11/07/17(日)22:54:24

1

夏の山は、里よりずっと過ごしやすい。
日差しが強いから木陰も色濃く落ち、風が吹けば嘘のように涼しいからだ。
振り向けば、二つ隣の尾根に、太陽が沈み始めているのが見える。
山小屋はもう見えている。焦ることは何もない。
ただ、その日はいつもと少しだけ状況が違っていた。
「……ぅ、うぅ……」
脇合いの茂みから、か細いうめき声がする。
念のために鉈を構えて、音を立てないように、そっと藪を掻き分ける。
そこには、四尺ほどの真っ黒な球が落ちていた。
いや、まるで灯りのない夜の山のような、闇色の球だ。
「ぅぅう……ん……」
まただ。声色からして、女の子が中にいるらしい。
と――黄昏の薄闇に溶け込むように闇色の球が掻き消えて。
後には、うつ伏せに倒れた金髪の少女だけが残った。

2

「ふう…。あー、食べた食べた。お腹いっぱいよ」
一週間分の備蓄をペロリと平らげて、ようやく少女は箸を置いた。
「いやー、ほんとに助かったよ。キミ、ありがとうね」
赤い目を細めて少女は笑う。
小首を傾げる動きに合わせて、赤いリボンが小さく揺れた。
「えっとね、私ルーミア。ちょっと断食してたの」
……断食というと、修行僧がやるアレだろうか。
修行僧以前に異人にしか見えないが、外つ国でも断食をするんだろうか。
「あー、違うの違うの。断食はただの暇潰しなのよ」
それはある意味で修行僧よりすごい気がする。
人里のお寺の関係者が聞いたらどう思うことだろう。
「まあ、それはいいや。ねえ、お風呂ある?」
よく見ればルーミアは泥だらけだ。山道で倒れたんじゃ仕方ないだろう。
ここで放り出すわけにもいかないので、僕は風呂の用意に立った。

3

うちの浴槽は野趣あふれるドラム缶風呂だ。
すぐ裏手の泉から水を引き、そこから汲んだ水を張って、火を起こす。
夜は妖怪が出るから滅多に入らないのだが……
まあ、僕なんかが見張りがでも、いないよりはマシだろう。
「えへへ〜、何から何までありがとね」
湯が沸いたことを告げると、ルーミアは屈託なく笑って。
「よいしょっと。わーい、お風呂お風呂ー」
あろうことか、僕の目の前でぽいぽいと服を脱ぎ捨てていった。
…………。
まずい。非常にまずい。
初めて見た女の子の身体が、目に焼き付いて消えようとしない。
生白い肌、柔らかそうな曲線、色の薄い乳首。そして――
僕は再び頭を振って、壁に掛けられた猟銃を乱暴に掴んで外に出る。

言うまでもなく、見張りには全く集中できなかった。

4

寝台でルーミアが呑気な寝息を立てている。
もちろん僕は眠っていない。眠れるわけがない。
何しろすぐ隣の彼女は、素っ裸で寝ているのだから。
背を丸める。股間が、全く収まらない。
それが何故なのか分からないから、余計に眠れない。
こんなことなら、両親の寝室を物置代わりにするんじゃなかった。
「……んー、どうしたのー?」
もぞりと、ルーミアが身体をこちらに向ける。
何でもないとは言ったが、それは逆に彼女の疑惑を募らせたらしく
「ほら、お話する時は人の顔を見てよー」
肩を引っ掴まれ、とんでもない力でごろりと反転させられる。
「……あ、そういうこと。これじゃ眠れるわけないねー…」
混乱する僕の服を脱がして、固い一物を握り締めるルーミア。
瞬間、未知の痺れが腰の中で弾けて、彼女の肌を白濁液が汚した。

5

「わあ、いっぱい出たね…。もしかして、初めての精通?」
よく分からないが、初めての経験には違いなかった。
汗が、荒い吐息が止まらない。
生まれて初めての過剰な興奮に、身体が異常に熱かった。
「……どうもそうみたいねー。いや、私も経験はないけどさ…」
不意に頬を両手で挟まれ、そのまま彼女の愛らしい顔が近付く。
まるで果物のように瑞々しい唇が、僕の口を塞いだ。
「えへへ……ファーストキスかな?」
僕は頷いた。今ので驚愕が限界を超えて、逆に冷静になったらしい。
「私もだよ…。キスって、こんなに気持ちいいんだねー…」
小さな唇から這い出した熱い舌が、ぬるぬると僕の舌を絡め取る。
「あ、…これ好きぃ…♪ んちゅ、ちゅっ…ちゅる、くちゅ……」
舌を通じて、理性までが舐め取られていくような感覚。
崩れそうな意識とは裏腹に、ちんぽはガチガチに戻っていた。

6

「ねえ、私のも見て…。男の子から見て、どんな感じ…?」
満月の灯りが、ルーミアが自らの両手で広げた部分を照らし出す。
乳首に比べだいぶ紅が差した、生々しい肉の色。
てらてらとぬめった光は、そこが粘膜であろうことを窺わせる。
小さな膨らみ。小さな花びら、そして、小さな穴。
月明かりの作る陰影が、それをより神秘的に見せていた。
「キミのおちんちんをね、この中に挿し込むの…」
彼女の指差した穴はひくひくと蠢いていた。
初めて見る女の子のそこに、僕は興奮するまま彼女にのしかかる。
だが、入らない。何度やってもちんぽの先が穴を捉えられない。
「ん…ほら、ここだよ。そのまま腰を押しつけ――ひゃうっ!?」
亀頭が全部入ると同時に、全身にさっきの感覚が走り抜け、再び暴発する。
入口が締まる。中が蠢く。精を搾り、吸い出すように。

そして僕は、生まれて初めて失神した。


11/07/18(月)22:46:33

1

猟銃と罠で獲った獣を、人里で売って生計を得る。
僕の父も、祖父も、そのまた祖父も、そうやって暮らしてきた。
その例に漏れることなく、僕もそうして生きている。
ただ、ひとつ違う点があるとすれば――
「ねえねえ、お肉買おうってばー。お肉食べなきゃ力が出ないよー」
どういうわけか妖怪の少女と暮らしていることだった。
里の出口に来てまで駄々をこね続けるこの少女は、名をルーミアという。
異人の少女に見えるが、れっきとした妖怪らしい。
「ねえってばー、そんな氷ばっかり買ったって腹持ちしないよ?」
数えで十にも満たない僕と外見年齢はあまり変わらない。
力の弱い妖怪なのか、単に幼いだけなのかもしれない。
「え、お肉はたくさん保存してあるの? やったー!」
両手を上げて大喜びするルーミア。
どうやら当分うちを出ていくつもりはなさそうだった。

