1

【暗い雛祭り】

気が付くと布団の上で、全裸に両手足を赤いリボンで拘束されていた。
誰の仕業か、どうしてこうなっているか、ああ、よく分かっている。

今日の昼過ぎ、河童たちにがらくたを届けた帰り道、
河童の一人が「相撲」に誘ってきた。

雛を裏切るつもりは無かったのだ、今も想いは変わっていない。
だからあれは、久しくしていなかった為の、過ちに過ぎないのだ。
いい訳出来る立場ではないのは重々承知だが…。

それで、その後そこに…雛が来て……

…そこから記憶が途絶えている。」

2

「別に怒ってないのよ?」

一緒になってずいぶん経っているのに、彼女は、
どうも何を考えているのか、心の裡が読めない。

拘束された体に馬乗りになる裸の雛。普段通りの顔。
だがその瞳が、今はどこか濁って見える。

「だってね?私以外に目を向けちゃったのは、私のせいでもあるしね?」
「だ・か・ら…」

外はもう暗く、遠くから蛙と虫の鳴き声が聞こえる。今は何時ごろだろうか。
気を失っている間に何かされたのか、
陰茎はかつてないほどの大きさに勃起し、天を衝いている。
その陰茎をぬるぬるの秘部に擦りつけながら、雛が倒れ掛かってきた。

3

「はぁ…む……ぁむ…ちゅ……んっ……」

両手で顔を掴まれ、舌を捻じ込まれる。
普段以上に粘っこく、貪るように口腔内を嘗め回される。
悪気はなかった、今でも雛の事しか頭にないんだと、言い訳をするように
こちらも何とか舌を返す。

くちゅ…ちゅぷ……

部屋の中で、水音だけを響かせながら、
恍惚とした表情で互いの口をしばらく楽しむ。

雛のお腹に押し付けられ、少し沈みこんだ男性器から雛の体温を感じ、
彼女の荒い呼吸に合わせそれが擦られる。

4

「ん…ぁ…ちゅぅ…は…ぁ…む……」

ふいに雛が口を離し、互いの間に糸を引いた。

「ね…見て…。こんなにべっとり…」

腰の上に跨った雛が、十分すぎる程に分泌された愛液で塗りたくられ、
ぬらぬらと照らされた陰茎に手を添え、わずかに腰を浮かし

何も言わず見つめ合ったまま、雛はゆっくり腰を落とした。

5

にゅぐ…ぐちゅっ…

ゆっくりと雛の膣内に呑み込まれていく陰茎から伝わる感触は
手足の自由を奪われた状況故か、むしろ鮮明に感じられた。

「ぁ…はぁ…ん…うぅ…ぁん……」

甘ったるい春声を上げながら腰を落とす雛の下で、
情けなく腰をがくつかせる。

「ぁ……ん…」
「入っちゃった……」

膣肉が陰茎にねっとりと絡みつき、吸い付き、
雛の中で陰茎がびくびくと震える。

6

ずっと焦らされていたみたいに、限界近くに膨張していた陰茎が
雛の中で射精を始めようとした、その時

「だぁめ…」

その声と共に、陰茎の根元を雛がぎゅっと掴む。
射精を寸前でせき止められ、疼きだけが残る

「出したい…?出したい…?出させてあげない……うふふっ…」

嗜虐的な笑みを浮かべながら、雛がゆっくりと腰を振り始めた。

7

ぬちゅぅっ…ぐちゅぅっ…

互いの体液が混ざり合い、どろどろになった粘性の高い液体が
鈍い水音を立てながら、二人の性器の間で泡を立てる。
雛の膣肉は艶めかしく陰茎に絡みつき、
射精させてもらえない哀れな性器をいたぶる。

「貴方の事はね…もう全部分かってるのよ?」

再び口を重ねてきた雛と舌を絡ませながら、
射精だけを封じられた甘いまぐわいが続く。

8

時折掴む手を緩め、射精が許されたかと思うと、
また寸前でせき止められる。

密着した胸板に、押し付けられた乳房が形を変える。

欲情と支配の歓びに火照り切った表情で唾液を流し込まれ、
切なげに精をねだる雛の胎に吸い付かれながらも
陰茎の支配を完全に握られ、
雛の肢体の下で寸止めを繰り返される。

