1

ここ守矢神社に僕が連れ込まれ、半月ほどになるだろうか。
僕を拉致…もとい召し上げた女神様は、その名を神奈子様という。
天を自在とし、風雨を能くし、山坂と池を司るという――つまりは偉い神様だ。
色々とあったけど、彼女は厳しくて、それ以上に優しいことが分かった。
強い意志と深い懐を持つ、いわゆる親分肌というやつだ。
母のいない僕にとって、そんな彼女と過ごした半月はとても新鮮だった。

そんなある日、僕は彼女の恩義に報いたいと思うようになった。
僕よりひと回りほど年上の巫女さんは、肩でも揉んであげて下さいと言った。
僕と同い年ほどに見えるもう一人の神様は、背中でも流してやりなと言った。
そして後者は妙に意地の悪い笑顔を浮かべていた…ような気がする。
かくして、僕は縁側でひとり月見酒に興じる神奈子様の肩を揉み。
一緒にお風呂に入ろうと提案して、盛大に噴き出され。
そして、今に至るのだった。

2

これまで神奈子様とお風呂に入ったり、一緒に寝たりしたことはない。
その原因は遠慮や躊躇ではなく、神奈子様の気位の高さにあった。
「当たり前だろ。諏訪子じゃあるまいし、そんな目的で神隠しはしないよ」
髪飾りと鏡飾りを外しながら、どことなく不服そうに返答される。
では何の目的があったのか。そう訊くと神奈子様は
「ん…。あんたが寂しそうだったから……かね」
優しげな、どこか寂しげな目で、慈しむように、憐れむように僕を見た。
「ほんとはね、こういうえこひいきみたいなのは良くないんだけど」
装飾品を全て外し、するすると手際良く衣服を脱いでいく姿に、僕は見蕩れる。
「神様だって、たまにはズルをしたくなるのさ」
あっという間に下着まで脱ぎ終え、初めて晒された肌に釘づけになる。
「…? 先に行くから早く入っといでよ。背中、流してくれるんだろう?」
その豊満な、まろやかな後姿を見て、僕は漠然と自覚していた。
神奈子様に、母性とは別の何かを感じ取っていることに。

3

「へえ、なかなか上手じゃないか。その調子で続けとくれ」
渡された手拭いを泡立て、神奈子様の背中を懸命に擦る。
白くて、柔らかくて、すべすべで。男の僕とは何もかもが違う肌だ。
「ふふん、随分ませてるじゃないか。その若さで女の肌を評価とはねえ」
…ひょっとして怒らせただろうか。しかしその声音に怒気はない。
むしろ若者をからかうような、年上の余裕に満ちていた。
「はい、ご苦労さん。流してとくれ」
桶に汲んだお湯が、体の曲線に沿って泡と共に流れ落ちる。
その様を眺めていると、何だか、とても――
「さて、じゃあついでに髪もやってもらお…うか、ね………」
肩越しに振りむいて、神奈子様が凍りつく。
何しろ、彼女の眼の前に突き出されているのは、はち切れそうな肉の若芽。
「あ、あんた……なんで……」
神奈子様はまるで蛇に睨まれた蛙のように、身を竦ませ震えていた。

4

僕だってこの器官のもうひとつの役目くらい、寺子屋で習って知っている。
なのに、ずっと年上の神奈子様が、何故こうも驚いているのか。
「い、いや……だってあんた、五倍くらいになってるじゃないか……」
何だかおろおろしている。僕は急に罪悪感にかられ、泣きたくなってきた。
あの神様の勧めとはいえ、一緒に入浴など我が儘を言うべきではなかったのだ。
「……ああ、そういうことかい。諏訪子の奴、いらないことを…」
溜め息を小さく吐くと、神奈子様は。
「ま…まあ、あんたに悪気はないだろうし…。このままってのも可哀想だ」
洗髪料を頭にかけると、座ったまま僕の方に向き直り、両手で頭を掴ませて。
「頭の洗い方は知ってるだろ? 背中のついでに頼むよ」
何だか熱でぼうっとしたような目で頼まれ、僕はぎこちなく手を動かし始める。
「そうそう、その調子だよ。こっちは私が綺麗にしてやるから、さ……」
良く分からないことを言われて首を傾げようとして、その顎先が跳ね上がる。
未知の感覚。僕のちんぽは、すっぽりと神奈子様のお口に包まれていた。

5

腰から下の肌が泡立つ。自然と踵が浮いてくる。
手を動かして髪を洗うどころではない。それほどに異常な感覚だった。
「ん、ちゅる、はむ……んむ、くぷ、くぷ……」
唇に包皮を剥かれて露出した亀頭を、ぬるぬるの舌先が這い回る。
唇に締め付けられるたび体が痺れ、手はおろか指先にすら力が入らない。
「ふぅ…。あの、気持ちよくなかったかい…? 私も随分とご無沙汰でねぇ…」
真っ赤に充血したちんぽを申し訳なさそうに眺め、次いで裏筋に舌を這わせ。
もはや立っていられず尻餅をついた僕に、頭を流した神奈子様が覆い被さる。
「なあ…。あんたは私のこと、好きかい?」
小さく頷いて、それから、何故か急に恥ずかしくなって赤面する。
「私もだよ。あんたが愛おしくて仕方がない。あんたはまだ童だけど――」
神奈子様のお顔は真っ赤で、それでいて何とも嬉しげな笑みを湛えて。
「――この場で男にしてやるよ」
猛り狂った僕を優しく抱き締めて、幾度も幾度も、時間をかけて鎮めてくれた。

6

その夜、僕は神奈子様の寝室にいた。
布団の上で胡坐をかいた神奈子様の肩を、一心不乱に揉んでいた。
「…ん、いい具合だ。その調子だよ」
神奈子様は浴衣姿。その袷からは、胸の谷間が一望できる。まさに絶景だった。
そして母のない僕にとって、それは欲情よりも憧憬の対象だった。
「ご苦労さん。もういいよ」
ごろり、と布団に横たわると、神奈子様はそのふくよかな胸を自ら露わにし、
「おいで。ぎゅってしてやるから」
そうして両手を差し出し、僕は吸い込まれるように、その中へ。
「あんたの敬意、信心、受け取ったよ。…ま、悪気もないようだしね」
聞けば今日は敬老の日といって、年輩の方に感謝する祝日であるという。
悪意あって祝おうものなら、尻にオンバシラをぶち込んでいた――らしいが。
「あんたのちんぽも甘えたがってるよ。たくさん甘えにおいで……ね?」
敬老の日の夜。僕は神奈子様に抱き締められながら、幸せに浸るのだった――。

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