第一話

その一

「へぇ…外の世界から来たの。最近多いんだってねぇ」
頬杖をついた金髪の少女は興味が有るのか無いのかわからない、曖昧な表情で言った。
何故か彼女の住居に連れてこられ、正座をして縮こまっている僕は、何故こうなったのか考えを巡らせてみたけれども皆目検討もつかない。なにしろ昨日いつものように自宅で床につき、夜中肌寒さを感じて起き上がると鍾乳洞のような場所に寝巻き姿でコロン、と転がせれていたのだ。背中が痛いし寒いしで混乱していた頭も一瞬で覚め、とりあえず遠くに見えていた明かりを目指して歩いていた所、突如岩の陰から飛びかかってきたナニカにものすごい怪力で攫われた。そして今に至るというわけだ。
少女の名前は黒谷ヤマメというらしい。日本人とも異国人ともつかない顔立ちをしていて、茶色い瞳がそれを助長させている。
「しかしお兄さん運が良かったねえ、ここいらにゃ荒っぽいのが多いから、下手したら頭からパックリ食べられてたよ」
きめ細かい金髪を団子にまとめたリボンをふさふさと揺らしながら、ヤマメはカラカラと笑った。怪力に任せて人を拉致るのは荒っぽいとは言わないのだろうか…?

その二

出されたお茶を飲み、何故か安心したような顔をしているヤマメを見やりつつ、先程から疑問に思っていた問題、ここは一体どこなのか尋ねると、驚くべき返事が帰ってくる。
どうもここは現世、つまりは僕がここに来るまで居た世界で忘れ去られた物が辿り着く幻想郷という世界で、さらに此処はその地底の一角にある旧都と呼ばれる街らしい。人間も多少はいるが、地底はほぼ妖怪が人口(でいいのか?)を占めているらしい。もちろんヤマメもそうなんだだそうだ。
一人の可愛い少女にしか見えない、とても信じられないと言うと、ヤマメは試すような不敵な笑みを浮かべ、スカートの裾をまくりあげた。
「私は人間が大嫌いな病の化身、土蜘蛛だよ」
微かな衣擦れの音を立て、4本の脚―肉厚な、黒と黄色のコントラストが華麗な外骨格に包まれた、人のソレでない―蜘蛛の脚が滑り出てきた。
腰に接続されているのであろうか。キチキチ、と微かな音を立ててヤマメを宙に浮かせる。そんな姿を見て僕は思わず…その脚に飛びついてしまった。

その三

「うわぁ!?」
面食らったのか体勢を崩しかけるヤマメをささえ、根掘り葉掘りヤマメ、というよりは蜘蛛の構造について聞いた。大分興奮していたのかヤマメにどうどう、と落ち着くように促された。何を隠そう、僕は蜘蛛が大好きであることを伝えると、ヤマメは腹を抱えて大笑い。
「あはははは!あ、あんた向こうでも相当変って言われなかった?この脚を見て驚いたり怖がられたりはすれど、そんな風に喜ばれるなんて思いもしなかったよ」
そんな人間ばっかりだったらな―、と小声で続けて、ヤマメは蜘蛛脚を仕舞い、笑顔になって言った。
「あんたの事気に入ったよ、行く宛も無いんだろう?私も客が出来て嬉しいし暫くウチに居ればいいよ」
右手を差し出しながらそう申し出てくれたヤマメ。願ったり叶ったりだ。こんなにかわいい女の子、しかも蜘蛛の女の子と一緒に居られるなんて―ヤマメの右手を握り返す。
「でも…」
反転。ヤマメを見ていた筈がいつのまにか天井が視界にあった。腹に乗ってきたヤマメを見てようやく地面に転がされたのだと理解がおいつく。
「一宿一飯の恩義…こっちも出すもの出してもらわなきゃねぇ?」

その四

「んっ…ちゅぶっ、ちゅっ……」
薄暗い部屋にジュポジュポ、と自分のモノをヤマメがしゃぶりあげる音が響く。
「っぷはぁ……食べられるかと思ったかい?おちんちんは食べちゃってるけどね♪はむっ」
なんでもヤマメも蜘蛛らしく糸を形成するのにタンパク源が必要なのと、単純に人間の精が好物であるらしい。人間で言うと煙草や紅茶等の嗜好品と一緒で、必ず必要というわけでも無いそうだ。なるほどなあ……。
「ちゅっ、ちゅっちゅっ、じゅぷ……くふふ、ピクピクしてるよ…気持ちいいの?」
僕はフェラというものは体験したことは無いのだが、それでもヤマメが非常に上手であることは感じてとれた。時々歯で軽く刺激したり、頬肉で亀頭をつつんだり、袋の方を口に含んで優しく吸ったり、舌で転がしたり…。イキそうになると根本を扱き上げる手をとめ鈴口を舌でなぞるようにチロチロの舐め上げ、落ち着いてきたらちんぽにまとわり付いた唾液を殆どローションのようにして音を立て扱き上げる。自分の右手で慰めるのとは天と地程の差のある責めに思わず情けない声を上げてしまい、ヤマメにくふふ…と怪しく笑われる。

