1

「今夜のおはゆんに必要なものはあと……」
昼時に人間の里を銀髪のメイドが歩く。
紅魔館のメイド長を勤める十六夜咲夜は夕食に必要なものの買い出しを行っていた。
別にこれと言って変わりない行為であり、里の者たちにとっても咲夜はよく買い物をしてくれる上客として親しまれていた。
しかし、ここ最近では咲夜を見る目がだいぶ変わった。より正確には男たちの眼差しが。
確かに咲夜は美人の類である。銀髪に目筋鼻筋の通った顔、すらりと伸びた四肢に腰の括れと美しさには事欠かない。
だが感じる視線に猥褻なものが以前にも増して混じってるのは事実だ。
困ったものだ。そう思いながら咲夜はため息をつく。見下ろす先にはその元凶が今もある。
彼女の首に着けられたカウベル。これを着けるようになってからだろうか。
「足元見えないし大変なだけなんだけどなぁ……」

2

彼女の主人であるレミリアから、あるとき奇妙な命令を下された。
カウベルを首に着けろと。なんでも妖怪の賢者である八雲紫の頼みだそうだ。そして紅魔館で適任なのはおそらく咲夜であろうとも。
なんとも不可解な話だが主人の命令とあれば拒否など出来るわけがなく、咲夜はカウベルを首に着けた。
動くたびに鳴るいたって普通のベル。その時はそう思っていたが、異変に気付いたのは翌朝に着替えの最中、ブラを着けた時だった。
「なんだか、キツイ……」
咲夜は元々胸が大き目の方だったが、ブラジャーには余裕があったはずだ。
それがその日になってカップの中にミッチリと詰まっている。太ったのかと焦ったが脚やウエストに特に変化は見られなかった。

3

異変はそれだけで終わらなかった。その日を皮切りに彼女の胸は日にちを追う毎に大きくなっていった。
その形の美しさは変わらないまま乳房だけが肥え太り、何時しか紅魔館で最も巨乳だった美鈴にも並ぶほどにまで育った。
そのうち、美鈴が二番目になるのに時間はかからなかった。二つ目の異変が起きたのはそのぐらいだったろうか。
いつものように家事に勤しんでいた最中、胸の中で何かが湧き出てくる感覚と張りつめたような感覚に襲われ思わず胸を押さえると
乳首から液体が吹き出し服に染みを広げていったのだ。

4

カウベルには不可思議な力が宿っていた。女性の乳房を牝牛のようにしてしまう呪力。
このカウベルを着けられた女性は胸が大きく育ち、妊娠せずして乳が出るようになるという。
それを咲夜が知ったのは母乳が吹き出し始めたことをレミリアに報告したときだった。
なぜそのような物を着けさせたのか。話によればやはり八雲紫が一枚かんでいるらしい。
乳製品を自給するには酪農が必要だが、酪農は農業の中でもとりわけ土地を必要とする類である。
幻想郷で土地を確保するのは困難を極める。そこで賢者は考えたのだそうだ―――誰かが牝牛の役割を担えばいいと。
ミルクによって得られる報酬は紅魔館がほぼ手に入れられるという約束もあり、承諾したと聞かされた。
しかもこのカウベルは一度着用すれば外したとしても効果は永続するという。
主人と賢者の思惑により、咲夜はメイドと乳牛の二つの役割を担わされてしまったのだ。

5

見下ろした先にあるのは件のカウベル、そして育ちに育った咲夜の胸だ。
もう足元を見ることも叶わないだろう。乳房彼女の頭ほども育ちながらもミチミチと張りを保っている。
「私が超されちゃうとは思いませんでしたよ」と美鈴に言われたが正直煩わしさの方が大きいのが本音だ。
ここまで育っておきながら、流石に以前よりペースは落ちたが胸はまだ成長中らしい。
なにより定期的に搾乳をしなければ乳が張ってしょうがない。今こうして買い物に出ているときにも
胸の中ではじわじわと母乳が作られているのだろう。
「そういえばこれも料理に使っていいのかしら?」
いっそこの自前のミルクも調理してみようかなどと考えながらも彼女の買い物が続くのである。

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