作品名 | 作者名 | カップリング | 作品発表日 | 作品保管日 |
倒錯 | すみっこ氏 | ゼロス×しいな | 2011/10/06 | 2013/2/27 |
雨の日だった。
ノックの音に、しいなは姿見に向かい、おかしいところがないか確認した。いや、どう見ても浮いているのだが…。頬を赤くする。
致し方ない。ドアに返事し、ノブに手をかけた。
「はーい、今開けるよ」
「…なんだその格好」
ドアが開くなり、ゼロスは眉間にシワを寄せた。当然である。しいなが着ていたのは、ロイドの服だったからだ。
「借りたんだよ。ロイドに。仕方ないだろ、びしょ濡れになっちゃったんだから」
言われてみると、髪もまだ生乾きだった。リボンを解き、黒髪は肩に落ちている。
「…他に借りる相手はいなかったのか、リフィルさまとか」
「おあいにくさま、リフィルもびしょ濡れ。あたしもリフィルも買い出し当番だったんだよ」
しいなは溜息をついた。入りなよ、とゼロスを招き入れ、ドアを閉めた。
ゼロスは思い出す。そういえばロイドはタンクトップ姿で、リフィルは外套を脱いでいた。しいなは外套を着ていないから、濡れれば着替えるしかない。ズボンはたまたま替えがあっただけだという。
「一応あんたも探したんだよ。でも、あんたの上着を借りるにも、サイズは違いすぎるし、露出が高すぎるだろ?」
身長で15cm、体重は20kgも違うのだから、サイズはまあいい。しかし露出を気にするような気持ちがあったのかと突っ込みたくなる。
「しかし、似合わないね」
姿見の自身に、しいなの頬がわずかに赤くなるのを見逃すゼロスではない。腹が立ってきた。
「宿から寝間着でも何でも借りりゃよかっただろが」
「さすがに寝間着でうろうろするのはちょっと…」
濡れた頭を掻く。
「そういやあんたは何の用だったんだい?」
言いながらベッドに腰を下ろす。
「いや、おまえが濡れて帰ってきたって聞いたから…」
「心配してくれたのかい? ありがとう」
笑顔。しかしすぐにロイドの服を気にしだした。
「…脱げよ」
「え?」
「そんな服、似合わねーから脱げよ」
「…ゼロス?」
ちっと舌打ちしたゼロスに、しいなは眉を寄せた。
「脱がねーんなら、俺さまが脱がしてやる」
「ちょっ…!」
ベッドに座ったしいなの上半身を、そのまま押し倒す。悲鳴を上げかけた唇に自分の唇を重ね、舌を入れた。ふたりの胸の間でしいなの両手首を掴み、空いている片手は胸にかける。
「んーっ!? んん、ん…」
舌を絡め、徐々に身体の力を奪う。ばたついていた脚も、膝で押さえ付けた。
腹の立つ赤い服の前を開け、右手を侵入させる。しいなの両手を頭の上に移動させるため、一度唇を離した。その間も、服の中に入った手は胸を刺激し、快感を与えていた。
「はっ、は…、やめ…んっ」
そういや処女だったな。初めての感覚のはずだが、それでこの反応はなかなかの感度だなあと、ゼロスはかろうじて残っている理性で考える。
もう一度、今度は優しくくちづけた。
抵抗して力を入れていた両手も、今はおとなしくしている。ゼロスは手を離した。
「なんで…」
胸で息をしながらしいなは戸惑っていた。その答えは、ゼロス自身が知りたかった。そもそも、ロイドの服さえ脱いでくれればよかったのだが…。
「…おまえがロイドくんを好きだから、かな」
しいなに覆いかぶさる形で、至近距離でそう答えた。
「意味…わかんないよ」
涙目だった。なんとなく申し訳ない気持ちになるが、もう止められない。
「だよな。…悪い」
首筋にキスを落とし、ロイドの服の前を完全に開いた。既に下着はずり下げられ、豊かな胸が空気にさらされる。抵抗がないところを見ると、火が点いたのはゼロスだけではないらしい。
右手でしいなの左胸を、唇で右胸の突起を愛撫しながら、左手を下腹部に移動させる。ぶかぶかのズボンの中に手を差し込んだ。膝がぴくりと反応を示す。