何度も何度も。

9

そして、どのくらい経っただろう。
度重なる生殺しを強いられ、ついに射精を懇願すると
雛はにっこりと微笑み、囁いた。

「ちゃぁんと…お願いして?」
「『ひなさまのなかでいかせてください』」
「って…」

__ひなさまの…なかで…いかせて…ください…

すると雛は陰茎を掴んだ手をこちらの肩にまわし、
三度目の深い接吻をしてきた。

「…ぁ…ちゅ…む…」

10

互いの体を密着させ、上下で繋がりながら射精に備える。
やがて、ついに許された射精に歓喜する下腹部が痙攣するのに合わせ
ぐちゅり…腰を強く押し付けてきて、同時に弾けた。

どくんっ… どくんっ… どくんっ…

唇を奪われながら、雛の膣内に射精する。
脈動に合わせ、膨大な快楽に頭が染め上げられる。
まるで射精の音まで聞こえてきそうな程の勢いで、
睾丸が収縮し、大量の精液が雛の胎内に注ぎ込まれていく。

どくっ… どくっ… どくっ……

11

…………
ようやく射精がやむと、
最期の一滴まで零すまいとばかりに吸い付く雛の膣内で、
搾り尽くされ小さくなった陰茎が僅かに震えていた。

「出たね…いっぱい…」

あやすように優しく、そう語り掛ける雛の声に、
かえって責められているきすらしてきた。

悪い事をしてしまった。
もう二度とするまい。

心の中でそう誓ったとき

12

しゅるしゅると、両手足に巻き付いていたリボンが解ける。
身体が自由になった。許してくれたのだろうか。

なんとか上体を起こして、息を整える。
嬉しそうに抱き付いてきた雛に応え、接吻で返す。

「ぁ…ん……ちゅぅ…ふふっ…嬉し…」

そう言って喜ぶ雛。
よかった…これで……

………………
……………
…………

13

___ひぃっ…

声の裏返った情けない悲鳴を上げたのは、
雛の体から、黒いもやのような物が出ていたからだ。

悍ましいほどの凶気を孕んだ「それ」は
雛の下腹部から、繋がった性器を通り、体の中へ…

「これで…もう私から離れられないよ…?」

背筋の凍るような本能的な恐怖を覚え、
雛を突き飛ばして逃げ出してしまう。
愛液と精液の混じった白いどろどろを纏って
服も着ずに、部屋を出ようとした

14

その時だ
___
駆け出す脚にぼつぼつと、突然黒い染みが現れる。
染みは見る見る間に広がり始める。
黒ずんだ部分の皮膚が破れ、
中から青紫に腐敗した肉が漏れ出ては、
どちゅりと音を立てながら地面に腐り落ちていく。
やがてそれは両脚全体に広がり
ぐずぐずに溶けた脚の中から骨が見えたころ
豆腐が崩れるように脚がぐちゃりと折れ曲がり
支えを失った上半身が力なく地面に倒れ…
___

15

…っ!
はっと我に返る。
とっさに自分の脚を見る。
どこにも…異常はない…。しかし…今のは…。
冷や汗が全身に溢れ、震えなががらうずくまると、
くすくすと無邪気な笑い声が背後から聞こえた。

「ふふっ…ねぇ、どこへ行くの…?」
「どこにも行かなくていいのよ…?」

しっとりと、雛が後ろから抱きついてくる。

「まだまだいーっぱい……愛し合いましょう?」
「ずっと…ずーっと…うふふっ…」

16

腰が抜け、動くことが出来ない。
もうどこにも逃げられない。

絡みつく手足に力が籠り、
まるで糸の切れた人形の如く力が入らなくなってしまう。

「好きよ…?ね…?うふふっ…?大好き……」

深淵のように優しい、その声に頭を揺さぶられながら倒れると。
首を回され雛と目が合う。
じっと…何も言わず…
ただその昏く澱んだ瞳から目を離す事が出来なかった

編集にはIDが必要です