一話

1

「巻頭グラビア?」
「ええ、今度新しく刊行する天狗の漫画誌の巻頭に乗るんですよ」
鈴奈庵の昼下がり、小鈴は目の前にいる射命丸の口から出た聞きなれない言葉に興味を示していた。
「いやぁ、ここだけの話なんですけど、天狗は外の世界に会社を持っているんです。その会社の出版部で出版している漫画誌の月刊バージョンを作ることになったんですけど、外の漫画誌というのは表紙に可愛い女の子の写真が載っていることがあって、それを目的に買う人もいるんです」
「で、その写真がグラビアと呼ばれているんですね」
「そうです。それで…その写真のモデルを小鈴さんにやって頂きたいのですが…」
「えっ⁉私が」

2

天狗の至極真剣な表情に小鈴は面を喰らった。飄々とした性格の人間のそういった顔ほど、真剣味があるのだ。
「先ほども言いましたが、可愛い女の子じゃないと意味が無いのです」
「可愛いって…」
「小鈴さんは外の世界ならその容姿でお金を稼げるほどの美少女です。もちろん、この撮影にもそれなりのお礼をいたしますのですが…」
「いやいや…私なんか…それにモデルなら天狗の里にいるのでは?」
「天狗の里も狭いですからね。良いモデルは他の雑誌の専属モデルなんですよ。それに天狗というのは写真を撮るのは好きでも、撮られるのは大の苦手で、大天狗様なんか孫との写真が1枚も無いんですよ。いろんな天狗が撮ろうとしても顔を真っ赤にして隠れてしまうくらいなんです」
「お偉いさんでも…ということは普通の人は余計に…ということですか?」
「そういうことです」

3

「んー、でしたら引き受けてもいいかな。でも、文さんは妖怪ですからね。妖怪と関っているというのもあまり…」
「大丈夫ですよ。秘密裏に行って、本の流通に人間の里は含まれません。それに天狗は人間が好きなのですよ。取って食おうなんて気はありませんし、なんでしたら霊夢さんも協力してもらいましょう」
次から次へと出てくる天狗の言葉に小鈴の気持ちは揺らいでいく。あの霊夢が一緒なら大丈夫、小鈴はそう思い依頼を承諾した。
「んー、文さんの熱意に負けました。でも撮るからには可愛く撮ってくださいね。後、謝礼も」
すると、天狗は満面の笑みで答えた。
「ええ、謝礼は弾ませてもらいますよ!」

4

その日の夜、風呂も夕飯も済ませた小鈴は阿求のところに行くと嘘をついて家を抜けた。
里のはずれに簡素な造りの家が建っていた。軒先には「文々。写真館」と書かれており、小鈴は戸を開けて声をかける。
「おばんですー、文さんいますかー?」
「ああ、小鈴さんですか。どうぞ、中へ」
小鈴が入るとそこに射命丸の姿は無く、奥の扉から灯りが漏れていた。小鈴はそこに射命丸がいるのだろうと歩みを進め、その扉を開いた。
そこは撮影スタジオになっており、奥の壁に大きな白い布がかかって床まで広がり、床と壁の境目が無くなっている。
「小鈴さん、わざわざありがとうございます。すいません、迎えにも行けなくて」
射命丸は部屋の中央で機材を弄っていた。
「いえいえ。で、私はどうすればいいですか?」

5

「んーまだ準備が終わってないので、この衣装を着てそこの撮影用ベッドで休んでてください」
渡されたのは紺色と白のセーラー服であった。もちろん、小鈴は本で見たことはあっても着たことはないし、赤いスカーフもとんと見当がつかない。
「あの文さん…、スカーフがわからなくて…」
「あ、すいません。こちらの用意不足でした。今、準備も終わるのでちょっと待っていてくださいね」
30秒もしない内に準備が終わったのか射命丸は小鈴に近づいてきて、スカーフを巻いた。
「ごめんなさい、ちょっと汗臭いかもしれません…」
「いいえ、文さんはいいにおいがしますよ」
小鈴のそれは嘘ではなかった。が、香水とかいった類のにおいではなく、小鈴は疑問に思ったのだが天狗ではこういうのが定番なのだろうとひとりでに納得した。

