11/04/07(木)00:37:37

……彼は永遠亭の面々と多少は面識のある普通の少年。まあ、たまたま竹林に住まいが近いだけですが。
その彼がちょっとした検査が必要な病気に罹ったのではという疑いで、一週間の検査入院をするハメに。
月の頭脳、とか呼ばれていたほどの先生なのに、もう少し早くに退院は出来ないのかと頼みましたが
「そんな別にすぐ死ぬわけじゃないんだからいーじゃない」と小さな兎、因幡てゐに横槍を入れられて。
まあ永琳先生の腕は確かだし、彼女の言う通り心配しなくてもいいだろうと思い従うことにしました。
しかし入院して二日目、彼はこの永遠亭での大変な秘密を発見してしまいました。
秘密とは鈴仙・優曇華院・イナバを慕っているイナバのひとりが実は女装した人間の少年だということ、
そして彼と鈴仙の間のアブノーマルな関係とその営みに……

1

ちょっとした冒険心で、彼が永遠亭の中やまわりを探検していたところ、
人気のない場所へふたりがこっそり向かっていったのを見つけたのです。
彼はなんだろう、と物陰から様子をうかがいました。
鈴仙さんがお股から生えた女性にはないはずのもので、イナバの少年を責め立て始めました。
少年は男女の情事について知らなかったわけではありませんでしたが、
自分の得た知識と違う光景が、どうもおかしいとは思いつつも気にならずにはいられませんでした。

鈴仙さんは乱暴な言葉づかいでイナバの少年を罵りましたが、どちらも楽しそうで、嬉しそうでした。

2

今日の朝も彼らふたりは、物陰に隠れていた少年の目の前でまぐわっていました。
厄介なことに、彼らふたりは少年に『悪習』を身に付けさせてしまったのです。
彼は初恋の相手を想いながら、叶わぬ夢を『悪習』の中だけで愉しみました。
あの人は、アレを持っていない。あったら、すぐにわかるものだ。
それに自分がこんなことをしていると知ったら、きっと軽蔑される。
彼の『悪習』はすぐにエスカレートしました。『悪習』に用いられるものの大きさも、やはりすぐに。

3

少年は自分に宛てられた病室のベッドの上で、やはり今日も『悪習』に興じようとしました。
なぜだか少年は今日に限って何となく恥ずかしくなって、扉を背にして『悪習』に望もうとしました。
鈴仙さんの部屋にあったぬるぬるする液体も、枕元にちゃんと準備してあります。
指にすくい塗りこめれば、塗られた場所がなんだかじんじんと疼くのです。
息を荒げながら、液体を指に垂らします。
しかし、柔らかい寝間着の中にすべらせたその腕は、後ろからの誰かの柔らかい手に阻まれました。

──だぁめ。

少年が聞いた事のない、女性の、そう女性の甘い発声でした。

4

見つかった──誰に? 扉の鍵を閉めてなかったのか?
ほかにどこから? この液体を持ち出したのがばれた! 怒られる! ……追い出される!

誰かの手が、硬直した少年の腕をゆっくりと寝間着から引き抜きました。
そしてその誰かが、少年の指先の液体を舐めとり始めたのです
温かいねっとりとしたものが、少年の指先を這いました。
その温かさを感じている指先以外、少年の身体は未だ硬直したままです。
熱っぽい吐息と、ときたま漏れる声と、いやらしいぴちゃぴちゃという水音。
自分の置かれている状況と自分に起きていることまったく理解できず、
少年は今自分がいるのが夢なのか現実なのかわからない心地にいました。

5

粘液を舐め取り終わった誰かが、今度は少年の首筋へと標的を移したようです。
血の気が引いて冷たくなっている少年の首に、また温かいものが触れます。
そのとき、今までわからなかった『誰か』の正体が、少年は分かってしまいました。
首筋に当たったのは『誰か』の唇だけではなく、くせのある硬めの髪。
それだけでわかるのか、と思う人もいるでしょう。
わからないはずありません。入院する前から、ずっと想っていた人の髪です。
入院してからだって、額をあわせて熱を測ってくれたこともあった少女の髪です。
髪と髪が触れ合うほど親しい関係になりたいと思っていた、憧れの人の髪です。
少年はそのとき喜んだのでしょうか、それとも絶望したのでしょうか……

6

「──ほーんと、あの子も大変だわ。かわいそうに」
僕はこんな状況でも浅ましい存在でした てゐさんの声色から、
僕のことを、僕がしていたことをどう思っているのか分析しようとすらしていたのです
そして、てゐさんの言う『あの子』が鈴仙さんなのか、あのイナバの男の子なのか、それとも
今までてゐさんの前で演じていた過去の自分なのか、全く想像がつきませんでした
「ん? いやどっちもだよ。れーせんも、あの男の子もさ」
やはり、もうてゐさんの中では僕はもういらない存在なのです
自分自身の手で自分を汚した僕のような存在など、自分でも嫌気がさしてくるようでした

7

ただ、自分をそんな存在だと認めて自分を慰めるのは、普通にするのとは
比べ物にならない快感を得られていたことも確かでした
想い人が勝手に鈴仙さんのように雄雄しいおちんちんが生えていると想像して
自分のお尻の穴をいたぶると通常の何倍もの精液を出してしまうのも確かでした
その上、この行為がバレる前の自分は神聖なはずの想い人に男根が生えている、
それも自分のものとは比べ物にならないほどの大きさのものが……と想像したことを
てゐさんに知られたとき、てゐさんの神聖さを汚したことを咎めてほしいとまで思っていました

8

「ふたりとも優しくしようと頑張りすぎて道間違えちゃうタイプねー……。
でも、あたしだって結構優しい方よ? うそつきとかよく言われるけどね」
僕の目から見ても、イナバの男の子と鈴仙さんがお互いを愛し合っていることは明白でした
それに対して、僕は片想いの分際で勝手すぎる狼藉を働いてしまったのです
しかし、次のてゐさんの言葉を聞いたとき、耳がどうにかなってしまったのかと疑いました

「 ……ほら、今もあんたの願望をかなえてあげよーとしてんのよ……?」
てゐさんがまだ脱いでいない僕の寝巻きの上から、僕の浅ましいおちんちんを触り始めたのです

9

僕の頭のなかはすでにぐしゃぐしゃでした
あれほどにまで純粋な笑顔をする、嘘をつかれても笑って許せるような、
少なくとも自分は何でも許してしまうような、かわいい妖怪の少女が
僕のおちんちんを布越しとはいえ、触っているのです
無知な女の子がたまたま触れてしまうのではなく、明らかな意思を持って触れているのです
「……こぉんなにガチガチにして。襲ってくださいって言ってるようなもんでしょ」
てゐさんは見たこともない表情を上気させて妖しく笑っていました
今までに僕が見たことのない、食料を見つけた妖獣の表情でした

10

僕はまず感謝し、僕の行動をてゐさんに見られたときの絶望より大きい感情が頭を駆け巡りました
彼女の聖性が壊れるのを、僕は願っていたことを望んでいたのです
彼女という女性にこうやって蹂躙されたいと、僕は願っていました
「なに、にやにやしてんの? あんた、これからひどいめにあわないとでも思ってる?」
僕は青ざめた顔で確かに笑っていました 『ひどいめ』と聞いて、
ぼくの心と身体に熱が戻ってきたのを感じすらしました

「……あー、ごめんね。間違えちゃった」

一瞬何のことかわからず、きょとんとしていると、てゐさんは小さく一度くすっ、と笑みをこぼし
僕の耳元に口を近づけて、こう呟きました

「“ひどいめ”に……あいたいんだよね。こーやって服の上からこすられてるだけじゃやだよね?
もっともっとすりきれるくらいにしてほしいんだよね。かわいくて、ちいさい女の子に。
……女はとぉーってもこわいってこと、カラダで理解させてもらいたいんだよね」

11

僕の全身はその言葉だけで真っ赤に染まった感覚に襲われました
てゐさんのその言葉が神経の奥の奥まで、浸透したのを感じました
目をぐるぐるさせながら彼女の色気にあてられてしまった僕をみて、
てゐさんは少し満足げな笑みを浮かべました
「ったく、れーせんにも困ったもんね。この坊やに見られてるの、本気で気付いてないなんて」
てゐさんは僕の髪に指を通しながらさっき僕の首に口づけた箇所を吸い始めました
同時に空いた手の器用な指がするするとしなり僕の寝巻きのボタンを外していきます

12

てゐさんが僕の寝巻きの相手を終えた頃、頬に冷たいものが当たりました
「で・も……こんなのまで持ち出したあんたも、同じくらい困りものだよ。これ、結構アブない薬」
僕が鈴仙さんの部屋から持ち出した、鈴仙さんがイナバの男の子にも使っただろう薬の小瓶でした
「ふつうの人間だったら、発情したケモノみたいになっちゃう」
と教えてくれつつも、彼女は小瓶の液体を僕の胸に垂らしてしまいました
「あんた、これと普通のローション間違えたの。お尻に塗ってでもしてたら……どーなってたか」

13

銀色のほとんどが粘りで出来た糸が僕の胸の上にとろとろと軌跡を作り
それをてゐさんが指と舌を使って僕の胸にしっかりと塗りこみます
垂らされた直後、僕は身構えていたのですがその『アブない薬』の効力はすぐには出ませんでした
むしろ安心して力を抜いたとき、それは襲ってきました
胸から脇へかけて、痒みでは済まない程の強烈な何かの電流のようなものが走りました
次に胸が、乳首が、何もせずとも執拗にこねくり回されているような感触でいっぱいになりました
しかし、てゐさんはそれ以上触ってはくれません
僕の胸にふっ、と息を吹きかけて僕が悶える様を見て楽しんだ後、
彼女は僕としてはぱんぱんに膨れ上がった股間に視線を移したのです

14

てゐさんはやはり器用に僕の下の寝巻きと下着を脱がしました
これで僕の着ているものは辛うじて腕が通っていてほとんどはだけている上の寝巻きだけです
「ね、聞きたいんだけどさ」
てゐさんが悪戯を考えたような顔で僕に聞きました
「……この前はお尻になに、突っ込んでた?」
『──!!』
僕はもう、この人に全部を知られているのだとわかりました
それ以前にもっと早くこの人に屈服すべきだったのだとも考えました

15

思わず、顔を背けてしまいました まともにてゐさんの目を見ていられなかったのです
「いや、よそ向いてもだぁめ。全部見てたんだよ」 
顎を指でくい、と持ち上げられ、強制的に視線が交差させられました
なぜ、顔を背けたのか自分でもわかりませんでした 言いようもなく恥ずかしかったのです
「自分の口で言わないなら、あたしが言ってあげる」
やめてください、とはどうしても言えませんでした
僕に関するあらゆることが知られている時点で、言葉にするのを許してもらったとしても
それは意味がないことなのです

16

「三日前は自分の指、おとといはあたしの触った胃薬の小瓶でー……」
やめてください、やめてくださいと心の中で自分の声が空しく響きます
いやいやをするように首を振っても、何も変わりません
「きのうは……あは、師匠の部屋にあった張り子だっけ」
てゐさんの手によって、唇によって、舌によって、僕の中身という中身がすべて暴かれていきます
なぜか、それが心地よくありました これが征服される快感なのか、と納得すらしました
「……それもどの日も、あたしのぱんつ、嗅ぎながら。さぁて、一体どこから盗ったんだろーねぇ」
一度自分の気持ちに素直になってしまうと、その快感には逆らえなくなります
その快感なしには生きていけなくなってしまうのです

17

「だめだねぇ、ひとの部屋に勝手に入っちゃさぁ。それに下着ドロ? ひっどーい」
てゐさんは僕を蔑んだ目で見て、本当に楽しそうに笑みを浮かべていました
なんで、この人は僕のことをこんなにも知っているんだろう 僕は不思議に思いました
僕が顔見知りだったから?
僕を嗜虐の対象として選んでくれたから?
なぜ、自分をここまで弄んでくれようと思ったのか不思議でなりませんでした
「……え? なんで全部ずっと見てたかって? そりゃあ、おもしろいってのとー……」

18

「……あのイナバの男の子。あの子はれーせんに気に入られて、いろいろあって、あーなった。
あんたは運が悪いことにあたしが気に入っちゃったわけ。突き詰めれば、それだけなんだよ」

きょう、いままで、僕の心臓はてゐさんの行動によって張り裂けそうなくらいの鼓動を刻んでいました
しかし、この言葉を聞いたとき、僕の心臓の鼓動がなにか別の種類のものになった気がしました
──妙に安心するというか、安らぐといいますか、とにかく、言葉では表現できないものでした

19

「兎ってさぁ、一回交尾始めると血が出るまで止まんないんだよ。知ってる?
もうほんとに、抑え利かなくなっちゃうんだよ。今みたいにさ。
……あんたのせいなんだよ。あんたがあたしをどーにかしちゃったんだよ?
あんたが最初にお尻でしてたの見てから、ずっとずっとおかしいんだよあたし」

てゐさんは顔を真っ赤にして、震えながら言葉を紡いでいました

「だからぁ……ね? それなりの覚悟と責任、ほしいな」

20

僕があれほどまでに夢見た契約に、僕は僕のすべてをかけて判を押しました
僕の唇に、ほのかに濡れた柔らかい感触が残りました 
彼女に最初に首筋にされたそれとは比較にならないほどの、まばたきほどの短い時間でした

「……ん。もう離れらんないよ。逃げないように、しっかりと噛み付いといてあげる」

僕はそのとき幸せでした。このときだけではなく、僕が死ぬまでずっと、
僕自身が望んだ最上の幸福の鎖で繋ぎとめられた奴隷になったのです
僕の全ては、もう彼女のものになり、彼女が、僕の全てになりました


「そうだ……ねえ、あたしと二人っきりのときだけ、『てゐさま』って呼んで?」

「いいでしょ?」

屈服編 おしまい

-

日は落ちて、だいぶ暗くなってきました
カーテンを締め切った薄暗い僕の病室に、ゆっくりと夜の気配が近付いていました

彼女が服従を誓わせるために奪った僕の初めての口づけ
つい先ほどまで僕の唇を濡らしていたてゐさんの牡丹色の唇が、今度は僕の耳元へ近付いてきました
「ね、あたしからの、初めてのおねがい……聞いてくれるよね」
ささやくような、幼さと色気が絶妙のバランスで混じった甘い声が僕の耳と理性を蕩かします 
彼女の温かい吐息が耳を刺激するたび、腰の辺りが熱を持ってひとりでに震てしまいます

「二人っきりのときは、『てゐさま』って呼んで。……いいでしょ?」

1

・・・・・
・・・・
・・・

……てゐさま
「……うん、うん。よく言えたね。お利巧さんだね」
てゐさま てゐさま てゐさま てゐさま
「ほらほら、そんなに興奮しないの。大丈夫、とぉっても、かわいいから」
僕はてゐさまと二人っきりのとき、誰も僕たちを見ていないとき
僕の心はスイッチが入ったようにてゐさまのお名前を呼び続けてしまう仕組みになってしまいました

2

てゐさまからお許しをいただけるまで僕は何度もてゐさまのお名前を呼びました
てゐさまの『おねがい』のため、僕はてゐさまのお名前を呼ぶ練習をつけていただいたのです
ただてゐさまの名前を呼ぶだけではだめなのです てゐさまのお眼鏡に適わないと、
「もっと可愛く鳴いて? ……できるよね?」と僕をお叱りになり、お尻を叩かれるのです
ちいさな女の子の手のひらがぱぁん、ぱぁんと大きく音を鳴らします
いたい、いたいですてゐさまぁっ うあああっ やめてっ やめてくださいぃっ
手首に思いっきりスナップを効かせたてゐさまの折檻は、すぐに僕のお尻を真っ赤にしました
僕が情けなくわめくと、てゐさまはお尻を叩く手をお止めになってこうつぶやきました

「あ? ……『いたい』? 『やめて』?」

3

ひっ、と僕は小さい悲鳴を上げてしまいました てゐさまの声のトーンががらりと変わったのです
僕のお尻を叩いていたお手が、僕の顎を持ち上げててゐさまのお顔を見るよう強制させました
てゐさまが僕の顔をじっくり観察しました 冷たい、金属質な視線でした
てゐさまはご機嫌を損ねていました お顔は笑っていても、その視線ははっきりと主張していました
優しく口角が上がったてゐさまのお口が、ゆっくりと僕に言い聞かせるように動きました
「ねえ、痛いのが、痛くされるのがイヤなの?」
僕は自分の気持ちの通りに頷くことができませんでした
実はてゐさまのお手々が僕のお尻を叩くと痛み以外の感覚が流れるのです
間違いなく、てゐさまはそのことを知っていました てゐさまが怒っているのは
僕が痛い、と泣き叫ぶことではなく、自分の心に正直にならないからなのです

4

「……わざと痛くしてあげてるんだよ。明日も、その次の日もきっと痛いよ? 
明日も、こうやってあたしに痛くされたのを思い出すように痛くしてるんだよ」

いたいのがきもちいい、いたくされるのがきもちいい 
なぜ僕はそれを否定しようとしていたのでしょうか
どんなことも、てゐさまにしていただければ、それが快感になるとわかっていたはずなのに……
僕はなぜだか涙があふれそうになりました 口元がひくひくするのを自覚していました
僕のそのみっともないさまを見てなのか、てゐさまの瞳に優しくも妖しい、赤い光が戻り、
泣いた赤ん坊をあやすような声色でなぐさめてくださいました

「……ね? もっかい、やってみようか……」

こうして僕は人間の少年の身でありながら『イナバ』のひとりと同じ扱いの如く
てゐさまに奴隷として主人の名の呼び方を躾けていただいたのです

5

「ねえ、そういえばさぁ」
僕の寝巻きをひょいひょいと器用に脱がしながら、てゐさまが微笑みます
「確か、あんたはぁ……おしりいじりが大好きなんだよねぇ」
何度、どんな言葉を受けても、僕は赤面する癖が治りませんでした
てゐさまの言葉通り、僕は未熟ながらもお尻を弄る自慰を覚えていました
それも、てゐさまにありとあらゆるものでお尻の奥まで侵食されたかったのです
てゐさまの言葉で、指で、舌で……そして、あの雄々しいおちんちんで
鈴仙さんや他のイナバの女の子たちを狂わせたように、僕もてゐさまに狂わせてほしかったのです
てゐさまは、そのことを知っていました 僕の行動やその心理は全て見透かされていました
「さぁさ、このすべすべのおしり……こっち向けて見せてよ」
柔らかなてゐさまの手のひらが、いやらしい不規則な手つきで僕のお尻を撫で回します
さっきまでてゐさまのお手々で散々お仕置きを頂いたというのにもう痛みはなく
てゐさまの手のひらが滑る箇所に、なんとももどかしい淡い痺れのような感触が走るのです

6

四つん這いになるよう命じられると、僕の身体はもう自然に動いてしまいました
「ほらほら、もっと突き出してよ。おしりの穴のその奥まで見てほしいんでしょー」
やはり言われるがままに、てゐさまが十分に観察できるようめいっぱいお尻を突き出します
恥ずかしいという感情がまだ僕には残っていたのか、頭の心から耳の先へと熱が広がっていきます
しかしその反面、甘い脱力感とその対極にある妙な高揚感に酔いそうな自分がいました

7

「恥ずかしい? 恥ずかしいのは嫌い? ……でもほら、おしりの穴ひくひくしてるけど」
恥ずかしいことをされる 恥ずかしい格好をさせられる 恥ずかしいことをするよう強要される
本当の僕はその頭の奥が真っ白になるほどの羞恥を欲しがっていたのです
そのことに気付くと、心までてゐさまに丸裸にされた錯覚に快感を覚えずにはいられませんでした
「うわぁ、なんもしてないのにこんなひくつかせて……いやらしい子なんだね。
……ココに、なにか入れてもらいたそーだよねぇ。例えばー、こんな感じで、さぁっ」
てゐさまの声が悪戯を思いついたときのような声色に変わったときは容赦などしないのです
じゅる、という唾を啜る水音を皮切りに、僕のお尻の穴の執拗と言えるまでの責めが始まりました