2

「ねえ、ちょっとそれ貸して」
里を出てすぐ、ルーミアはこちらに手を差し出してきた。
不思議に思いながらも氷の詰まった籠を手渡すと
「よいしょっとー」
あっという間に自らを闇色の球に包み込む。まるで魔法だった。
「この中は涼しいんだよー。だからしばらく氷が溶ける心配なーし!」
……なるほど。どうやら気を遣ってくれたらしい。
素直に礼を言うと、一瞬彼女の声がしなくなり
「え……えへ、えへへ……うぇへへへへへぇ〜……」
球の中から、聞いている方の腰が砕けそうな、奇怪な笑い声が漏れてきた。
顔も何も見えないが……ひょっとして照れ笑いだろうか。
「そ、そーなのかー…。あ、この中って何も見えないのよ。だから……はい」
闇の中から差し出された手を引いて、昼なお暗い山道を歩く。
たったそれだけのことなのに、僕の胸は今にも爆発しそうだった。

3

帰宅してすぐ、今朝獲った獲物と、買ったばかりの氷を氷室に詰め込む。
床下の小さな洞穴は、去年しこたま降った雪と保存食でいっぱいだ。
「なにこれー……天国?」
ありあまる食欲にルーミアが瞳をキラキラさせている。
僕は必死で腹八分目と、山野に生きる命の尊さを説いた。
たった一人の食べ過ぎが、やがては生態系の崩壊を引き起こす。
僕ら猟師はそれをよく知っているから、不要な食事は決してしないのだ。
「……。なるほどなー…」
たっぷり一刻はかけて説明したが、反応はこの程度だった。
妖怪だからか、根が食いしん坊だからか、どうにも理解が及ばないらしい。
「ねえ、そんなことより暑いよー。近くに川とかないのー?」
裏手に少し歩くと、ここの飲み水をまかなっている泉がある。
「じゃ、そこで水浴びしよ! 早く、早く、早く!」
手を引かれ、僕は反応する間もなく小屋から引きずり出された。

4

身の丈四尺ほどの僕でも肩までしか浸かれないほど、この泉は浅い。
それでもルーミアは大満足だったようで、無邪気に泳いでいる。
「ねえ、キミも泳ごうよー! ひゃっこくて気持ちいいよー?」
そうは言っても、ここは獣たちの水飲み場でもある。
危険が否めない以上、僕まで水遊びに興じるわけにはいかない。
とりあえず上は脱いだし、素足を水に浸すだけで充分だ。
「昨夜もそんなこと言ってたよね? もー、堅いんだからー」
正面まで泳いできたルーミアが、そのまま水から上がってくる。
零れ落ちる雫が、真っ白な肌が、きらきらと目に眩しい。
「えいっ! 冷たさおすそわけー!!」
首に抱きつかれ、勢いでそのまま押し倒される。
「えへへ……あったかいね……」
泉の水に冷やされた彼女の柔肌はひんやりとして、程よく僕の体温を奪う。
そう、股間のごくごく一部を覗いて――。

5

しばらくは何もせず抱き合っていたが、僕の股間の自己主張に気付くと
「うふ…おなかだけ、熱ぅい……」
幼児体型丸出しのぷっくりとした下腹を、わざとらしく擦りつけてきた。
ひんやりして、ぷにぷにして、すべすべして。
ただでさえ刺激に弱いちんぽは、早くも熱い精を吐き出そうと震えて
「あ、もう出る? んじゃ……はむっ!」
そこに吸いつかれた瞬間、彼女の口内で爆発的な射精に導かれた。
舌が、頬の肉が、全体を包む。喉の奥が精を搾るように蠢く。
――ああ、飲まれている。
全身の感覚が射精の快感に塗り潰される感覚に、僕はただ震え、喘いだ。
「ん…。苦くて、塩辛くて、ほんのり甘いね…。これ、結構スキかも…」
朱色の差した頬、ぼんやりと焦点の定まらない大きな瞳。
「これがお腹いっぱい飲めたら、腹八分目でもいいかもね……♪」
そしてルーミアは、文字通りお腹で飲むべく、倒れたままの僕に跨った。

6

「んぁっ…! ふ、深い……昨日より…奥まで届いてるぅ……」
ルーミアの中は熱くて狭くてぬるぬるで、吸いつきながらうねっている。
今日はいきなり射精せずに済んだが、それも時間の問題だった。
「じゃ、じゃあ動くね……ひゃんっ!」
少し腰が動いた瞬間、あらゆる方向から締め付けられた。
きゅっきゅっと中がわななき、僕は手もなく精を搾り取られていく。
「あ…はぁぁ……軽く…イッちゃった……♪」
震える手と膝で身体を支えられなくなり、僕に倒れかかってくる。
暑さも熱さもすっかり忘れて、僕はそのまま腰を動かした。
「あんっ! ま、まだ出来るの…? ひあっ! あ、ふぁっ!」
……何となく分かってきた。どう動いて、どう突くのが正しいのか。
たぶん、気持ちよくなったら、その動きが正解なのだ。
「ああ……でてる…いっぱい……。中に出されて…また、イくぅ……っ♪」
口付けて、舌を絡め取りながら、僕達は泉のほとりで何度も果てた。

11/07/22(金)21:40:07

1

ルーミアの食欲は、相変わらず凄まじい。
人間に換算するなら、一食あたり成人男性5人分というところだろうか。
備蓄を徐々に消費して生きる僕ら猟師にとっては、天敵とも言うべき食欲だ。
このままでは食費がかさむ一方なので、僕は小遣い稼ぎを画策した。
「ふーん、草刈りをすればいいの? 別にいいよー」
草刈りではなく山菜の採取なのだが、まあ細かいことはいいだろう。
せっかく快諾してくれたのだから水を差すこともない。
――そんな経緯があって、僕らは小屋よりもう少し奥まった山中にいる。
時刻は早朝。東の空が少しばかり白んでいる時分だ。
まずウド、わらび、ぜんまいあたりが狙い目だと教えてやる。
せっかくなので、キノコや果物なんかも採ることにして。
「よーし、がんばろー!」
妙にやる気のルーミアに一抹の不安を覚えつつ、山菜採りを開始する。
昇り始めた太陽は、今日も無遠慮に燃えていた。