6

「じゃあ、撮影を開始しますので小鈴さんはそこの壁に立ってください」
小鈴は言われるがまま、床と壁の境目が無くなっている場所に来た。射命丸はそこを囲むライトをつけて、小鈴の正面に立ちカメラを構えた。
「えーと、ポーズはどうすれば…」
「テキトーで良いですよ。そのポーズにあったアングルを探して、取りますので」
小鈴はとりあえず、昔に本で見たポーズを取ってみた。うろ覚えなので、イマイチ格好がつかないのだが射命丸の指示とアングルで何とか形になっていった。
「んー、ポーズは出来てきましたが、顔がまだ硬いですね。ちょっとリラックスしましょうか」
射命丸は近くにあった香炉にマッチで火をつけた。ふわっと線香に似た白檀の香りが漂いはじめ小鈴はその懐かしい匂いに顔の強張りが解けた。

7

小鈴は笑顔でポーズをとり、射命丸はシャッターを切っていく。
ライトの熱のせいか小鈴の身体は汗ばんでいき、身体の匂いを周りに漂わせはじめていた。
(何だろう…すごく熱いっ…)
慣れない撮影に緊張して、シャッターが切れる音が聞こえるたびに小鈴の身体は熱くなった。そして同じ姿勢を取り続けるというのは案外難しくて疲れやすく、普段座ってばかりの小鈴には応えたようだった。
「はーいOKでーす。衣装替えですよー」
射命丸は小鈴に新しい衣装が入った紙袋を渡した。
「えっ、これって…。たしかビキニっていう水着…」
「そうそうビキニです。外の世界じゃ小鈴さんくらいの女の子はこれを着て海に行くんですよ」
「でも、こんな布が小ちゃいのは…」
「大丈夫ですよ、これでも外の世界の物に比べたら大きい方です。それにこのオレンジ色の水着は明るくて元気な小鈴さんに似合ってますよ」

8

笑顔で詰め寄る射命丸に小鈴は根負けしてしまい、物陰でオレンジ色のビキニに着替えた。鏡を見てみると思ったより露出は少なく、明るい髪の色ともあっているので、小鈴は少し自信が湧いた。
小鈴が戻ると射命丸は香炉をいじっていたようだった。
「わぁ、小鈴さん。とても良くお似合いですよ。あ、今、匂いを強くしたのでリラックス出来ると思います。ほら、深呼吸深呼吸」
「ん、確かにさっきよりも匂いが強い…。そうですね…深呼吸…深呼吸…と」
小鈴はスベスベのお腹を大きく膨らませ少し背をそらしてあばらを浮かせて大きく吸い込んだ。

9

そして背中を少し丸めながらゆっくりと吐き出した。
「あれ?」
小鈴はクラっとよろけ、射命丸が慌てて支えた。
「おっと大丈夫ですか…。慣れない撮影で疲れたんですね。この次はベットでの撮影なのでそれまで頑張ってください」
射命丸に言われるがまま小鈴は先ほどの場所に立ち、射命丸がカメラを構え撮影は開始した。
(ん…なんかお股がムズムズしてる…)
先ほどのよろけた時からどうも身体がおかしい、と小鈴は思っていた。身体が火照って熱いし、胸と股間がムズムズと疼くのだ。
香炉の白檀は不安解消やリラックスの効果を持つが、それ故に心身の抑制も取れるという催淫効果もある。それを射命丸は知っていて小鈴に深呼吸をさせた。

10

「撮りますよー」
射命丸は小鈴が太ももを擦り合わせていることにニヤニヤしながら写真を撮りはじめた。。カシャッ、カシャッ、という小気味のいい音は小鈴の股間の疼きを増長させていく。
(何これ…痒いというか…なんかジンジンするよぉ…)
小鈴はポーズを変えるときこっそりと股間を指でなぞる。腰が軽く痙攣して思わず「んっ♡」と甘い声を出してしまう。
(今…おまんこさわりましたね)
もちろん、射命丸がそれを見逃すはずもなく、なぞって湿った股間に張り付いた布地を2.3枚撮り、変わった後のポーズを1枚撮った。
(ふふふ…おまんこはすじが浮き出ちゃってますし、乳首もたってきちゃってますね…)
射命丸は胸のアップを撮った。オレンジ色の中心に小さな山があって影が出来ている。そこもアップで撮り、射命丸は舌舐めずりをした。

