最終更新:ID:6tSBoyPOJQ 2016年06月22日(水) 12:26:28履歴
一言で言ってしまえば、最も嫌なタイプの笑みだった。
最も出会いたくない男の顔が、呼び出した男の顔とどうしても被ってしまう。
ああいう笑顔を浮かべるタイプの人間は、何かを隠しているか、ろくでもないかの二択だ。
少ない人生経験の中でも、それは外れたことはない。
だから正臣は、無意識の内に警戒レベルを極限まで引き上げていく。
「おや、嫌やわあ。そない怖い顔せんとってよ。ボク、君の味方やからさ」
対する男も、必要以上に警戒されている事を察したのか、肩を竦めながら微笑み直す。
だが、その自然を装った笑みこそが、正臣にとっては一番警戒すべき笑みだった。
心を許してはいけない、と本能が警鐘を鳴らし続ける。
しかし、目の前の男は自分の"悪魔"だ。
何かコミュニケーションしておいた方がいいかもしれないとは思うが、口が縫い付けられたかのように動かない。
「ま、無理にとはよーいわんわ。好きにしたらええし、気が向いたらなんでも言うて」
そんな正臣の様子を見て、男は少し残念そうな顔をしながら、後ろへと振り返る。
隙だけは見せてはいけないと気を張りつつ、正臣はCOMPの他の機能を確認していく。
地図を見る限り、ここは東京……いや、東京を模した世界だということだ。
悪魔辞典というアプリには、目の前の悪魔についてのデータが記載されていた。
ひとまずそれは後回しにし、肝心の名簿に目を通し始める。
「おいおい、嘘だろ!?」
思わず、声が出てしまう。
どう見てもハンドルネームとしか思えない名前の中に交じる、錚々たる人間の名前。
テレビなどで幅広く活躍するアイドル、有名な大企業の社長。
「――――ッ!!」
そして、よりにもよってこんな所では目にしたくなかった名前。
那須島隆志……は、どうでもいいとして、折原臨也と泉井蘭。
まさか、この二人の名前を見かけることになるとは、神はどうやら自分にハードモードをご所望のようだ。
前者は他人に悪意をぶつけることを平然と行う人間であるし、後者は野放しにしておいては危険だ。
誰かが彼らに接触する前に、止めておきたいのが本音だ。
だが、自分一人で折原臨也を止めるなど、可能なのだろうか?
「ともあれ、こんな端っこにいても何も始まらない、か……」
少し考えて、正臣は小さく呟く。
辺りの景色から察するに、ここは練馬区のあたりだろうか。
そこで、考える。
大抵の人間は、ここを東京だと捉えて動くだろう。
その上で、人を求めてどこかに動くのだとすれば。
特に、"あの二人"が人を求めて動くのだとすれば。
こんな所に来るわけがないし、おそらくは"池袋"に向かうだろう。
それは、火を見るよりも明らかだ。
幸い、練馬からならまだ池袋は近い方だ。
少し時間はかかってしまうが仕方がない、とゆっくり歩き出そうとした時だった。
正臣は、ある違和感を感じ取る。
それは、道のど真ん中にそびえ立つ、一台の「パソコン」。
いや、パソコンというよりは、ディスプレイだけが堂々と鎮座している。
明らかに浮いているそれに警戒しながらも、正臣は接触を試みようとする。
「ネリマ ターミナルへようこそ」
そんな声が聞こえたのは、あと数歩で端末に触れられる、といった時だった。
ターミナル、そういえば先ほど目を通したCOMPの中にも記載があった。
都市と都市を繋ぐ窓口。マッカという聞いたこともない通貨が必要らしいが、一瞬で別の区に移動することが出来るらしい。
ならば早速と正臣はターミナルに触れようとするが、そこでふと止まる。
何もマッカという通貨をケチっているわけではない。
COMPには「どうやって」転移させるかという「手段」が一切記載されていなかったのだ。
車や電車が呼び出される? 突然空を飛ぶ? あるいは瞬間移動?
今まで生きてきた中でパソコンに触れることは多くあったが、そんな技術に心当たりはない。
一体何が起こるのだろうか、と少し不安になっていた時。
「ああっ、もうっ!! 止まらないって決まったろ!!」
わざとらしく大声を上げて、自分を奮いたたせる。
そうだ、もう止まらない、見てるだけでもない、そして、逃げない。
やると決めた以上、こんな所で迷っている時間はないのだ。
ふと隣を向く、そこに立っている男は、相変わらず笑顔だったが、ただ一度だけゆっくりと頷いて答えた。
好きにしろ、ということだろうか。
ならば、やってやるまでだ。
こうしている間にも、時は進んでいくし、未来は自分の元へとやって来る。
だから、無駄にできないのだ。
「ええい!! ままよ!!」
そして、正臣はターミナルの操作を進める。
ぴっ、ぴっ、ぴっ、と手際よく選択肢を進めた後。
練馬区に、一つの絶叫が響き渡ることとなった。
――――おいおい、聞いてねえよ!!