その五

顔をあげるとめくれ上がったスカートから純白のショーツが見え、思わず手を延ばすと猛烈な勢いで滑りでた蜘蛛脚に手を押さえつけられる。
「悪い手だねぇ…そろそろ、出そう?」
出そうどころか死にそうだとというと、こっちを振り向いたヤマメは口を唾液と僕の汁でベタベタにした桜色の唇をニィッ、と吊り上げ
「じゃあもうちょっと頑張ろう!」と言った、鬼である。
結局そのまま30分程寸止めが繰り返され、果てた際には口から溢れ、それでもなお止まらない精液はヤマメの顔に叩きつけるように発射された。
口に入った分を飲み干したヤマメは殆ど感心したように、精液まみれの顔で
「あんた、どんだけ溜まってたんだい…?」と聞いてきた。
こうして、僕と黒谷ヤマメとの共同生活が始まったのである。

第二話

その一

「ねえ、糸が出る所見てみたい?」
旧都の屋台屋で買ってきた夕飯を二人で食べている時、ヤマメは唐突に尋ねた。実際はヤマメが見て、まで言った所で見たいと即答したのでこう言いたかったのだろうという推測なのだが。数週間ほど前、だろうか。地底は陽の光が届かないからか時間の感覚が狂っている自覚がある。兎に角そのくらい前、僕は唐突にこの地底に放り出され、ヤマメに拾われた。右も左もわからない世界で衣食住を確保しつつ、こちらは見返りとして三日に一度貯めに貯めた精液をヤマメに提供するという、見返りというよりはもはやご褒美である行為を続けていた。今まではヤマメの蜘蛛の脚で抑えこまれながら(本人曰く、こうしないとどうも安心できないらしい。雌蜘蛛の本能だろうか?)口で絞られていたわけだが、それ以上のことは全くなく、このようなことをヤマメが提案するとは驚いた。だが好意を無駄にするわけにはいかないし、純粋に生物的で性的な興味を僕はヤマメの蜘蛛性に感じ取っていた。

その二

食事を片付け、いよいよその時が来る。僕は畳の上に正座し、布団の上でまずヤマメは茶色いジャンパースカートを脱ぎ、タートルネックの長袖シャツを脱ぎ捨てた。ブラはつけない主義なのか、ヤマメの乳房―実際、この共同生活で初めて見たヤマメの乳房…唐突に、今からヤマメの全てを見ることになるという事に気がついた―が顕になった。Cカップ位だろうか、ヤマメの体躯からすると大きく感じられる。乳輪も五円玉程の大きさで、ツンと立った乳首を同じく鮮やかな桜色だ。スカート越しだと多少ふくよかに見えたヤマメの身体は以外に絞られていた。ウエストは軽く括れていて、腹筋はうっすらと割れている。全体的に洋梨の様なシルエットと言うべきか。尻はぷりんと上がっていて、張りのありそうな感じがする。
そしてヤマメはついに―紅潮した、恥ずかしさと愉しさを一緒くたに混ぜあわした扇情的な表情で―下着、白いローライズの下着をゆっくりと降ろした。
顕になる陰毛。ヤマメの髪より少し暗い金色で、土手で綺麗に整えられている。下着を降ろしきったヤマメは布団の上に尻を降ろし、脚を広げる。ヤマメは唇をペロリと舐めて言った。

その三

「ほらごらん……ここに糸疣があるだろう?」
這いつくばるようにして顔を近づけると、たしかにそこ、性器と肛門の間にプックリとした糸疣があった。キムラグモのソレのように、退化した小さな蜘蛛の脚のようなものが4つ、ヒクヒクと動いていた。僕はそれを見て…無意識の内に舐めていた。
「ひゃんっ!ちょっ、あんた何して…んんっ!」
無意識の行動だったが、ヤマメから確かに聞こえた嬌声に理性を狂わされ、飴を舐めるようにねぶり始めた。臭いは余りしないが、微かなアンモニアのようなしょっぱい味がする。吸い付いて見ると糸疣がピクピクと蠢いているのが感じられ、口の中にデタラメに溢れた糸の元が流れこむ。
五分ほどだろうか、それを続けていると不意に鼻が湿っていることに気が付き、上を見やるとヤマメが荒い、熱い吐息をこぼしながら、指を食いしばって声を出すまいとしていた。鼻についていたのはヤマメの愛液である。少し具のはみ出たヤマメの性器は溶かしたバターを塗りたくったかの如く湿っていた。
僕はヤマメに聞くこともせず、痛いほどに勃起していた剛直をズボンと下着の束縛から開放し、ヤマメの糸疣にあてがった。