2

結論から言うと、山の幸は文字通り山ほど採れた。
――これを里で売れば、美味しい物もいっぱい買えるようになる。
途中でそう教えたのが幸いしたのだろう。
普段おっとりとしたルーミアが、俄然張り切ってくれたのだ。
彼女は力持ちだし、何より闇の中で収穫物を保存できる。
品質を保ったままだったから、若干色をつけて買い取ってもらえたのだ。
運のいいことに罠に大きなイノシシも掛かっていて、儲けも増えた。
……ただ、まるっきり楽チンだったわけでもない。

時間にして半日ほど遡る。
昼時を前にして、僕らはすでに抱えきれないほどの収穫を得ていた。
森の中とはいえ夏の昼だ。すっかりバテていた僕を
「ねー、キミも入らないー? すっごく涼しいよー」
返事すら聞かず、ルーミアが闇の玉へと引っ張り込んだ。

3

……暗い。いや、むしろ黒い。
目玉に墨を塗られたのではと錯覚せんばかりの、まるで冗談のような闇の中。
「ほらねー? 涼しいでしょー」
誇らしげなルーミアの声が、心臓が止まりそうなほど近くから聞こえた。
僕の片手を握る、小さく柔らかな手。
横向きに伏した身体で感じる、固く踏み締められた土。
このふたつの感触がなくなったら、僕はとうに恐怖で発狂しているだろう。
「えへへー、わかってるじゃない」
ぎゅ、と抱きつかれる感触。頬に吐息がかかる。
それだけの至近距離にあって、彼女の輪郭さえ見えない。
「だいじょぶだよー。私にも見えてないから」
なるほど、それで山道では僕に手を引かせていたのか。
「でも、こうしてくっついてれば安心……だよね?」
全身をすり寄せてくる彼女は、すでに服を着ていなかった。

4

「んちゅっ、ちゅる…くちゅ、ちゅ……」
唇を重ね、舌を絡めて、なおも彼女の顔は見えない。
真の闇に恐怖する一方で、いつもより大きな快楽に蕩けそうな僕がいた。
「えへへ…。何も見えないと、色々と敏感になるよねー…」
上着をはだけられ、乳首をまさぐられる。
柔らかな指で挟まれ、くりくりとこね回され、思わず甘い吐息が漏れる。
「わぁ…えっちな声……。もっと聞きたいなぁ…」
反対側の乳首に、ぬめった感触。
生温かい舌が、乳輪をなぞり這い回る。
ぷりぷりとした唇が、固く尖った乳首に吸いつき、幾度もついばむ。
甘く痺れるような快感が、胸から腰を、頭の中を犯していく。
「んー、そろそろかな? よいしょっと…」
下履きを脱がされる感覚。
次の瞬間、勃起しきったちんぽが強く吸われ、そのまま僕は射精した。

5

「ん、おいし……。これ、血の味に似てるんだよね…」
背筋の凍るようなことを言いながら、ルーミアは僕の手を引いた。
立ち上がらされ、それから再び抱きつかれる。
「ねえ、もっとちゅーしよ……♪ ちゅ、ん、むちゅ、ちゅる……」
驚いたことに、彼女はちんぽを扱きながら舌を絡めてくる。
接吻の感触も精液の味も、すっかり気に入ってしまったようだ。
僕も手探りで彼女の肌を撫で回す。
「んふ、あ、ぅふ……。触られたとこ、じんじんして…気持ちいい…」
固く尖った乳首に触れる。人差し指で撫で、中指で弾く。
次第に抱きつく腕の力が弱まるのを感じながら、彼女の秘部に触れた。
「ひぁ…。あ、あ、んぁ、ふぁぁ……」
生温かい粘膜が、肉襞が、ずぶずぶと中指を呑み込んでいく。
「あ……ダメ、そっちは…おちんちんじゃなきゃ……あんっ♪」
膣内が締めつけてくる。僕は指を抜き、彼女の望み通りにした。

6

「あ、あぁん、ひぁ……なかで、あばれてるよぉ……」
僕が腰を振るたびに、間近でルーミアが甘い声を漏らす。
相変わらず、一寸先も見えないのに。
彼女がどんな顔をしているのかと思うと、それだけで腰が止まらない。
「早く飲ませて……私のおなか、いっぱいにしてぇ……」
手を繋ぐ。指が絡みつく。
唇を奪う。舌が絡みつく。
腰を振る。襞が絡みつく。
どこもかしこも絡み合って、僕達はお互いに高まり合っていく。
せがむような膣のうねりに誘われて、射精しながら奥へ、また奥へと。
「ふぁあ……もうダメ、ダメぇ……あああぁ、ぁぁあああああああ…っ♪」
通算七度目の膣内射精にして、彼女はようやく満腹になってくれた。
――そのまま、手を繋いだまま、身を繋げたまま、ひとときの眠りに落ちる。
闇は、もうそれほど怖くはなくなっていた。

11/07/23(土)11:41:29

1

僕とルーミアは今、山を降りて人里まで来ている。
最初は緊張したものだが、今は僕も安心して彼女と歩けるようになった。
人間と妖怪の共存を呼び掛ける人々に感謝しつつ、まず肉屋を覗く。
「あ、あれ牛の肉だってー! おいしそー!」
嬉しさと物珍しさで、ルーミアは赤い瞳をキラキラと輝かせている。
我が家に備蓄されているのは鹿や兎や猪などで、家畜は置いていないのだ。
「ね、ね! 買おうよ! あのでっかいお肉の塊! ねえってばー!」
だが、それは大人でもひと抱えもあるような肉の塊だ。
保存の心配はともかく、荷物になって他の買い物がしづらくなるだろう。
それに、とにもかくにも牛肉は高い。大きな塊なら尚更だ。
買えないことはないが、他の献立が質素になるのは明白だろう。
どうにか説得できないものか考えていると、不意に横から袖を引かれる。
「………だめ……?」
……。その汚れなく潤んだ瞳に、僕は早々に屈した。