「あっ…」
押し殺していた声が、堪らなくなって漏れだした。
「あ、やっ、そこは…」
つい、とショーツをなぞると、ぐっしょり濡れているのがわかった。
「あっ、あっ、やだ…、あんっ」
こうなったらロイドの服を汚してやろうかと思う。ショーツの中に手を差し込み、ぐちゅぐちゅといやらしい音を立てながら指を動かした。
「ああん、あっ、そこは、ああっ!」
喘ぎながら背中を反らせる。その瞬間を逃さず、ズボンをショーツごと膝まで下げた。
「ちょっ…待っ…」
抗議は聞かない。ゼロスも自分のズボンの前を開く。しいなは目をそらしたが、一瞬、ばっちり見てしまった。いきりたったゼロスのそれを。むろん、見るのは初めてだ。
「もう入れるからな」
「…えっ?」
ズボンをはいたままなので、膝を胸に押し付けてしいなの秘所をさらす。
「やだっ、恥ずかしいよ!」
「黙ってろ」
入れるとは言ったものの、慣らしもせずに挿入させるのはさすがに気が引ける。指から試すことにした。
「あ…! あ…っ!?」
異物感はすぐに快感に変わった。
「ああん、あっ、はあっ、あ、あ、ああっ…」
指を腹側に曲げ伸ばしするたびに鳴き声が上がる。穴を拡げるようにぐるんと円を描いていると、二本目の指もすんなり受け入れるほどほぐれていた。
堪らなくなって、指を引き抜く。
「入れるぞ」
亀頭の先をしいなから出た愛液で濡らす。ぐっと力を込めてゆっくりと進めていった。
「う…、ん、あっ!」
指とは比べものにならない異物感が、一気に鈍痛に変わった。
「い、いたっ…、痛いよ」
「…抜くか?」
「…この、バカゼロス…っ」
涙がポロポロとこぼれた。
「ここまでしたんなら、最後までちゃんとしなよ…っ!」
「でも、おまえが…」
「中途半端に優しくしないで…!」
身体が求めるまま許したのはしいな自身だった。それは、ふと我に返ったときに、深い心の傷になってしまうのもしれない。
ロイドの服を着たしいなを犯そうとしたのはゼロスだ。強引にでも最後までしてくれなければ、気持ちの行き場がなくなる。
泣いて、両手で顔を隠すしいなに、ゼロスの胸が痛んだ。
「…すまない。泣かせるつもりじゃ…なかったんだ」
指の隙間から見たゼロスの顔は、本当に反省している顔だった。彼と一番付き合いの長いしいなも、そんな表情は見たことがなかった。
「…ゼロス、解ったから、最後まで、しておくれよ。あたし、だんだん慣れてきたから…」
ゼロスは頷いた。ズボンとショーツを全て取り払って、しいなに楽な体勢を取らせる。
繋がったまま、ゼロスは指を結合部分に運ぶ。
「…あっ」
クリトリスをいじり、痛みを快感でごまかそうとした。
「ああ、やっ…、ゼロス…」
「気持ちいい?」
「うっ、うん…」
羞恥に耐えながら頷くしいなを、ゼロスは優しく抱きしめた。
「動くぜ?」
「ん…」
しいなもゼロスの背に手をまわす。
ゆっくりと抜き差しを始めた。ぎゅっと服を掴んで、ゼロスの肩に口を当て、声を我慢する。
「んん…、ふっ…う…」
「痛いか?」
「ちょっと…。でも、少し、気持ちいい…」
ゼロスの顔がさっと赤くなる。しいなが悦んでいる。それが嬉しかった。
少しずつ動きを早めた。
「しんどくなったら言えよ」
「だい、じょうぶ、だよ、あっ」
動きに合わせて声が出る。ゼロスはしいなの耳に口を寄せて囁いた。
「しいな、愛してる」
無意識だった。しいなは再び涙をこぼして、ゼロスをぎゅっと抱きしめる。そうして見えた自分の袖が、ロイドの服に包まれていることに後ろめたさを感じた。それでも、ロイドの代わりにはならない。ゼロスはゼロスだった。
「あっ、あ、あ、ああっ、ゼロス…っ!」
その羞恥が、倒錯が、背徳感が、しいなの快感を高めた。まぶたの裏に浮かぶロイドは消えてはくれなかった。