8

僕にはてゐさまの口の中に舌の形をした魔性の生物が棲みついているのではと思えるほどでした
てゐさまの操る舌の妖怪はその繊細な舌先を精妙な動きで僕のお尻の穴の入り口をなぞり、舐め回し、
これでもかと言うほどに念入りな愛撫で舌の妖怪が直腸の中で暴れ回れるほどの隙間を作りました
僕の肛門がなめらかに舌を出し入れできるくらいに緩んでも、てゐさまは僕を解放してくれません
温かく弾力のある軟体動物で、僕の身体の中にじっくりと快感を覚えこませるのです
不思議だったのはときたまてゐさまが舌でお腹の側の腸壁を刺激すると、
ただお尻を舐られているのとは違う種類のとても大きい快感が背骨を駆け上がってくるのです
その快感が体中を流れるたび、その快感に耐えられなくなって身をねじって逃げようとすると
てゐさまが僕の太股に手を回してぐい、と引き付けて更なる刺激を与えようとするのです
逃道のなくなった僕はといえば、自分の腕に顔をうずめ快感に震えることしかできませんでした

9

やめて……もう、やめてっ、ゆるしてください……
僕がうわごとのようにその言葉くらいしかつぶやけなくなったころ、やっと僕は解放されました
腰から下は骨と筋肉ごとどろどろに溶かされたように重く、こみ上げてくる熱を抑えられません
顔は冷や汗と涙とでやはりぐちゃぐちゃになっていて、とても見られたものではなかったでしょう
「……っぷはぁ。ったく、そんな猫撫で声でゆるしてって言われてもねぇ。
でもまあ、てゐちゃんはとっても優しいから許してあげるんだけどね……」
僕の顔を覗き込んで、楽しそうにてゐさまはそうおっしゃいました
てゐさまは全身の神経が緩んで動けない僕を抱き上げて蒲団に仰向けにしてくださいました
口周りを濡らしたてゐさまの唾液と、僕の愛液ともいうべきものが混ざった淫らな液体を
美味しそうに指ですくって舐め取るしぐさを見せてくださったときのてゐさまの表情は、
心から楽しそうな笑顔でした 僕が少なからずてゐさまの楽しみになれているのだと思うと、
僕の顔も自然と嬉しそうな笑顔になってしまうのでした


「……じゃあ、そっちばっか気持ちよくなってんのも癪だから、そのよぉくほぐしたおまんこを愉しませてもらおうかなぁ」

お尻調教編・おわり

-

てゐさまの長く、しなやかな触手のような舌で、僕のお尻の穴はどろどろにされてしまいました
てゐさまに開放されて、自分のお尻の入り口はどうなってしまったのかと自分の指を滑らせてみると
本当に舌で押し広げたのかと疑うほどに、するりと入ってしまうほどに緩くなっていました
しかも、僕の指を無意識に、反射的にきちんと締めつけるのです
僕のお尻はてゐさまの舌の動きをしっかりと記憶してしまったのです
異物が挿入されると、それをいやらしく咥えこみ、蠕動し、刺激するために……
お尻が指を締めつける感触と、指が腸内でこすれる感触との両方がたまらなく気持ちいいのです
「ふふ、びっくり? そーやって、どんどん病みつきになってっちゃうんだなあ、お尻ってのは」
やみ、つき……? そんな、そんなこと…… うあああっ……
僕は指を二本に増やし、鍵状に曲げては伸ばしを繰りかえしてひとり喘いでいました
「にしても、目の前でそうすぐオナニーしてもらっちゃあね、ほんと、こっちも可愛がり甲斐があるよ」

1

「……じゃあ、そうだね、そっちばっか気持ちよくなってんのもなんか癪だから、
そろそろご奉仕のしかたも教えてあげないとねー。ご・ほ・う・し。わかる?」
……熱い息を漏らしながら快感をむさぼる僕の顔を覗き込んで、てゐさまが言います
「ほぉらぁ、見て? あんたが見たがってたあたしのワンピースの中だよ……ほらほらぁ」
ゆっくりと、てゐさまはご自分の薄桃色のワンピースをたくしあげていきます
健康的な肌色、少女の艶と張りだけで出来ている、傷もシミもひとつもないてゐさまのふくらはぎ
竹林で一緒に遊んでいたとき、めくれた裾の中からちらちらとのぞいたてゐさまのふともも
ワンピースのその奥を想像しただけで、紅潮してしまっていた僕はもう昔の存在なのです
ああ、これ以上視線を上に動かすと、下着が、ああ、てゐさまのぱ、ぱんつが

2

「あはっ、釘付けだね。そんなに見られちゃうと、ちょっとこまるよ」
てゐさまが言っているのは、下着のことではありませんでした
てゐさまのぱんつがどうとか、そんなことはどうでもよくなるくらいの衝撃で、
いやそれでも、僕はしっかりと確認はしていました 面積の少ない紐だか布だかわからない
たぶんレース地の挑発的な黒いぱんつの中から、僕の粗末なものとは比較にならない大きさの
お おちんちんが ぬうっと存在を誇示するかのように上を向いていたのです
「ふふ、小さい女の子にはおっきいちんちんが似合うんだよ。これ永久不変の真理」
誰が考えた真理なのかはわかりませんが、全くその通りだと思いました

3

しかし、そんなのんきなことを考えていられたのは一瞬だけでした
今までアレでお尻を穿られたいと思って自分でお尻を慰めていたのかと思うと
なんてことを考えていたんだという気持ちより、早く、はやくあれでいじめてもらいたくなって
鈴仙さんも、ほかのイナバの女の子たちも、あんなものをねじこまれてしまっては
僕がこっそり見ていたときのようにあんな嬉しそうな顔になってしまうのは仕方ないと思って
興奮のあまり言いたいことがのどにつかえて呼吸もおかしくなって
「あっは……、どーしたの? 顔に文字が出てきちゃってるね。『それ、ください』って」

4

「じゃ、一から教えてあげるよ。ひとのおちんちんの、可愛がりかた。……ほら、まずは見る」
てゐさまの足元にぬめるお尻を下ろして視線を、僕はてゐさまのおちんちんの凶悪さに身震いしました
凶暴に太いおちんちんを、薄い影ができるくらい浮き出た血管が先端に向かって走っています
その血管をたどった先の亀頭も、さらにぼこりとしていて禍々しく赤黒い肉のこぶのようでした
長さと太さもそうですが、一番恐ろしいと思ったのはその竿の部分とカリとの段差の激しさでした
あれでお尻の中を何度も、乱暴にくりかえし引っかかれてしまうのかと想像すると
自分でも怖いくらいに僕のおちんちんとお尻がはやくなんとかしてくれとずきずきと疼くのです
てゐさまの小さい女の子の身体に、こんなアンバランスなものが生えているという事実が
一層僕の欲求と興奮を募らせているのは間違いのないことでした
「どう? ひとのを見てるだけなのになんかどきどきするでしょ。ね、触ってみたい?」 
僕の脳はいつのまにか僕の身体にしっかりと、何度も頷くよう命令を飛ばしていました

5

改めてもう一度てゐさまのおちんちんに顔を近づけてみると、おちんちん全体が
むわっとしたいやらしい空気に包まれているような気がしました
「やぁね、ちゃんとまいんちお手入れしてるって。……ん? 違う?」
すこしふくれた様子でてゐさまが言いました 汚い、臭いという類の匂いではなく
頭の芯が熱く、くらくらするような何だか嫌いになれない匂いが鼻腔をくすぐったのです
「あはは、いい鼻してんね。じゃ、そろそろ触ってみてよ。優しく、そぉっと、ね」
ようやくお許しを貰って、息がすこし荒くなってしまいました 同時に思わず手が震えます
てゐさまのおちんちんの竿の部分に刀の柄を握るように両手を添えてみました
どれくらいてゐさまのおちんちんが大きいかというと、それでもまだ余るほどのものです
それに比べて僕のはと言えば僕のような思春期の少年の手でも握ると指の間から
その顔が見えるか見えないかの粗末なものです しかし、今はそんなことはどうでもよく
僕はぺたぺたとてゐさまのおちんちんを調べるようなタッチで触ることしか考えられませんでした

6

さっきまでは、とにかくとても恐ろしいものに思えていたてゐさまのおちんちんは
僕が断片的に、ぺたぺたと触っているうちになんだか怖くないもののような気がしてきました
「わは、きゃっ、はは、くすぐったいよ、そこ、裏はダメだってさっ、あはは」
僕が危険物を取り扱うような強さで触れているのがむずがゆいのか、
てゐさまが僕が触るたびに弾んだ嬉しそうな声で笑うからです

十分に観察を終えたころ、最初うろたえていた僕はすっかり呼吸を整えていました
「……ん、もういい? そっか。じゃーぁ……」
僕がもう十分ですと言った瞬間、てゐさまの表情と声色は確かに変容しました
「……そろそろ、そのお口で気持ちよくしてほしいな」
ずい、と僕の口元におちんちんが近付きました その瞬間にさっきまで僕の教材だったものは
本来の姿である赤黒い凶器へと戻ったのです

7

しかしなぜか、僕は最初に見たときのような恐怖は覚えませんでした
なんだかとても身近なもののような、愛おしいというか、なんというか
自分でも気持ちよくできる、気持ちよくなってもらえると思えるような
……愛しいひとの愛しいおちんちんが、なぜ怖いものになりましょうか
それが凶器であるとしたら、僕の理性を殺すためのもの、いやむしろ殺してほしいとも思いました

「ほーらほら、こわくないよね。ちゃんとおくちで、できるよね」
はい はい こわくないです がんばります、がんばって、ごほうししますからっ
てゐさまの太ももとおちんちんにすがるようにして、僕は締まりのない声でお願いしました
「……いいこ、いいこ。かわいいね。じゃあ、お言葉に甘えることにするね。
あたしは特にどうしろとは言わないから、やりたいようにアドリブで舐めてみて」
頭を撫でてもらった嬉しさと、初めて頂いたご奉仕の指示に、僕の心は震えました

8

僕は想像の中で何度も何度もてゐさまのおちんちんを咥えていました
いつも、いつもこうやってご奉仕したい、こうやって、気持ちよくなってもらいたい
それをいまここで、再現すればいいだけなのです
……まず顎に無駄な力を入れず、自然な形で唇を鈴口につけました
てゐさまの亀頭は思ったよりぷにっとしていて柔らかくはありましたが
亀頭冠、つまりはカリの部分にいくにつれて鉄のように熱く、固くなっていくのです
僕に技というものが全くないことは自分でわかっていましたし、ましてやてゐさまのように
舌を器用に操ったり、おちんちんを満足させるようなことはできません
覚悟を決めて息を少しだけ吸い、唇を広げつつ亀頭を口に含み入れました
「……お、なかなか、積極的っ、じゃん……」
前歯に歯に当たらないように、奥歯にもぶつからないように
努力してなんとかてゐさまのおちんちんを口内のもっと深くに導こうとしましたが
僕の口の中にはおちんちんの亀頭とほんのすこしまでしか入りきらなかったのです

9

僕の唇はまん丸に拡張され口の端からただ唾液が垂れるがままになってしまいました
何度も想像──妄想していたとはいえ、こんなに太くて大きいものを口内に導いた経験はありません
必死に、なんとか口をすぼめ頭を前後させてゐさまに気持ちよくなってもらおうと努力します
てゐさまのおちんちんは、口に納めただけでスペースに余裕がなくなってしまい
なにもしなくても亀頭が上顎の皺にそってびっちりと密着するほどの大きさです
接触しないように、と努力はしている上下の歯も、ひっかからないように
そのおちんちんに走っている血管に添えるくらいしかできません
結局は口の中のほぼ全てを占領されたまま、僕はそれ以上何かをすることができなかったのです

10

なにをどうすればいいのかわからなくてまごまごとしていると、
てゐさまは痺れを切らしたように僕の口からおちんちんを抜いてしまいました
「うーん、やっぱりはじめてだから仕方ないよねぇ……」
指の先でぽりぽりと頬を掻いててゐさまがため息まじりに言います
ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい……
僕は自分のあまりの不甲斐なさに、そしてその次のてゐさまの言葉の怖さに怯えていました
「いやいや、ちがうよちがうよ。これでじょうずだったら逆にびっくり」
てゐさまがぽんぽんと僕の頭をやさしく叩いてくれました
しかしその優しい手はすすすとてゐさまの口元へと動き
てゐさまが指先にねっとりとした唾液を絡ませてにやりと笑って
「……それじゃあ、あはっ、教えてあげればいいんだぁ……」
唾液で濡れた艶やかな口角が、怖いくらいに上がりました

11

突然、ぐにっと何かが僕のおちんちんに当たりました
てゐさまの脚がいつのまにかすらりと伸びて、僕のおちんちんを踏みつけているのです
「ちんちんはこわくないよ。……ふふ、ちんちんが気持ちよくなっちゃうことも、ね」
今まで僕はおちんちんには触れていませんでした もちろん、刺激も与えていませんでした
お尻で気持ちよくなることにばかり意識が向きすぎてしまっていて
すっかり男としての本来の機能とプライドにあたるものを忘れてしまっていたのです
小さいながらも健気に上を向いていた僕のおちんちんは
すべすべとした足裏と蒲団との刺激ででさらに大きくなろうと必死でした
「こわくない、こわくなぁい……。ほぉら、だいじょうぶだよ……」
ぐぐぐと足にかかる圧力が強まっていくのがわかりました

12

「……おっと、足じゃなくておくちだったね。ごめんごめん」
明らかに危ないと言えるくらいの力がかけられたところで、僕のおちんちんが解放されました
「またこんどね。今は、こ・こ」
突然僕の目の前にてゐさまの濡れて光っている唇と、それを指す白い指先が飛び込んできました
「ふふ、ふふふ、なんで、逃げるの? こわくないって言ったじゃん……」
獲物を見つけた獣のように、てゐさまが四つんばいの姿勢でずい、ずいと近付いてきます
思わず後ずさりしてしまいましたが、蒲団のシーツで思うように動けません
てゐさまは僕の太ももをがしっと両手で捕まえて、僕のおちんちんにほおずりをします
「あはっ、つかまえた……かぁわいいなぁ。まだ皮かむってる」
どんどん、僕のおちんちんにてゐさまの唇が近付いていきます
唇の間からぬるりと僕のお尻を散々蹂躙したピンク色の舌が顔を出して
ぼくの ぼくの浅ましくて小さくてみじめなおちんちんを濡らして

13

僕のおちんちんにべろんと伸びたてゐさまの長い舌先から、銀色に光る液体が垂らされました
つつつ、とてゐさまの唾液が僕のおちんちんをすべり降りていくだけでもきもちいいのです
てゐさまは小さくうめく僕の反応を見て、楽しそうに指先で僕のおちんちんの皮を剥こうとしましたが
途中で亀頭が完全に露出しないことがわかると僕の目を妖しい流し目で見て訊きました
「これ……自分で剥こうとしたことある?」
無理に剥こうとしてもどうにもならないことは自分でもわかっていました
ですが時間が経つにつれて自分のおちんちんが成熟した、いわゆる大人の形になっていくのを
決して、楽しみにしていなかったわけではありませんでした
「そっか、じゃあ、ここでいま……剥いちゃおうね」

14

言うなり、てゐさまが僕のおちんちんに指を絡めました
さらさらとしながらもどこかしっとりとした不思議な感覚に体を小さく震わせていると
僕の戸惑いには構わずてゐさまはその手で位置を固定させたおちんちんに顔を近づけて
充血しながらもてゐさまの唾液でぬらぬらと光る先端部に口づけました
熱く瑞々しいと桜色の唇の感触に、僕は思わずうめき声を上げて体を仰け反らせてしまいました
てゐさまの唇がからかうように何度か亀頭の先を往復したあと、てゐさまは一度口を離し
舌なめずりをしてこれから何をするかを僕に見せ付けるようにして、
また僕のおちんちんに口を近づけていきました

15

これからされること、それがもたらす快感を想像して心が期待と不安でいっぱいになりました
てゐさまの口が近付くにつれて、僕の呼吸は次第に熱いものになっていき
やがてはおちんちんの先が熱くぬるぬるとした空間に取り込まれてしまいました
これまでに感じたことのない、自分の手でいじるのとは比較にならない気持ちよさに
上擦った声を漏らしつつも必死に目を固くつむったり、歯を思いっきり食いしばったりして
体のすみずみに広がる炎のような快感をなんとかやり過ごそうとしました
しかしまだ亀頭の半分くらいがくわえられただけなのです
ほんの始まりに過ぎないというのはわかっていました

16

それから、てゐさまの舌が何度も何度も僕の亀頭と皮の境目をなぞりました
執拗に動くてゐさまの舌のおかげで、僕のおちんちんの皮は次第に剥けてきました
しかし亀頭があらわになっていくということは、今まで守られていた部分が丸裸になるということです
今まで包皮以外のものに触れられていなかった部分に舌が触るたびに
目の奥がちかちかするくらいの強烈な快感が僕の身体を襲いました
すこしざらついた舌の表面で裏筋を、ねっとりとした舌の裏で亀頭を
ゆっくりと円を描くように舌をおちんちんに這わせるのです
僕が体を震わせるたびに、てゐさまは鼻で楽しそうに笑いました

17

ようやくてゐさまの舌が精密な動きで亀頭と皮の間にすこしの隙間を作ることに成功し
これでこの嬉しい地獄から抜け出せる……などと思っていた次の瞬間、
てゐさまの舌が先ほどできた隙間の内側に入り込み、くにくにと動いて無造作に一周しました
いま完全に包皮と亀頭を引き剥がされたばかりなのに そんなにはやくうごかされて
なんとか なんとか かろうじて熱をおさえこむことに成功しましたが
その後また確かめるように一周、そして逆まわりにに一周
すばやくくすぐるように舌で裏筋を縦になんどもなんどもおうふくされて
てゐさまはきわめつけにとつぜんぼくのおちんちんをのどのおくまでのみこんで
くちも、のどもしめつけるようしてがまんしたものをすいだすように
す すいだすように

18

僕は生まれて初めて、自分以外の誰かによって絶頂へと導かれました
がくがくと腰を震わせ、恥ずかしい叫び声を上げつづけていました
射精をしている間にも、てゐさまな色々なことをして僕をいたぶっていました
口をすぼめて頭を前後させて、さらに刺激を与えようとしたり
射精のタイミングにあわせて無防備だった睾丸をきゅっ、とつまんだり
射精が終わるころにはじゅるじゅるといやらしい水音を立てて尿道に残った精液をすすったり
……僕はと言えば、おちんちんから伝わってくる暴力的ともいえる快感に身をよじり
頭を左右に振り乱し、蒲団のシーツを必死に掴み、くしゃくしゃにして
口の端から漏れ出ている唾液に気付かないくらいの痺れるような感覚を味わっていました

19

や やっと やっと おわった……
無意識にその言葉が口から出てきました
てゐさまは最後の最後まで口をすぼめながらぬぽん、と音を立てて僕のおちんちんを解放しました
ぼんやりと落とした視線の先には、すっかり大人の形になった僕のおちんちんがあります
それに対する感動というか、そのようなものをやはりぼんやりとですが感じていると
てゐさまが過呼吸ぎみになっている僕に近付き、僕の顎を手でグラスを持つように支えて
てゐさまが「どうだった?」という表情で僕の顔を真正面から覗きます
何かされるのか、何を言われるのかと思っていると、てゐさまの口元がもごもごと動きました
ぐじゅ、ぐじゅと口の中でなにかをかき混ぜているような……
唐突に、ぼんやりとした意識の霧が晴れて現実に引き戻されました

20

僕の体から急激に血の気が引きました
つい先ほど、自分が何をしてしまったかということを思い出したのです
てゐさまがゆっくりと開いた口の中は、泡立った白い粘液でいっぱいになっていました
舌でかき混ぜるような動作を見せ付けたあと口を閉じるまで僕は何も考えられませんでした
ごめんなさい ごめんなさい、ととにかく謝罪の言葉が胸に浮かび、吐き出そうとした瞬間
なぜかてゐさまの両手が僕の後頭部に周りがっちりと固定しました
その力の強さに困惑していると、てゐさまがやはりなぜか顔を近付けてきます
にんまりとした、またはにやにやとした笑みで、僕の唇に唇を接近させ
……接近させて いったい なにを

21

そんな、そんなこと いや だめだ やめて いやだ
僕は全力で唇を閉じて、思いっきり顔を左右に振って逃れようとしました
──だぁめ。
それを許さないかのようにてゐさまは楽しげな表情を崩さずゆっくりと首を振りました
……ゆっくりと、ゆっくりと唇に柔らかいしっとりとした感触が生じました
続いてぬちゃぁっと音を立てて生温かい軟体動物のようなものが唇の間から潜り込んできました
小さい触手めいたものが僕の唇の間を左右に往復しながら、口の中の奥の奥へ進んでいきます
てゐさまの舌が触れると、なぜか僕の体はどんどん脱力してしまうのです
びっちりと閉じていた僕の唇は、もう抵抗の意志を失っていました

22

舌が細く槍のような形になって、てゐさまの口と僕の口を繋ぐ橋のようなものの感じがしました
そこからじゅぐじゅぐと音を立てて、熱い液体がてゐさまの口から侵入してきました
口の中になんとも形容しがたい苦味が走り、青臭い香りが鼻から抜けていきました
僕の精液とてゐさまの唾液の混合液という恐ろしいほど淫らな液体が僕の口を汚していきます
猛烈な吐き気を伴った陶酔感が、粘膜から神経へと染みこんでいくのがわかりました
てゐさまは僕の口内へ粘液を送り込むたび、満足げに目を細めて僕の目を見るのです
ただ、その視線が単に楽しい、というだけのものではないことに気付きました
赤くつりあがった瞳が、また僕に問いかけてきているのです
視線だけでは通じないと思ったのか、てゐさまは眉を僅かに上げ少し首を傾けてみせました
──それ、飲める?