2

手持ちの七割を犠牲にした買い物に、ルーミアはたいそうご満悦だった。
肉塊を闇色の球にすっぽり包み、頭の上に載せて、鼻唄なんて唄っている。
……これから肉屋は最後に寄ろう。
そう思いつつも、悪い気はしていなかった。
里の畑で採れた野菜と牛乳、ついでに砥石を購入して、買い物は恙無く終了。
山道に戻る前に、茶屋に立ち寄って冷たいものを飲むことにした。
「くーっ、生き返るー!」
アイスミルクを一気飲みして、オヤジ臭いことを言うルーミア。
僕は母親似なのか酒に滅法弱いので、こういう真似はできない。
もちろん、公共の場だからという意味でも不可能だ。
もう少しゆっくりしてもいいが、あまり長居すると帰りが夜になってしまう。
半分ほど残ったアイスティーを飲み干し、早々に勘定を済ませ店を出ると
「こっち」
店のすぐ横の路地裏に、何の前触れもなく引っ張り込まれた。

3

昼過ぎにもかかわらず路地は薄暗かった。
そして、大人ならば入れそうもないほどに狭い。
「……お腹すいた」
いつになく真剣な表情で、ルーミアはそう言った。
帰ったらお腹いっぱい食べられるからと説得しても、聞く耳を持たない。
「実はね、小さい闇を作るのって、大きな闇よりずっと疲れるの…」
大味な動作より精密な動作の方が神経を使う、ということだろうか。
確かに人里で大きな闇など出しては、何らかの問題になりかねない。
当然その責任は、連れであり人間である僕に回ってくるだろう。
――脳天気ながら、彼女は彼女なりに、僕を気遣っていてくれたのだ。
「うん…。だから、ね…? お願い、もう我慢できないの……」
しなだれかかってきたかと思いきや、そのまま下履きをずり下ろされる。
「里を出るまで持たせる分、補給できればいいから…ね……?」
熱く濡れた舌先が、鈴口を這ったその瞬間、外の喧騒が遠のいた。

4

狭苦しい路地裏に、卑猥な水音が響いては消えていく。
僕は壁に背を預けたまま、完全にルーミアのいいようにしゃぶられていた。
「びちゅ、ちゅる、ちゅ…くちゅ、れる……」
屹立した肉棒を、柔らかな舌が何度も何度も行き来する。
右側面を、左側面を。そして、思い出したように裏筋を舐め上げる。
そのたびに甘く鋭い刺激が、僕のちんぽを射精のことしか考えられなくする。
気持ちいい。気持ちいい。ちんぽが腰ごと溶けそうだ。
まるで飴か氷のように、彼女の口の中でちんぽがとろける様を僕は幻視する。
それは初夏の熱気が見せた幻影か。
それとも彼女のもたらす快楽が見せた幻想か。
「んふ…ビクビクしてきたね。先っぽなんて、こんなに固くなって…」
ルーミアは不意に立ち上がると、僕に背を向け、スカートを捲り上げ
「それじゃ、ちょうだい…♪」
下着をずり下ろし、片手を壁につくと、空いた手の指で秘裂を拡げた。

5

丸みの控えめなルーミアのお尻を、腰からがっちり両手で掴む。
「ん…もうちょっと下……そう、そこ。そのまま……ん、ふぁぁ……♪」
ぬるぬると蠢く肉壺の中へ、ちんぽが吸い込まれていく。
中は夏の日差しより熱く、蜂蜜よりも甘く蕩けていた。
「ん、ふぁ、んふ、ぁふ……すごい…いつもと違うとこ…こすれてる……」
ルーミアはスカートの裾を口に咥えているが、それでも声は漏れてくる。
言っている通り、いつもと違う刺激がそうさせているのだろう。
「――んんっ!?」
ふと、亀頭の先に固いものが当たり、同時に彼女の背が強張った。
驚いて腰を止める。中が不規則に、無秩序に、何度も何度も締めてくる。
「……はぁ…はぁ……っ。奥に当たるの、凄すぎぃ……♪」
…強い快感で声が詰まっただけのようだった。僕は安心して抽送を再開する。
「ひぁあっ! ダメ、ダメぇっ! ま…まだイッてるのぉ……ひぁあっ!」
彼女の二度目の絶頂に誘われて、僕は奥に当てながら思いっきり射精した。

6

すでに陽が沈みつつある山道を、ルーミアと手を繋ぎ歩く。
小屋まではまだまだ遠い。到着は夜半になるだろう。
「いやー、慧音先生は強敵だったねー…」
あの路地を出た直後、寺子屋の先生をしている女性に見つかった。
ルーミアは顔見知りだったらしく、巻き込まれる形で僕も散々絞られた。
「でも、納得はしてくれたよー。あの先生、性教育には力を入れてるし」
聞けば、ルーミアは何度かあの先生の授業を覗いたことがあるらしい。
何でも実戦で性行為を学ぶという、斬新かつ風紀紊乱な授業だそうだ。
「だから、やり方だけは知ってたんだー」
僕は理解した。初めての夜、初めての行為の時の、彼女の性知識の出所を。
「興味はあったけど、試す相手がいなくてねー。私、性欲より食欲だし」
……今、真剣に背筋が凍ったが、意地でも気にしないことにする。
「けど……今は性欲優先かも。キミのせいかな。私、えっちになっちゃった」
指先が絡む。その手を離さないように、僕らは薄暗い山路を急いだ。

11/07/31(日)02:47:32

1

猟師の一日は、朝日が出るより早く始まる。
刃物と罠と猟銃の手入れ。冷やしておいた肉の解体し、朝食の下ごしらえ。
朝日が出たら、前日に仕掛けた罠の点検。獲物を回収して解体。
売りに出す肉と皮の用意が出来たら、朝食を仕上げる。
「ほわぁ〜ぁ…。おはよー…」
最後に同居人ことルーミアを起こせば、朝の仕事はひと段落だ。
それにしても、全裸で寝るのだけはどうにか――…ん?
「んー…どしたの…? 私のおまたに何かついて……る…?」
寝ぼけ眼をこすり、僕の視線を追って顔を下に向けて
「………やだ…なにこれ……」
ぷにぷにの割れ目、その少し上から、僕としては見慣れたモノが生えている。
外見相応の――つまり僕のと同じくらいの、小さな小さな肉の若芽。

その朝は、実に静かな混乱とともに幕を開けた。

2

日課の商売のため人里まで行くのは、やむを得ず中止となった。
こんな意味のわからない事態では仕方ないだろう。
「なんでー…? 私、女の子なのに……」
普段はほんわかと呑気なルーミアも、さすがに落胆を禁じ得ないらしい。
べそをかいている間、ずっと隣にいてあげた。
「……。ねえ、ちょっと触ってみてくれない?」
泣き腫らした彼女の目は、極めて真剣だった。
「自分で触るの怖いし……男の子なら、異常があれば見つけられるかも」
なるほど、一理ある。餅は餅屋というやつだろう。
「ぁん……っ」
包皮の上から茎をつまむと、彼女の口から甘やかな吐息が漏れた。
一応、ちんぽ以外の何かという可能性も疑ってみたが、それはなさそうだ。
「ど、どうしてわかるの……?」
つまんだ指で揉むにつれ、徐々に固く……勃起をしてきているからだった。