「あああっ! ゼロス、あたし、あたし…、ダメ…!」
きゅうっと締め付けられて、しいなが達したことが解った。
「しいな、すげーいい…! 俺も、もう…!」
「ああっ、あっ、はあっ、ゼロス…!」
しがみつこうとしたしいなを焦って引きはがした。次の瞬間、白い肌の上に白濁した液体が吐き出される。
「あ…」
ゼロスはぶるっと震えた。しいなの胸から臍にかけてが、汚されていた。必死で息を整える。
しいなも胸で息をしていた。まだ身体に残る余韻を持て余している。
「…だ、大丈夫か?」
「うん…、大丈夫」
滑らかな臀部の下、シーツは赤く汚れている。ゼロスは半ば顔を隠すように頭を押さえた。
「…本当にすまなかった。謝って許されることじゃないよな」
しいなは慌てて起き上がろうとしたが、腰を押さえて再び横になった。
「あいたたた…、こ、腰が…」
「…悪い」
ゼロスはしいなの腰をさする。酷いことをされたけれど、だからこそ優しさが際立って泣きそうになった。
「…あんたさ、すごいこと言ったの、覚えてる?」
「…何か言ったか?」
どうやら覚えていないらしい。自身をズボンの中にしまいながら考え込んでいた。
しいなは口をもごもごさせながら、小さく答える。
「あ、あたしを愛してるって…」
「…マジ?」
「嘘なんてつかないよ!」
ふて腐れたようなしいなの耳が赤い。どうやら本当らしい。
そうなのだ、嫉妬した理由は単純なものだった。
「…悪い、忘れてくれ」
うなだれるゼロスに、しいなは溜息をつく。
「忘れないし、あんたがしたことは許さないよ」
横になったまま、淡々と告げる。
「…すまなかった」
「謝らないでおくれよ…」
「…勘弁してくれ。謝る以外にどうしていいかわかんねーから…」
おもむろに起き上がり、しいなは乱れた服を直した。ロイドの服だ。
「…あたし、ロイドのことは確かに好きだよ」
改めてしいなの口から言われると落ち込む。
「でも…ロイドにはコレットがいるから…諦めてるんだ」
泣きそうな顔。頭では諦めていても、心はそうは行かない。
「ねえ、あんた、本当に悪いと思ってる?」
聞くまでもない。ゼロスは頷いた。
「あたしを…その、愛してる、って…本気?」
しいなの頬も、ゼロスの頬も赤くなる。しかしすぐに真剣な顔をした。
「…本気だ。ずっと前から、おまえのことが好きだった。…誰よりも愛してる」
耳が熱くなるのを感じる。
「じゃあさ、ひとつ、お願いがあるんだけど…」
「何でも言ってくれ。命令なら聞くし、願いなら叶えてやりたい。俺は…そんだけ酷いことをしたから」
しいなは照れ臭そうに膝の上で指をもてあそんだ。
「…傍にいて」
「は?」
「傍に、いて。あたしがあんたのこと、好きになるように…。ロイドのこと、忘れられるように」
「…しいな?」
訝しげなゼロスにしいなは慌てた。
「い、いや、すっごい都合いいこと言ってるのはわかるよ! その、あんたの気持ちに付け込んでるってことも」
「付け込むのは構わねーけど…、俺でいいのか?」
むっと頬を膨らませる。
「…嫌ならいいよ。聞かなかったことにしとくれ」
「嫌じゃありません。ぜひこのゼロス・ワイルダーにお任せ下さい。お願いします」
うやうやしく頭を下げるゼロスに、しいなは破顔した。
ゼロスも、やっと笑みを見せた。ちょっと情けない顔だった。
「でも…、次に抱くのはおまえの服のときにしてくれ。それだけは頼む」
「…うん」
しいながはにかんだ。
「あ、でも、俺さまの服でもいいぜ。きっと胸元が超セクシーだと思うんだが」
「…このスケベ」
調子を取り戻したゼロスに身体を預け、すっかり渇いた髪を撫でられながら、しいなは汚してしまったロイドの服とベッドのシーツをどうしようかと考えていたのだった。
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