23

もはやどうしたらいいのかわかりませんでした このまま嫌と言ってそれが通るわけがありません
でも、でもやらないと やらないと怒られてしまう 嫌われてしまう
僕にとって、今はそれが全てでした しかし、それで身体が動くのならたやすいもので
僕の身体は、口は粘液を蓄えたまますっかり硬直してしまっていたのです
飲まないと 飲まないと のまないと のまないと ──飲み込め!
何度も頭の中で自分に命令して、ようやく弱い力で粘液をすすり始めたとき
てゐさまが「んー……」となんとも仕方なさそうに唸りました
僕の身体は再び硬直しました
てゐさまが僕の口から粘液を吸い出し始めたのです

24

じゅるじゅるじゅると音をたてて、今度は僕の口から泡立った粘液が吸引されていきます
飲み込むことに躊躇した淫らな液体だけではなく、僕の口の中の全ての水分が
吸い尽くされてしまうのではないかと思うほどの恐ろしい吸引力でした
ただ、そこで安心してしまったのがいけなかったのです
てっきりこれで終わった、逃れられたと安心するくらいの余裕ができていました
しかし、てゐさまの瞳は再度、嗜虐的な色に染まったのです
何をするのかと思って様子をうかがっていると
今度はぐっじゅ、ぐっじゅ、ぐっじゅとゆっくりと口の中で粘液を泡立てて
僕の顎に両手を添えてまた僕の口内へと粘液を送り込んできたのです

25

その後のことはもうなにがなんだかわかりませんでした
てゐさまが僕の口とご自分の口との間で粘液を何度も何度も往復させたのです
僕にはもう何を考える余裕もなくなってしまい、全くのされるがままの状態でした
てゐさまが僕の口にずるずるずると粘液を吹き込み
じゅぅじゅぅじゅぅじゅぅと歯の間に通して音を立てながら吸い込み……
それを繰り返しされているうちにそれが心地よくなってきている自分がいました
すでに精液の味はなくなっていて、不快感の類のものは全く感じません
押しのけてしまおうかとまで考えていたてゐさまの手は、今は僕の頬を撫でるだけでした
感じるのは、粘液を往復させながらも愛撫をやめないてゐさまの舌の感触と
もはやかすかな甘みすら感じる淫らな液体、そして
まるで秘密を共有し交換し合っているかのような満たされた気持ちだけでした

26

・・・

てゐさまがようやく唇を離したのは、粘液の全体量の半分だけを僕の口に送り込んでからでした
それからてゐさまは少し上を向いて喉を僕に見せるようにして、にんまりとほほえんだあと
こくりこくりと静かな音を聞かせて粘液を飲み込み始めました
今の僕は飲み込むことに何の抵抗も感じていませんでした 
二人の口の中と同じ温度になった粘液を、少しずつゆっくりと飲み込んでいきます
てゐさまが嬉しそうにうんうんと頷きます 喜んでもらったことに、僕の心も熱くなります
ごくん、と最後の一口を飲み込んで、二人ともひさびさに口で深呼吸をします。
「これで、おあいこ。これならいいでしょ? ……原液は、また今度ね。
……っあー、でさぁ。そろそろコレ、なんとかしたくてしょーがないんだよね」
僕が満足させられなかったおちんちんを指差して、てゐさまが言いました

27

「いまからあたしの技盗めっていうのも無理な話だし、っていうか、あの、その、
もうそろそろ、我慢できなくなってきてるんだよね、あたし。ほんと、爆発しそう……」
はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、っあー……
粘液のやり取りに夢中でまったく気付いてなかったのですが、間違いなくてゐさまの息は
荒々しいものに変わっていました それでこそ、もう我慢できないというような……
「ごめん、ごめんね……なんか、どうにかなっちゃいそうだから、先に謝っとくよ」
手をわきわきと動かしながら、てゐさまが迫ってきます
「ほんと、ほんとさ、あんたばっかりさ、気持ちよくなっちゃってさ。
 かわいい声で鳴いてくれちゃったりさ。あは、ほんとにもうっ、許さないから……」

28

「はぁ、はぁあ……ごめんね、我慢が、ちょっと、苦しいかな」
てゐさまのおちんちんからは、鍾乳石のように透明な蜜がどろりと垂れています
てゐさまは枕もとの青い大きめの試験管のような瓶を僕に見せ付けるように指でつまんで
蓋を開けると同時にずるずると音を立てて瓶の中身を一口に含んでしまいました
瓶から口を離すと、てゐさまの唇と小瓶の口との間に銀色の糸が伸びます
僕はあの瓶の中身を知っていました 永琳先生の部屋にあったぬるぬるした薬品です
僕はあれを先生の部屋からくすねて、自分を慰めるために使おうとしたのですが
そこをてゐさまにみつかって、今に至るまでのとても長く激しくきもちいい調教が始まったのです
ここへきて、ようやく僕はあの瓶の薬品の存在を思い出したのです
そしてそれと同時に、てゐさまがあの薬品を見つけたときに説明してくださった言葉を思い出しました
……てゐさまが楽しげで妖しい笑みを浮かべながら、僕を四つん這いの姿勢にさせました

29

てゐさまが、再度僕のお尻の穴に口づけました
先ほど思い出したてゐさまの言葉が、ぐるんぐるんと頭のなかで連続再生されます
『これ、結構アブない薬。ふつうの人間だったら、発情しまくったケモノみたいになっちゃう』
『あんた、これと普通のローション間違えたの。お尻に塗ってでもしてたら……どーなってたか』
ああ、あ ああ、と勝手に声が漏れてしまいます 最初から、てゐさまはこれを使う気だったのです
てゐさまの舌が僕のお尻の穴の皺を沿って、耕すように出し入れしました
舌がぬるぬるとしていたのは、唾液のせいだけではないのは明らかでした
てゐさまの舌が僕の肌に、お尻に、お尻の中に触れるたびに、異質な痺れるような感覚が走ります
ほんのすこし触れただけなのに、こんな こんな、きもちいいなんて
もっともっと、その薬品の効力の強さと、危険さと、その魅力を知りたいと思ってしまいました

30

てゐさまが不意に、ぬるんと舌をお尻の中に突っ込みました
僕のお尻にはまだ、てゐさまの舌による拡張の効果が残っていたのがわかりました
僕のお尻は驚くほどすんなりとてゐさまの舌を受け入れ、勝手に締め付けるような反応を見せたのです
「ふん……♪」とてゐさまが鼻から嬉しそうな声を漏らしたかと思いきや
僕のお尻になにかが、熱い液体が入り込んでくるのがわかりました
にゅ、にゅにゅにゅにゅ、にゅるるる……
思わず、ひゃあっ、という情けない悲鳴を上げてしまいました
人肌よりずっと熱い、溶岩を思わせるくらい熱い液体が奥へ奥へと侵入してきます
てゐさまが口に含んでいた例の薬品を僕のお尻に注入し始めたのです

31

どろっとした薬品が、僕の腸内を焦がしながら奥へと進んでいきます
「……っぷは。ねぇ、どお? なんだかぁ、あははっ、お尻の中がじんわりしてこない?」
薬品をすべて注入したのか、てゐさまが僕のお尻から口を離して言いました
じんわり、というようなそんな生易しいものではありませんでした
お尻から背骨を伝わり、脳髄の中心を揺らすような熱が駆け上がってきます
薬品が触れているのはお尻の中だけなのに、からだの内側すべてが燃えるように熱いのです
勝手に口から舌が伸び出てしまい、はひ、はひ……という情けない呼吸を繰り返し
いま自分がどういう体勢をしていることすらわからなくなるくらいに
かゆい、くすぐったい、、あつい、じんじんする、きもちいい、……きもちいい
からだじゅうのそれいがいの感覚が なんだかどんどん ぬけおちていくみたいに

32

あぁああ……、うああ、ああああ……んっ、あっ……んあううっ……!
声にならないケモノのそれとうなり声がが次から次へと喉を吐いて出ます
「あはっ、あははは……たぁいへん。分量まちがえたかな? あはは……
 これ、ぜんぶ使っちゃまずかったかなぁ……ねぇ、調子はどう? きもちい?」
瞳は焦点をあわせようという努力をあきらめ、ぐるぐるとそこかしこに視線を振り回し
肩どころか全身で息をし、顎が勝手にかちかちと鳴り、身体も小刻みに震えてしまう

……自分の身体がどうおかしくなってしまっていたか、それがわかるくらいには感覚が戻ってきました
「もうそろそろかな、カラダが『だいたい』もとに戻るはずの時間だと思うんだけど」
相変わらず体の疼きは止まりませんでしたが、薬品で浣腸された瞬間よりはだいぶましでした

33

「ほら、寝っころがって、おなか見せて? ん、そうそう脚曲げて。……そう。いいこだね」
てゐさまのおっしゃるとおり、仰向けになって脚をMの字に曲げて開脚します
唾液と、薬品と、その他いろいろな液体が染みこんだシーツがお尻にひっつくのを感じました
頬がすっかり朱に染まったにてゐさまの視線が、僕の目をしっかりと射抜いています 
「あのクスリ、すっごい便利なやつでさ。どう便利かっていうとねー……」
てゐさまがご自分の指に唾液を絡めながら言いました
僕が逃げられないように、もう片方の手で僕の腰をしっかりとわしづかみにして
唾液で包まれた中指が、すすすと降りてゆきお尻の穴の入り口に添えられます
それだけでもう、電流のような感覚が身体を駆け上がってきてしまうのですが
てゐさまの顔が視界にちらりと入ったとき、てゐさまは
「……えいっ」
ずる、ずちゅっ、ずるりっ

34

う、ぐっ、……んあああああっ、あぐっ、あっ、ぐう、っ……! 
「んー? あれあれあれぇ、どーしたのかな? 指、まだ一本だけだよ?」
……突然乱暴なまでに、てゐさまが僕のお尻に指を突きいれたことはわかったのですが
なんといったらいいのでしょう もう正直な話それどころではなくて
てゐさまの指の腹が僕のお尻の中をやさしく引っかくとそのきもちいい感触を
虚空に留まる残像のように触れられた場所が常駐して、連続して感じてしまって
一本の指でいじられているのはわかっているのに、何本もの指でいっせいに虐められているような
そんな感覚と感触が、僕のお尻の中で暴れまわりました
「うわぁ、ぬるんぬるんだね……いやらしいこ。あれあれぇ、声も我慢できてないねー?」
もう一本、指が入りこんだのでしょうか それともまだ指は一本なのでしょうか
わかりません もう、きもちいいということしかわかりません

35

「あはは……あのクスリ、人間に使うとこんなんなっちゃうんだ……へぇ、なになに」
つかいかた。膣内もしくは腸内へ注入、粘膜が吸収して摂取される。
効能。膣内もしくは腸内の消毒・汚物浄化。粘膜表面の快感中枢の鋭敏化、脳内物質・脳内麻薬の分泌促進。
副作用。一時的な痛覚の麻痺・脱失。しかし、当試薬の使用用途上、都合のよい場合も恐らくあるだろう。
ちゅうい。粘膜に吸収される当試薬の性質故、浣腸液の代用品としては利用できない。
メモ書きでも読み上げているのでしょうか てゐさまが難しい言葉をすらすら並べていきます
「……ま、別にいいよね、こんなの。きもちいーんだもんねー、それだけでいいよねー。でしょ?」
てゐさまの指のうごきに、ねじりが加わってきました
直前に触られた場所がまだ触られているかのように疼き、その直後に触られた場所も
すぐ過去の快感としてそこにしっかりと残るのです
それは時間差で襲ってきたり、まったく時間の差なしに襲ってきたり……
予想がつかない、断続的で、連続的な甘い熱が脳髄を満たし始めました

36

「……わかる? いま、いれられちゃってる指のかず。四本だよ、よんほん」
僕のお尻が快感に慣れてきたのを知ってか知らずか、くくくと含み笑いをしながら聞いてきました
てゐさまの束ねられた四本の指が、僕のお尻の穴にねじりこまれるように入れられていきます
ゆっくりと突き破るようにお尻を掘り進み、今度はお尻の穴を広げるように
束ねた指を少しずつ広げながらじっくり、ゆっくりと抜きさって……を繰り返しました
ううぅうう……と低く、長いうめき声がおなかの奥から勝手に漏れてきてしまいます
もっと もっと もっとはやく 奥まで ぐりぐりってしてくださいぃぃっ、うあうううっ
「ちゃーんと、クスリが効いてるみたいだね。これだけ広げてんのに痛いとか言わないもんね。
 ……ったく、ほんとに、くいしんぼなおしり。こんなに、だらだらよだれ垂らしちゃってる」
とつぜん、指が一挙に引き抜かれて、上の口からも下の口からも唾液がぴしゃぴしゃと垂れ出てしまいました

37

僕のお尻の穴に、てゐさまがおちんちんを添えるようにぴと、と触れさせました
「こんだけ広げれば大丈夫だよね……ね? 欲しい? ねぇ、あたしの、ちんちん、欲しい、よね……」
はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ……と、てゐさまの息は長く熱っぽいものになっています
てゐさまは、やっと下ごしらえを終えた主菜を前に、我慢できない様子でした
赤い瞳は瞳孔が開きかけその虹彩がギラギラと光っていて、ときたま汗がつたう頬は瞳の色くらい赤く
今にも宛がったおちんちんでお尻を貫いてしまうのではというくらい、腰がかくかくと震えていました
……僕は、ここへ来て少しだけ怖くなってきました
お尻で気持ちよくなることに、なんの抵抗もなくなりはしましたが
ここでおちんちんを挿れられしまったとしたら 僕はどうなってしまうのでしょうか
てゐさまに、身体も、心も、壊されてしまうのではないかと思うと勝手に 勝手に身体が逃げようと
弱々しく腰をよじり、てゐさまからなんとか離れようとしてしまいました

38

い いや……こ、 こわい、です、てゐ、さまぁ……
上擦った声で懇願しながら、僕は顔色を窺うようにてゐさまの顔を見ながら逃れようとしていました
でも快感でふにゃふにゃになってしまっていた僕の身体は、思うように力が入りません
「うん……いいね、いいねぇ、処女のずり上がりってやつ? やだもぅ、かわいいな、まったく。
 でも、でもね。そんなこと言ったところでー……むしろ興奮させちゃうんだけなんだなぁ……」
ぞく、ぞくと欲情に染まって赤味を増していくてゐさまのおかお
てゐさまは唇の周りを長い舌でぺろりと一周すると、僕の腰と蒲団の間に柔らかい枕を挟み入れて
僕のお尻の高さを調節し始めました

39

ぜったい 必ず あれが入ってしまったら、おかしくなってしまう 狂ってしまう
まだ僕には正気の大切さときもちよさを天秤にかけられるほどの理性が残っていたようです
いやいやをするように首を横に振りながらもがきます しかし、もがいていると自分が思っているだけで
実際はほとんど身体が動いていないことに気付きました 身体がてゐさまを望んでいるのです
ああぁ、いや、いやぁ……ごめんなさい、ごめんなさいぃ……
頭のどこかでもう諦めがついているのに、僕の口からはいや、いやと情けない拒絶の言葉が出てきます
……てゐさまが仕方ない、という風にひとつ小さなため息を吐いたかと思いきや
てゐさまが鼻と鼻が触れ合うのではと思うくらいの距離までお顔を接近させてきました

40

てゐさまの指が、僕の唇にそっと触れて 首を伝って 僕の胸に降りていき すこし くすぐったい
「こら。目、逸らさない」
……てゐさまの瞳はは愛おしいものを見るような、赤い半月の形になっていました
「あたしのこと、きらい?」
てゐさまが眉を困ったような形にひそめてささやくように聞きました
僕はてゐさまの瞳から視線を外せずふるふると頭を振ることしかできません
「あたしのおちんちん、食べるの、いや?」
あ、う……と、先ほどのようにすぐに答えを返せずにまごついてしまいます
「あたしは、あんたがほんとに嫌がることは、なにひとつ、しないよ?」
てゐさまの指先が、僕の心の錠前をかちゃかちゃと弄くっているのがわかりました

41

「きもちいいのは、こわくないよ。きたないことでもないし、わるいことでもない」
どんどん どんどん、てゐさまの唇が近付いてきます 吐息が交換されて あったかい
もう少し もうちょっとで 触れちゃう くちびるが ああ
「……きもちよく、なろ?」
そのかすかな声が鼓膜にとどいたときには 唇になまあたたかくてやわらかくてきもちよくてうねうねしてねとねとしているものが うわああ ああ あああ……
「……きぃ、んむっ、んちゅるっ……んぁむっ、だ……い、すきぃ……」
意識のはしっこで、ぬちゅ、ぬちゅるるる……という音と、てゐさまの言葉が聞こえました
てゐさまの吐息と唾液が絡む音で、てゐさまがなんと言ったのかは残念ながらわかりませんでした