3

「…痛ッ!!」
しばらく揉み込んでいると、不意にルーミアが短い叫び声を上げた。
包皮の中で膨張したちんぽが、内側から皮を剥こうとしているのだろう。
肉体的には人間よりずっと強い妖怪がこれだけ痛がるのだ。
早く何とか――とはいえ、手元には何もないし、何かを持ってくる暇もない。
鋭利な痛みを訴え続けるルーミアにごめん、とひと声かけて
「ひゃんっ!」
目を固く閉じて、ペニスを口に含んだ。
巾着のように固く閉じた皮に、唾液を絡めた舌を挿し、ゆっくりと舐め回す。
「ふぁ…。なに…何これ……やだ、すごい、何これ……ひあぁっ!!」
皮が剥け、そのままの勢いで亀頭を舐めた瞬間、口内で凄まじい熱が爆ぜた。
「ああっ…まだ出る……。すごい…すごいよぉ……」
射精の余韻で、口の中でちんぽが何度も跳ね回る。
固いままのちんぽを引き抜かれると、僕の口から大量の精子が溢れて落ちた。

4

「今のが射精…。これをおまんこの中でするんだね…」
うっとりと虚空を見上げるルーミア。膣内射精の感触を夢想しているのか。
しかし、残念ながら僕に女性器はないので実現させてはやれないのだ。
――そう言おうとして、ふと口をつぐむ。
もし、ここで僕が彼女を見放したら、彼女は里に出て人を襲うかもしれない。
二重の意味で、人を食べてしまうかもしれない。
だから僕は、僕の中に出せばいいと、そう口走ってしまった。
「へ? でも、キミにはおまんこが……って、もしかして…お尻の穴?」
さすが寺子屋を覗いていただけあって、知識は一応あるようだった。
「でも、入るのかな? そりゃちっちゃいけど…」
これより太いものが毎日出ているのだから、入らない道理はないだろう。
ただ、いきなりは無理だろう。何とかして菊座をほぐさねばなるまい。
「何とかねー…。とりあえず、今のと同じようにやってみる?」
ひとまず裏手の泉に赴き、丹念に体を洗うことになった。

5

身を清めた僕らは、寝台に横向きに臥せ、互いの尻を舐め合うことになった。
ペニスとはまるで異質な快感に、何度も何度も腰をよじる。
腰から背筋を串刺しにするような快感が、何度でも僕を喘がせた。
「ちゅぷ、ぴちゅ、ちゅ……。ふぁ……おしりの穴、じんじんするよぉ……」
排泄器官を舐められる倒錯的な快楽に、可愛らしく身悶えるルーミア。
見れば割れ目はすっかり蕩けて、真っ赤になってひくひくしている。
――僕の穴も今、こんな風になっているのか。
そう思うと、もっと彼女の穴もいやらしくなってくれなければ不公平だ。
「きゃんっ!? だ、だめ……おまんこ指挿れながら…お尻なめないで……」
小さなお尻が大きく痙攣し始める。お互い、すでに射精寸前のようだ。
「だめ、もう……。お願い、おちんちんもイかせてぇ……ふゃぁっ!!」
彼女がちんぽとお尻とおまんこで、いっぺんに絶頂する瞬間。
とろとろにふやけていた僕の穴に、彼女の指が乱暴に押し入って。
お尻を開通させ合いながら、僕達は嬌声を上げて射精した。

6

――結局、その後ルーミアは元通りになっていた。
あれが何だったのか。学のない僕がいくら考えても答えは出ないだろう。
実際、入浴中にずっと考えたが答えは出せなかったのだ。
「うーん、やっぱりいつものが一番しっくりくるねー」
先に入浴したにもかかわらず、ルーミアはやはり全裸だった。
台詞とは裏腹に声色が残念そうだ。やはり最後までしたかったのか。
「まあねー……でも、また次に生えた時でいーや」
原因さえ分からないのに、また次があるとは思いたくなかった。
「でもさ…気持ちよかったね、おしりの穴」
否定したいが、あれだけ派手にイかされたのでは何も言えない。
実際、風呂上がりの今も尻が疼いている。癖になってしまったんだろうか。
「…また、時々お尻でしようね」
袖を引かれ、小さくそう耳打ちされて。
ぞわりと、お尻から背筋が歓喜に震えていた。

11/08/07(日)01:52:41

1

雨の降る早朝、僕は薄闇の天井を眺めていた。
屋根を叩く雨足は速い。今日は里にはもちろん、猟にも出られないだろう。
「むにゃむにゃ……もう食べられないよ…」
隣では、例によって全裸のルーミアが間の抜けた寝息を立てている。
居候の癖に掛け布団を独占しておいて、何ともいい気なものだ。
――たまには、仕返ししてもいいんじゃないか?
何の前触れもなく、僕の耳元で何かが囁いた。
そうだ。獣を捕獲し、捌いて、保存するまでには大変な手間暇がかかるのだ。
それに彼女の膨大な食費を考えれば、少し懲らしめてもいいくらいだ。
さて、どうしてくれよう――。
そう思った時、ルーミアが派手に寝返りを打ち、仰向けになった。
掛け布団を蹴飛ばしたので、色々と丸見えになる。
……少しくらいならいいだろう。僕にはその権利がある。そうに違いない。
僕はそう決めると彼女の腰の下に枕を差し込み、その股間に顔を埋めた。

2

毎晩交わっている割に、ルーミアの秘唇は綺麗な色をしている。
桃色がかった肌色はうっすらと濡れ、暁の光をてらてらと弾いていた。
「ん……」
そっと指で触れると、ぬるりとした感触とともに、指先に温もりが伝わる。
肌よりも少しだけ熱い、粘膜独特のしっとりとした温かさだ。
口に含む。……酸っぱいような苦いような、甘いような。
どんな果物とも違う味だ。僕はもっと確かめたくて、じかに口をつけた。
「んふっ……」
ぴくりと脚の付け根が震えた。構わず舐め上げる。
なるべく音を立てないよう、慎重に、繊細に、ゆっくりと、じっくりと。
秘芯は次第に水気を増していく。それは僕の唾液か、はたまた彼女の愛液か。
「……っ、ん…。ん…んっ、くぅ、ん……っ」
反射的に顔を上げる。頬がうっすら上気しているが、目を開ける様子はない。
そっと指先を埋没させると、ぴくりと、少しだけ腰が跳ねた。

