1

三毛猫は、基本的に「メス」しか生まれない。
しかし稀に、遺伝子的な異常を持って「オス」として生まれてくるものもいる。

『豪徳寺 ミケ』は、体の9割は「メス」側であった。
喉ぼとけは存在せず、体つきは柔らかな感触を持ち、
胸部には触れれば確かに分かる膨らみもあるし、女性器もきちんと存在する……。

だが、その女性器をギリギリ覆い隠す、「2つの丸い物体」も存在していた。
その物体と共に、当然兼ね備えられている「しなやかな棒状の、肉の象徴」も……。

2

「はっ……はっ……♡」
左手の指を使うだけで上下に扱けてしまうほどの、邪魔にならないサイズ。
まっすぐに伸びていることは分かるものの、ようやく通り道が開通したかといえる男子のそれと、
大して変わらないようにも見える。

とはいえ、小さくてもこのわずか1割の「オス」を象徴する存在に、苦悩したこともあった。
しかしそれとは別に、周囲のメス達が得られない「快感」も得ることが出来たため、
彼女はそれを簡単に捨て去ることも出来なかった。

「んっ……んんっ……♡」
下腹部に少しずつ蓄えられ、最後にはそれが蛇口から出る水のように飛び出してくる。
溜めれば溜めるほど、一度に飛び出す量は増え、比例して快感も加算されていく。
この快感だけが、苦悩の根源となる象徴の存命を許していたのだった。

3

「……っっっ!!♡♡♡」
そうして、象徴から放物線を描いて出てきたのは……

「無色透明」の液体であった。
先に言った通り、彼女に付いているのは、本来なら「異常」な物なのだ。
よって、その機能も異常……言い換えれば「不完全」である。

その液体は、尿とは明らかに違い、トロトロとしたとろみを含んでいる。
しかしそれに反して、子種の素となる「精子」は、1匹たりとも混じってはいない。
単にそれは、道を通りやすくするように滑らせて潤わせるしか能の無い、「未完成の精液」でしかない。
完璧な射精を知る者達からすれば、「先走りの要素を含んだ潮」とでも言うべき、
粘り気も達成感も何もかもが足りない、不十分な出来損ないと言い切れる。

4

「ふぅーーー♡ ふぅーーー……♡」
それでも、完全な精液を持ち得ないミケ本人でも、快感に達する条件には十分だった。
濁り溶ける数多の後ろめたい感情を、まるで排尿するかのように噴き捨てる感覚。
そうして出てきた混じりけの無い透明の油水は、私雨が降り止んだ後の、葉に滴る露のようにも見える。
とろりと表面を撫でるようにして滑り……重みを強く受けて落ちていく。

「自分は永遠に、白く染めることなど出来ない」。
常に体に染み込む劣等感を、彼女は嫌というほど味わい続けた。
味わい続けたために……彼女は中毒者となってしまったのだ。
無色透明の、とろみしか含まない程度の液体の雨で、何もかもを濡らしていくその感覚に。

5

「もう……いっかい……♡♡♡」
外は、さあさあと私雨が降り続けている。

「ふふ……ふふふっ……♡」
止んで出られるようになるまで、不完全な自身を慰め続ける。

「くっ……ふぅ……んん……♡♡♡」
出来損ないの玉炉の中で、甘い蜜と切ない露を、溶かして混ぜる。

「また……でる……♡♡」
私雨の勢いに、張り合うかのように溜め込んで。

「っっっーーー!!♡♡♡」
出てくるのは、永遠の未完成品。

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