1

今日も変わらぬ博霊神社の朝…と言うには早いか
空の白みもまだ浅く、小鳥が朝の囀りを交わすにはまだかかる
夜を跋扈する妖がそろそろねぐらに戻ろうかとする、そんな時間帯だ
そこまで早くに目を覚ましておいて布団からも出ず再び眠りもせずに私が何をしているのかと問われれば…
「ん…、ふ…ぅ」
朝の昂りを見せていた自らの女茎を手で慰めていた
…それも自分の手ではなく同じ衾で隣に眠る夫の手でだ
勃起に気づいてもどうにも自分の手で済ませるのは気が乗らず、道具を取りに行くのも億劫だしと目も明けぬまま思案していた
そんなときにちょうど後ろから抱きかかえるように腹元に腕をかけられていたのに意識が行ったとき、魔が差してしまった
そのまま魔に引き込まれるように伸びていた手を引きよせ、襦袢の裾をはだけ、軽く下ろした下着から飛び出した雌陰茎に被せ…
今やすっかりその掌に濡れ汁を染み広げさせてしまっていた

2

いくら身体も許し合う伴侶とはいえひとの掌を勝手に使って自慰に耽るなど妻として誉められるようなことではないしましてや巫女としては言語道断だろう
それにいつ起きてしまうかも分からないのだ、知られたら軽蔑されてしまうかもしれない
なのに、いやだからこその背徳感と緊張感が胸を高鳴らせる
「すー……ふ、んんっ」
息を殺し、激しい快感が欲しくてもゆっくりと動かしていかなければならない
ときどき意図せずすれてしまった鈴口への鋭すぎる刺激にも声を噛み殺し、
軽く上下に、押しつけるようにさすり、たまに手を固定し腰を揺らすようにして自らこすりつけていく
汗ばんだ陰茎は痺れたような感覚がずっと続いており、鈴口が膨らむたびにとろりと濃い先汁が掌のぬめりを強めていくのが亀頭で感じられる
「くっ、ぁ……ぅ♥」
他人の体を使っての快感だけを求めた自分勝手な自慰
普段のまぐわいの幸福感とは一切無縁の快感のみの塊が毒のようにペニスから伝わり頭を桃色に鈍らせる
「は…あ…、きも…ち…い…♥」

3

もう自分がおかしいことをしているという実感は快楽の霞みの彼方だ
それに…私がこんなことをしてしまうようになったのもきっと後ろでのんきに寝ているこの男のせいなのだ
この男ときたら結婚後しばらくはするときにはいつもいつも執拗なまでに私の陰茎を狙ってきた
口づけの真っ最中だろうが愛撫の途中だろうが挿入中だろうが隙あらば手を伸ばし舌を伸ばしでそれこそ休まる暇がなかった
射精中にまで亀頭を激しく刺激されてははしたない声を響かせるなどしょっちゅう。おまけにやたらと上手いものだから始末に負えない
そう言えばまさか破瓜の痛みまで陰茎への刺激で和らげて来るとは思ってもみなかった
気づけば自分ではなかなか気持ちよく射精できないほどにまでなっていて…それこそ扱いてほしいと屹立した男性器を見せておねだりしてしまったことさえある
つまるところ私の女茎は文字通り完全に手懐けられてしまったというわけだ
そうだ、だからこれもただその責任を取ってもらっているだけで…
「っううん♥」
つい速く動かしてしまった手が強く引っかかり、弾けた快感で現実に引き戻される
思考に没頭しすぎてたせいで思わず甘声を大きくあげてしまう