3

早朝の寝室に、くちゅくちゅと淫猥な水音が響いては、雨の音に消えていく。
挿れて、抜いて、挿れて、抜いて。
中で指を曲げ、指の腹で肉襞をなぞり、めくって、擦り上げる。
「ん…っ! んぅ……、ふっ、ん……っ」
寝息が艶を帯びて、それでもルーミアは目を開けない。
タヌキ寝入りを疑った僕は、試しに指を挿入したまま乳首を舐めてやる。
「んんっ! ん、ん……んふぅっ!」
薄桃色の乳輪を舌でなぞっていると、すぐに乳首がぴこりと勃った。
舌先で押したり、弾いたり、甘く噛んで。
「ん……んん―――ッ!!」
不意に締め付けが強くなり、同時に背中が弓なりにそり返る。
大きな痙攣があって、小さな痙攣がさざ波のように指に絡みついてくる。
そして、しばらくが経過し。
「ふぁ……おはよ…」
彼女は僕の指を呑み込んだまま、寝ぼけ眼を細めて笑った。

4

「おしおき? 今のが?」
ルーミアは赤い目を丸くして小首を傾げた。
お仕置きというか仕返しというか、とにかく懲らしめようとしたのだが。
「なーんだ。ついにキミから夜這いをかけてきたって期待してたのにー」
僕の思惑は盛大に外れた上、今のはやはり狸寝入りだったようだ。
「私はタヌキじゃないよー……あっ、今夜はタヌキ汁がいいなー」
ここいらでは狸はあまり獲れない。少なくとも罠にかかったことはない。
何しろ幻想郷の狸だ。人間様の罠を見破っても何ら不思議はない。
「あ、どうしよ。タヌキのお話してたらお腹空いてきちゃったよ…」
その感覚は分からないでもない。食べ物の話をするとお腹が空くのだ。
しかし、まだ朝食の用意すらしていない。猟のない日なんてそんなものだ。
ルーミアは物凄く不服そうに頬を膨らませたが、すぐに僕を押し倒すと
「じゃあ、代わりにこっちをいただくね……♪」
すっかり柔らかくほぐれた秘肉に、勃起したままのちんぽを咥え込んだ。

5

さっき指を挿れていた時に、ひとつ分かったことがある。
女の子の中が締めつけてくる時、締めた分だけ女の子も気持ちいいのだと。
内壁を押すと感じるということは、圧迫や拡張が快感に繋がるということだ。
「ひゃんっ!! す、ごい……なか、ごりごりって……ひぁあっ!!」
元々狭いせいか、内壁を突くたびにルーミアが甘く短く鋭く喘ぐ。
僕の方も、突く度に肉襞が複雑に擦れ、絡み、吸いついて、実に気持ちいい。
ただでさえぬるぬるして気持ちいいのに、快楽が何十倍にも膨れ上がる。
「あ、待って……お口に飲ませて……」
ちんぽの脈動を感じ取ったのか、ルーミアは素早く体勢を入れ替えた。
射精寸前のちんぽを思いっきり吸われ、堪らず大量に噴出する。
「んく…ごくっ…。えへへ…まだまだだよ。全然飲み足りない……」
真っ赤な陰茎を握ったまま、僕の目の前でお尻をふりふりしてみせる。
「えへへ…また固くなってきたね。次は奥の方も可愛がって…ね?」
――食いしん坊の彼女を満足させるのに、僕は半日以上を費やした。

6

「結局は鹿の刺身かー。いや、これも大好きだけどね」
他には麦飯となめこの味噌汁、山菜のおひたし。朝食だしこんなものだろう。
もっとも、時刻で言えばとうに正午を過ぎているわけだが。
「うん、お腹いっぱい。ごちそうさまー」
ルーミアはどんぶり三杯で手を合わせると、その場にごろりと寝転がった。
「あー、しやわせー。やっぱり美味しいもの食べるといい気持ちねー」
分からなくもないが、いくら幸せでも食べてすぐ寝ては健康に悪い。
「私もお料理、覚えようかな。いつも生肉まるかじりじゃ飽きちゃうしねー」
……。何の生肉なのかは、たぶん聞かぬが花だろう。
僕は気になる部分をあえて流し、僕でよければ教えようかと申し出た。
「ほんと!? じゃあ、これから毎日おいしいお肉が食べ放題!?」
生憎と人間社会はそんなに甘くない…のだが、彼女には関係ない理屈だろう。
「じゃあ、今夜は私が作るね! とりあえず丸焼きにすればいいかな?」
備蓄を焼き尽くされる前に、僕は前言を撤回したのだった。

11/08/14(日)22:56:59

1

「はい、いっちょあがりー」
ヒグマ一頭を完全に捌き終えると、ルーミアは返り血だらけの顔で微笑む。
毛皮を剥ぎ、はらわたを覗き、肉を削いで、骨を外す――
俗に解体と呼ばれる作業に彼女が着手するようになって、一週間が経っていた。
「いやあ、時間はかかったけど、今日のは綺麗にさばけたよー」
僕なんて未だに血の臭いにさえ慣れないのに、彼女は鼻唄まじりに獣を捌く。
しかも刃物を一切使わず、素手で。…さすが妖怪と言うべきなのだろうか。
「えへへ、そんなに褒められると照れちゃうよー」
褒めてはいないが、説明するのも面倒だったので、頭を撫でてやるに留める。
「えへへ…。ねえねえ、何かご褒美が欲しいなぁ〜、なんて…」
上目遣いに袖を引かれる。そう来ると思って、すでに風呂を沸かしてあった。
獣の血は臭いが落ちないので、なるべく早く落とさねばならないのだ。
「やたー! それじゃ、一緒に入ろっ!」
夕飯の支度をしていた僕は、襟首を掴まれ、一瞬で裏庭に投げ出された。