その四

「あっ……ん、はぁ……」
糸疣を起点に、ヤマメの性器の上を滑らすようにちんぽを滑らす、いわゆる素股だ。ヤマメはいつの間にか僕の首に両腕を回していて、耳元で熱い息と噛み殺そうとするも漏れだす声を囁くようにしている。性器と性器が擦れあい、グチュグチュと水温を立てる。腰が痛いので少し動きを緩めると今度はヤマメが腰を降ってきて、いつの間にか押し倒されていた。が、蜘蛛の脚は出ていない。
「はぁっ…はぁっ……こういうのも、たまには…んっ…いいかも知れないねぇ!」
やけくそのようにヤマメは腰をグラインドさせるように性器同士をこすりあわせ、時々指を滑り込ませて刺激を変えていた。しかし達しそうになっている事を伝えると、ヤマメは慌てて体勢を変えて僕のちんぽを口で咥え込み、数秒後に射精した。例のごとく口から零れそうなほどの量が出るも、コツを覚えたのか射精の脈動に合わせてゴクゴクと喉を鳴らして僕の精液を飲み干すヤマメ。やがてその脈動も終わり、尿道に残った精液を全て吸い上げたヤマメはチュポンッ、という音を立てて僕のちんぽを離した。

その五

ヤマメは起き上がって僕の方に振り向き、形容しがたい顔で僕を見下ろす。この時僕は初めてとんでもないことをしてしまったのでは無いかと今更過ぎることを考えていたが、そんな心配を知ってか知らずかただヤマメは僕の顔をじーっと見つめ、一言
「寝よっか」とだけ言って、布団を敷きはじめたのだった。
…一線を、超えてしまった。

第三話

その一

あの夜、ヤマメと擬似的な性行為をして以来、お互いどこかギクシャクするようになってしまった。僕も調子に乗りすぎていたわけだし、家を追い出されることも覚悟していたがそういうこともなく、僕は未だにヤマメの家で世話になっている。だた言葉数も少なくなり、目もあまり合わさなくなってどこかバツが悪いのだ。どうするか、と旧都を歩いていると(嫌われ者や荒っぽい妖怪ばかりと聞いていたが案外気持ちのいい連中が多いのだ)ふと酒屋が目に入った。ここで一丁良さげな酒を買って帰って、ちゃんとしたコミュニケーションを図ろうと思い物色していると、ソレが目についた。目にした瞬間、ここ数日溜まっていた精液が暴れまわるように僕の思考回路を犯し、まったく懲りないことにろくでもない事を思いついてしまった。
ソレとついでに買った牛乳を手にヤマメの家に戻ると、ヤマメはポケーと煙管を吹かしていた。様になってるなあ…と思いつつヤマメを酒に誘うと、「ん…」とテーブルの上を片づけだした。

その二

「一体どんな酒なんだい?」
僕の居た世界ではポピュラーなお酒なんだよ、こっちにもあるとは思わなかったと説明し、牛乳と先ほど買ったソレを多めに混ぜてカクテルを作る。正直本格的にやったことはないので殆ど目分量だが、この際味は余り関係ないのだ。
出来上がったソレを差し出すと、ヤマメはスンスン、と匂いを嗅いでちびりと飲む。
「へぇ…なんていうか、甘い味がするね。あんまりキツくないし飲みやすいじゃない」と笑顔になってくれた。嬉しいことだ。
酒は人と人との潤滑油というか、ポツポツと話にも花が咲き出しおそらく一時間ほど話し込んだだろうか。ヤマメはコップ5杯分程飲んだ後、ちょっとトイレにと言って立ち上がるが、バランスを崩して尻餅をついた。
「あれ…えっ、あれっ?」
効いてきたようだ。僕がヤマメに作ったカクテルはカルーアミルク、コーヒーリキュールを使ったカクテルで、当然カフェインが入っている。そして蜘蛛はカフェインを摂ると…。

その三

酔う。人間にとっての酒のようなもので、カフェインには蜘蛛の中枢神経を麻痺させる効果がある。姿形は人間だし、分量などを考えてもいけるかどうか悩んだのだがなんとか効いたようだ。
ごめんな、と謝り、ヤマメの唇を奪う。共同生活を続けて以来、初めてのキス。
ヤマメは目を見開いて必死に僕を引き剥がそうとしたが、力が出ていない。
歯茎を舐め、唾液を吸い出し舌を絡ませあっていると観念したのかヤマメもそれに応じてくれ、しばしの間キスをしたあと唇を離した。
「…ばか、ばかばか…ばかやろうだよ、あんたって男は……汚いのに…」
腕を顔の前にやって顔を隠してしまったヤマメの表情はわからないが、僕はもうそれどころでは無かった。ジャンパースカートを脱がせ、ヤマメの黒シャツを託し上げて胸を露出させ、震える手で胸を揉み、吸い付く。ヤマメも胸は張りを残していながらも柔らかく、仰向けになると重力に負けて少し潰れたようになる。

