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ひどい夜水素王氏ヴェイグ×クレア(アガーテ)2007/11/282007/11/30


『早くベルサスに行くんだ!でないと君は大切なものを失う事になる--!』

 聖獣・シャオルーンはそう言った。ヴェイクにとって大切なもの、それはクレア以外には考えられなかった。
各地を旅してなお、ヴェイグにとってはクレアが絶対の存在だった。
彼女を失う事は何よりも恐怖。
王の盾にさらわれた時…氷で一年も閉じ込めてしまった時…もうあんな絶望を味わうのは嫌だった。
そして今、ヴェイグの隣にはクレアがいる。手を握れば握り返してくれる愛しい彼女がいるのだ。
城から帰ってきたクレアは変わった。前とは違うぎこちなさ、怯え、そんなものを見せるようになった。
ヴェイグはそれに気付いていたが仕方がないことだと思っていた。
彼女はさらわれて様々な恐ろしい目にあった。
自分が旅に出て少なからず変わったのと同様に、彼女が『別の世界を知って』変わるのになんの不思議もない。
それに自分は彼女を一年も閉じ込め彼女の時間を奪ってしまったのだ。
避けられて当然だ――ヴェイクはひたすら、自分の未熟さを悔いている。
その上、聖獣の試練や種族間対立の苦労もあった。
 だから気が付かない。まさかクレアがアガーテの精神を宿していようとは。



クレア、いやクレアの身体を持つアガーテは溜め息を吐いた。美しい金髪に指を絡ませる。
触れた頬はみずみずしさに溢れている。
ミルハウストの為に手に入れた美しいヒューマの身体。しかし、この身体で愛されるどころか彼に拒絶されてしまった。
さらにアガーテの胸を痛めたのは、先日のキョグエンでのこと。
あろうことか、自分の身体を持つクレアを見殺しにしてしまったのだ。
アガーテは己の残酷さがひどく醜いものに思えた。
しかし、こんなに恐ろしいことをして尚、ミルハウストへの想いが揺らぐ事はない。
(ああ…ミルハウスト…)
その時、控え目に扉が叩かれた。
そっと外を覗くと銀色の髪をした幼馴染みの青年、ヴェイグが立っていた。
「クレア、少し……一緒にいてもいいだろうか?」
それを告げるだけでヴェイグは悲しそうな、消え入りそうな声色になる。
アガーテは緊張に体を強張らせながらも部屋に招き入れた。
今日はたまたまクレアが宿の一人部屋を使っていた。
夜に男が女の部屋を訪ねてくるなんて、あまり穏やかな話ではない。
「ヴェイグ、急にどうしちゃったの?」
アガーテは努めて明るい声で言う。ベッドに腰掛けたヴェイグは顔を伏せた。
「すまない…俺は……お前を危険な目に合せてばかりいる。それを謝りたくて」
「そんな!ヴェイグはいつだって私のこと、守ってくれたわ。ヴェイグがいるから大丈夫だって、いつも思っているもの…」
……きっとクレアならそう言うだろう。
アガーテはヴェイグの隣でそっと彼の手に触れた。
ヴェイグはアガーテの目をじっと見ると、クレアにしか見せることのない微笑をわずかに浮かべた。
小さな声でありがとう、と言う。アガーテは不覚にも胸が高鳴るのを抑えられなかった。

美しいクレアに相応しい相手とでも言おうか、ヴェイグはとても端整な顔をしている。
性格の方は少々…いや、かなり変わっているが、優しく純粋な青年だというのは十分にアガーテにも理解できた。
そんな彼を騙すのは可哀相だと思う一方で、意地の悪い気持ちも芽生えている。
彼の愛情を一心に受ける「クレア」に対する嫉妬だった。

 沈黙の中じっと見つめ合い、耐え切れなくなったのはヴェイグの方だった。
照れくさそうに目線を逸らすと
「その……クレア、今夜はここで眠ってもいいだろうか」
と小声で言った。
え?とアガーテが聞き返す頃にはぎゅっとヴェイグが背に手を回している。
息が苦しいほど、彼はクレアをきつく抱き締めた。
「ヴェイグ?!」
異性にこんな事をされた経験のないアガーテは緊張にますます身体を硬くした。
そして何故こうしてくれるのがミルハウストではないのだろうと思ってしまう。
「あっ…」
そのまま目を閉じてミルハウストの姿を空想している間に、ヴェイグはクレアをベッドにそっと倒していた。
世間を知らないアガーテでも流石に何をされようとしているかは分かる。
本当のところ、クレアを騙る事でこんな事態になるのは薄々覚悟していたのだ。
クレアが処女でないのは「月のフォルス」使用の際に知っていた。
だとすれば彼女の相手がこのヴェイグであることはすぐに想像がつく。
 ヴェイグはぎしりとベッドに乗り上げると、横たえたクレアに口付けをした。
一度ではなく、何度も角度を変えては唇を触れさせていく。
少しでも拒めば青年は行為を止めるだろう。けれどアガーテは抗わなかった。
純潔な身体でないのなら、せめて男女の交わりがどういうものか理解していた方がいい。
その方がミルハウストを幻滅させずに済む。
「クレア…いいか…?」
「優しく、して」
 まだ戸惑いがあるかのように確認するヴェイグに、アガーテは小さく頷いた。