11

小鈴の第二次性徴を迎えたばかりの身体は、グラビア撮影という「女らしさ」を求められる行為に反応しているのだ。
人間は環境や状況に適用しようとする生き物であり、時には意識ですらそれらに従順になる。
小鈴の身体は今、身体中から「雌」を溢れさせそれが混じったとろみのある空気を纏っているのだ。シャッターが切れるたび、飽和した「雌」が結晶化しフィルムに焼きつく。写真というのはただの画像ではなく、その時その場所で起こったすべてを切り取るのだ。
「小鈴さん、足を広げて座ってくれませんか?」
「えっ…それはちょっと…」
「大丈夫ですよ、その水着はきわどい作りではないので」
「うーん…」

12

小鈴は座って手を後ろについて支え、足を開いた。
射命丸の言う通り、局部を主張させるようや作りではない。しかし、その記事はとても薄く、濡れてしまうとすぐシミになる。
小鈴の股間は秘裂にそってシミが出来ており、小鈴自身それに気がついていない。そもそも小鈴はそれが身体のどういった反応なのか知らない。例え気づいていたとしても汗かなんかだと思うだろう。
射命丸は全身とアップの撮影を繰り返した。「女」になりかけの少女の幼気な性をこれでもかと言うほど貪り、フィルムに焼き付けていく。
(んっ…♡シャッターの音が聞こえるたびになんかお股が気持ちいいっ…♡」

13

大きく開いた小鈴の太ももはシャッターの度に細かく痙攣し、その間にある少女の穴は快感で濡れていく。呼吸が乱れ、全身の汗腺から匂いとともに汗がにじみ、おでこには前髪がはり付いていた。
「それじゃあ、次の衣装にしますかね。小鈴さん、ベットに移動をお願いします」
「は、はい…」
小鈴の身体の火照りはおさまらず、股間の冷たいじっとりとした感触に気づき、「えっ、おしっこ…?」と少し焦った。
「えっと、小鈴さん。次はちょっと過激というかグラビア撮影ではないんですよ…」
「えっ」
「ちょっとこれを見ていただけますか?」
射命丸が取り出したのは、1冊写真集だった。

14

「これは…外国の人の写真集ですよね。なんか顔立ちが違いますし」
小鈴は受け取ったモノクロの写真の表紙を見た。ページをパラパラとめくると最初こそ訝しんだ表情であったが、次第に好奇の表情に変わっていった。
「これ…女の子の裸の写真ばっかりなのに…いやらしくなくて…むしろすごい綺麗っていうかかっこいいっていうか…」
「私はこういう写真も撮ってみたくて…今までの撮影とは別にギャラをお支払いしますので、モデルになっていただけませんか?」
「でも…私…」
「大丈夫ですよ…私にお任せください」
小鈴はおずおずとビキニを脱いで裸になり、両手で胸と股間を隠してベッドに上がった。脱ぎ捨てられたビキニにはベッタリとついた小鈴の淫蜜はヌラヌラとライトの輝きで光り、射命丸は生唾を飲み込んだ。

15

「では、最初はこの熊のぬいぐるみを抱いてください」
小鈴は渡されたぬいぐるみを体育座りをして足を広げて間に挟み、両手をクロスしてぬいぐるみを抱きしめた。視線はカメラを向いていて、射命丸はファインダー越しにその視線が孕む艶めかしさにゾッとした。
(やはり…思ったとおりの逸材…!)
たまらずにシャッターを切り、射命丸は絶頂に似た感覚を感じた。指が震え手の関節が甘く軋み、口の中では粘度の低い唾液がドバドバと出た。
「じゃあ、次は両手で胸とお股を隠して…」
「こんな感じ…?」
小鈴はぬいぐるみを背中の後ろに置き、そのままの姿勢で胸と股間を隠した。胸を隠した右の手の平は開いていて左の乳首が見えそうで、股間を隠す手は中指で秘裂を隠し、その他の指は開いていた。

