
[状態]:気絶
[装備]:COMP(ヘッドホン型)
[道具]:基本支給品、拳銃(種類、残弾不明)
[思考・状況]
基本:?????
[COMP]
1:多々良小傘@東方Project
[種族]:怪異
[状態]:健康

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