その四

じわりと浮かんだ汗を舐めとり、ヤマメの下着を下ろす。
…ぐっしょりと湿っていた。一瞬結構乗り気なのか、と聞こうと思ったが流石にそれは野暮なんだろう、童貞でもわかる。僕もズボンを脱ぎ、痛いほどに勃起したちんぽを取り出してヤマメのソコにあてがった、が、うまく入らない。焦って泡を食っているとヤマメは蕩けた顔でクスリと笑い、自らの指で僕の分身を自分の入り口へ誘導した。
「もうどうなっても知らないからね…さ、ここだよ。最初はゆっくり…ね」
亀頭に湿った肉の感覚を感じながら、ゆっくりと腰を沈めていく。
「ふぅン…っはぁ…そう、そのまま、来て…」
まるで僕の分身が湿った肉のカーテンを掻き分けていくような感覚。一ミリ動くたびに腰から脳へ電流が走ったような錯覚。だがいつまでもその航海が続くわけでもなく、やがては終点へたどり着く。肉と肉がぶつかる。
「〜〜〜っ…っはぁ…入った、ね」
ヤマメが愛おしそうな顔で僕の頬を両手で挟むようにして撫でる。ちょっと悪戯っぽそうに卒業おめでとう、と添えて。

その五

僕はそのままヤマメの小さい身体に覆いかぶさるようにして、不器用ながらも腰を振り始めた。初めは勝手がよくわからなかったが徐々にコツを掴む。
「あっ、あっ…っはぁ、んっ、んっんっん、そう、そのまま、動いて」
リズミカルに、緩急をつけて。三度浅く突き一回深く突く、8の字を書くように腰を動かすなど、どこかで聞いたような動きを試す。
深く突くたびにヤマメの胸が上下に揺れる。深いキスをして、そろそろ出そうだと伝えるとヤマメは僕にしがみつくようにして
「いいよ、全部…あたしの中に頂戴」
と言う。、ラストスパートで可能なまで腰を振り、最後はヤマメの一番奥深い所に特濃の精液を流し込んだ。
「うあっ!……へへ、熱いね……うん、生きてるって感じがするよ…」
ヤマメから分身を引きぬいた後、僕はそのままヤマメとともに倒れこみ、数時間後遊びに来た水橋さんに発見されるまで僕らは眠り続けた。

第四話

その一

「私さぁ、初めてあんたと会った時、『あんたみたいな人間ばっかりだったらなー』って言ったの、覚えてる?」
あの後、パルスィがやってきて僕らの有様を見て散々暴れ回り、散らかった部屋の掃除を終えて一息ついていた最中、黙りこんでいたヤマメの口が言葉を紡ぐ。
「なんていうか、嫌われ者だったんだよ私は。だったというか、今も嫌われてるから此処にいるわけなんだけどね」
「そりゃあ人も食いはするけど、それも人憎さからってわけでもないんだよ」
「だから、ね…」
ちゃぶ台の上にあったおちょこを指先でコロコロと弄りながら、ヤマメは上手い言葉を探しているように、ゆっくりと話を続ける。
「だから、あんたが私の脚を見て驚かなかったどころか、むしろ飛びついてきてくれて…本当に嬉しかったんだよ、笑っちゃうくらい」
あそこで怖がってたら食べちゃってたかもね、と笑いながらさりげなく物騒な一言を付け足すヤマメ。

その二

「それで、人間から好意をもたれるのってなんていうか初めてでさ、最近二人の人間に会ったけど、腹話術ができる人間にはぎったんぎったんにしてやる!って言われるし、もう片方からは節足動物呼ばわりだったしね」
「なんというか…臆病になっちまってたんだと思う」
背中に抱きついてくるヤマメ、背中から心音で、彼女がどれほど緊張しているのか伝わってくる。
「人から好かれたいってずっと思ってたのに、いざあんなことになってビビっちゃってさ、笑っちゃうよね…」
笑わないし、僕はヤマメが好きだ。
思わず口から言葉が滑り出た。気弱な事を言うのはヤマメの柄に合わないよ、と振り向きざまにヤマメを抱きしめる。彼女は一瞬驚いたようだったが、僕を抱き返すと涙声で
「えへ…も、もう遅いからね。お前みたいな病気女は嫌だなんて言ってももう遅いからね…うん、大好き、だよ。」
そのまま長いこと抱き合っていたが、恥ずかしくなったのかヤマメが急にパッと後ろに飛び退り、不敵な笑みを浮かべて試合前の柔道家のようなポーズを取り、ジリジリと距離を図りながら言った。
「でも…そういえばあんた、随分好き放題してくれたよねぇ…お返し、しないとね?