42

てゐさまがやっと、僕の口を解放してくれました 一本、銀色の糸が伸びては切れました
僕の心はすっかりその鍵を失い開け放たれ、抵抗しようという気はもう微塵も起きませんでした
「ほらほら、こわくなぁい……ぜーんぜん、だいじょうぶ……」
もう一度、僕のお尻の穴とぬめったどす黒い亀頭とがキスをしました
ぴちゃ、といやらしい水音が立って、てゐさまが嬉しそうな顔をします
「……もう嫌がらないね。いいこ、いいこ。じゃあ、ごほうびをあげるね……」
すこしずつ、お尻の穴に、てゐさまの亀頭がめりこんできました
一瞬、肛門がキュッと窄まって拒絶を示しましたが、それにもかまわずてゐさまは腰を埋めてきます
急勾配な亀頭を飲み込んでしまったとき、僕のお尻はカリをくちゅりと締め付けてしまって
僕は情けない……いや、心の底から嬉しそうな声をあげてしまって あああああ

43

軽く背を弓なりに反らしてしまうほど、それは気持ちよくて 気持ちよすぎて
「ん? ……まだ、先っちょしか入ってないよ? そんなんじゃあ、先が思いやられる、ねぇっ!」
ずる、ずにゅるるという音が身体の中に響いて、あ、 ぐ、うあああわああ
『──────────!!!! ───!!』
みちみちみちと音を立てて、てゐさまのおちんちんの形に直腸が拡張されていくのがわかりました
僕はさらに背筋を反らし、虚空に舌を突き出し、声のならない声を上げ、身体をがくがくと震わせて
てゐさまは僕の肉の味にうっとりとしたおかおをしていました
それでもまだ、恐ろしいのはてゐさまは一度僕のお尻に突き入れただけということ
そしてまだてゐさまのおちんちんの半分ほどしかお尻に飲み込めていないということでした
「まだ、まだまだ。まだ、ぜんぜん入ってないんだよぉ……あは、ぁうう……」
てゐさまはそう口の端から唾液を垂らしながら言うと、さらに僕の腰をひきつける手の力を強めました

44

みち、みち……という音が止みました お尻の肉を掘り進んだおちんちんが目的地へと到達したようです
「あっ、はっ、あはあぁっ……はいっ、たあ……」
ぴったり、あつらえたように、僕のお尻はてゐさまのおちんちんにかぶりついていました
おちんちんの亀頭も、びくびくと蠢くあたたかい血管も、全部僕のお尻に密着しているのがわかります
同時に、おちんちんを弄るのでもない、お尻の入り口を触るのでもない、感じたことのない黒い快感に
僕の身体は息ができないくらいの気持ちよさで逆に背を反らしたまま固まってしまいました
「んふ……きもち、いいんだね。いいよ、動いたげるから、じっとしてていいよ……」
いま、てゐさまは、動くっていったの? そんな 動いたりでもしたら 
「だぁいじょうぶ。最初は、やさしく、ゆっくりするから。安心して、ね? ……んっ」

45

また、ずるずるという音とともに、おちんちんが先ほど進んできた道をゆっくりと戻っていきます
お尻ごと、内臓ごと、おちんちんに連れて行かれてしまうのではないかという感覚と
背徳的な排泄感が、お尻から脊髄を通って僕の口から低いうめき声となって出てきました
「あーあー……そんなに気持ちよさそうな声出しちゃってさぁ。そんなんじゃこれから先保たないよー?」
あああぁああぁぁああ……という不規則なビブラートを、僕は確かに嬉しそうな顔で発していました
そしてまたゆっくり、大きく硬く太い肉の筒がお尻を突き進んでいきます
ああぁああ……ぅううぅうう…… 顎が勝手に引いてしまって、勝手に声が出てしまう
僕のお尻におちんちんの味を覚えこませるようなとてもゆっくりとした反復運動が繰り返されます
ですが、恥ずかしいことに、そのきもちよさにもだんだん慣れてきてしまうのです
おちんちん、もっ、と……きもちいい、おしり、して、いじめて、ほしい、てゐ、さまぁ……
頭の中で考えていたことが、無意識に口から抜け出てしまいました
「……そーやっておねだりくれるの、待ってたよ? その口から、さ」

46

てゐさまが先ほどまでより少し早い動きで、ずろろろ……とおちんちんを亀頭まで残して後ろに引くと
すこし間を空けた後、ずんっ、と思いっきり突き立てました
んぐあっ、と悲鳴に似た声が出てしまいます でも、それでもきもちよくて 
「ほらっ、ほらっ、ほらぁ……こーいうのがっ、欲しかったんでしょっ、このっ、このぉっ……」
てゐさまがずん、ずん、ずんと力強く、引いては突き、引いては突いてを繰り返しました
お尻の奥にてゐさまのおちんちんが到達するたびに、嬉しい悲鳴をあげてしまいます
てゐ様の身体が僕のふとももの裏に当たるたび、ぱんぱんぱんという音が鳴り、粘ついた糸が伸びては切れ
あんなに あんなにおおきいおちんちんが、ぼくのおしりのなかで あばれまわってる
それもこれもてゐさまの綿密な下準備のおかげでした
てゐさまもとてもきもちよさそうです 
うれしい きもちよくしてもらえて、きもちよくなってもらってる うれしい……

47

「ったく、男の子のくせに、そんなにかわいい声出すんじゃないよ……このっ、このっ」
てゐさまもきもちよさそうです うれしそうです あんなに、目がぎらぎらひかってる
「いじめてもらって、うれしい? 男のくせして、おんなのこににちんちん突っ込まれて、うれしい?」
うれしいです、おしり、きもちいいです、うれしいですてゐさまぁあぁっ……
てゐさまに、きもちよくなってもらうの、うれしいですっ、あぁっ、てゐさま、てゐさま、あああっ……
「……そーなの。きもちいーの。ふぅーん……」
てゐさまが指をぺろりと舐めて、ぼそりと言いました
「……この淫乱」
その言葉を聞いたとき、ぼくのからだが、なんででしょう、ぞくぞくっ、とせすじが、ああああ

48

淫乱 いんらん この、淫乱 ……ぼくが、淫乱、淫乱な、男の子……
てゐさまの言葉が、頭の中でぐるぐるぐるぐる回転して、脳髄の隅々にその言葉が行き渡るたびに
お尻の快感とは別に、胸の奥が、細い指でしゅるしゅると撫でられているような、そんな感覚がするのです
「お、おー……?」
てゐさまが動くたびにびくびくと身体が軽く跳ねてしまいます 射精でもない、なんなのでしょう、これは
見れば、てゐさまはくくくく……と喉の奥を鳴らしていて、……あれ、てゐさまの目つきが、あれ……
「あー……そういうことか、この子は、ああ、『ホンモノ』かぁ……」
……ああ、てゐさまのこの瞳は、鈴仙さんとえっちしていたときの、火のついたような、それでした
「淫乱、だよ。い・ん・ら・ん。えっちなことが好きで、心の底までぴんく色な、そーいうこのこと……」
てゐさまが、大きな声で、僕のことを、あれ、あれ? なんでしょう、また、胸の奥が、くすぐったくて
とてもくすぐったくて、きもちよくて、もっともっと、いじめてほしくて……
……また、てゐさまが指をひとなめしました

49

「男の子のくせして、おちんちんで気持ちよくなるんじゃなくて、お尻におちんちん突っ込まれて、
女の子みたいにきゃあきゃあ鳴いちゃう子が、えっちじゃないってゆーの? えっちだよね。とても。
こんなあたしのぶっとくてでっかいちんちんお尻でがっちり咥えて、お尻の中こすられるたんびに鳴いて、
あたしに言葉責めされてまた鳴いて。いつもあたしと遊んでるときにも、こーいうこと考えてたんでしょ。
てゐちゃん、てゐちゃん、ってさぁ。ワンピースのはしっこからちらっちら見えるあたしのお尻とか見て、
おうちに帰ってからちんちんしこしこ慰めてたんでしょ? わかってんだよ全部。みてたんだよ全部。
あたしのせいじゃないんだよ。あたしがあんたをえっちにしたんじゃないの。……もうわかってるよね?
あんたはもとから、頭のてっぺんから爪先まで、えっちで淫乱でどーしようもない変態さんだったんだよ」

てゐさまが一息に、そうおっしゃいました

50

そのとおりです、ぜんぶぜんぶ、てゐさまの言うとおりです
おちんちんより、おしりの方がきもちいいのです それこそ何倍も、何十倍も
えっちです 僕はえっちな子です 女の子みたいな声を出せられるのが、とてもきもちいいのです
おしりの中のすみからすみまで、てゐさまのおちんちんでいっぱいになるのが、とても嬉しいのです
てゐさまのおちんちんが、亀頭が、僕をののしる言葉が、ぜんぶぜんぶ、きもちいいのです
里の皆と、妖精の女の子たちと、てゐさまと、遊んでいるときも、ずっとてゐさまだけを見ていました
身軽で、健康なてゐさまのみみ、おてて、うで、おみあし、おしり、ぜんぶ、見ていました
てゐさまのおみあしやおしりとかにおちんちんをすり付けたらと考えて、おちんちんをいじっていました
てゐさまのせいじゃありません 僕は最初から、身も心も、ぜんぶぜんぶ、どうしようもない変態でした 

僕も一息に、すべてを告白しました

51

僕の目にたまった涙の膜は、気持ちよさと、わけのわからない感情でもう決壊しそうでした
それは心の底まで全部、てゐさまに打ち明けた快感 てゐさまに、自分のすべてを征服された快感
同時に、てゐさまに何を言われるかがわからないという不安
……でも結局、それは杞憂に終わりました
てゐさまが優しく微笑んで、僕の顔を見ていました
「……よく、言えたね。うそをつかない素直な子は好きだよ、あたし」
……すき その言葉で、今度は僕の身体は硬直しました
「正直にぜんぶ言えたえらいこには、ごほうびをあげようね……」
てゐさまが、両手を僕の腰にかけて、僕のお尻とてゐさまのおちんちんとの接合部はそのままに
ひょいっと僕の身体を抱き上げて、そのまま抱きしめてくださいました

52

「……やっぱ軽いね、ちみっこは。対面座位もらくらく、おてのもの。
ね、これだと、からだ、ぴっちりして、なんだか安心するでしょー?」
僕の脚はてゐさまの腰に周り、てゐさまのあぐらの上に、おちんちんとで接合しながら腰掛けています
てゐさまは僕の腰を抱き、ずんずんずんとと腰を振ったり、僕の身体を少し持ち上げては降ろしたり
僕はといえば、密着しているてゐさまの身体の温度を感じながら、てゐさまの首にすがりついていました
「どーしたのよぅ、そんなに赤くなっちゃってさぁ。いまさら恥ずかしいことなんてないでしょーに」
……もう、うれしくて、きもちよくて、もう、どうにかなってしまいそうで
なんだか急に、てゐさまの唇が、恋しくなって 僕をいじめてくれる、あの唇が、愛しくなって
「……ああ、それじゃあ、ちゅー、したいんじゃない? ねぇ、そうでしょ」
ああ、もう、どうにでも、してほしいよ ぜんぶ、ぜんぶ、のぞかれてるんだ あああ

53

「……あーでも、とどかないな、この子じゃあ……ああ、そうだ、そうしようか」
なにかごにょごにょと、てゐさまが小さい声でなにかつぶやいていました
僕がその言葉の中身を考える前に、てゐさまがいたずらを思いついたような顔でおっしゃいました
「……ね、あんたがいきおいつけて動いてくれたら、ちゅーできるかもよ?
ふつーにしてたんじゃあほら、ぎりぎりでくちびるがさ、とどかないからね」
僕は必死に頑張って背中を丸めたり、首を曲げたりしてみますが、やはりぎりぎりで届きません
てゐさまのおちんちんがお尻に繋がっているからです
「ちゅー、したいんでしょ? じゃあ、やってみよ? あたしも、きもちいーよ」
僕は快感で力が入らずがくがくと震えている身体を、上下させ始めました

54

「あはっ、あはは……もっといきおいつけて動かないと。ぜんぜん、ちゅー、できないよー?
ほら、ほらぁっ、もっと、もっとうごかないとだめなんじゃない? ほら、あっ、あはぁッ」
必死にてゐさまの唇を求めて上下運動を繰り返してはいるのですが
そもそもお尻とおちんちんでつながっているためきもちよくなってしまうのです
いや、きもちいいことがいけないわけではなくて、身体を上下させているうちに気付いたのですが
そこにてゐさまの亀頭冠が擦れると一瞬だけ身体の内側で火花が散るような感覚に襲われるような
そんなすこしかたい箇所がお尻のなか、入り口近くにあることを発見したのです

55

お尻の入り口からお尻のずっと奥までてゐさまのおちんちんが行き来するくらい
大きく勢いをつけて、てゐさまの唇をもとめて身体を上下させますと
『その部分』のせいでさらに身体の力が抜けて、キスをしたいのか、『その部分』できもちよくなりたいのか
どっちを考えていたのか、いやどっちを考えればいいのかわからなくなってきてしまって
「んんぅうっ、あっ、はぁあっ……ん? どーしたの? ほら、まだぜんぜん届かないよ?
そんなんじゃー、まだまだちゅーできないぞー? そら、もっと動く……って、あれ……?」
無意識に僕はてゐさまの肩に手を置いて、必死にお尻の入り口からすこし奥の『その部分』に
おちんちんがこすれるように、目を閉じて必死に腰を上下に振っていました

56

「……あは。おいおい、ちゅーはどーなったのよ。もうやんなくていいの? ん?」
瞼を上げるとてゐさまが僕に餌を見せ付けるように、舌を長くして振り子の動きで誘惑していました
……キスがしたい ちゅーがしたい てゐさまのおくちがこいしい てゐさまの舌がこいしい
でも、おしりがきもちいい あそこが おしりのあのかたいとこがきもちいい 
ここをこすっていたい てゐさまのおちんちんでこすりたい こすってほしい
おしりもぜんぶなにもかも、てゐさまにしてほしい あいしてほしい すきになってもらいたい
「だよねぇ。ソ・コ、きもちいいんだよねー? あれぇ、でもでも、ソコの味覚えるのより、
 ちゅーのほうが大事なんじゃないかなぁ。……そーでしょ? だからね、ほら、もっと腰をね」
ぼくはだいすきです てゐさまのおみみ ぴょんとはねてるくせっけ くりくりしてるあかいひとみ 
「……あれ? ねぇ、ちょっと、おーい、聞こえてるかーい……?」
てゐさま、ぼくはだいすきです……

57

……あやしくぬれてるおくち ぬろぬろのながいした ぷにぷにのおっぱい すべすべのからだ
おっきくてふとくてながくてなんだかあまいにおいのする、おちんちん ああ おちんちん
おちんちん おちんちん ……ああ ああ、てゐさま、ああぁあ、だいすき、きもちいいです
「……はーぁ……」
きもちいいです こしが とまりません ああ、しかって ぼくを おしおきしてください
てゐさま いじめてくださいぃ ぼくはわるいこです ちゅーがしたかったのにおしりがきもちよくて 
ああぁああ、きもちよくて、こしがとまらないんです ごめんなさい ゆるしてください ぅああっ
おねがいですてゐさま だいすきですてゐさま てゐさま てゐさまぁあっ……
「やかましい」
……むぐっ

58

くちが、うごがない なんだかやわらかいものが さわってる あれ、とどい、た……? 
……今までみたいに激しくない優しいキスで、てゐさまは僕を自分の世界から連れ戻してくださいました
今まで僕が頑張っても唇に届かなかったのはてゐさまがその、ちょっとしたいじわるをしていたからです
てゐさまが今みたいに背をまっすぐに伸ばし僕の背中に手を回して力強く抱き寄せてくれていれば
ちゃんと、お尻とおちんちんでつながっていても、キスができたからす
「んぁんむっ、はむ、ちゅる……じゅずるる、あむっ……」
……ゆっくりと、ゆっくりとてゐさまの舌がのびてきました

59

門歯を優しく撫でて、その周りの歯茎も同様にゆっくりと右から左へ
今度は頬の内側を円を描くように這っていき、不意に口を離したかと思いきや
なんどもなんども唇で優しく、甘く、柔らかくついばむように
そしてまた口腔に舌が進入してきて、僕の口内粘膜をあやすようにさわっていって
柔らかい唇は僕にうめき声すらあげさせず 吸い取るように 味わうように 噛み締めるようにして……
……本当に好きなだけ暴れて、やっとてゐさまが僕の口元を許してくれました
「……お馬鹿。その甘ったるいあたまんなか、全部漏れちゃってるよ?
そんな恥ずかしいセリフ吐いちゃうくらい、あたしが恋しいの? ったく……」

60

てゐさまが困ったような顔をしているのを僕は初めて目にしました……が
「……だけど、あたし、そういうおねだり、嫌いじゃ、ないんだなぁ……くくくっ」
結局は 気のせいだったみたいです その証拠に、てゐさまが笑って、また、ずんずん、うごきはじめて
「なに? あんたはあたしをどーしたいの? あたしにどーされたいの? ん?
あーんな一方的で勝手なセリフぜんぶ吐き出して、あんた恥ずかしくないの?」
てゐさまが僕のことを言うたびに、お尻の奥と体の芯が優しくつねられている感じがしてしまうのです
おちんちんだけじゃ、だめなのです ことばで、心の奥まで、いじめてもらいたい……

61

てゐさまはとろけた表情で、僕を追い立てます
「……はずかしいんだね。あたしにあまあまなおねだり聞いてもらって、お尻ぐりぐりかき混ぜられて、
はずかしくてぇ、きもちよくてぇ、うれしくてぇ……胸がなんだかきゅんきゅんしてきちゃうんだね。
……いいよぉ。もっとばかになろ? あたしと一緒に、あたまもからだもぜんぶぴんくにしちゃお……?」
ああ、それは、甘い、甘すぎる誘いでした ……これは罠だって頭ではわかっているのに、
きっとここでしたがってしまったら、もう二度ともとには戻れないとわかっているのに
だめだって考えてなくてはと自分に言い聞かせようとするほど、勝手に僕のお尻の中が縮まってしまい
てゐさまのおちんちんに気持ちよくなってもらおうと奉仕してしまうのです

62

……だめだ、ああ、かかってしまいたい この幸せな罠に全身を絡めとられてしまいたい
きっときもちいい からだだけじゃなくて こころのずっとおくそこまで きもちよくなれる
そう おもうと ああ かってに からだが ひゃ、あ、ああ こと ば を
『────! ──!!』
ぱく、ぱくと口が動いて、ひねりだすようなおねだりの言葉を、自分でも耳をふさぎたくなるような
そんな卑屈な、どうしようもないセリフを、ああ 僕は ぼくは……
「あは……おひとりさま、ごあんなーい……♪」
舌をべろんと出して、てゐさまが淫靡に、しかし優しく笑いました

63

よく、おねだりできたね。言ったでしょ? あたし、うそつかない子は大好きなんだ……
ほら、もっかいちゅー、しよ? 恋人みたいに、好きあってるみたいに……ね?」
あらためて、てゐさまのおかおを見ます 赤い瞳と、視線が交差します 唇と唇、舌と舌が触れ合います
うれしいのかはずかしいのか自分でもわからないのですがなぜか涙がこぼれそうになって
つい両手で顔を覆ってしまいたい衝動に駆られましたが、それも許してもらえませんでした
てゐさまが僕の両手首をがっちりつかんで離そうとしないのです
「ほぉらぁ、もっとそのかわいーかお、あたしに見せて? あたしのこと、好きなんでしょ……?」
僕の顔は汗や涙や自分のとてゐさまの唾液がまざった液体らでくしゃくしゃになっていました
そんな僕の顔をかわいいって そんな そんなこと
「あたしのことが好きなら、あたしのいうこと、聞いてくれるよねー……」