2

人里で購入する必需品に、石鹸と洗髪料がある。
材料はよく知らないが、とにかくいい匂いがするので買うようになった。
もちろん使うのは、もっぱらルーミアだ。
「えへへ、あわあわ〜」
リボンをつけたまま全身を泡まみれにして遊ぶルーミア。
普通は洗髪の際に外すと思うのだが、そこを何度訊ねても彼女はぽかんとして
「そーなのかー」
としか言わないので、僕も突っ込んだことを訊くのはやめにした。
「ほら、キミもおいでよ。私が洗ったげるからさー」
泡の塊から手先が生えて、ちょいちょいと手招きしてくる。
…僕にはわかる。あの笑顔は、絶対に何かを企んでいる笑顔だ。
断ったら後で面倒なことになりそうなので、おとなしく湯船を出てやると
「そいやあ!」
抱きつかれた。というより飛びかかられ、そのまま押し倒された。

3

「うりゃっ!」
腋の下に両腕を通され、がっちりと抱きつかれる。
少しひんやりとしたぷにぷにの肌が、石鹸の泡でぬるぬると滑る。
「きゃははっ! 何これ、ぬるぬるー♪ くすぐったーい♪」
確かにくすぐったい。全身が隠れるほど大量の泡だ。潤滑性も凄まじい。
「えへへ、こうすればきっと二人ともきれいになるよー」
彼女としては石鹸を節約したつもりなんだろう。僕は苦笑いしかできない。
――と、その時ふとルーミアの様子がおかしいことに気付いた。
「……ん、ふっ……あ…ふぁあ……」
こすれている柔らかな感触の中に、一対のしこりが感じられるようになる。
それが何かを理解した僕は、下から彼女の首に両腕を回して捕獲した。
「ひゃん!! あ、だめ…あたっちゃう…おっぱい気持ちよくなっちゃう…」
そう言いながらもルーミアは腕を離そうとはしない。
むしろ強く抱きしめてきたので、僕も答えるように抱き返し、唇を重ねた。

4

にゅるにゅると舌が絡むたび、頭の中が霞んでくる。
くすぐったさと似て非なるその感覚は、舌から脳を犯して壊すかのようだ。
白くぼやけた視界には、蕩けた表情で僕の舌を貪るルーミア。
ほんのり紅い頬は唾液に塗れ、その唾液からはわずかな血の臭いがした。
「えへ、ちょびっとだけ、つまみ食いしちゃった。ごめん……にゃあっ!?」
僕は彼女の尻を両手で割り開くと、小さなすぼまりに指を押し当てた。
「だ、だめっ! そこ、いきなりは――ふぁああっ!」
泡のぬかるみを絡めた指先は、容易にその穴に沈み込む。
もっとも、これはお仕置きなので、泡なしでも挿入するつもりだったが。
「ふっ……あ…あ、あ、あ…ああ……ひぁぁぁぁ……♪」
抽送のたびに暴れていたルーミアの腰が、次第に妖艶な動きを始める。
僕にしがみついたまま、菊座をなぶられるまま、小さなお尻をくねらせて。
「お願い……もっと強くしてぇ……」
そう囁かれた瞬間、僕の頭で何かが弾けた。

5

「あぁぁ……はいってる…はいってきてるぅ……」
四つん這いにさせたルーミアに、後ろから挿入する。
この体位は何度か経験があるものの、お尻の穴に挿入するのは初めてだった。
「ふぅぅ…♪ あ、あああ、はぁあああああ〜…♪」
膣の時とは明らかに喘ぎ声の質が違う。
まるでケシの実でもかじったかのような、過剰な快楽によるものだ。
「らっへぇ…気持ひいぃんらもん……ひぁっ♪」
確かに気持ちいい。特に入口の締まり具合など、まるで手で握るかのようだ。
呂律にまで影響するほどの快感とは、一体いかばかりのものだろう。
熱く湿った腸内はうねうねと蠢動して、精を欲しているようにさえ思えた。
「うん…いいよ……らして…わらひのおしりで抜いへぇ……ふぁあっ♪」
括約筋と海綿体が溶けて混ざるような熱が、彼女の腸内で弾け飛ぶ。
「うぁぁ……でてる…熱いの……おなか、熱くて……しあわせだよぅ……♪」
限界まで背をのけぞらせると、そのままどさりとルーミアは崩れ落ちた。

6

「しゅ…しゅごかったぁ……」
ようやく元通りの滑舌を取り戻してきたルーミアが、肩で息をしながら呟く。
妖怪が肩で息をするくらいだから、僕などは疲労困憊で指一本動かせない。
「ああ、キミも疲れたよね…。よいしょ…っと」
僕が動けないことを察したのか、彼女は僕をドラム缶の風呂に投げ入れた。
ありがたいことに頭から沈むようなことはなく、僕は大きく息を吐く。
「おじゃましまーす♪」
そして、そこに無理矢理乱入するルーミア。缶の中で僕達は密着する。
「うふふ…勃ってるよ」
これだけ疲れているのに、体は正直なものだった。
「晩ご飯食べたら、またいっぱいしようね」
ちゅ、と唇を重ねられる。
少し舌でつつくと、彼女も舌先で応え、やがて舌は際限なく絡み合い。
結局、僕らは仲良くのぼせるまで口付けを続けたのだった。

11/08/21(日)00:43:22

1

じき夏も終わろうという頃になって、僕は風邪をひいた。
夏に汗をかくのは当然だし、昼間の暑さが室内に篭ってでもいるに違いない――
そんな風に気楽に構えていた僕は、買い出しの帰り道で倒れたのだった。
「ねえ、大丈夫…?」
枕元のルーミアが沈痛な面持ちで、本日30回目の同じ質問をする。
今日で三日目。濡らした手拭いを取り替える手つきもすっかり慣れたものだ。
「うう…おでこ、まだ熱いよ…。お薬、ちゃんと効いてるの…?」
ここに常備されている薬は、この山に自生する薬草を煎じた物だ。
昔から使っていたし、使えば必ず効いた。だから、効いていないはずはない。
――大丈夫、必ず治る。
僕は本日30回目の気休めを言って、どうにか笑って見せる。
「もう…。人間なんて弱っちぃんだから、そんなに無理しないでよ…」
今にも泣きそうな顔で、ルーミアは僕の手を取る。
ひやりとした掌は、手拭いの絞り過ぎで少しばかり荒れていた。