その三

いつぞやかのように、また何をされたのかわからないまま僕は床に転がされていた。やはり蜘蛛本来のようにヤマメには卓越した相手を抑えこむ技術があるのだろう。あの小さな身体のどこからこんな力が出ているのだと呑気に感嘆する。これでは僕が餌のようではないか…と、思わず勃起してしまう。
「へへー、今日は私が好き放題させてもらうよ、っと」
急に眼前が暗くなり、ぬるりとしたものが鼻に触れ、汗と少々のアンモニア臭が鼻につく。いわゆる顔面騎乗というやつだろうか。自分のやるべきことを瞬時に理解し、飢えた犬の様にヤマメの性器に貪りついた。
「んんぅ…そうそう、ペロペロ舐めるんだよ…気持よくさせてくれないと窒息させちゃうよ?」
ピクピクと太ももを震わせながら、僕の服を脱がせ既にギンギンに勃起していたチンポを露出させるヤマメ。
「あは…もうこんなになっちゃってる、やーらしいー♪」

その四

すると、突如未知の感覚が僕のチンポを襲った。生暖かいと思った途端、それは硬度を増し、しかしぬめりと確かな弾力、そしてキツい締め付け。そのナニかを整形するように動くヤマメの指。やがて完成したのか、筒状になったそれは粘着質な音を立てながら僕のチンポをグチュグチュと蹂躙しはじめた。
「んっ…これ、なにかわかる?」
グッチョグッチョグッチョとリズミカルに謎の物体を上下させながら楽しそうにヤマメは聞く、刺激に耐え切れず思わず身を捩らせるとコラ、と太ももで頭を挟むように窘められた。
「幻想郷にはね、オナホカズラっていう不思議な植物があってね…それを真似して作ってみたんだけど…材料は何か、わかるよね?」
緩急をつけたスピードと力加減で僕を締め上げる糸オナホ。薄くなっているのかヤマメの指が疣のように刺激を与え、僕が果そうになるのを感じると急にピタリと動きを止めて蛇口を回すように亀頭を指で撫でるように刺激してくる。あまつさえそれに加えて袋の方にまでヤマメの口と舌の責め苦が追加された。

その五

最初はヤマメも「舌が止まってるよー、ちゃんとお尻の穴も舐めてよ」と言っていたが、僕がそんな状態では無いのを悟ると腰を浮かして、片方の手で性器をムニッと僕に見せつけるように広げていた。
「ほら、おまんこ入れたい?ねえおちんちんおまんこ入れたい?じゃあこっちであと30分我慢しようね♪」
ヤマメの顔は見えないが、とても生き生きとした表情をしているに違いない。餌のように押さえつけられた僕を見てヤマメのサディズムが燃え上がっているのだろうか、本能とは恐ろしいものだ。
そのまま寸止めをしては搾精を再開、果そうになっては寸止めを15分程(実際には永遠のように感じられたが)続けられ、ついには暴発してしまった。
ふいに糸オナホがチンポから抜けた際の刺激が強すぎたのだろう、過去最高と言ってもいいレベルの精液がヤマメの顔を襲い、それに飽きたらず胸元にまで熱い精を吐き出した。
頭を真っ白にしながら荒い息をついてると、顔をベタベタにしたヤマメが指で掬った精液を舐めながら
「いっぱい出たね…でも約束破ったからダメよ、今日はおあずけ」
と悪い顔で笑った。なんというか…とんでもない恋人ができてしまったのかもしれない。

第五話

その一

地底は季節の移り変わりが視覚で確認できず、カレンダーのみが頼りになる。
地底に来てヤマメの家に居着いてから幾程の時間が経ったのだろうか、卓上に置かれたカレンダーは師走の中頃を告げていた。外界のようにクリスマスは無いものの、どこか旧都の妖怪たちもそこはかとなく浮かれているように感じられるが、今は大掃除の時間だ。
もともと特にズボラというわけでもないヤマメの性格から、僕らの住居スペースはそこまで汚れてはいないものの、いい機会なので要らないものを捨てようということで朝食を食べてからずっと掃除をしていたのだが、どうにも気が気じゃない。
古い雑誌なんぞを処理しているヤマメをちらりと眺める。自分の糸で縛り上げているようだ……四本の腕で。
そう、今朝方朝食を食べたあと、さぁ掃除をしようと言い出してからヤマメの腕は四本になっていたのだ。あまりにも自然だったので突っ込む隙もなく、こうしてモヤモヤしたまま拭き掃除などをしているのだが…。