 ヴェイグはそれまで身につけたままだったグローブを外す。
そしてクレアの頬を優しく挾むように触れた。
彼のフォルスの影響もあるのだろうか、ヴェイグの手先はいやに冷たい。
次の口付けは深く、侵入した舌は情熱的に絡んでなかなか離れない。
反射的に抗おうとしたアガーテだったが、長身のヴェイグに押さえこまれては殆ど身動きも叶わない。
しかし初めて知る感触は甘く、くちゅ…という唾液の絡む音すらすぐにアガーテを夢中にさせた。
「んぅ〜っ」
ヴェイグの顔が間近に迫る。その男の息遣いは求める人物のものではない。
その一点だけがアガーテを恐怖させた。
震えているクレアに気付くと、ヴェイグは薄く笑った。その目は情欲に染まっている。
「きゃっ」
敏感なヒューマの耳を甘噛みされ、無意識に悲鳴が零れた。
「大丈夫……久しぶりだから、ゆっくりする」
ヴェイグは指と舌とを使ってクレアの白い首や普段は髪に隠れて見えないうなじを愛撫していく。
その全てにアガーテは過敏に反応した。
クレアの深い部分に眠っていた性感が呼び起こされていくのがわかる。
「クレア…可愛いよ…クレア…」
普段殆ど表情も変えない、無口な青年が今はどうだろう。
うっとりと彼女の名を呼び、恥じる様子もなく愛を囁く。
様子を見るかぎりクレアとヴェイグがコトに及んだのは一度や二度ではないのだろう。
アガーテは二人に、そしてクレアに劣情を抱いた。
一切の汚れも知らないような美しい姿で、その実恋人に存分に愛され、いやらしい姿を晒しているなんて。
 ヴェイグは慣れた手つきでクレアの葡萄色の服を解き、そして上体を少し浮かせて純白のブラジャーをも取りさった。
そこには桃色をした可愛いらしい乳首がぴんと立っている。
クレアの細腕をベッドに押さえつけ、ヴェイグは谷間に顔を埋めさせた。
「ハァ…柔らかい…クレアの…んっ」
ちゅっと音をたて、赤子のように乳首を吸うヴェイグ。
クレアの乳房は彼の好きなように揉まれ、形を変えてゆく。
アガーテはその卑猥な光景をまともに見ることが出来なかった。
「ひっ…う…もう、やめてっ!!」
 ふわふわとした快感が込み上げるのを振り切り、アガーテはヴェイグの長く結っている三つ編みを引っ張った。
貪る事に夢中になっていた青年は、はっと顔を上げた。
無言のまま袖口で口をぬぐう。もういいのか?と彼は常の落ち着いた声色に戻って言った。

(な、なんですの…何か変…)
 ヴェイグの青い瞳に真っ直ぐに見つめられ、アガーテは無意識にスカートの下で膝をもぞもぞと擦り合わせた。
身体の奥の方が熱く、むず痒い感じがするのだ。
「あ…すまない」
ヴェイグはそんな恋人の様子に気付くと脚を開かせ、身体に付くくらいに押し上げた。
「いやあっ」
 上品な色をしたスカートがめくれあがり、白いレースのショーツが現れる。
王族の娘であるアガーテには耐えがたい羞恥だった。
触れられてもいないそこは、布越しにもわかるくらい湿って太腿はふるふると震えている。
「ここを触って欲しかったんだろう?」
 ヴェイグは二本の指をショーツの上からある一点にあてがった。
瞬間、アガーテの中を電気が走ったような強烈な刺激が襲った。
頭の中が真っ白になってクレアの身体は大きく跳ねた。
「ひっ――あぅ!!」
 すぐにアガーテの意識は戻ったが、クレアの身体は脚を投げ出しただらしのない格好のまま
身動き一つ取れなくなってしまった。
「大丈夫か?」
ヴェイグが心配そうにクレアの上体を抱きよせる。
だが耳元では甘い声で、意地わるく囁くのだった。
「ここに触るとクレアはすぐにイッてしまうから」
「あっ…あ……あん…!」
 同じ箇所をぐりぐりと強く擦られて、アガーテは汗を滲ませ無茶苦茶に首を振って声を上げた。
「イッてしまう」というのを初めて味わったアガーテには文句を言うことも叶わない。
 ヴェイグはクレアのスカートとショーツを脱がせると、手早く自らの服も脱ぎ捨てた。
ぐったりと横たわったまま、アガーテは彼の引き締まった身体と、その中心にある凶悪なモノを見た。
(あっ…アレを…中に…?!)
 知識で知っていることと、実物は違う。
想像をはるかに超えたセックスの生々しさにアガーテは慄いた。
恥ずかしさに顔を背けるが、ヴェイグは気にせずに身体を重ねてくる。
 ヴェイグはしばらく何もせずに、恋人の身体を優しく抱きしめていた。
 腹部に剛直が当たっていることにさえ目を瞑れば、ヒトと裸で抱き合うのは純粋に
温かくて気持ちの良いことだとアガーテは気付いた。
ヴェイグもクレアのぬくもりに溺れ、好きだ、愛してる、もう離さない、などと吐息交じりに囁いている。
そんなことを言われても全くアガーテの心は動かないのだが、そのうちにまた違和感があった。
クレアの身体が疼いて仕方がないのだ。

