俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。 サマナーズ・バトルロワイアルのまとめWikiです

 己が右腕を、持って生まれた精神感応性物質返還能力――通称『アルター能力』によって、周囲の物質を原子レベルで分解し、虹色に輝くアルター粒子へと変換。
 それを用いて、右腕を、自分自身を形成する最大のエゴである“殴る”ことに特化した異形へと変え、カズマは右拳を目の前に立つ標的――人の形をした異形へと叩きこんだ。
「気に入らねぇ……!」
 ここに至る経緯は、極めて単純。
 勝手に連れて来られて、勝手に目の前で子供が死ぬところを見せつけられて、勝手に殺し合えと言われて、勝手にまた変な場所へと飛ばされて、激しくむかついていた。
 左腕に違和感があるので見てみたら、見たことも無いヘンテコな機械を勝手に嵌めさせられていた。
 苛立ちのあまり、左手で手近なものを殴ったら機械――ガントレット型のCOMPが誤作動して、封じられていた悪魔が召喚された。
 そして、その悪魔と話し始めたのだが……これが驚くほど、カズマの神経を逆撫でし、苛立たせ、ムカつかせる。
 だから、殴った。自慢の右腕で、思い切り、容赦なく。
 アルターを用いねば、ダメージを通せないほどの相手だと直感すればこそ。
「何がだ? 我が主、カズマよ」
 顔面にカズマの拳を受けながらも、人型の異形は平然と言葉を紡ぐ。
 口も無いのにどこから喋ってるんだとは思いつつも、カズマは拳を引き抜いて、問いに答える。
「まず第一に、あのマジなんたら言うガキが気に入らねぇ。俺は誰かに命令されるのが嫌いなんだ。ノゥとしか言わねえ。
第二に、殺したくも無い奴を殺せってのも気に入らねぇ。だったらてめぇで殺せって話だ。
そして第三に! てめぇの、そのスカした、見下した態度が気に入らねぇ!」
 再びの拳。次に狙うは、人型の暗雲の如き異形が唯一纏う、風神雷神の如き羽衣。
 ご丁寧に、どてっぱらの前で交差している。ここを狙えとばかりの場所に拳を打ち込み――
 まるで、山に向けて拳をぶつけるような感触を覚えた。
 カズマの拳を受け止めて、人型の暗雲は、顔に当たる部分に雷を迸らせ、雷光を灯す双眸と合わせて笑みを作る。
「見下す? 当然であろう。我は、空に在り、万の頭上を覆いし、天蓋の主。地上の万物を見下ろすのは、我が日常。いつものことだ」
 全てを見下ろして当然。いつものこと。加えて、如何にも大物ぶった口の利き方、言い回し。
 カズマの堪忍袋の緒は疾うに切れ飛び、袋自体が膨張していく。
「黙れよ、雲野郎。雲のくせに硬ぇんだよ」
 カズマの今言ったとおり、目の前にいる異形は自らを雲のバケモノと名乗った。そして、それは事実である。
 一面の空を覆うほどの意志と力を持った雲が、人間大へと凝縮されたもの。それこそが、彼。
「雲野郎ではない。我は、雲の闇(かたわら)、万象王である。……このやりとりも、もう何度目だ?」
「知るかよぉ!」
 返事と同時に、拳を振るうが今度は届かなかった。カズマの拳が届くより早く、万象王の蹴りがカズマを捉え、蹴り飛ばしたのだ。
 咄嗟にアルターの右腕で防御したものの、一撃でアルターに罅が入る。
「ふぉふぉふぉ……分霊(わけみ)しか来られず残念であったが、調度良い枷だな。でなければ、このように、思い切り蹴ることもできぬ。
一々にして、優しく、撫でるよう、気を遣わなければならぬからな」
 辛うじて受け身を取ったカズマの耳に聞こえた、万象王の独白。
 カズマ自身も、アルター能力の精度の低下、発動の際の疲労感、アルターの強度減少という、自らに課せられた幾つかの枷を、万象王を殴る内に薄々ながらも自覚していた。
 漠然とした推測が確信へと変わったのだが、そのことに対する歓喜は一つも無い。
「本気が出せなくて調度いい……? 撫でるのと一緒だぁ……?」
 ただ、万象王の発した言葉に、とうとうカズマの堪忍袋が爆ぜた。
「舐めてんのか、てめぇ!!」
 右肩の付け根近くの背に顕現した赤い三枚羽根が、炎のように揺らめく。
 カズマの怒気によって空気が震え、細かな破片が宙へ浮かび、アルターとなって右腕に吸収される。
 これを目の当たりにしても、万象王はそよ風を受けるかのような気軽さで、傲岸不遜の態度を崩さない。
「舐めてなどおらぬ。ただ、嬉しいのだ。こうして闘えることが。思い出すぞ、長らく味わっていなかった闘いの興奮を。誘ってくれた魔神皇には感謝しなければな」
「感謝ぁ? 何言ってやがる、雲野郎」
「この祭りを準備し、催し、そして我を連れ出してくれたことへの感謝だ。礼として、精々踊ってやろうではないか、血風吹き荒ぶ舞踏/武闘をな」
 戦いによる昂揚と興奮、それに見出す歓喜や楽しさ。それは分からないでもない。
 そういう気分を味わえるから、アルター使いも悪くは無いと、カズマ自身も思っている。
 だが、あのマジなんたらいうガキに感謝しているって点で、こいつのことは分からねぇし、さっきよりも更にむかつく!
「カズマ、貴様も遠慮をするな! これより3日は無礼講であるぞ! 踊れ! 謳え! 騒げ! 闘え!!」
 だが第四に! こいつが何よりも誰よりも今むかつくのは、オレの拳をわざと受けて煽ってるってことだ!!
「見下してんじゃねえええええええ!! 衝撃のォ! ファーストブリットォォォ!!!」
 閉ざされた右目の奥から込み上げる熱の迸るまま、兄貴譲りの必殺の拳に、羽根を燃やして火を点ける。カズマが磨いた命の術(すべ)は、バトルロワイアルの地でも変わらない。
 互いに逃げ場などありはしない。
 邪魔な壁は殴って壊す、邪魔するやつは殴って倒す。
 白か黒か、勝つか負けるか、生きるか死ぬか。往く道は一つのみ。
 そして、その道を拓くのは、生と勝利を掴むのは、自慢の拳唯一つ。


【?????/1日目/朝】
【カズマ@スクライド】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(小)、激しくむかついている
[装備]:COMP(ガントレット型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:気に入らねえガキ(魔神皇)をぶん殴る
[COMP]
1:万象王@戦国妖狐
[種族]:雲の闇(かたわら)
[状態]:とても楽しい

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