その二

「ああ、この腕かい?うん、増やせるんだよ、便利だろう?」
ぶいっ、ともともとあった腕で横ピースを作りながら、新たに生えた腕で茶碗と箸を持つヤマメ。確かに便利そうではある。自分があのように4本も腕があったらどのように動かすのだろうかはわからないが…どこから生えているのだろう、脇の下か?
「……もっとよく見てみたい?」
興味が尽きず色々と思案していたのを察したのか、ヤマメが言った。いいのか?と尋ねると掃除ももう一段落ついたので良いという。「糸の素もそろそろ切れちゃいそうだしねぇ…」と、艶っぽい顔で付け足した。つまりはそういうことなのだろう、と僕も思わず生唾を嚥下する。
その場に立ち上がり、すべての腕を使って服を脱ぎだすヤマメ。まずはジャンパースカートのボタンをもったいぶるように外し、パサリと床に落とす。次は黒いロングシャツだ。四本腕でも着られるように袖を増やしたシャツ。まずは腕を二本袖から抜き、バンザイをするように残った腕を挙げ、するすると脱いでいく。まるでストリップショーを見ているような気分だ。

その三

やがて白いローライズショーツ一枚という姿になり自慢げに、惜しみなく身体を晒してくる。にじり寄って生え際を見てみると、確かに脇の少し下から新しい腕(混乱を避けるために複腕という名称で表す)が生えている。触ってみると太さも元の腕と大差が無いようだ。つくづく不思議だ…と眺めていると突然ヤマメに抱きしめられた。
「ねぇあんた……どうしてココがこんなになってるんだい?」
耳元で囁くヤマメ。両腕を背中にまわして密着しているはずなのに、股間を弄られる感覚がある。
「あはっ…また硬くなった」
複腕だ。複腕で股間を弄られているのだ。するりとズボンに両手を入れられて、亀頭と陰嚢を撫で回されている。それが犯されているみたいで、巣にかかった餌のような気がして。
「私のこんな姿を見て興奮しちゃったの……?」
指でゆるく輪を作り、亀頭からカリ首までゆっくりと上下する。左複手は相変わらず陰嚢をやさしくこねくり回している。手が汗ばみ、顔が上気しているのが自分でも分かる。ヤマメにも伝わったようだ。
「ふふっ…可愛いねぇ……」

その四

そのまま膝立ちになったヤマメにズボンと下着を脱がされ、今まで以上に硬度を増している陰茎をまじまじと見られる。ビクンビクンと上下に脈動しており、先からもう既に射精してしまったのかと言うほどの先走り汁が溢れ、物欲しそうに涎を垂らしていた。
「覚悟してね…いただきまーすっ」

ぱくり、と咥えられた。いつも以上に唾液で湿った口内は暖かい。しかし覚悟してねとはどういうことだろうか、と蕩けた頭で考えているとソレは唐突にやってきた。
「んいっ(えいっ)」
内股を優しく撫でて居たはずの複腕の指が、僕の肛門に侵入してきた。思わず声にならない悲鳴をあげ、射精してしまいそうになったがもう片方の複腕で蟻の巣渡りを強く押さえつけられると、陰茎は激しく痙攣するのみで射精はしなかった。全身が痙攣して、立っているのも一苦労なほどだ。身体が溶けて無くなってしまいそうな錯覚すら覚える、まるで自分がこの陰茎だけになってしまったかのような、そんな錯覚。
「ん、んん〜…ぷはっ…あんた前立腺おっきいね、こりゃ才能あるわよ」

その五

なんていうヤマメはこちらの気も知らず、前立腺であると思われる箇所を慣れた手つきで責め立てる。まるでそこに小さな心臓があるのかの如く、指で優しく刺激されるたびに全身にドクン、ドクンと快楽の波が頭の天辺まで押し寄せる。それに加えてもう片方の複腕で陰嚢を撫で回し、残った二つの手は亀頭を輪っかを作った指でこすり、根本の辺りを軽く扱き上げてくる。こんなの絶えられるわけがない。そう思った僕はヤマメにもう出してくれと懇願するが。
「う〜ん……あと30分我慢してね」
と、悪魔のような顔で鈴口を舌でチロチロと舐めながら言うばかりであり、僕は絶望した。
やがて快楽の無間地獄のような責めは終わったのか、ヤマメも本腰をいれて僕の陰嚢をしゃぶり上げ始めた。蟻の巣渡りを抑えて居た複手は外され、いつの間にか三本に増えていたアナルを責め立てていた指のストロークも加速し、頭のリボンをふさふさと揺らしながらじゅっぽじゅっぽと音を立てて僕の精液を吸いつくさんとしている。
視界が一瞬ホワイトアウトしたあと、頭を真っ白にしながら僕は、全身が陰茎になった僕は射精した。