2

「熱…下がらないね……」
夕飯に茶漬けを食べてから、かなり経つ。窓の外の空は暗い。月がないのだ。
ルーミアはここ三日ほど寝ていなかった。目元の黒ずんだ隈が何とも痛ましい。
「私に感染ってくれればいいのに…。そしたら簡単に治るのに…」
人間の病気は妖怪に感染らない。それは有名な話だった。
彼女もそれを知っているのだろう。だから、こんなにも哀切な顔なのだ。
「ごめんね……せめて、私が何か精の付くものでも作ってあげられれば…」
元来うちに医者にかかる金はない。だから病気は自己回復力と薬草任せになる。
一応、薬膳の調理方法も伝わっているが、料理のできない彼女には荷が重い。
「………。ん? 精の付く…? 精……精ねぇ……」
……。何だろう。よく分からないが、猛烈に悪い予感がする。
こんな時、いつもなら逃げるところなのに、病床の僕にそれは不可能で。
「――そうだ! そうだよ! 妖怪の私の精を付ければ、きっとよくなるよ!」
景気よく服を脱ぎ捨てるルーミア。その股間には、いつかのアレが生えていた。

3

「ああ…どうしよう…。熱っぽいキミの顔……すごくえっちだよぉ……」
僕の胸の上に跨ったルーミアは、ばつの悪そうな顔で自ら肉芽をしごいている。
発熱して潤んだ僕の眼に興奮しているらしく、早くも先走りが溢れていた。
「ああ、出ちゃう……病気の人オカズにして…射精しちゃううぅ……ッ!!」
真っ赤に腫れた亀頭の先が、口の横に押し付けられ、青臭い熱が弾ける。
どくどくと脈打ちながら、あふれ出た彼女の精気が、次第に口に流れ込む。
――苦い。そして塩辛い。独特な粘度と風味は、血のそれにどこか似ていた。
「ど、どうかな…? 飲めそう…?」
濃厚すぎてこのまま飲むのは無理だろう。僕は口の中で必死に唾液を絞り出す。
ぐちゃぐちゃと混ぜ合わせて、ひと息に飲み下す。
……妙な気分だった。まるで自分が、一匹のメスになり下がったような――
「ひゃん…っ! あ、ああ…! ダ、ダメ…吸い出さないでぇ……」
ふと気づけば、僕は頭を起こして自ら彼女のペニスに吸いついて。
尿道に残った精液とともに第二の射精へ導くまで、そう時間はかからなかった。

4

頭がぼんやりして、目の前が真っ白で、何が何だかわからない。
夢見心地とは、こういう心持ちのことを言うのだろう。
弱った体が精を付けたがっているのか、それともルーミアを求めていたのか。
判らぬままに、僕達は汗まみれになって互いの精を貪り合う。
「ああ、すごいよ…。キミの精液と私の精液、いっぱい混ざってる……」
顔中を汚す粘液に恍惚として、真っ赤な舌で舐め取る彼女に、怖気を震う。
震えて動けない僕をひっくり返し、彼女は尻に両手をかけてきた。
「今度は、こっちに飲ませてあげるね…」
じゅるり――そう聞こえたのは舌なめずりか。それとも精液を呑み込む音か。
あの一件以来ずっと無事だった菊座を、ぬるぬるの舌先がこじ開け始める。
「あは、可愛い鳴き声…♪ 聞いてるだけでまた勃起しちゃうよ……」
ある程度とはいえ、一度開発された菊座はすんなり彼女の舌を受け入れた。
たっぷりと時間をかけて、ほじられ、舐められ、広げられ。
ふやけるまで愛撫された僕の尻は、震えることすら出来ないほどに蕩けていた。

5

なめくじが這うよりも緩慢に、ルーミアのペニスが僕に挿入される。
反射的に締め付けるたび、その脈動を感じるたび、激烈な快感が腰を貫く。
腰を振られ、腸壁を叩かれるたび、自分が牡であることも忘れ喘ぎ狂っていた。
気持ちいいなんてものではない。狂う。本当に狂ってしまう。
否、むしろ正気を保っているのかさえも疑わしい。それほどの快感だった。
「ふぁぁ……キミの中、気持ちいい…。ずうっと…挿れてたいよぅ……」
同じ気持ちだった。ずっと挿入されていたい。こうしてお尻を犯されていたい。
卑猥な粘液の音が室内を満たす。それは腸液か、それとも彼女の精液か。
菊座が熱い。夏風邪というだけでは説明できないほど、熱くて、気持ちいい。
「あは、奥の固いとこに当たってる…♪ 出すよ…ここに当てて出……ッ!!」
――後で知ることになるのだが、この気持ちいい部位は前立腺と呼ぶらしい。
射精に必要な部位を刺激されたのでは、射精するほど気持ちよくて当然だ。
「ああぁ……キミの中、最高…♪ もっといっぱい、一緒に出そう……?」
そこを精液に勢いよく叩かれて、僕の中で大事な何かが焼き切れた。

6

「何だか…不思議な気持ち」
事を終えて息も絶え絶えな僕の横で、ぽつりとルーミアが呟いた。
「あんなに気持ちよかったのにね、どこかが満足してないの…」
七度もお尻を犯しておきながら、とんでもないことを言い出す。
彼女のモノはまた消えしまっていた。それは満足したからではないのか。
それとも僕に精を与えたことで、射精機能が不要になったからのか。
「んー…。理屈はよくわかんないけど、多分そういうんじゃないと思うなー」
ならどういうことだと、そう問おうとした僕の口を、不意に彼女の唇が塞ぐ。
「うん、これこれ! やっぱりこれがないとね♪」
実に満足げに笑って、それから再び口付けを交わす。より深く、より長く。
「今まで食べてきた、どんなお肉より――」
馬乗りに跨られる。唇を重ねたまま、彼女は片手で器用に僕を呑み込んでいく。
「キミの唇が一番おいしいよ♪」
それが彼女の最大の賛辞であることに、僕は朝まで気付かなかった。

7

やがて、幻想郷に秋が来た。
山は色付き、田畑は実り、どこにいても美味しそうな甘い匂いがする。
そして、その日。僕はルーミアを連れ、人里にある父の実家に来ていた。
ヒグマに負わされた大傷が元で脚の動かなくなった父と、つきっきりの母。
両親は即座に僕の訪れた意図を察したらしく、好きに生きろと言ってくれた。
「あれ、もう帰っちゃうの? すごく久しぶりだったんでしょ?」
四半刻の間、ほとんど口も開かぬ親子が、彼女には心から不思議だったようだ。
だが、それでいい。今まで通りの生活に一人、妖怪が増えるだけなのだから。
「ふーん、そーなのかー…?」
土産に持たされた秋の味覚を両手いっぱいに抱いて、ルーミアは小首を傾げる。


多分、彼女は気付いていない。
おいしい肉では得られない満足が、この先に待っていることに。
いつか教えてあげよう。人間は、それを幸せと呼ぶのだと――

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