・ ・ ・ ・ ・
パソコンに、吸い込まれるなんてよ――――
【練馬区→豊島区へ/1日目/朝】
【紀田正臣@デュラララ!!】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品、携帯電話型COMP
[所持マッカ]:2万5千
[思考・状況]
基本:取り敢えず前へ進む。誰かを殺すつもりはない。
[備考]
映画撮影なのか本当の殺し合いなのか揺れています。
[COMP]
1:市丸ギン@BLEACH
[状態]:健康
最も出会いたくない男の顔が、呼び出した男の顔とどうしても被ってしまう。
ああいう笑顔を浮かべるタイプの人間は、何かを隠しているか、ろくでもないかの二択だ。
少ない人生経験の中でも、それは外れたことはない。
だから正臣は、無意識の内に警戒レベルを極限まで引き上げていく。
「おや、嫌やわあ。そない怖い顔せんとってよ。ボク、君の味方やからさ」
対する男も、必要以上に警戒されている事を察したのか、肩を竦めながら微笑み直す。
だが、その自然を装った笑みこそが、正臣にとっては一番警戒すべき笑みだった。
心を許してはいけない、と本能が警鐘を鳴らし続ける。
しかし、目の前の男は自分の"悪魔"だ。
何かコミュニケーションしておいた方がいいかもしれないとは思うが、口が縫い付けられたかのように動かない。
「ま、無理にとはよーいわんわ。好きにしたらええし、気が向いたらなんでも言うて」
そんな正臣の様子を見て、男は少し残念そうな顔をしながら、後ろへと振り返る。
隙だけは見せてはいけないと気を張りつつ、正臣はCOMPの他の機能を確認していく。
地図を見る限り、ここは東京……いや、東京を模した世界だということだ。
悪魔辞典というアプリには、目の前の悪魔についてのデータが記載されていた。
ひとまずそれは後回しにし、肝心の名簿に目を通し始める。
「おいおい、嘘だろ!?」
思わず、声が出てしまう。
どう見てもハンドルネームとしか思えない名前の中に交じる、錚々たる人間の名前。
テレビなどで幅広く活躍するアイドル、有名な大企業の社長。
「――――ッ!!」
そして、よりにもよってこんな所では目にしたくなかった名前。
那須島隆志……は、どうでもいいとして、折原臨也と泉井蘭。
まさか、この二人の名前を見かけることになるとは、神はどうやら自分にハードモードをご所望のようだ。
前者は他人に悪意をぶつけることを平然と行う人間であるし、後者は野放しにしておいては危険だ。
誰かが彼らに接触する前に、止めておきたいのが本音だ。
だが、自分一人で折原臨也を止めるなど、可能なのだろうか?
「ともあれ、こんな端っこにいても何も始まらない、か……」
少し考えて、正臣は小さく呟く。
辺りの景色から察するに、ここは練馬区のあたりだろうか。
そこで、考える。
大抵の人間は、ここを東京だと捉えて動くだろう。
その上で、人を求めてどこかに動くのだとすれば。
特に、"あの二人"が人を求めて動くのだとすれば。
こんな所に来るわけがないし、おそらくは"池袋"に向かうだろう。
それは、火を見るよりも明らかだ。
幸い、練馬からならまだ池袋は近い方だ。
少し時間はかかってしまうが仕方がない、とゆっくり歩き出そうとした時だった。
正臣は、ある違和感を感じ取る。
それは、道のど真ん中にそびえ立つ、一台の「パソコン」。
いや、パソコンというよりは、ディスプレイだけが堂々と鎮座している。
明らかに浮いているそれに警戒しながらも、正臣は接触を試みようとする。
「ネリマ ターミナルへようこそ」
そんな声が聞こえたのは、あと数歩で端末に触れられる、といった時だった。
ターミナル、そういえば先ほど目を通したCOMPの中にも記載があった。
都市と都市を繋ぐ窓口。マッカという聞いたこともない通貨が必要らしいが、一瞬で別の区に移動することが出来るらしい。
ならば早速と正臣はターミナルに触れようとするが、そこでふと止まる。
何もマッカという通貨をケチっているわけではない。
COMPには「どうやって」転移させるかという「手段」が一切記載されていなかったのだ。
車や電車が呼び出される? 突然空を飛ぶ? あるいは瞬間移動?
今まで生きてきた中でパソコンに触れることは多くあったが、そんな技術に心当たりはない。
一体何が起こるのだろうか、と少し不安になっていた時。
「ああっ、もうっ!! 止まらないって決まったろ!!」
わざとらしく大声を上げて、自分を奮いたたせる。
そうだ、もう止まらない、見てるだけでもない、そして、逃げない。
やると決めた以上、こんな所で迷っている時間はないのだ。
ふと隣を向く、そこに立っている男は、相変わらず笑顔だったが、ただ一度だけゆっくりと頷いて答えた。
好きにしろ、ということだろうか。
ならば、やってやるまでだ。
こうしている間にも、時は進んでいくし、未来は自分の元へとやって来る。
だから、無駄にできないのだ。
「ええい!! ままよ!!」
そして、正臣はターミナルの操作を進める。
ぴっ、ぴっ、ぴっ、と手際よく選択肢を進めた後。
練馬区に、一つの絶叫が響き渡ることとなった。
――――おいおい、聞いてねえよ!!
・ ・ ・ ・ ・
パソコンに、吸い込まれるなんてよ――――
【練馬区→豊島区へ/1日目/朝】
【紀田正臣@デュラララ!!】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品、携帯電話型COMP
[所持マッカ]:2万5千
[思考・状況]
基本:取り敢えず前へ進む。誰かを殺すつもりはない。
[備考]
映画撮影なのか本当の殺し合いなのか揺れています。
[COMP]
1:市丸ギン@BLEACH
[状態]:健康
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