その六

「うぶっ、んんん!んん〜!!……っがぁ!ゲホッゲホッ、ゲホッ!」
流石に受け止めきれる量では無いと判断したのか、ヤマメは口の下で皿を作るように両手を構えており、案の定口から溢れた分を掬った。が、それでも僕の射精の勢いは収まらず、びゅくん、びゅくんびゅるるるっ!と過去最大の勢いでヤマメの顔面を前衛芸術家が白い絵の具をまき散らしたキャンバスのように白く染め上げ、流石に疲れてそのまま布団に倒れこんでしまった。
「うっわぁ…すっごく濃いよ、ゼリーみたい……」
惚れ惚れとしたヤマメの声を聞いて、もうどうでもいいと瞼を閉じる。もういい、今日はこのまま寝よう。最後に「指が三本入ったかぁ、これなら大丈夫ね」と聞こえた気がするが、もう何がなんだかわからないし、今はただ寝たい……。

第六話

その一

2キロ太っちゃったんだよ……」
夕飯を食べ終わり旧都で買ってきた団子を出すと、伏し目がちになりチラリと横目で見ながら言うヤマメ。たしかに冬というのは太りやすい時期ではあるが、主な原因は最近旧都で流行りだした甘味だという。
そう言われてみるとここ最近ヤマメの肉付きがよくなったように思われる。もともと建設作業が得意だからか腹筋はうっすらと割れていたのだがここ最近寝る前にヤマメに抱きつくとお腹の肉がモチモチしていたような気がするし、言われてみれば顔の輪郭もほんの少し丸くなったように思われる。女心というやつは良くわからないが、ここで「ちょっとぽっちゃりしてても可愛いよ」などというのは烈火の如く起こらせることが容易く想像されるので、無難な相槌を打っておくことにする。当のヤマメはジャンパースカート越しに腹の肉をつまんで団子を頬張っている。行動と言動が一致していない…と思いながら白湯をいれてやる(お茶はカフェインが含まれているので酷いことになるため)。
「というわけでお手軽な運動で減量しようと思うから付き合って欲しいんだけど…だめかねぇ?寝てるだけでいいから!」

その二

何が寝てるだけでいいのかはともかく、これには快諾する他無い。なにせヤマメには普段から世話になりっぱなしなのだ、どんなことをするのかはわからないがコレを拒んじゃあ男では……。と、ここまで考えた僕は一瞬で本能的な恐怖を感じ取り、脱兎のごとく家の出口へ向かって駈け出した。
「おやおや、何処へ行くってんだい?」
ヒュンッと風を切る音が聞こえ、粘着質な何かが僕の足首に絡まり地面に引き倒された。必死で藻掻くが力自慢の土蜘蛛に一人間が叶うはずもなく、無様にズルズルとヤマメの元へ引きずられる。
ヤマメは既にジャンパースカートを脱いでおり、いつもの黒いロングシャツも脱いでいた。普段と違う所は腕が6本(普段使いの腕、複腕、そしてジョロウグモの脚のような美しい黒と黄色の甲殻に覆われた蜘蛛の腕…これは普段蜘蛛脚を出している腰の辺りから生えているようだ)生えており、そしてなにより、そんな衝撃も月までぶっ飛ぶ程のブツが…おそらく牛乳瓶ほどの太さと長さを誇る男根―決して女の子の股間に映えるべきではないモノ―が、ヤマメの黒いローライズショーツから臍に触れるのではないかというほどのそそり立ち具合で生えていたのだ。

その三

「こら、暴れるなって!寝ておくだけで良いって言ったでしょ!それにあんたも了承したし!大丈夫大丈夫、こないだ指三本も入ったし大丈夫だって!」
僕を仰向けにひっくり返し、腕と蜘蛛腕を使って両手両足を押さえつけられる。
あらん限りの力を振り絞ってもビクともせず、まるで標本にピン留めされた昆虫のような、蜘蛛の巣で藻掻く餌のような、そんな気分になってくる。それになにより怖いのだ。
僕の取り乱し具合にヤマメは捕食者としての自分を思い出したのか、目が見開かれているし息もハァハァと熱っぽく荒い、吐息も熱い。僕からはもう反抗は無いと思ったのか、抑えきれない愉悦を携えた表情でゆっくりと顔を僕の耳に近づけ、つぶやく。
「簡単に押さえつけられちゃったねぇ……みっともなく…」
くつくつ、と笑う。
「ねぇ、あんたまるで今…女の子みたいだよ?悪い妖怪さんに捕まって、食べられちゃう女の子……んふ、あんたどうしてビンビンになってるの?」
空いていた複腕で手際よくズボンを脱がされ、サワサワと優しく、焦れったく僕の意に反して硬く、熱く勃起していた陰茎を擦る。