16

「えっ…小鈴さん…恥ずかしくないんですか?」
余りの大胆さに射命丸は思わずたじろいだ。
「ええ…なんだか気持ち良くなって来ちゃって…♡」
小鈴の中指がくにくにと動き、射命丸の視線は釘付けになり、慌ててカメラを覗き込む。
小鈴の身体からは雌の芳香がとめどなくあふれだしている。射命丸のカメラは、注ぎ続けられるコップの水が溢れないように啜るかの如く、小鈴の「雌」を切り取っていく。射命丸がシャッターを切らなければ撮影スタジオは小鈴の雌性に犯され、射命丸も正気ではいられなくなる。射命丸の皮膚にぬっとりとはり付いてくる空気は、シャッターを切るたびにその温度と湿度を失う。もちろん、それは射命丸の錯覚だ。小鈴のたまらない雌性がそれを感じさせ、1000年以上生きる射命丸を圧倒しているのだ。

17

「こ、小鈴さん…、つ、次は全裸でもいいですか?」
「全裸はちょっと…胸だけなら…」
「こ、これで…お股を隠しますので」
射命丸は取り出したのは、黒塗りの1本の張り型であった。太くたくましいそれは、小鈴の秘裂など易々と隠してしまうだろう。
「うーん、それならいいですよ」
小鈴は寝そべって膝を曲げて足をつけて股を開いて、間にそれを置き、手で固定した。
(これ、お股にこすりつけたら…♡)
小鈴は射命丸にバレないようにゆっくり上下に動かした。もちろん視線はカメラを見ている。
射命丸は震える手を必死に抑えながら、シャッターを切る。
これが10年とわずかしか生きていない少女の視線だというのか。
先ほどのように皮膚にはりついてくる空気に射命丸は恐怖していた。シャッターを切っても切っても意味がないのだ。

18

小鈴は張り型を強く秘裂に押し付け、縦に小刻みに動かしている。
(んっ♡あっ♡気持ちいいよぉぉ♡)
黒塗りの張り型の側面は小鈴の淫蜜で濡れて妖しくひかっている。
(あひゃあっ♡なんか来ちゃう来ちゃう…なんか変なのが来ちゃうぅ♡)
小鈴ははじめての絶頂をしようとしていた。淫蜜が溢れ出し、ベッドのシーツを濡らしている。
(このままじゃ、文さんにバレちゃうぅ♡でも、やめられないよぉ♡)
小鈴の視線は熱と湿度を持ってレンズ越しに射命丸の瞳に突き刺さる。眼球が性感帯になったような疼きが射命丸に訪れ、気を抜けば眼球がとろけてしまうんじゃないかと錯覚するほどだ。

19

(あっ♡来るっ♡来る来る来るぅぅうう♡)
「あああああああああああぁぁぁん♡」
小鈴は下腹部を痙攣させてながら絶頂した。
射命丸はコンマ数秒の遅れで小鈴の絶頂に気づきシャッターを切った。心臓がバクバクと高鳴り、1人の少女の目覚めに感動し、そして興奮していた。
「はぁ…はぁ…小鈴さん…♡よかったですよ…撮影はとりあえず終わりです…♡んっ?あれ?小鈴さん⁉」
小鈴は絶頂で軽く失神したらしく、全身からねっとりとした汗をかきながらぐったりしている。
「うーん、とりあえず汗を拭いてあげて…服を着せてあげてから鈴奈庵にお返ししますかね……あっでもその前に…」
射命丸は小鈴を大の字にさせて、一糸まとわぬその肢体をカメラにおさめた。
「ギャラは弾みますからね♡」

20

後日、鈴奈庵にはお礼状と小鈴のお小遣い3年分のお金が届いた。
お礼状には天狗の上層部直々の感謝が書いており、グラビアが載った漫画誌が飛ぶように売れたと書いてあった。
「やったー!天狗の直々の手紙なんてかなりのプレミア物だわ!早速飾っておこうっと!」
時を同じくして射命丸の新聞社にも手紙が届いた。宛名は書かれておらず、訝しみながら開くとこう書いてあった。
「私の小鈴に手を出した覚悟は出来ているんでしょうね」
さらに写真が数枚同封されており、射命丸はギョッとした。里の公衆便所で用を足した時の写真で、どれも顔まで鮮明に写っている。
「な、な、なんですか、これは…⁉」
射命丸が慌てて写真を見ていくと最後の写真には、エヘ顔ダブルファックを決める阿求の姿が映っていたのだった。

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