俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。 サマナーズ・バトルロワイアルのまとめWikiです

渋谷に足を踏み入れていこう、海馬瀬人は悪魔たちから度重なる襲撃を受けていた。
悪魔たちの言葉から推測するに彼らは何者かに扇動され、魔人皇が目論む“魔人”なるものの誕生を防ごうとしているらしい。
悪魔たちとのTALKを試みたわけでもない海馬には其れ以上のことは分からなかったが、しかし、心あたりがないわけではない。
次元上昇だ。
失われた王の魂を呼び戻す策の一つとして、海馬は人々の意識を束ね高次元へとアクセスしようとした。
他にも幾つものオカルトの域に達したアプローチを科学の側から行ってきた。
どれも失敗に終わるか、未だ途中ではあるが、常人の意識領域の限界を超えた魔の世界へと片足を踏み入れる程度には達していたのかもしれない。
今の海馬の魂は、高次の霊的存在である悪魔たちからすれば、“魔人”とやらに近しい物に感じられるくらいには。
だとしたら冥界の王の元へと着実に近づけているということであり、海馬にとっては悪く無い誤算だ。

(魔人、それに魔女、か……)

あくまでも推測にすぎない“魔人“についての考察を切り上げ、喚び出したままの自らの悪魔へと視線を移す。
巴マミ。
今もまた難なく悪魔を撃退したこのモンスターは海馬の趣味でこそないが、中々に強力だ。
攻撃力こそ青眼の白龍に劣るが、最大火力は低い方ではない。
むしろ高いほうだろう。
加えて重要なのは彼女の持つ魔法の汎用性だ。
巴マミの操るリボンは、敵を拘束・切断するに留まらず、マスケット銃など様々なものを精製できる。
所詮はただの小娘であったマミにはあまり複雑なものは作れないようだが、そこに海馬の手が加わればどうか?
魔人皇の手により汚された決闘者の誇りであるデュエルディスク――その新型を模したCOMP。
コンピューターである以上、悪魔を召喚する以外の機能も使いこなせてこその海馬瀬人だ。
悪魔のライブラリ機能などをリアルソリッドビジョンで培ってきた技術で応用。
近代兵器などという海馬も憎むものではなく、魔法で再現できそうな“魔法カード”、“罠カード”の構造をマミへと叩きこんだ。
多種多様な魔法と罠を駆使する魔法少女(マジシャンガール)の厄介さを、海馬は我が身を以って知っている。
そう、巴マミは海馬よりもむしろ、海馬が追い求める宿敵、“武藤遊戯”の好みに合致するモンスターなのだ。

(このオレにマジシャンガールを支給し、もう一人のオレに青眼を支給するとはッ!
 魔人皇め、つくずく貴様はオレを怒らせるのが得意と見た……)

だが、魔人皇にどのような意図があろうと関係ない。
もとより、“海馬瀬人”を超えるのなら、“青眼の白龍を従えた海馬瀬人”を超えてこそなのだ。
そういう意味ではマジシャンガールはおあつらえ向きだ。
かつて“武藤遊戯”はブラック・マジシャンやブラック・マジシャン・ガールを用いて、海馬瀬人に屈辱を舐めさせた。
奴にできたことが海馬瀬人にできないわけがない!

(過去の亡霊たる“武藤遊戯”を、今の限界である“海馬瀬人”を超え、オレは未来へと至るッ!
 待っていろ、“遊戯”! 待っていろ、もう一人のオレ!
 フハハハハハハハハハハハ……ハ……? いや、待て……)

いやがおうにも高まり続けていた胸がふと冷水を浴びせられたかのように鼓動を止める。
引っかかったのは一つの光景。
追い求め続けた王との戦いでもなければ、対峙したばかりの自らという壁でもない。
もう一人の自分と共に思い浮かべた青眼の姿だ。
確かにあれは青眼だった。
悪魔として殺し合いの駒に堕とされていようとも青眼の白龍に他ならなかった。
そこは間違いない。魂で理解できる。
だが、だがしかし。
寸分違わぬもうひとりの自分とは違い、あの青眼は――

(あの青眼は美しくはあれども攻撃力3000――止まりのように感じられた……)