その四

……意に反して?本当に?
自問自答しても答えは出ない。熱い吐息の音と、ニチャニチャと溢れ出る先走り汁を塗りつけられる音と、バクバクと鳴り響く自分の心臓しか聞こえない。
掠れるような声で退いてくれと懇願しても、ヤマメを満足させるだけであった。心も巣に絡め取られたように。
「今回だけは…そうね、言い訳を用意してあげるわ」
そう言ってヤマメはいつの間にかだらしなく開ききっていた口に、蜜のような色の唾液を口から流しこみ、そのまま唇を重ねて無理やり飲ませた。
その唾液は変に甘ったるく、それでいて何処かピリッとする妙な味わいで。僕の蕩け切った脳が答えを導き出した頃にはもう手遅れになっていた。
毒液だ。蜘蛛が餌となる昆虫を麻痺させるための毒液。それを今飲まされたのだ。
毒と言っても死に至るようなものではなく、筋肉の動きを麻痺させる毒―まさにこの状況においては適役として言いようのない毒だった。それを今嚥下してしまったのだ。
微量だったおかげかかろうじて指先は動かせ、呼吸も乱れてはいるが緊張と興奮からのものだろう。ともかく僕は今、まさにまな板の上の鯉。蜘蛛の巣の上の餌というわけだ。

その五

言い訳…とヤマメは言った。そう、まさに言い訳だ。身体が動かないものは仕方がないし、どうしようもない。思えば僕だって一度ヤマメをカフェインで酔わせて好き放題した前科があるのだし……。
どこからか湧いてくる自己正当化の言葉の網を手繰り寄せているとヤマメの方も準備が整ったらしく、循環液を塗りたくられたヤマメの男根が行灯の明かりを受けてテラテラと滑るように光っていた。へへっ、これは初めてだなぁ…とヤマメがつぶやき、肛門にソレをあてがう。
「あんまり痛くはないと思うけど…我慢しとくれよ」
ズブンッ。腹に熱が来る。感覚は薄くなっているはずだが熱が、快楽が、白い波が波紋のように身体に響く。遠慮というものを知らないのかヤマメはひたすらにズンズンと突き上げてくる。突かれるたびに頭が白くなり、自分のモノとは思えない声が喉からこぼれ出る。
「へぇっ、思ったよりっ、っはぁっ、具合良さそうじゃんっ!こっちも…んっ、中々いいよっ!」
男役は初めてだったのか、がむしゃらに、デタラメに腰を打ち付けるヤマメ。痛いはずなのに、喉が、頭が、声が、自分のものではないように思われる。自分を手放してしまいそうになる。

その六

「…っはぁ、はぁ…な、中々…疲れるねっコレ!ダイエットには、丁度いいかもっ、はむっ…じゅるる…」
汗だくになりながら、貪るように唇に吸い付き、デタラメに舌を絡ませてくるヤマメ。ただ顔中に唾液を塗りつけるように。必死で舌と舌を絡ませる。
「あははっ、あんた、本当に女の子みたいだよ!ねぇ、どう?気持ちいい?んっ…気持ちいいならそういいなよ、おちんちん、こんなビンビンにしちゃってさぁ…」
要領を得たのか、わざと音が鳴るようにゆっくりと緩急をつけて、更に複腕で乳首と陰茎を擦り上げてくる。もう何が何だかわからない。喉も枯れて、言葉にならない言葉をただただ喚き散らしているような気がする。分かることは、白いと気持いい事。暖かくて気持ちがいいこと。
「っふぅぅ〜……そろそろ限界だし、出すよ!いいの、イこうよ!初めてのおしりで!一緒に行くよ?出すよ?ねえ出すよ!?」
限界が近くなったのか、切羽づまった声で力の限り腰を振るヤマメ。

その七

額からこぼれた汗が胸に滴る。やがてヤマメの男根が一度大きく跳ね上がるような感覚があって、しかめっ面のヤマメが「ぐぅっ…!」と呻いて。直腸にマグマを叩きこまれたような感覚があって、勢い良くなにかが飛び出る感覚があって、僕らは同時に果てた。
こちらの気持ちも知らず、上にのしかかるように倒れこんだヤマメは
「はぁ〜〜〜……男の子ってずるいよ、こんなに気持ちよく運動できるなんて……」
とうっとりした表情でいい、僕にしがみついたまま寝息を立て始めてしまった。
肛門から溢れるヤマメの精液を熱さを感じながら、僕はただ、自分に戸惑うばかりだった。

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