『ヴェイグ、わたしも愛してるわ……』
『ああ早く抱いて…!』

 まるでそう叫んでいるかのように。心がここに無い筈の、クレアの肉体が彼を欲して止まない。
さんざん弄られた秘所から今も愛液が溢れ出している。
脚の間に割って入っているヴェイグにそこを必死に擦りつけるようにすると、ヴェイグはようやく指を伸ばしてきた。


「どうした?クレア」
ぴちゅ、と音を立て膣に指が吸い込まれていく。それは待ちわびた快感だった。
アガーテは切ない声で鳴く。
「わ、わた…しぃ…!」
「――すごいな、こんなに濡らして」
 それがヴェイグの正直な感想なのだろう。
クレアの媚態に興奮したのか、ヴェイグはわざと稚拙な動きで秘所を指で掻き回す。
久しぶりだというのに蕩けきったそこはヴェイグのモノを求めて切なく指を締め上げてくる。
「ずいぶんエッチな身体になったみたいだな…大丈夫だ、すぐに挿れてやる」
 ヴェイグは身体を起こすと、横たわるクレアと正面から向かい合うような形になった。
(ああ…っ!なんてはしたないんですの…クレア!)
 アガーテは彼を求めているのがあくまでも「クレアの身体」なのだと信じたかった。
ここには居ないクレアを筋違いに恨む。もはやパクパクと口を開ける魚のようになっている秘所に、
ヴェイグのモノが押し当てられた。ひっ!とアガーテは息を飲む。
「い、いやぁああ!」
 押し入る衝動は大きかったが、痛みは殆どなかった。
ヴェイグは全部を納めることはせずに先端だけを進入させ、浅いところで穿っている。
「痛くはないだろう?ほら、こんなに……」
 うわずった声で息を荒げるヴェイグ。アガーテはそこを思わず見てしまった事を後悔した。
ヴェイグのモノが動くたびに愛液が零れ、シーツを濡らしている。
クレアの方が焦らされるのに耐え切れなくなっていて、僅かに浮いた腰が彼のモノを取り込み、
もっともっとと揺れている。
「ひッ…やぁ…!」
 おかしくなりそうな快感に意識が飛びそうになる。
でもまだ開放はされない。クレアがそれを望んでいないからだ。
もうアガーテは自分の心と身体がどうなっているのか、快楽に溺れているのが
はたして「クレア」なのか「アガーテ」なのか、わけが分からなくなってしまった。

(違う…わたくしがしたかったのは…こんなことじゃない…!)

クレアは無意識のうちに叫んでいる。

「お願い、ヴェイグ…もっと中ぁ……奥、に…!」
「クレア…クレアッ・・・・・・!!」

 クレアの求めに応じ、ヴェイグの動きが早くなる。
恋人たちは必死に腰をぶつけ合い、そしてやがて同時に達していった。



 行為が終わってもアガーテは開放されなかった。
今、一つの狭いベッドでヴェイグはクレアと抱き合い、甘い時間を過ごしている。
恋人同士ならごく当たり前のことだ。しかしアガーテは早く一人になりたかった。
目的である、男女が愛し合うとはどういうものか知ることは出来た。
否、嫌というほどに思い知ったのである。
「ヴェイグ・・・このままじゃまずいわ・・・」
「朝までには戻るから大丈夫だ・・・・・・少し眠らせてくれ」
目を閉じたヴェイグはとても満たされた顔をしていて、いつもよりあどけない印象を受けた。
 愛しい女を胸に抱いて、彼は今さぞや幸せだろう。
 クレアの身体もさんざん愛され、少女ではなく女の、一層美しく艶やかな身体になっている。
 ヴェイグの腕の中でクレアもまた眠りに落ちようとしている。

アガーテだけが一人だった。
クレアの身体の中で、アガーテの「心」だけが孤独だった。

おわり
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