64

てゐさまの瞳くらい真っ赤になった顔を、てゐさまがじっと見つめてくださいます
「あはは、やだぁ。汗かきすぎー。髪の毛はっついちゃってる。さらっさらなのに、もったいない。
……ほら、もっと見てあげるから、あんたももっとあたしを見てよ。隅からすみまで、ね……?」
僕の体はそのときにはもうすっかりてゐさまの言葉、指、舌、それと……おちんちんの魔力に
身体と心のすべてを茹で上げられてしまったらしく、熱い疼きと快感だけにのみ反応していました
視界にてゐさまのおかおが映ります てゐさまが嬉しそうに微笑んでくださいます
んっ、んっ……という小さく早い喘ぎ声が、失礼ではありますがなんともかわいらしく思えるのです
僕のお尻で気持ちよくなっていただいているのだと思うと僕もつい喘ぎ声を漏らしてしまいます
「ばか。なに母性もどき感じてんのよ。まだあんた一応男の子ってこと忘れてない?
……まあ、女の子にするつもりもないけどね。そうだ、じゃあ、こんなのはどうかなー?」

65

おちんちんで栓をされたお尻からこぼれたねとねとしたなんとも淫らな液体がこぼれて
その汁で濡れたてゐさまの指が、気がついたときには僕のおちんちんの下……たまたまに添えられていて
三本の指できゅっ、とつまんだり、手のひら全体でぐにぐにと揉みしだいたり
与えられる少しの鈍い痛みに慣れてきたころ、てゐさまの指はたまたまのまわりから上へ
もうすこしでおちんちんに触れるというところまで接近してくると、焦らすように失速させるのです 
さわってもらえる いじってもらえる かわいがってもらえる……
……しかしてゐさまの指はおちんちんの脇を通り抜けてしまいさらに上に
おへそをくりくりとほじくった後、あばら骨の上を滑り上がって僕の乳首を根元から軽くつまんで
「ちんちんはー、触ってあげない。だから、お尻とココだけで……イくんだよ? できるよね?」

66

てゐさまが気持ちよさそうな吐息を漏らしながら、僕の身体をさらに強く揺らします
「んっ、んあぅっ、くううぅっ! ふぁ……あは。もうあたしの言うとおりにしかならないよ?
あんたは今夜だけ、おしりだいすきなおんなのこ。穴に欲しくてほしくて、たまらない淫乱なこ。
でも、なんでだかすぐにはイけない。ぎりぎりまで我慢させられて、でもそれでもイけない。
あたしがいいって言うまで、あたしにいいよって言われるまで、なんでだろうね……イけないんだ。
あたし、うそはつかないよ? ほんとのことしか、言わないよ? カラダに、教えてあげるよ。
ジらしてジらして、トばしてあげる。もっとかわいく鳴いて? あたしを、気持ちよくして……?」
悩ましげに眉をひそめた、てゐさまのおかおが近付いてきて、僕の唇を乱暴に奪いました

67

僕の乳首はてゐさまの指の繊維が巻きつくようにくにくにとこねくりまわされています
僕のお尻はてゐさまのおちんちんによって腸内粘膜の芯まで屈服させられています
僕の口の中はてゐさまの舌と唾液ですっかり征服されています
僕の肌はてゐさまのもの 僕の瞳もてゐさまのもの 僕の髪もてゐさまのもの
「……いーぃ顔に……なってきたじゃん。ほら、もうひとふんばりで、イけるよ……?」
てゐさまが吐息混じりに、濡れて光った唇を動かします
言い終わった直後にまたてゐさまが僕の唇にかぶりついてきます
そうしてぐじゅるるる、ずじゅるるる……と僕の口内の唾液をすべて吸い取る勢いで啜るのです
「ごめんね、けっこう、あんたのおしり、きもちよくてさ……。余裕、なくなってきちゃった……」
それからてゐさまはあまり喋らなくなりました
一心不乱に、僕のお尻をがっしがっしとほじくり乳首をつねったり撫でたり舐めたり甘噛みしたり
僕がもうだめです、いかせてくださいとおねだりを始めると、熱を冷ますようにキスをして
正直、もう、そろそろ、ほんとうにだめになってしまいそうでした

68

いきたい 達したい 身体を震わせて思いっきり獣のような叫び声をあげて 達してしまいたい
でもてゐさまが僕の身体をぎゅっと抱きしめて、鼻と鼻がぶつかるくらいの勢いでまたキスをします
絶頂のすぐ手前で震えている僕のお尻が、大きくびくんびくんと脈を打つてゐさまのモノを感じます
い、け ない…… てゐさまの寸止めも、これで四度目になりました
「あの、あのね、そろそろ、あたしも、イきたいんだけど……どうかな、きもちいい?
突然てゐさまが静かにそう僕に尋ねました てゐさまの表情はなんだか余裕のないものに思えました
「けっこう、あたしもさ……なんていうか、我慢してるんだよね。つまり、きもちいいってこと……」
なんだか、てゐさまの様子が変に思いました

69

「なんか、ごめんね? あんた、お尻初めてでしょ? ここまで下準備するのたいへんだったんだ……」
……僕の髪をてゐさまの指が櫛のように滑り降りて、それから僕の頬をぷにぷにといじります
「きつかったよね? 苦しかったよね? でもこれくらい時間かけないとあたしのちんちん入らないから
イけなくて、苦しいよね、ごめんね。でもだめだってわかってるのに、いじめるの、止まらないんだ。
最初はちょっとだけ、ちょっとだけいじわるしてやろうか、って思ってるのに、ぜんぜん止まらなくて。
それもこれもあんたがいちいちかわいい声できゃんきゃん鳴くから……いや、これじゃ言い訳だね」
声色もなんだか今までより甘く、柔らかく、優しいものになっているような……
「だから、さいごは……」
腰にしゅるしゅると静かにてゐさまの腕が巻きついて僕の上半身を抱き寄せます
おなかとおなか、胸と胸がびっちりとくっついて、得体の知れない安心感で頭がいっぱいになります
「やさーしく、じーっくり。最後はちょっと激しくして……ちゃんと、イかせてあげるからね……」
にゅるん、にゅる、ぐちゅ、ぐちゅ…… 水音と共に、また抽送が再開されました

70

今までとは違う、ゆっくりと、そしてねっとりとした抽送でした
手のひらをあわせて、指と指を絡めてしっかりとてゐさまの手を握ります
てゐさまがおちんちんで結腸の捻れをほどくようにお尻の奥へ突き入れるたび、甘い呻き声がでてしまい
おちんちんがぎりぎりまで引き抜かれるたび、意識を持っていかれそうな快感が直腸の隅々まで響きます
ずろろろろ……ずじゅ、じゅぼっ……ずろろろろ……じゅっ、ずちゅちゅちゅ……
僕のお尻は、いったいどれほどのよだれを垂らしてしまっているのでしょうか
もう薬品の粘度は失われているでしょうから この水音の原因は間違いなく僕にあります
淫乱だとか、そういう言葉はもはや僕にぴったりの言葉になってしまったようです
こんなにぎっちりおちんちんを咥えて、こんなにもよろこんでいる
でも今はこの羞恥すら、心地よいものになっているのです
だって、てゐさまをきもちよくできるから きもちよくなってもらっているから

71

「ちんちん長くてぶっといって、いいでしょ。奥まで届くし、こんなにっ、おしり、あじわえるっ」
なんと言ったらいいのでしょうか おちんちんを気持ちよくするコツというのがわかってきました
今まではてゐさまが僕のお尻を緩く、おちんちんが入るくらいにまで慣らしてくれたことをいいことに
ただひたすら、てゐさまの突き入れるがまま、引き抜くがままの状態に甘んじていたのですが
おちんちんが入り込んでくるときにはお尻に力を入れると簡単に入り
おちんちんが出ようとしているときにはお尻を少しだけきゅっと締めてみると
てゐさまがとても気持ちよさそうな声で「いいよ、うまいよ、きもちいいよ」と褒めてくれるのです
「あぁあぁっ、んんんっ、ぅぁあああ……うん、うん、きもちい、きもちいぃよぉ……」
今度は自然と、てゐさまの腰が加速していきます 僕の身体にも、無理のない程度に
必然的に二人とも気持ちよくなれる速度に……

72

「あっ、んっ、んっ、んっ、ひっ、んんああっ! ……だめ、出ちゃう、出しちゃうよぉっ」
てゐさま、びくびくしてます、てゐさまの おちんちんが ぼくのおしりが……
僕もてゐさまも、上擦った声でお互いの名前を呼びました
「ごめ、んねっ……ぶっこわしちゃうかもしれないっ、ぁんっ、くぅっ、うううっ!」
どんどんどんどん、てゐさまの腰の動きが早くなってきました
最初はぱんっ、ぱんっ、ぱんっ、と肉と肉が当たる音が長かったのですが
今ではぱんぱんぱんぱんぱん……と音が連続して途切れないほどにまで加速しています
ひゃっ、ひっ、ひっ、ひっ……
その頃には僕も声が出ないくらいにきもちよくて 突かれた瞬間に息を漏らすことくらいしかできなくて
「んんんんんんん……イっちゃうよ、あたし、あんたのおしりに、出しちゃうよ、ね、いい?
ぜんぶぜんぶ、出しちゃうよ? いいよね? いいよねぇっ!? おしりで、ごくごく飲んでっ……!」
びゅ、びゅる……

73

間違いなく、お尻のなかでなにかが弾けかけた音がしました でもそれは本当に『弾けかけた』だけで……
「……忘れてた。そーだね、ちゃんと……ちゅーして、イかせてあげないとね」
でも、てゐさまは射精を我慢してくれました 僕の、キスのために
「ほ、ほら。はやく、ちゅーしよ? あ、あたし、結構、我慢とか、苦手なタイプでさ、ね? 
ね、ね、ね、おねがいだからはやくちゅーして? ちゅーでイって? ちゅーでイかせて……?」
がくがくとてゐさまのおかおが震えて、溜まった涙の膜が揺れています
僕の身体もふるふると力なく震えています きもちよくて、力が思うように入らなくて
でも、それでも なんとか キスを くちびるを あわせなきゃ……
「……イっちゃえ!……」
……一瞬だけ、唇と唇が触れました その一瞬で十分でした
ぼくも てゐさまも それでスイッチがはいったように からだをめいっぱいふるわせて

74

とつぜん、息が出来なくなるくらいの恐ろしい力で、てゐさまが僕を抱きしめました
ぁあぁああ、ああああ、うあああああ……!!
「ひっ、うあ、わ、あ、あっ、だめ、だめなの、で、でる、でるでるでるっ、うっ、くぅ……ッ!!」
瞬間おちんちんが僕のお尻を思いっきり突き上げられ、かはっ、とその勢いで息が漏れました
半瞬遅れて熱くどろっとした溶岩のようなものがおなかの奥をどろどろとずるずると上がってきました
僕はと言えば歯を精一杯食いしばり目を見開きてゐさまに思いっきり抱きしめられたまま
頭の中で小さい爆発が起きたような 体の中心を白い閃光がお尻から脳天めがけて走っていくような
視界が白んでくるほどに身体が熱く、お尻が熱く、そして体が重く、だるくなってきてしまって
「あっ、ああ、はは、あ、はぁ───……♪」
幸せそうに射精の余韻に浸っているてゐさまに勝手に身体を預けてしまい──
……それから身体が動かなくなりました もう 時間が残ってないみたいです
ごぷっ、ごぷっ、と音をたてて僕のおなかの中をせりあがってくるてゐさまの精液を感じながら
とにかく僕の意識は僕の手元からどこかへ飛んでいってしまったのです

-

・・・・・
・・・・
・・・

温かめの空気と、誰かが僕の身体を抱いて運んでいる感覚のなか目を醒ましました
「……ありゃ、おはよ。いいタイミングで起きるね、ほんと」
お姫さま抱っこの体勢から見た周りの景色はどうやら浴場へと向かう廊下のようでした
「いやぁ、無理やり起こすのもなんだし、寝てる間に汗流しちゃおうと思ってね。
寝顔見たかったから、こんな運搬方法なわけです。まあ、気にしない気にしない」
華奢なちいさい女の子の外見はてゐさまの腕力をときたま忘れさせますが
今の僕の意識はそれを気にするほど明瞭なものではなかったのです
「それにもう着いちゃうから、おとなしくこのまま運ばれときなよ。おじょーさん」
僕を抱いたまま、てゐさまが器用に足で戸を開けました
永遠亭の、薫り立つ檜風呂です

1

「じゃあほら、ちょっと適当に座ってて。寝巻きと下着持ってくるから」
と言うと、とてててて……という軽快な足音を立てててゐさまは走り去っていきました
永遠亭にはイナバの女の子たちが一斉にお風呂を済ませるための大浴場と
患者さんの介護とかに使うのでしょうか、ほかに何個か箱型浴槽のある檜風呂が存在するのです
僕が入れられたのはてゐさま専用のお風呂らしく、浴槽などがてゐさまの背丈に合わせたものでした
てゐさまより頭はんぶんほどしか大きくない僕にはなんの不都合もなく、僕は何となく安心しました
すでに浴槽に張られたお湯の湯気と熱で、檜の床はしっとりとしていて温かく
天然木の匂いは凝り固まった身体をほぐすかのような感覚を覚えます
……また少しして、とてててて……と例の足音が近付いてきました

2

脱衣所でごそごそと音がして、その直後にまた勢いよくがらりと戸が開きました
戸の先のてゐさまは手にした手ぬぐい一枚とにんじんのペンダントのほかには
当たりまえのことと言えばあたりまえなのですが何も身につけていませんでした 
「あーっ、なにみてんのよー、えっちー」
薄い最低限のふくらみと主張しすぎない小さい先端の苺色の突起、
肩幅より少し大きく広がっている腰まわりなどを見ても、変ないやらしさはなく
むしろ少女の身体に似つかわしくない凛々しい色気を感じます ……感じるのはいいのですが
「なにぼーっとしてんの。ほら、後ろ向いて。てゐちゃんが背中流してあげるのなんて
なっかなか遭遇しないイベントだってわかってるー? まあ、おねーさんとして面倒見てるだけよ」
てゐさまが器用に片手でごしごしと石鹸を手ぬぐいに絡ませながら、もう片方の手で手桶にお湯を汲み
その檜製の手桶からの温かい流れを背中に受けると、思わずため息が出ました

3

「ところであんたお風呂好き? んと、あたしは結構好きなほう。まいんち入ってる。
湯加減はどれくらいがいい? きょうはとりあえず熱くしちゃったけど。今後の参考にと思って」
てゐさまが痛すぎない、弱すぎない力加減で石鹸の泡にまみれた手ぬぐいで僕の背中をこすってくれます
いつもの『てゐちゃん』の雰囲気でおしゃべりをするのも、なんとも心地良いのです
しかし、てゐちゃん……と声をかけようとした瞬間、てゐさまが身体をべったりと密着させてきたのです
「なぁにー? どーかしたー?」
てゐさまの身体にも泡が塗りたくられていたのでしょうか 妙にぬるぬるとするのです
小さい突起が背中に当たってこすれ、泡まみれの手が僕の身体の全面に泡を塗ってきます
「……あたし、なにもえっちなことしてないよね。ただからだ洗ったげてるだけだよね?
今日はもう、あれ以上シてあげないからね? お風呂で一緒にあったまって、あとは寝るだけ。
……まさか、『てゐちゃん』の前でそんなえっちな姿、見せて大丈夫だと思ってるわけ、ないよね」
耳元で、手を絶え間なく動かしながら、てゐさま──てゐちゃんが言いました

4

ごしごし、ごしごし ごしごし、ごしごし
泡で滑りがよくなったてゐちゃんの両手が、僕の身体の表面すべてをきれいにしようと動きます
「お、ちょっとちょっと。くすぐったいからって逃げちゃだめだって。腋とかは特にきれいにしないと」
くすぐったく、してるのです 腋を締めて抵抗しても、石鹸のせいで簡単に隙間に入り込まれてしまいます
「はい、ばんざいしてー……ふふふ」
仕方なく言われるまま、両腕を上に上げます まず手ぬぐいが擦れ、そのあとてゐちゃんの指の腹が
波打つように腋の下をくすぐる……きれいにしようと動くのです
「だぁかぁら。逃げないのったら……ほい、おしまい。次は腰まわりねー」
てゐちゃんの手はあばら骨のすぐ上を降りて、帯を巻くように腰骨のまわりに移動しました
尾てい骨の上、おへその上……あったかいてゐちゃんの手が、なんともきもちいい
でもまた、様子がおかしくなってきました
片手はおへそをくりくりとほじくり、もう片手はお尻へと伸びて行ったのです

5

「おへそもねー、結構ゴミ溜まるとこなんだよ。見落としがちだから気をつけないとねー」
中指の腹が窪みにやさしく突き立てられくにくにとねじりこまれて
……これは これはてゐちゃんが僕をきれいにしてくれてるだけ きれいにしてくれてるだけ
事実その通りで間違いないはずなのに、なぜでしょう なぜこんなに手つきがいやらしいのでしょう
それとなんという場所でしたか お尻のお肉がついたところを痴漢でもするように撫でるのです
「まだあんた小さいから大丈夫だけど、ここもねぇ、きれいにしないと。
ちゃんとお手入れしとかないと将来毛穴開いてぶつぶつできちゃうよ? まずいでしょそれはー」
でも、どうして、てつきが、不審というか、不穏というか、なんというか……
そうこう考えているうちに、おへその窪みからてゐちゃんの指がいなくなりました
しかし、今度はその空いた手のひらで僕のおなかを撫で回したあとそのままなぜか下へ したへ……

6

おちんちんを触るのだろうか、という考えばかりで頭の中が埋め尽くされていたのですが
そのままてゐちゃんの左手は僕の左太ももまで移動して止まりました
お尻のお肉の相手をしていたてゐちゃんの手も、いつのまにか僕の太ももに乗っていました
両の手で、両方の太股にするすると石鹸をぬりたくっていきます
意識してしまっていたのがいけないのか、思わず膝を立ててしまったのですが
どうやら選択を間違えたようです 太ももの裏のお肉のやわらかい方に手が移ったのです
「おーおー……脚やらかいねー。さすがまだぴちぴちのショタっこだ」
なんだか聞いたことのない言葉が出てきたので、すこしそっちに意識を逸らしてしまった瞬間
「……あーい、じゃあちょっとごめんねー」
にゅるん、という表現が正しかったです 太ももを伝って手が移動していて、気がついたら
てゐちゃんはおちんちんとたまたまに手を添えていました

7

「やっぱいっちばんきれいにしとかなきゃいけないとこだよねー。念入りに、ね・ん・い・り・に。
ちゃんとおしっこしたらちり紙で拭くなりなんなりしといたほうがいいよ? それこそ念入りに。
なんか病気になっちゃったらお師匠に診てもらえるからいいやって訳にはいかないでしょ、ココは」
確かに たしかに手つきはいやらしいものではないのです
まんべんなく泡を絡ませて、汚れを取るための最低限の強さで指でこするだけの動きです
ここで ここで ここでなにか反応をしてしまったら いや ぜったいだめだ だめだ
「んだねー。せっかくきれいにしたげてるのに、なんかこれ以上汚れたりしたら……ちょっと、ねぇ?」
一瞬だけ、てゐちゃんがいなくなりかけたように思いました
でも てゐちゃんじゃなくなったなら…… いやだめだ がまん がまん がまん……

