俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。 サマナーズ・バトルロワイアルのまとめWikiです

須田恭也は、視界を塞いだまま地下鉄のホーム内に座り込んでいた。
事の始まりは夏休みを利用して、掲示板で話題になっていた羽生蛇村を訪れたこと。
ちょっと行って帰ってくるつもりだったのに、そこでわけのわからない儀式を見た。
その後、警官に自分の胸を撃たれて死んだと思えば女の人に助けてもらえて、二人で教会に行ったんだ。

着いてすぐに外から悲鳴が聞こえてきて、そこで俺は美耶子に出会ったんだ。

「(…それで、)」
「(撃たれた…)」

二人で村の中を逃げているときに美耶子の兄貴に撃たれた。
滑り落ちた先の川辺で気を失って…で、気付いたらここにいた。

「ってかここ…どこ?訳わかんね…」

山奥の村から整備の行き届いた駅にやって来ちゃって、なんだかいろんな悪夢の中をぐるぐると廻っているみたいだ。
無人の駅はこれから起こる惨劇に息を潜めているように静まり返っているが、異界と化した羽生蛇村の雰囲気に慣れたせいか、この空間にもあまり違和感を感じない。

――おかしくなってんな…俺…。

2日 あの村を彷徨っただけなのに、まともな空間から随分離れている気がする。

「(幻視は…ここでも使える)」

目を閉じて意識を集中させる。視界が闇から砂嵐に移り、ぼんやりと景色が浮かんでゆく…。それにしたがって脳内に流れるノイズもはっきりとした物音に変化する。
さらに集中するとその映像と音のピントがぴったりとあった。

<キィイキキィィィ……> <ウォオオォォ……>

近くをうろついているのは2体。
前者は地下街にいるようだが視界がおかしい…いや、壁面を走っている!しかも俊敏だ。恭也の警戒心がぐっと引き上げられる。
後者は闇の中を進んでおり視界に何も映らないが、鳴き声らしき音や粘着質な音がクリアに聞こえてくる。
一応この2体以外にも存在を感知できるが砂嵐やノイズが強すぎるため、この時点では気にしなくてもよさそうだ。

恭也は一旦幻視を切ると、安全地帯を探して地上に向かった。




恭也は駅から無事に脱出。
街を彷徨う途中で見つけた神社の拝殿前にある石段に、腰を下ろしていた。

「(美耶子…) 」

ここにはいない少女の事を考える。
口調もぞんざいで文句ばかり言っている変な奴。

「(約束…したもんな)」

二人で無事に村から出る。

怯えていた彼女をそう励まして、それっきりだ。
魔神皇とか名乗った少年は殺し合いをするように言っていたが、参加している暇はない。
一刻も早く村に帰って、美耶子を助けに行かなければ。

「(いい悪魔来い…!)」

支給品の中から見慣れない人形を見つけた。
恐らくこれがCOMPなのだろうと恭也は見当をつけ、ボタンを探してこれを起動させる。
強くて話が出来る悪魔でありますように。脱出に協力的な悪魔が現れる事を祈って、恭也はその瞬間を待つ。




「う、うおあぁぁああ!」

まず見えたのは壁。熱を感じさせる真紅の岩肌。
恭也は忘我の中で叫びながら拝殿の扉まで後退する。必死で足を動かすが、水を掻き分けているようにしか感じない。
そうやって距離をとると真紅の壁の全体像が見えてくる。

新幹線のように巨大な尾、背後には視界いっぱいに広がった真紅の翼。
尾が弧を描いて天に向かうと、そこに巨大な爬虫類の面貌があらわれ、恭也を見据えていた。

――ドラゴン。おおよそ知らぬ者はいない幻獣の頂点。ファンタジーの象徴。

村で見た儀式は気味が悪かった。お巡りさんに撃たれたのは怖かった。眼から赤い涙を流す村人たちも怖かった。
だが対峙するだけで心臓が止まり、一秒も抗えないで叩き潰されそうな程の重圧感を感じたことはなかった。
燃えるように赤い頭部からは黄金の角が生え、その逞しい顎を開けば恭也を一呑みに出来ることは想像に難くない。

『我を召喚したのは…お主だな?』
「うわぁ、あっと、おれ…」

唐突に声なき声が響いた。恭也は肯定さえすればよいのだが、思考がまとまらない。順序立てて話すことが出来ない。
さながら、満員の舞台上で台詞が飛んだ主演俳優のようだった。

『怯えさせてしまったかな?』
『場所を移そう。…ここはちと狭い故な…。』

赤い竜は翼を折り畳み、体勢を変え、長い首を恭也の方に向ける。

『何をしている?』

乗れ、と言う事らしい。恭也はそろりそろりと真紅の竜に近づいていくが、やはり恐ろしい。
足は鉛が入ったように重く、近づくたびに冷や汗が噴き出る。

「(恭也、ありがとう…)」

――ッ覚悟を決めろ!

美耶子はまだあの村にいる。幸いこの竜は知性的だし、話せば力になってくれるかもしれない。

――後は俺の問題だ。

恭也は息を大きく吐くと、意を決して竜の首に飛び乗った。
紅い翼竜は恭也がしっかりと掴まったのを確認すると、境内を翼の質量と羽ばたきが起こす暴風によって破壊しながら、大空に去って行った。


【須田恭也@SIREN】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:基本支給品, 遮光器土偶型COMP
[思考・状況]
基本:生き残り、村に帰還する。
※参戦時期は「2日:11時〜12時」のどこか。赤い水の力、美耶子との契約により不老不死を得ていますが、首輪により制限あるいは無効化されています。
※幻視の感知領域が制限により狭まっています。

[COMP]
1:レッドドラゴン(アンヘル)@ドラッグオンドラグーン
[種族]:龍王
[状態]:健康

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