青眼の白龍。
攻撃力3000――それは昔の話だ。
海馬瀬人が従えたならその攻撃力は2万近くに達するはずだ。

「巴マミ、一つ聞かせろ。貴様達悪魔の力は貴様達が悪魔として呼び出される以前と比べてどうなっている?」
「……察しの通り、私たち悪魔は分霊――言わば力の分身に過ぎないわ。
 本来に比べればかなり力は落ちてしまっているの」
「分霊ということは、分かたれたものを合わせれば戻るのだな?」
「そうかもしれないし、そうではないかもしれない。
 悪魔は悪魔合体という方法で強化できるのだけど。
 元となった悪魔の派生になることよりも、全く別の悪魔になることの方が多いみたい」
「ふぅん。青眼を二体融合させた所で、凡百の決闘者ではツイン・バーストではなくワイアームが限度といったところか。
 くくく……魔人皇の底も知れたというものだ。
 奴が悪魔などという自らをも脅かしうる“力”を支給したのはなんということもない。
 恐らく奴の悪魔、或いは奴自身は分霊などというものではなく、万全の力を振るえるが故の自信だと見た」

得心が言ったとばかりに頷く海馬。
普段の彼なら青眼を弱体化させ汚すなど激高する案件だ。
しかし今この時ばかりは話は別だ。
海馬瀬人が表と裏の二人に分かたれた以上、青眼もまた分かたれて当然なのだ。
表と裏、二人の遊戯がいい例だ。
ブラック・マジシャンを始めとした王の従僕たちは、王だけではなく器にも力を貸していた。
現時点では闇海馬の方が僅かながらも青眼使いとして優れているかもしれないが、だからといって青眼が海馬瀬戸を見限るはずがないのだ。
主だった力は闇海馬の下僕として。分かたれた力は他ならぬこの海馬瀬人のものとして。この身に宿っていたのだ。

(共にあったことに今の今まで気づけなかったこのオレを許せ、青眼)

語りかけるも返事はない。
メインを闇海馬が従えている以上、海馬の手元に残っているのは実体化できないほどの僅かな分身に過ぎないのだろう。
今はそれでいい。
誰よりも早くこの闇のゲームを打ち破り、裏人格に勝利した時、海馬瀬人は更なる領域へと踏み入れ、青眼は真の輝きを取り戻すのだ。
揺るがぬ未来である以上、焦る必要もあるまい。

――青眼に限るならば。

「……もうひとつ聞かせろ。悪魔という存在は貴様のような人間も含まれているのだったな?」
「ええ。私たち魔法少女は魔女という側面もあって悪魔としてカテゴライズされているのだけども。
 過去の英雄や偉人なら一通り含まれているんじゃないかしら」
「そうか……。過去の英雄か。決まりだな」

海馬瀬人が思い描きしは失われし宿敵の姿。
名も無きファラオ。アテム。
かつて王として邪神を封印し、現世に蘇ってからも決闘王として君臨した奴はまさに英雄と言えるだろう。
魔法少女が悪魔として召喚されているのだ。
最高クラスの魔法使いをも使役した奴が悪魔として喚ばれないはずがない。
だからこそ海馬瀬人は憤慨する。
もしも奴が自分やもう一人の海馬などではない、どこぞの誰かに召喚・融合召喚されていたとしたら――。
その上分霊として無様な姿を晒していたとしたら――。
あろうことかその不完全な武藤遊戯を倒し、“武藤遊戯”に勝ったと思い上がる者がいるとすれば――。

許せるはずがあるかあああああ!

「やはりオレは一刻も早く、この闇のゲームを叩き壊し、完全な武藤遊戯を引きずり出さねばならぬらしいッ!!」

更なる理由が生じたことで、海馬瀬人はより強く歩を進める。
襲撃回数の激化から見るに、このまま新宿を突き進めば、或いは世田谷区にでも行き着けば、悪魔をけしかけている者の所へ辿り着けるはずだ。
“魔人”とやらの件といい、魔人皇について何らかの情報を持っていればそれでよし。
持っていなかったとしても海馬瀬人に悪魔をけしかけた以上、目にもの見せてやらねばなるまい。

「行くぞ!! 全速前進だ!!」



【渋谷区/1日目/午前】
【海馬瀬人(A)@遊戯王(原作漫画版)】
[状態]:健康
[装備]:COMP(腕部装着型コンピューター。デザインは劇場版「THE DARK SIDE OF DIMENTIONS」のものに似る)
[道具]:基本支給品、確認済み支給品(1)
[所持マッカ]:25000
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない。もう一人の自分より先に魔神皇を倒し、死者蘇生の秘法を奪い取る。
   分霊(悪魔)では意味が無い。求めるのは完璧な“武藤遊戯”のみ。
  1.“魔人”とやらを餌に悪魔を扇動している者と接触する。
[COMP]
1:巴マミ@魔法少女まどか☆マギカ
[種族]:魔女
[状態]:健康

※もう一人の自分同様、青眼についての考察もあくまでも推測に過ぎませんが、海馬にとっては確信です。


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062:呪術:応酬
055:銃撃:返上
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057:Power of s(mile)ing!
043:カイバー&ドラゴン海馬瀬人(A)000:[[]]

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