8

どれくらいの時間、おちんちんをきれいにされていたのかは自分には見当はつきませんでしたが
とりあえず、僕はてゐちゃんに開放されました 体感時間では久しぶりのお湯で、泡を流します
「はーい、おつかれさま。まぁたぶん、それなりにきれいにはなったでしょ。
美容と健康に結構気をつけるタイプのてゐちゃんの評価。信用するかどうかはあなた次第」
はー……、といういろいろなものが混じったため息が出てしまいました
「よっし、とりあえずお風呂桶入るかぁ」
……もしかしたら、てゐちゃんに身体を洗うよう頼まれたりでもしたらどうしよう、などと
考えていたのですが、幸いそういう事態は回避できたのです
「あー……実はあたしさ、あんた抱っこして運んでくる前に身体洗っちゃったんだよね。
服着ないで歩き回るとすぐれーせんが怒んのよ。ほら、髪の毛ちょっと湿ってるじゃない」
……とのことでした 

9

ざぶん、という音の後に少し浴槽からお湯が溢れ出る音が続きました
「はぁ……極楽極楽、なんまんだぶなんまんだぶ。お風呂なしじゃ生きていけないね」
僕もお風呂は好きな方で、実は永遠亭の檜風呂にも憧れている節がありました
それも大好きな妖獣の女の子と同じお風呂桶でお湯を頂けるというのは全く夢のようでした
「あっついお風呂でさ、茹で蛸みたいになってさ。どろんどろんになっちゃうとさ、
結構悩みとか忘れられちゃうよねー……とりあえず、お湯に浸かってる間だけさ」
胸上まで浸かった湯船から、隣にいるてゐちゃんの顔を見てみました
お湯の熱さかどことなく遠い目をしていて、しみじみと語るように続けました
「『ただ遊べ、帰らぬ道は誰も同じ、柳は緑、花は紅』ってね。まだちょっとむずいか。
楽しく生きよーよ、って話だよ。……そうだね、例えばとりあえず、今宵だけ……みたいなね」
こちらを見たてゐちゃんの瞳は、もう遠い目ではなく、妖しく楽しそうに光る紅い瞳になっていて

10

「あんた……今年でいくつ? 数えでいいから」
てゐちゃんの声のトーンが明らかに、一段階低くなったのがわかりました
その少女の骨格で出来うる限りの、鼓膜をくすぐる甘い発声でした
「十二? ……あは、ひとつふたつ盛ってない? まぁ、いいけどさ……」
視線を流すように僕から逸らしながら、てゐちゃんがそう言いました
今までとのギャップのせいでしょうか なぜだか、仕草や吐息がとても色っぽく感じられるのです
「十二……うんにゃ、十でいいや。数えてなよ。その間我慢できたら、ご褒美、あげちゃうかもね……」
何のことを言っているのか考えていると、てゐちゃんがすぅーっ……と鼻から大きく息を吸い始めました
一通り吸い込み終わって、一瞬僕の方をちらりと見た気がします ついでに、少し口角が上がったような
それを明確に確認できなかったのは、突然てゐちゃんがお湯に顔をつけて潜ったからです

11

彼女がなぜ潜ったのか、これから彼女が何をするのか考える暇もなく
僕の両脚はてゐちゃんの手にがっしりと掴まれて無理やり開かされました
お湯越しにてゐちゃんを見たのですがお湯の透明度が意外と高かったお陰で
てゐちゃんが何をしようとしているのかわかってしまいました 
ぐあっ、と僕のおちんちん目掛けて大きく口を開けていたのです
後ずさりして逃げようとしますがすでにてゐちゃんの手が僕の腰の後ろに抱えるように回っていて
てゐちゃんの手で引っ張られるようにして逃げるどころか引き寄せられてしまいました
結局は健闘むなしく僕のおちんちんはてゐちゃんのお口に食べられてしまったのです

12

てゐちゃんのお口が僕のおちんちんに接吻するやいなや、そのまま吸うようにして口内に迎えられた拍子に
この前てゐちゃん──てゐさまに剥いてもらった皮が同じようにめくれ、亀頭が露出させられました
その後亀頭を一周するように優しく一舐め しかし優しかったのはそこまでで
舌が忙しない、というより出来る限りの速度で口の中……おちんちんのまわりを這い回り
すぼめられた口内粘膜全体にもぐもぐとおちんちんを甘噛みされ
途中ぼこっ、と吐き出される空気の球が擦れるのにも感じてしまうほどに責め立てられ
上顎の奥の柔らかい部分と舌の根元で挟まれ擦られ、同時に根元を歯と唇で優しく咥えられ固定され
周りのお湯ごと飲み込まれてしまうのではないかという吸引が始まった頃には
脳幹に与えられる甘い痺れに耐え切れず嬌声を上げて絶頂してしまっていました

13

おちんちんを絞るように唇を密着させたまま、ゆっくりと引っ張られるようにして開放されました
水中ゆえ音が聞こえませんでしたが、普通なら口から離れたときにつぽん、という音がしていたでしょう
「十秒、もたなかったっぽいよね。数えてないからわかんないけどさ」
腰が抜けてしまい口の辺りまでお湯に浸かってしまっている僕に、首を左右に振って水を切りながら言います
「……っあー、お湯と一緒に、飲んじゃった。またあんたにも、飲ませてあげようかなとか考えてたのに」
僕が吐き出してしまった欲望の残滓を探しているようです
口のなかを指でごそごそと探りながら、てゐさまは残念そうな表情でため息をつきました
「あーぁ、いろいろと残念。やっぱやめとくべきだったかな。よがってる顔見れないし。
……うぁ、まーたへろへろになっちゃってるじゃん。気絶しないだけ、今回はマシかなぁ……」
ごめんなさい ふがいなくて、ごめんなさい
「あー、聞こえる? お風呂出るよ? だめか、力はいんないか。 また、かつぐしかないなー」
意識はあれど、脱力してしまって身体が動かないのです 今度は、てゐさまの背中にお世話になりました

14

結局てゐさまに身体を拭いてもらって、その上寝巻きまで着せてもらって
今やっと寝室に到着……いえ、まだてゐさまの背中の上です
「はぁ、はぁ……まずい、ちょっとのぼせたかな。うぁー、にしてもあっついわ……」
てゐさまの寝間着はいつも着ているワンピースをもう少し薄手で手触りがよい生地で作った感じの服でした
すでに敷かれてあった大きめの布団の上に、ごろんと着陸させられます
「ほら、もう、動けんでしょ。さすがに今日はそろそろ寝るよー」
……とてゐさまは言うのに、部屋から出て行こうとはしません
むしろ なぜか寝そべって 僕と同じ布団に寝ようとしている気すらするのですが
「……え? だめ? いや、そのつもりででかいの敷いたんだけど。ほら、枕もふたつ」
どうやらそのようでした

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「ほらー、この部屋風通しいいからさ。いい感じにおふとんがひんやりしててきもちいーでしょ」
──もう今はてゐちゃんと呼んで差し支えない状態のようです
細かいところといいましょうか されると嬉しい気配りを忘れないひとといいましょうか
いたずらもいじわるも徹底的にする、優しさも気配りも徹底的に与えてくれるという
二律背反を身体の中で飼いならしている様な感じと言ったらよいのでしょうか
とにかくこの人といると、アメとムチが順不同ではありますが同量与えられているような感覚がするのです
これは これでは、飼いならされないわけにはいきません
「……んぁー、もうさ、考え事とかしないで今日は早く寝よ? もうあたしにもちょっかい出す気力ないよ」
てゐさまが体と体の空きスペースをどんどん埋めて行っているような気がします
あれ、どんどん 近付いているような あれ 最初顔と顔向かい合ってたっけ あれ……

16

てゐちゃんが僕の身体と布団の隙間に手をねじ込むようにして、腰に手を回してきました
てゐちゃんが僕の肩にも手を回して、抱き寄せるように引っ張ってきました
つまりはそれができるほどてゐちゃんが接近してきたということです
あれ、ちょっかいがどうとか言っていたような あれ あれ……
今度は何をするつもりなのだろう、と身構えていたのですが
……別になんてことはなく することと言えば、ただ優しく、僕の身体を撫でるだけ
ゆっくり、やさしく、やわらかく、あたたかく
肩を撫でられる おなかを撫でられる 背中を撫でられる 頬を撫でられる
「……力抜いてー……リラックスしてね。うん、そう……」
……夜の静寂を壊さないような、優しいささやきでした

17

太ももの横側を撫でられる お尻の上の方を撫でられる 首筋を撫でられる
「……知ってる、っていうか、考えたことある? 愛しく撫でるって書いて、『愛撫』って読むんだよ。
こーいう言葉も、べつに艶っぽい意味だけじゃないってことよ。これ、年寄りの知恵。覚えときなさい」
てゐちゃんの手に 僕の手が導かれて てゐちゃんの胸に置かれる
「……あたしも、えっちー、だの、ちんちん、だの……そういうのばっかのえろうさぎじゃないんだから。
結構あたしね、誤解されたくないタイプなの。まあ、誤解されてしかるべき人生やってるけどさ。
……さ、もう疲れたでしょ? こーやってリラックスしてれば、だいたい目覚めのいい朝になると思うわ」
てゐちゃんの手が、僕の手の甲をすりすりと優しくこする
柔らかい手触りのせいで、どんどん身体が重くなってくる
てゐちゃんの柔らかい声のせいで、どんどん重くなってくる……
「じゃあ、おやすみ。またあした、遊ぼうね……」
その言葉を最後に、僕の身体はひとりでに瞼を閉じました

-

とてててて……という足音が響き渡る中、僕は布団から頭だけを出してぼーっとしていました
そのまま天井の木目を見つめること数十秒、やっと僕は自分が目が醒めたことに気付きました
首を左右にひねると首がこきこきと音を立てます 本当によく眠れたようです
一緒に寄り添いあいながら眠っていたはずのてゐちゃんは横にはいませんでした
僕ひとりだけになってしまった布団は両手両足を広げてもまだ余裕があるくらいの大きさだったので
せっかくならもうすこしこの布団の重みと広さに甘えていようかと思ったのですが
十分に睡眠をとってしまったせいかまったく眠気が起きません
さあそろそろ起きようか、と上体をすこし起こして目をこすろうとしたときのことです
ぴしゃりと勢いよく背後の襖が開いたのです

1

振り向いた先には、なんといったらよいのでしょうか、こう、『ちいさいおかあさん』がいました
「ほい、おはよう。六時間も寝れば十分でしょ? まだ若いんだからさ。ほら、起きた起きた」
いつものワンピースを覆うほどの身丈の真っ白な割烹着と、同じく真っ白な頭巾で髪をまとめていました
すぼまった袖口から覗いた小さい手に握ったおたまを振り回しながら、おかあさんが近付いてきます
「なにぼーっとしてんのよ。うちのちびどもに朝ごはん食べつくされちゃうわよ」
こんこんとおたまで僕の頭を軽く叩きながらてゐちゃんが言います
永遠亭の朝ごはんはてゐちゃんが作っているのでしょうか はじめて知りました
他に永遠亭には一体どれくらいの人がいるのか そもそも僕らと同じような食べ物を食べるのだろうか
というかにんじん以外食べるのだろうか、とかすっきりしない寝起きの頭でいろいろ考えながら
ほのかにてゐちゃんの作ったごはんをごちそうになる、ということに少し胸を躍らせていました
しかし布団から抜け出して部屋から出ようとすると自分であれほど言っておきながら
てゐちゃんは両手を横に広げて通せんぼをしていました

2

「おはよう」
低めの声の朝のあいさつと共に、てゐちゃんがその体勢のままじりじりと近付いてきます
そういえば僕はあいさつを返していませんでした てゐちゃんはその辺りには関して結構几帳面なのです
唇と喉が乾いているせいで変な声しか出ませんでしたが、僕はおはよう、ととりあえず返事をしました が
「……お・は・よ・う」
てゐちゃんは首をふるふると横に振って、まだ近付いてきます 段々と体勢を低くして、じり、じりと 
自分が何をどう間違えてしまったのかがわからず、僕もじり、じりと後退してしまいました
お互いの目を見つめあいながら、一定の距離を保って後退します
じとーっとした目で僕を睨むてゐちゃん 頭の奥ではてなマークが乱反射し、それが顔色に現れてしまう僕
僕はどうすればいいのか誰かに説明してほしくてあたりを見回しますが誰もいません
他の人から見たらどういう状況に見えるのでしょうか 教えてください

3

足にさっきひっくり返した掛け布団が当たるのがわかりました
僕らは何をどうしてるんだろう この朝っぱらから 何のにらみあいなんだろうこれは
……などとどうでもいいことを考えてしまったのがいけませんでした
掛け布団に足がもつれて布団に尻もちをついてしまったのです そこまではよかったのですが
「それっ」
僕が転ぶのを待っていたかのようにてゐちゃんが獣じみた動きで飛びかかってきたのです
飛びかかったときの勢いでおたまがどこかへ飛んでいったのが視界の端に映りました
布団に背中を押し付けられて、てゐちゃんに完全に押し倒されている体勢になりました
ほんのりと、てゐちゃんの身体からお味噌の匂いが漂ってきます
ですが気にかけるべきはそんなことではありませんでした
「……がうっ」
突然むさぼるように、てゐちゃんが唇を押し当ててきたのです

4

形のいい、ふっくらとした唇が何度も何度も僕の唇を濡らそうと触れてきます
首をひねって逃れようとしても、両手で後ろ頭を抱えられてしまって逃げることができません
息もさせてもらえないほど唇を唇で甘噛みされたあと、唇同士つながったまま舌がねじこまれてきました
最初てゐちゃんは僕の様子を見るように歯茎のあたりに舌をちろちろと這わせていたのですが
僕の目を見て、僕が抵抗しないのを知るとさらにぐいっと口の中に舌を入り込ませました
後頭部を抑えていた手を両頬に添えるように移動させて、てゐちゃんのなすがままの時間になりました
溜まっていく僕の唾液を舌ですくい、僕の口の裏側という裏側になすりつけていく
遠慮しがちな僕の舌にあいさつをするように、ちょん、ちょんと触れる
おそるおそる舌を伸ばしてみると、舌の周りを円を描いて優しく撫でてくれる
唇だとか口の裏側だとか舌だとかが受けている感覚が全身に広がっていく
産毛が立つようなぞわぞわとした熱が、勝手に僕にくぐもった嬌声をあげさせました

5

自分の唾液をしこたま飲み込む羽目になり、喉と唇の両方が十分に潤ったころ
てゐちゃんが唇を離して、荒い息をしながらにっこりと笑いました
「……おはよう。『おはよう』って言ったら、普通こうでしょ? ちょっとしたおめざのかわり」
“おめざ”で済む刺激の甘さではありませんでした もう胸焼けするほどと言ってもおかしくなく
「ぁーもう、ちょっと水分多すぎたわね。ほら……ここなんて、垂れちゃってる」
最後に僕のびしょびしょになった唇の周りの唾液をぺろぺろと舐め取ったあと
先ほど飛んでったおたまを拾って、部屋から出て行きました
「からだの熱が冷めたら、ごはん食べに来なねー……」
とてててて……と早歩き気味の足音が遠くなっていきます やっぱり、忙しいのでしょうか
しばらくの間仰向けのままで、荒くなった息と紅潮した顔を整えててゐちゃんの後を追いました

6

広間に近付くほどに朝餉の匂いと騒がしさが濃くなってきます
やっぱり永遠亭にはそれなりの数のイナバの女の子がいるようです ここにも ほらあそこにも
みんな朝ごはんなのでしょうか、僕と目的地は同じのようです
広間に着くと、ごはんが用意された大きい机に各々向かって朝食を摂っていました
「……あ、としあきくん」
一度は竹林で遊んだことのあるイナバの女の子や鈴仙さんが微笑んで手を振ってくれました
僕から見て鈴仙さんの右隣に、てゐちゃんが座っていました
てゐちゃんが彼女の隣の空いている場所をぽんぽんと叩いてそこに座るよう促します
小さくお辞儀をして、そこに座らさせてもらうことにしました
「たぶん、あんたが最後かな。ほら、もうこんだけしか残ってない」
米びつをしゃもじでこんこんと叩いて、てゐちゃんが苦笑しました
手馴れた手つきでお茶碗にごはんをよそうてゐちゃんは本当におかあさんでした

7

献立はたけのこの炊き込みごはんとお豆腐のおみおつけ、それと鮎の塩焼きが一尾でした
机中央にでんと置かれている大量の漬けもの類にはイナバの女の子たちが群がっていました
「今日はきゅうり、にんじん、はくさいってとこ。にんじんの刻み漬けが一番人気。
悪いけど、売れ残りで我慢してね。あたしだってかなーり我慢してるんだからさ。いやまじに」
僕はにんじんがあまり好きではない、ということを言うべきか否か一瞬迷いましたが
とりあえず言われたとおり、売れ残りぎみのきゅうりをいただくことにしました
……浅漬けのほどよい歯ごたえと塩辛さで、ごはんがどんどん進みます
「……おーおー。いい食べっぷり。じゃ、そろそろあたしも……ん」
てゐちゃんが箸に手を伸ばしたとき、やっと鈴仙さんからの申し訳なさげな視線に気付いたようです
『あの、ね、あのね、てゐ……』」
「……一応聞いたげようか。どーしたの? れーせん」
『……おかわり……』
「っだぁもう! いったい何杯食ってんのよ! 食べすぎなのよ、た・べ・す・ぎ。いやそれよりさ、
そもそもなんで食った分が都合よく胸に行くわけ? あとで揉みしだいてやるからなほんとに……」

8

結局てゐちゃんはぶつぶつと文句をこぼしながらも、鈴仙さんのお椀にご飯を盛ってあげていました
他にもいままで知らなかったてゐちゃんの一面を見ることができました
『ねー、てゐさまー、にんじん切れたよー』「そこにあんので全部だよ。他ので我慢しなさい」
『てゐ様、おいしかったです。ごちそうさまでした』「おそまつさま。薬の配達頑張んなさいよ」
『ふぁ……てゐさま、おはよー……』「あー……あとで適当なの作ってあげるから、今は顔洗ってきな」
『てゐ、お味噌汁の器、洗っとくね』「ああ、助かるわ。れーせん仕事あんだから、ほどほどでいいよ」
ぼりぼりと漬けものを食べながらこれらの様子を見ていたのですが
普段てゐちゃんと遊んでいるときはてゐちゃんがどういう仕事をしているのかとか
そういうことは考えたことがなかったのでなかなか新鮮でした
その忙しさというか、なんというか 失礼ながらもけっこうまじめに親玉してるんだなあと……
「……ん? ああ、あんたはゆっくり食べてていいよ。せっかく作ったんだから、味わってもらわないと」
いつのまにか朝ごはんを食べ終えていたてゐちゃんは、そういって台所へ向かっていきました

9

・・・・・

「……っあー、終わった。疲れるねほんと。ああ、よかったら器は台所持ってってくれると嬉しいな」
僕が残った漬けものを完食したころ、てゐちゃんも一通りの片付けが終わりました
割烹着と頭巾を脱ぎ捨て、食卓をどかしてできたスペースに大の字に横になります
「んだけど、まだ終わってないのだよねー。姫様のぶんが残ってるんだこれが」
その姫様という人は二度三度僕も目にしたことがありました
不定期に人里に来る、たくさんの昔話をしてくれる色白でほっそりした髪のきれいな女の人です
いつもにこにこ微笑んでいて、僕たちの中ではあの人怒ったりするのかとか言われています
一体永遠亭で何をしているのか 何を食べて生きているのか 趣味とかはあるのか 
そのだいたいが謎のお姫様、というイメージがありました しかし
「……姫様のなにをどう考えてるか知らないけどさ。あの人はあれでいいの。そういうもんなの。
あ、あとなんか期待を裏切るようで悪いけど、結構普通なもの食べるよ。最近落花生よく食べてるね」
内通者のおかげで、神秘的なイメージが少し揺らぎそうになったのは秘密です 

10

「姫様も姫様でさ、夜中にこっそり何かしら食べるんだよね。この前はバターが減ってた。
あの人病気とかそういうのにならない体質だからさ、別に構わないんだけど……なかなか焦るよね。
想像してみ? あのきっれーいなお姫様が、夜中にバター舐めてんの。なんかすごいおいしそうにさ」
……ちょっと想像してみると、なんだか気まずい空気が流れてしまいました
「……いや、なんかちょっと……うん、エロいね。ごめん、笑い話のつもりだったんだけど……」
他にもいろいろと他愛もない話をしたり、いっしょに洗いものをしたり、
お茶を飲んだりしてそれなりに時間を潰したつもりだったのですが
「……さぁーて。本格的にすることなくなっちゃったねー」
掛け時計を見ても、まだ午前九時を回ったところでした 今日は寺子屋もないので、とことん暇なのです
今日はみんなさ、いろいろと忙しいんだ。もう朝からフル回転。暇なのは姫様くらいかな。
ちびどもは薬の配達が山ほどだし、れーせんはえーりん……師匠と往診に行っちゃうしね。
あたしはもうちょっと日が出たらおふとん干してー、あとは、あとは……あ、あたしも暇か」

11

急にむくりとてゐちゃんが起き上がって、僕の顔をまじまじと見つめます
「他に何かやることがなくて、人の気はそれほどない。みんな帰ってくるまで時間がある。
特に、この部屋にはあんたとあたししかいない。どういう状況なんだろうね。これってさ」
えっ、と思わず声が出てしまいました なんとなく、展開が見えてしまったからでしょうか
「ねえ、あんたはどう思う? あたしは……んっ、ず、ちゅぱっ、……こーだと思う」
唾液が絡まったてゐちゃんの二本の指が、僕の目の前に突きつけられました
二本の指が妖しく動く 人差し指と中指の間に糸が伸びて切れては、また唾液をこねて糸を作る
てゐちゃんの瞳を見てみると、なんだかその紅い光に嗜虐的な色が帯びているような気がして
──いいよ、舐めて。
てゐちゃんの瞳が僕にそう言っている気がして 僕の身体は勝手に口を開ける命令を出してしまって
勝手に舌を突き出してしまって 勝手にてゐちゃんの指の唾液を舐め取るように動いてしまって
「……そうだね、これ、あたしの指をさ、あたしのちんちんだと思って、練習してみようか……」

12

てゐちゃんの指の腹をぺろ、ぺろとてゐちゃんの様子をうかがうように舐めます
「……あれ、忘れちゃった? あたしを呼ぶときはー……どうするんだったっけ」
ぴしっ、とスイッチが入ったように、自分の身体が一瞬固まりました
てゐ……ちゃん ちがう きのうは どうだったっけ
……さま、てゐさま そうだ、てゐさまだ てゐさま ああ、てゐさま……てゐさま!
「んふ……そうそう。いいこだね。でもそんなにおっきな声で呼ばれちゃあ、ちょっとはずかしいよ」
なぜでしょう てゐさまの呼び名を思い出してから、舐めるスピードが早くなってしまった気がします
てゐさまの指の皮膚が僕の唾液でふやけつつあるのがわかりました 指紋のざらざらを舌に感じるのです
舌に水分がなくなってくれば、喉の奥から唾液を呼び出してまたてゐさまの指にこすりつけて
こすりつけた自分の唾液が垂れそうになれば、こぼれないように舌ですくってまたこすりつけるのです
あったかいてゐさまの指が舌に触れるたび、その体温が僕の理性を少しずつ溶かしているのがわかりました
てゐさまの指を舐めているから、こんなに息を荒くなってしまうのです 僕の せいでは けっして……

13

舌先を動かすことに夢中になって僕の息がすっかり荒くなってしまったころ
てゐさまが少しだけ指を引っ込めました 僕がてゐさまの指を求めて顔を近づけようとすると
「……はい、もうぺろぺろはおしまい。つぎは咥えて、しゃぶって……もっと水気多くしてみようね」
と濡れていないほうの指で僕の頬を優しくつっついてこうおっしゃりました
……てゐさまの指が口の中に迎える 温かく荒い息が、てゐさまの指にかかっているのがわかります
震える上下の唇をてゐさまの指にくっつけて、閉じ込めて、吸いついて、密封して……
「うん、うん。そーやって吸い付いたまま、顔を動かすの。……歯が当たらないように、最初はそぉっと」
口をすぼめて、なるべくてゐさまの指に口内の肉が触れるようにして頭を前後させます
そうするうちにてゐさまのかぼそく白い指はすぐぐしょ濡れになってしまいました
余裕ができた僕は舌を慣れない動きではありますが動かしてみたりしました
「うん……もっといやらしく、音たてながらしゃぶってみ? 口の中のよだれ、全部すする勢いで。
もう、あたしの指ごと飲み込んじゃうくらいに、じゅるじゅる、ちゅうちゅう……ってな具合にさ」

14

唇を『う』の発音の形にして、ずず、ずず……と音を立てててゐさまの指の水分をすすりとります
「ああ、唇に力入りすぎ。もうちょっと力抜いて……空気も少し一緒に吸い込む感じで」
てゐさまの言うとおり少し唇に余裕を持たせて、ただ唇で指を包んでいる状態にして吸引すると
ずず、という音が次第にじゅるじゅる、じゅぞぞぞ……と唾液が振動する音に変わるのです
自分が立てている吸引音が、遠くで聞こえているような残響をもって僕の鼓膜に響きます
僕が舐めて、しゃぶっているのは指です なのになぜこんなにいやらしい気持ちになるのでしょうか
「……やらしー音がすると、興奮するでしょ? ひとに悦んでもらうためにはそーいう雰囲気作りも大事」
僕が吸い付いている二本の指をてゐさまがくねくねと動かします
「あは。顔、まっかだね。えっちい音たててんのは自分なのにさ。ほんと……えっちな子」
えっちな子 そう言われて僕はだんだん昨夜のことを思い出し始めていました
お尻におちんちんを入れられて てゐさまにキスがしたいと散々おねだりをして 自分から腰を振って
けだもののようなあられもない声をあげて 唾液も、なみだも、たれながしで……

15

「なんて言ってたっけ。……ほしい、おしりのなかにください、ほしいです、てゐさまぁ……とか?
普段はあんまりしゃべんないのにね、あんた。実は火がついちゃうと止まらないタイプだったりして」
恥ずかしくて恥ずかしくて、顔が今にも爆発しそうなくらいに熱くなってしまいます
目を伏せがちにしながらも口と舌を動かす僕を見て、てゐさまがきゃははと明るい声で笑います
「あはは……もう、恥ずかしくてイヤならやめればいいのに。あたしの指から口離せば済む話でしょ?
あんたが自分からやめるんなら、あたしも許してあげるよ? 無駄ないじわるはしたくないウサよー」
皆さんも感じたことがあるでしょう どうしようもなく恥ずかしくてたまらなくなったときの感覚を
身体の外側は燃えるように熱いのに、胸の奥には驚くほどぞっとした寒気が宿る
額の奥がくらくらするくらい熱いのに、首筋のあたりは凍ったように冷たい感じがする
「……でもなんでか、やめられないんだよね。やめたくならないんだよね。ちがう?」
……今の僕はまったくてゐさまの言葉どおりの挙動をとっていました
恥ずかしいと思うことが虫さされを掻いたときのようにきもちいいのです

16

「……やめないってことは、おっけーってことだって解釈するよ。ふふ、楽しくなってきたねぇ……」
言うなりてゐさまが僕の顎に空いている片手をかけ、指をぐいと口の中に差し込みました
僕は何も抵抗しませんでした 指が舌の上を滑ってゆっくりと、慎重に喉の奥へと進入していきます
少し曲げられて指の先が舌の上にくしゃくしゃの円を描いて動き 頬の裏側の肉をつたって天井へ
さらに指が奥に入り込んでいき ぷにぷにと柔らかくなっているところを触られる
口の中で優しく、しかし大胆にてゐさまの指が踊ります そう 僕の口の中で てゐさまの指が
「なにその恍惚の表情。こーやって口のなかにゅるにゅるされるのが好き? 面白い趣味だなあ」
なんたっててゐさまの指ですもの 嫌いなわけがありません
「ほお……うれしいこと言ってくれるね。じゃあこんなことしても、好きだって言ってくれるのかな?」
口内の至るところをくすぐられて、ふわふわとした痺れで心地よくなってきた隙に
てゐさまが指をずんずんと喉の奥のさらに柔らかいところを触ろうと押し込んできて
何度もぐにぐにと触って いや ちょっと これは すこし くる、しい ……

17

「よーく考えてみ。これからもっとでかくてながくてふっといのを口に入れられるかもなんだよ?
ほら……ほらっ、こーやってあたしが激しく突っ込みたくなっちゃったりしたらどうする……?
それに比べたら、まだマシってもんじゃない? ほらほら……もうちょっとだけ我慢、してみなよ」
思わずえずいてしまいそうになるほどに、てゐさまが指を大きく抜き差しします
てゐさまの指が十分に濡れているせいで、思いのほかスムーズに出入りしてしまうのです
簡単に喉彦を突っつくことができる距離まで、指が到達してしまう
けほ、けほ……とむせて咳き込む音もかよわくなっていき
指が突き込まれるたびに涙が浮かび、苦みばしった味の唾液が出てしまいます
顎を引いて逃れようとしても、てゐさまがいつのまにか僕の後ろ頭を抑えていて逃れることができません
……僕はてゐさまの瞳に懇願するような視線を送って、ただただなされるがままにしていました
てゐさまは優しい笑みを返すだけで、指の抜き差しをやめてはくれません
でも、てゐさまが楽しそうだから てゐさまがほほえんでいるんだもの がまんしなきゃいけない……

18

「……はい、おしまい。よく我慢できたね。えらいぞー」
さんざん好きなように僕をいたぶって、やっとてゐさまが満足してくれたようです
「うんうん、やればできるじゃん。よしよし、いじめっぱなしにはしないからね。安心しなね」
正直べそをかいていてもおかしくありませんでした 目に溜まった涙の膜は決壊寸前でしたし
それに呼吸困難というかなんというか、とにかく僕は肩を震わせて必死に息をしていました
「……にしても、こーんなにねとついたよだれ出しちゃって。ほら……指、べとべとだよ」
てゐさまが絡みに絡みついた僕の唾液を揉んで、遊んで、引っ張って……
しまいには見せ付けるような視線と表情で舌を妖しく伸ばして僕の唾液を舐め取り始めました
時々熱っぽい吐息を漏らしては、ぞくっとするような流し目で僕のほうを見るのです
もう、ほんとうに、いったいどういうことでしょうか
てゐさまも自分も指を舐めているだけなのに なんでこんなにいやらしい気分になるのでしょう
僕が指を舐めるのを見るだけで興奮してしまうようなえっちな子になってしまったということでしょうか

19

指を舐めるのを見せられるだけ なんというのでしょう 俗にいうなまごろしというものでしょうか
「んん、おいしかった。……あんたがあたしをまじまじ見てる視線が、って意味も無きにしもあらず」
最後に大きくぴちゃぴちゃと音をたてて、てゐさまがこちらに向きなおしました
「そうだ、いいこと思いついたんだけどさ。……舐めあいっこしない?」
にし、と笑って僕の腰に手を回すてゐさま 僕の目を見つめながら、顔を近づけてきます
薄めの生地の寝巻きの中に、てゐさまの手がしゅるしゅると入り込んできます
「そんなぽかーんって顔してもだーめ。……実際わかってるでしょ? なにを舐めるか、さ」
温かい指が てのひらが 腰まわりを這ってお尻に向かいます
お尻の肉を撫でながら わし掴んで揉みしだきながら 僕に折り重なるようにてゐさまが体を重ねてきます
もう一方の手は僕の股間に滑り込んできて 僕のおちんちんを見つけてくにくにと弄ぶのです
「きのうは、ちんちん可愛がってあげらんなかったからね。……ほーら、ズボンが脱げちゃうぞぉ」
拒んだりなどしませんでした 『きのうは』ということなら、きょうは可愛がってもらえる……

20

長座布団に寝かされた僕の衣服をてゐさまが手際よく取り去っていきます
軽い布地の夜用の下衣とその奥の下着が脚を撫でながら抜けて、情けなく主張する僕のおちんちんが晒される
前あわせの寝間着がはだける──袖は、通したまま 僕の身体の表面積の大半を肌色が占めてしまう
「上は……全部は脱がさない。半端に脱がされると余計恥ずかしくって……興奮しちゃうよね」
てゐさまが僕の太股の内側に薄く口づけをして、唾液をちろりと舌でなすりつける
そこから始まって、舌を肌から離さないまま僕の身体を上へ、上へと上目遣いで舐め駆け上がってくる
同時に右手指が僕の乳首を捉えて優しくきりきりとつまんで、ひねって、押しつぶしていじめる
「あは……こーやって毛繕いしてやるとさ、うちのちびどもも嬉しそうに鳴いてくれんだ」
……てゐさまの舌が僕のおへそに少し寄り道をしました
ゆっくりと穿るように、広げるように また唇は窪みごと覆って、吸い立てるように
おへそが唾液で小さな池になってしまったころ、てゐさまの舌が指で相手をしていた乳首に到着する
乳首のつぎは、もう一方の乳首 そのつぎは、鎖骨を唇だけで甘噛み、くすぐり、吸い付いて……

21

……長くしなる舌が僕の首すじをひたひたと濡らして、ねっとり情感に濡れた瞳と吐息が近付いてきます
十分に湿った軟体動物めいたものがあご先まで移動して、そして不意に離れてしまう
てゐさまがふふん、と嬉しそうに鼻を鳴らして、どうしてほしいか尋ねるような視線を僕に投げました
そんなの、そんなの決まってる 身体が熱くてしょうがない そしてお互いの目を見つめ合って数秒間──
──いただきまぁす。
てゐさまが息だけでそう言って 僕の両手首をぐっと掴んで長座布団に押し付けて そのまま唇を近づける
僕の唇を舌で割って侵入してきて おいでおいでをするように僕の舌を舌でつっつく
半ば同意の上で引きずりだされた舌を唇で挟まれて、扱かれて ああ、恥ずかしい……
「ん、んむっ……もう、息荒くしすぎ。ほんっと、あんたのいじり甲斐ったらないね」
そうはにかんで唇を離したてゐさまが、今度は僕の枕元に身体を移しました
「んふ。すっかり気分出ちゃったね。……あーあ、あたしもなんだか、やらしー気分になっちゃったなー」
……声につられて火照った顔を左に向けると、てゐさまがワンピースの裾を持ち上げているのが見えました

22

てゐさまは曲げた両脚の間にぺたんとお尻を落として座っていました ……別にそれはともかくとして
裾をたくしあげられたワンピースの奥には、まだ完全に臨戦態勢には映っていないてゐさまのおちんちんが
その膨張と硬化は見たところまだ本来の半分くらいといったところでしょうか ……いや、それもともかく
「ふふ……どしたの? なんか変なとこある? んふふ……」
昨夜は、昨夜は確かになかったおまけが、てゐさまのおちんちんのしたに あれは、いわゆる睾丸では……
「……ほーら、まずはおっきくして? 手でも、口でも、なぁんでも使ってさ」
ずい、とてゐさまが近付いてくる 僕の視線はてゐさまのそれに釘付けでした
……てゐさまの太股の間に顔をうずめるようにして、改めててゐさまのおちんちんと『付属品』を見ます
太く長いその幹の表面にうっすらと浮き上がっている血管、丘のような際立ったカリ首を越えて、赤黒い亀頭
すぐ下に目を向けると、確かな存在感のあるてゐさまの……たまたまが 
手に乗せてみると、それはずしっとした重みとやはり偽物とは思えないような手触りと体温を備えていて
なぜだか、手を離したくならないのです……

23

ああ、遊んでいるわけにはいかない きちんと気持ちよくなってもらわなきゃ、尽くさなきゃ……
まずおちんちんの先に軽い接吻を注ぎながら規格外の大きさの亀頭を口に含んで口を慣らし
次第に口腔の奥に導くように、かつ頬の裏側を密着させて頭を前後させます
……空いた手は、無意識にたまたまに行っていました なぜか愛しい、触っていたい……
「んっ、あ……はは、きもちい……」
自分でも驚いていました 興奮のせいか、おちんちんの魔力か
僕は先日の自分とは別人のような手なみを発揮していました
その証拠にてゐさまがときたま短い喘ぎを漏らしたり、頭をなでてくださるのです
「……なんでこんなんつけちゃったかわかる? 男の子相手じゃ正直意味ないも同然なんだけどさ。
でも、でもさ。一遍くらい、どろっどろで、ねばっこいやつ……まじのあたしの精液、飲んでほしいの。
ぶっかけたりもしたい。おしりにも、いっぱい出したい。……どーにもね、歯止めがね、利かなくって……」
てゐさまの切なそうな声と同じ風に、おちんちんが震えて射精の予感を伝えたのですが──
「……っと。今出しちゃ、おあいこになんないね。約束は舐めあいっこ、だもんね」

24

口を離すと、てゐさまのおちんちんはもう完全に先日と同じ状態になっていました
亀頭は真っ赤に充血し、血液の充填が完了したせいか青い稲妻のようになった血管がびくびくと脈打ち
反り返り過ぎず、下を向きすぎない角度を保ち、僕を見つめるかのように勃起していました
……頭の中で先日のてゐさまのおちんちんと見比べてみると、やはりたまたまの存在感は圧倒的でした
あの中にこの前のよりも大量の、濃厚で、粘り気がある精液……いや精子が詰まっていると思うと
反射的にお尻の、おなかの奥が熱を持ってしまって、疼いてしまってしかたないのです……
「あは、いい顔してる。きんたまついてると、『犯されちゃう』って実感……すっごいよね」
ぞくぞくという音が聞こえてくるかのように、てゐさまの表情が喜悦で満ちてきたのがわかりました
てゐさまが静かに笑いながら体勢を整え始めます
てゐさまの口元に僕のおちんちんが、僕の口元にはてゐさまのそれが来るようにお互い横ばいに寝るのです
僕もてゐさまも体格や身長が同程度なためか、この体勢に無理はありませんでした
「……ふふ。ちんちんと喉ん中全部、両方あたしがみっちり綺麗にしてあげるから」

25

どうやら、てゐさまのその言葉が合図だったようです
僕が呆気に取られているあいだに、もうてゐさまは僕のおちんちんにむしゃぶりついていました
上唇で裏筋をかすめ撫でるように触ったあと、一気に頬張って唾液を絡める
僕が先ほどしたように、口の中の空気を抜いておちんちん全ての方位を粘膜で包む
「ずっ、じゅずるるっ、ちゅ……ちゅる、ずちゅるるっ……ちゅぶ、ずずずず……っ」
その状態で頭を前後に、上下に動かして刺激してくるからたまったものではありません
同時に聞こえる水気を吸い取ろうとする淫猥な水音も、鼓膜から僕の脳を刺激します
……こ、こんな 舐めあいっこだなんて うそだぁ、うそじゃないですかぁっ……
でも、てゐさまは嬉しそうに鼻から声を漏らすだけでやめようとはしません
情けなく上擦った声でそんなことを言っても仕方ないのはわかっていました
なにがずるいって、僕が全然てゐさまを気持ちよくできる余裕がないということです
反撃できる立場でもそんな技量もありませんが、僕のてゐさまに気持ちよくなってもらいたい
要は『ご奉仕したい』……その感情が、僕の手をてゐさまのおちんちんへと伸ばしました ……

26

長座布団に横ばいになってお互いの股間に顔をうずめあう 身体が動くたびに布地が擦れて音が立つ
じゅぱ、ずる……僕の股間で大きく激しくいやらしい水音が続くなか、辛うじててゐさまのものを口に含む
「やる気、出た、ね」
てゐさまは一旦お口を離してそう言いましたが、またすぐに僕のおちんちんの相手を再開しました
「ん、じゅっ、んんん……ぁ」
口と喉のつくりに沿うように、比較的円滑にてゐさまのおちんちんを口に招待できるのは
お互い気持ちよくなるため、つまりいつもと違う天地逆さまのアングルのおかげでした
「ぅ……お、積極、的ぃ……」
そのまま咽喉の入り口にある輪っかの手前ぎりぎりまでおちんちんを迎え入れます
裏筋を口蓋の皺に密着させながら滑り入れては、口を引き締めて唇で扱くように頭を前後させる
そして僕の口に入りきらなかった茎の部分とたまたまにも必死なご奉仕を続けます
唇の端からこぼれた唾液とてゐさまのおちんちんのよだれとの混合液のお陰で、うまく潤滑できるのです
「んぐ、んんんっ、くあぅっ、ちょっと生意気だ、ぞっ……」
再度お口を離し息継ぎをしながらのてゐさまの声は、なんだか不穏な空気を纏っていました

27

……てゐさまの口淫に、今度は僕の余裕が削られていきます
口腔の肉をもむもむと動かしながら、尖った舌がおちんちんの先端の穴、側面、裏、根元まで隙間なくくすぐる
そして僕がてゐさまにしたことを再現するかのように、今度は亀頭だけを口に含んで重点的に苛める
たまたまから意図的にお口に納めなかったおちんちんの余りを指先でわざと優しく撫でたり
おちんちんというものは亀頭は敏感なのに、それ以外の部分は驚くほど鈍感です
ですが逆に亀頭だけを刺激されても、なぜか絶頂を迎えることができない
荒々しく執拗なまでの舌さばきはその生殺しには最適でした
「ぐ……んむ、ぁむっ、ず、ずすちゅっ、じゅ……ちゅる」
揉みしだく様に動いていたお口の肉が、一気におちんちんに詰め寄るように密着させられました
そのままおちんちんを猛烈に吸引しながら頭を前後させられて、すぱっ、すぱっと音が出る
生肉と唇が擦れて起こるその音は、僕の口元でも鳴りました
気持ちよすぎて、僕の頭を前後させる動きは止まるどころか加速していました
そして、先に追い込まれたのは僕のほうでした
下腹部に溜まっていた熱が沸騰したように蠢き始めたのを感じました

28

精液が突然出たい出たいという意志をもって心を揺さぶる
心より身体が先に、射精したいという欲求に支配されたのがわかりました
身体は何より正直なのです もちろん拒むわけもありません
そして吸い出すように、啜り出すようにてゐさまの唇がおちんちんを行って帰って、そしてまた往復して
その動きにつられるように、精液はいとも簡単につれていかれてしまって
「んぶ、んっ、じゅっ、ずるるる、む、んふー……♪」
僕もてゐさまも頭を動かすのをやめて、僕は今度は射精の快感に身体を震わせて
てゐさまは僕のおちんちんをまるでストローで飲み物を飲むかのように扱う
「……んふ、ふ」
あまつさえまだ射精が終わっていないのに、今度はお尻に指をすり寄せてきたのです
震える唇と声でやめて、だめですと叫ぼうとしたときには、もう手遅れでした
精液を吐き出すと、おちんちんは脈打つ 実は僕たちの身体は、それにあわせてお尻の穴も脈打っています
脈打つというよりは窄まり引き締まるという表現のほうが正しいかもしれません
……現にいま、僕のお尻は、てゐさまの指を咥えこみ、さらに奥に引きいれようとひくついて
ああ、あ あああ ぁあ、ああ……

29

もう僕の射精は八割方終わっていたようなものでしたが、僕はまだてゐさまに満足してもらっていません
だから射精の最中も、がんばっておしゃぶりを再開していました
でも『あの場所』をこりこりと指先で刺激されるとどうにも身体の力が抜けてしまいます
ですが、てゐさまはむしろそれを狙っていました
一度指をかぎ状に曲げて、いっそう強く『あの場所』を押し込まれました
ご奉仕を中断せざるを得ないくらいの鈍く重い熱が身体を駆け上がってきます
そして不意にてゐさまが僕の首を脚を絡めて引き寄せて、太ももで僕の首を挟んで固定して
すっかり力が抜けてしまった咽喉の奥に剣を突き立てるように思いっきりおちんちんを突き入れてきて
むせる暇も与えられないまま、てゐさまは僕の口とセックスするように腰を動かしました
射精、そしてお尻を刺激される以前よりも、今の僕の口は訪問者を明らかにまずいところまで招待しています
──これで射精されたら、僕、息ができないんじゃないか。
てゐさまのおちんちんが腰ごと大きく一度跳ねて射精を知らせました
──たっぷり、今のうちに鼻から息を吸っておかないと。
僕はそのとき、完全にてゐさまの奴隷でした

30

「んんん、ぐむ、んんんん……」
柔らかくなってきた僕のおちんちんを未だ口に含んでいたため、てゐさまは唸り声で快感を発散しました
結論から言いますと、正直酸素を蓄える暇ももらえませんでした
逆さまになった僕の腰を抱き締められ寄せられて、僕は逃げられませんでした
てゐさまが軽く背中をそらしたので、おちんちんはさらに奥に突き入れられました
肺に十分な酸素を補給していない、口蓋がおちんちんの太さで持ち上げられていて鼻の軌道が埋まっている
そして亀頭が軟口蓋に接していたので、てゐさまの射精は食道へのゼロ距離射撃だったと言えましょう
そんなとき、することはひとつしかありません
てゐさまの放つ精液を全て飲み下すしか、道はないのです
それを自分の命の確保のためより、てゐさまに喜んでもらいたいというのが第一感情だったことに
もう僕はなんの違和感も感じていませんでした
「むぐ、ん……かはっ、ふあ、で、う、ぅあく──ッ」
僕のおちんちんを開放して、てゐさまが今まで我慢していたぶんの嬌声を吐き出しました

31

「ごめ、ッ、きもち、くて、こし、離せない……よっ」
てゐさまの精液は、たまたまを備えているだけあって、濃厚でした
それは濃厚というよりもはや重く、そして火砕流のような速度で胃に向かって駆けていました
『飲み込む』という意識をしなくともいいくらい射精の勢いは活発で、強力で
断続的で不規則な奔流が噴き出されるたび、おちんちんが震えて僕の顎を揺らしました
「ああ、ぅああ、飲んでる、っ、飲ませてるよ、あたしのをぉ……」
てゐさまの射精が終わりに近付いて、やっと自分から喉を鳴らす必要が生まれました
「お、と……でかくて、ああ、いぃ、すき、のませんの、すき、あ、ぁあ、ぁ」
口の中で咀嚼した大量のごはんを飲み込んだときのような、大きい異物が通過する音がすると
てゐさまの嬌声(で構いませんよね)がどんどん大きく、発音が不確かになっていくのです
そのてゐさまのあられもない姿と声は、なぜだかとても愛しく

「はぁ、はあ、はあ、はあ、はーぁ……」
射精と飲精のその時間は長いようで、終わってみれば短くもありました
それから僕もてゐさまも数十秒の間、お互いの逆さまの身体を抱き締めたままじっとしていました ……

32

おちんちんのなめあいっこで骨抜きにされてしまった身体にひとつ、またひとつと口づけがなされていく
あっさりとしたキスから始まって首すじ、肩、背中、腰、そして……お尻の肉へ
「む、んん、ぅ、ちぅ、う」
最後の口吻はひときわ長く、名残惜しそうな余韻を持った吸いつきで締めくくられました
「んん、ちゅ……ほら、これくらいでへばってもらっちゃあ、困るんだよね」
てゐさまの言うとおり四つんばいになりました 身体を支える肘と膝の感覚はあいまいで
それほど“なめあいっこ”に体力と精力を奪われてしまったようです
しかしその疲れより、これから与えてもらえるだろう肛虐の快楽への欲求が勝ったのは言うまでもありません
「んふ。全部、見えちゃってんね……」
身体に力が入らない お尻の穴も弛緩しきって、自分の意思に関係なく誘うようにひくひくと蠢くだけ
じゅる、と舌なめずりと粘ついた唾液が動く音に肩越しにてゐさまの顔を見ようとした瞬間
両親指でお尻の肉を広げられて、そうしてできた隙間に突き刺されるように舌が侵入してきました

33

「ぐじゅ、んむ、……っぷは、ぁ、ん、ちゅ、ずじゅ」
てゐさまの舌が僕の肉の扉を叩き、こじあけ、進入していくたびにお尻の穴が鯉の口のようにあえぐのです
あのかわいいまるまるしたお顔のなかに、触手のいとこのような舌がいつも収納されているのです
確かな体温と潤い、愛撫に適したしなやかな筋肉、長さ……穴をほぐすための道具か、武器と呼ぶが正しいか
……ともあれ目的が果たされているのなら、僕が文句をつける必要もないのです 気持ちよければいいのです
「ん、ぷぁ。はじめてしたときよりいくらか緩くなってる。気持ちよさ、覚えちゃったんだ」
唾液かそれとも腸液のおかげか、とにかくすべりの良くなったお尻に束ねた指が近付いてきます
そして間もなく手首を使っての横の回転を伴いながら、ゆっくりとねじこまれました
僕のお尻の穴がの感覚が正しければ、最初使われた指は三本だったと思うのですが
肛門が熟れていくにつれて、最終的には親指以外の四本が穴を出たり入ったりしていたように思います
「あは。ここ? それとも入り口? もっと奥? 言ってくれなくちゃあ、わかんないよ?」

34

男がお尻をいじられていると全身の穴が緩みます
例えば汗やら唾液やら涙やら、体液の類はとにかく我慢している余裕がなくなります
口なんてものはもう問題外で、辺りに憚りのない泣きそうな声を漏らしていないと気が狂います
「んん? なんて言ってるか……あは、ぜんぜんわかんない。もっとちゃんと、おねだりして?」
そして人間の身体の順応力というものは残酷で、いつかいまの刺激では物足りなく感じてしまいます
「ほぉら。言ってよ。そんじゃなきゃ……うりうり。指だけで、イかしちゃうよー?」
そういえば永遠亭から帰ってきた男性はみんな茹で上がったような顔をしていたのを思い出します
その記憶は僕がてゐさまにしつけてもらうまえから、思い返せば本当にずっとまえからのもので……
──おねがいします、てゐさまのおちんちん、おちんちんが、ほしいです、くださいっ……
きっと、僕の記憶の中の元患者の男の人たちも、こんな風におねだりをしていたのでしょうか?
「……いいね。うん、いいね。たまんない。ぞくぞくする。はなまるあげちゃうよ、ほんとにさ……」
てゐさまの言葉はなんだかぶつ切りで、落ち着かない雰囲気でした

35

「もうちょいお尻上げて。うん、そう。いいこだね。いま犯してあげるからね」
四つんばいの僕のお尻を掴んで位置を調節するてゐさまの手は震えていました
「……さっきまであんたがあんなに騒いでたのに、誰も来ない。姫様もきっとまだ寝てる」
ふと縁側のほうに視線をやると、強くなり始めた昼下がりの日光が反射してすこし眩しく
耳をすませてみても、近くに流れる小川のせせらぎが僅か聞こえるだけでした
「“運がよかったら”、あたしたちがこのままヤってても誰も来ないだろうね」
最初の部分を強く、印象に残すような言い方をしながら、てゐさまはおちんちんをあてがいました
「ねえ」
いつお尻におちんちんを突き込まれるか気が気でなかった僕は口から抜けるような返事をしました
「最近、ほんとあっついよね」
やっぱりこのときもあいまいな返事しかできませんでした
焦らすような短い言葉 そんな時間すら惜しかった 身体から熱が引いてしまうのがこわくて……
「だよね。暑いよね……ん、しょ」
感嘆詞が頭の中を駆け巡りました まったくの不意打ちでした
てゐさまの言葉とほぼ同時に、僕の身体の中心線を肉がみちみちと裂ける音が染み渡りました

36

「なぁに? 入れただけで、イっちゃったの? あたし、そんなの聞いたことないよ。くふふ」
「お尻がちんちんの味、思い出しちゃったんだね。締まったり緩んだりしてる……かわいーんだ」
「んぅ、ゃ、あ、カリんとこ、ひっかかって、ぁ、すご、ぃ、かわいいって言われて、ん、嬉しかった?」
「声、我慢しないで出したほうが、気持ちいいよ? んぁ、あ、ぁあは、あたしも、きもちい、から」
薄桃色のセリフが僕の脳に危害を加えているあいだに、お尻の中はさらに発熱していました
霧だった崖にも似たてゐさまのおちんちんのきのこで言うところの傘が何度も何度も引っかかって
おちんちんの傘が僕が気持ちよくしてくれている第一の要素だと言うことに気付いてからは
僕のお尻はてゐさまの前後の反復運動の突く動作より、引く動作のときのほうに過敏に反応しました
「もっと、もっと声聞かせてよ。もっときゃんきゃん啼いて、もっとあたしのちんちんシゴいてよ……っ」
僕のお尻の肉を叩いたり、背骨の上に舌を這わせたりするてゐさまの声もまた、打ち震えていました
……射精に際したてゐさまの最後の一突きは深く、お互いにただ声を殺して絶頂を迎えました ……

37

「ん、ぁ、は……っ。ぃ、ぃい、いいよぉっ、こすれて、ひっかかって、あ、っはぁ……♪」
今度はてゐさまに後ろ向きに膝に乗せ上げられ、てゐさまの胸と背中が擦りあう姿勢でセックスをしました
お尻から漏れでるてゐさまの精液のお陰で、二度目の挿入は容易く、また抜き差しも円滑でした
太ももの裏、どちらかといえば膝の裏に近いところを掴まれ抱え上げられて
単に僕を物として扱うように、てゐさまはご自分の身体ごと突き上げてはまた突き上げを繰りかえすのです
最初はただぬめった肉と肉が擦れるような抽挿の効果音も今は音すら粘りついて聞こえるようで
てゐさまのおちんちんが僕のお尻の中の精液を掻き出すたびに滑りが良くなり、その粘音が大きくなります
「くぁ、ぁあぁ、いい、いぃ、感じに、ぁひ、こなれて……きたね。ん、く」
人間の身体というもの、とくにお尻は本当に便利で利巧に出来ています
おちんちんが締めつけられて苦しくない程度の緩みを、これが良い塩梅だとひとりでに判断して
それからはよほどの無茶をしない限り、覚えた緩みを保っておちんちんに奉仕するのです
「あんたのお尻、や、ば……あ、あぁああ、ぁふ、ん、んんぁん……!」

38

てゐさまも僕も、声を発する余裕がなくなってきました
僕を持ち上げ動かすたびに漏れる鼻息と、突き上げられて身体の奥から搾り出される低い溜め息
それ以外にこの居間に居座る音と言えば、ぬちぬち、ぬちゃぬちゃ、とかいった無機質で淫靡な水音だけ
「はっ、はっ、は、はぁ……」
止めていた息を切らして楽にして、すこしの小休止
絶え間なく僕を下から押し上げ突き上げ、悦ばせてくれていたのです てゐさまも疲れないわけありません
「……ね。言ったでしょ? 誰も来ない、って。声、出してくれてもいいのに」
顎をこくこくと動かす返事以外、僕には他に選択肢と体力と余裕がありませんでした
それどころか早くセックスを再開してほしい、もっと掘ってえぐって射精してほしいとすら思っていました
「ふー……ん。あたしね、お尻もちんちんもおまんこも好きだけど……んしょ」
一旦言葉を切って、てゐさまが開いている居間の障子、縁側のほうに身体の向きを変えて──
「ほぉーら、丸見えだね。誰か来たらすぐわかっちゃうね。遠目から見ても、ヤってるんだって。
……あたしが一番好きなのはね、声と言葉。かわいい声、恥ずかしい声……聞かせて、ほしいな」

39

“好きだ”と言ってもらえたのなら、“聞かせてほしい”と頼まれたのなら、言うとおりにするほかない
「んんんぁ、ひゃ、ぁああ、っ! うん、うん、もっと叫んで……は、んっ」
お互いの嬌声が混ざって部屋を巡る もはや意味のない高音でしかありませんでした
「ぁあ、ん、いいかんじ……ぞくぞくする。もっと、もっと頭わるくなろ? 嬉しく、なれるよ……?」
肩に牙が立ちそうなキスをされる 唇で噛みつき、歯で撫でるようにして肌が濡らされる
腰を逃がすものかとぎゅっと腕で締めつけ抱えられて、身動きが取れない状態で犯される
お尻の一番奥に突き立てたまま、ぐじゅぐじゅと奥ばかりを責めるようなストローク
「喉もっと絞って。鳴いて、喘いで、喚き散らして。おねがい、その声が、だいすき、なのっ」
艶やかなピンク色のお願いとともに、いままでお留守だった僕のおちんちんに指が絡んできました
包皮を掴んで相手取り、そして続けてぐにゅぐにゅぐにゅとそのまま擦る
「ちんちん? お尻? どっちがイイ? ……どっちも、いいよね。あたしも、そろそろ──ッ」
てゐさまが息と言葉を飲み込むと、その代わりにおちんちんから精液が出され、て

40

「はぁ、はぁ、はっ、はっ、ぁ、はッ……」
おなかがたぽたぽと音を立てているのは果たして錯覚でしょうか
強くなってきた初夏の真昼の陽射しと、いまの僕たちのまぐわいを見ているものはありません
最初に定めたけだもの同士の交尾のような格好で、僕たちはセックスを続けていました
僕の数えが正しければ、つぎのてゐさまの射精は五回めです
射精を終えた直後にすぐピストンを再開されてを繰り返して、いまやっと五戦目です
「ん、じゅ、んんむ、むじゅ、……ん、はぁ、れる」
けだもの同士のセックス、まぐわい、交尾 まさにその表現の通りでした
肉の薄い背中に爪を立てられたり、沁みる汗の塩辛い痛みに身をよじったり、またそこを舐められたり……
「で、ちゃう、もっかい、出しちゃうよ。ね、ほら、おねだりは……?」
精液ください、お尻に飲ませてください、もっと、もっとほしいです……とにかく僕は甘えました
「んは、あはは……かわいい。兎でも、こんなにサカらないよ……は、ぅ、んッ……」
またどろりとした溶岩じみた精汁が腸を通過して溜まっていきます
初夏の気温か、精液の熱か……ともかく得体の知れない熱にやられて、僕は気を失いました

41

「……ふぃー。ぅお、起きた?」
蒸し暑さに目を醒ますと、僕が気絶する前とは別のワンピースに着替えたてゐさまが脇に寝転がっていました
「おつかれ。……ありがとね、つきあってくれて。疲れたっしょ」
耳元で、どちらかといえばいつものてゐちゃんの声と口調で、そう囁かれました
「いやあ、あっついからさ。服ももうちょい薄手のに変えた。……ほい」
どこから用意したのか、きんきんに冷えた麦茶のコップを頬に当てられました
「にしても、ほんとにみんな帰ってこないね。往診だっつのに。熱中症患者とか見つけちゃったのかね」
……なんともいえない心地でした あんなに淫らで、激しい行為に及んでいたというのに
去来するこの安らかな気分について、僕は説明する言葉を持ち合わせていませんでした
「……お。噂をすればなんとやら。れーせん達帰ってきたよ。これで心おきなく、遊びにいけるね」
ぐい、と手首を引かれて、僕はその引っ張られる力のまま立ち上がりました
「川でもいこうか。いつもの遊ぶ面子が誰かしらいるでしょ」
太陽を背に、にししと笑う いつものてゐちゃんの笑顔は眩しく、目をつむりたくなるくらいでした ……

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