4

そうこうしているうちに大分できあがってきてしまっていたようだ
汗と汁でずるずるになった肉茎を精がこみ上がってくる直前のあの独特の感覚が包む
これは気持ちよく射精できるだろう。その予感にラストスパート代わりに少しだけ動きを速める
「そ、そろそろ…っ」
限界も近い。そう思った私は枕もとの乱れ箱から精液受けにちり紙を取り出そうとして
「い゛!?」
陰茎を握られ、驚きに固まってしまった
「え?え?ええ?あ、ひっ♥」
嘘、起きてた?いつから?
そんな疑問と狼狽がごちゃ混ぜになっている私を差し置いて手は本来の持ち主の意思で激しいストロークを描く
リズムの巧みさも刺激してくる場所の的確さも、全て先ほどまでの拙い自慰とは比べ物にならない
「ま、待って…♥そんな、やあっ♥!」
起き上がろうにも体はがっちりと男の膂力で抱えられ、腰を引いて陰茎だけでも逃がそうとしてもすぐ後ろにある夫の体にぶつかり何の意味もない
そもそもが射精直前、我慢なんて一秒たりともできるわけがなかった

5

「せめてティッ…あ、あ、あ、…〜〜〜〜〜〜♥♥!」
強く目を瞑り、布団の袖に顔をうずめるような状態になって射精する
とぷとぷと続くやけに長い射精だ
煮詰まった精が尿道を通って放たれていく感覚がいやに鮮明に感じられてしまう
飛び出した白濁が亀頭を包む掌を打つ感覚までもが伝わってきてしまいそうだ
ゆっくりと高めていった末の激しい責めでの絶頂。恥ずかしいが…ものすごく、気持ちよかった

「…………」
ようやく吐精も収まり今は鈴口に残った分と亀頭の先汁を親指で拭ってもらっている状況だ
彼は別に怒ってもいないようで空いたもう片方の手で緩やかに髪を撫でてくれている
それでも私は羞恥と少しばかりの罪悪感から彼に背を向けたまま目を強く瞑り声をかけることもできないでいる
そのまましばらくして精を拭い終わった掌が衾の中から蒸れた空気とともに現れた
青臭い香りが朝の澄んだ空気を汚すように広がって鼻をつく
どのくらい大量なのか目を瞑ったままでも分かるほどだ
自分の罪を突きつけられたようで耳まで赤くなる

6

「……っ!?」
ふとその臭いが遠のいたとおもったら頭の後ろから何かを啜る音が聞こえ、目を見開いた
振り向けこそしないが分かる。今この場でこんなやたらねばっこい水音を立てるような物体はひとつしかない
「う…あぁ…」
意識は完全に耳に傾いていた
ぐちゅり、ずるり、口の開く音まで鮮明に聞こえてくる
背中越しで見えないはずの光景が目の前で映像になってしまいそうなくらいだ
朝一番の異様に濃い精を食まれている。その怪しい感覚が再び鼓動を速めさせる
萎えていた雌根が少しだけ硬さを増していたのはこの際気づかなかったことにしたい

7

少しして再び目の前に差し出された掌の精は明らかにその量を減らしていた
減らしているだけで無くなっていないのなら、彼が望んでいることは…
「ん…ちゅろ」
舌先を尖らせ、目の前にあるものを舐め取る
苦い。にがりを煮詰めたような味と臭みが染みていく
「んむ、っく…ちゅる…んく…ちゅる」
それでも不思議と嫌では無いのはきっと一口ごとに彼がひときわ優しく頭を撫でてくれるからなのだろう
今ふたりの口の中で同じ味が広がっているのを慈しんでくれているかのように
「んく、むぐ…ふふ♪」
それが嬉しくて一口一口を味わうように噛みしめてしまう
感じていた羞恥や罪悪感も少しずつ薄れて暖かいものに塗りつぶされていく
自分でも単純だとは思うがそれでも嬉しいものは嬉しい
いくら言い訳しても自分の精液を舐めてここまでの充足感を得られるなどやっぱり私は変態なのだ。…このひとと一緒で

8

「ん…♪」
すっかり綺麗になるまで舐め取った私は今更のように彼に背を預けて甘え、幸せな気分に浸っていた
目を細め、頭をゆっくりと逞しい胸板にすりつける
それに応えるかのように後ろから抱き締めてくる腕は深くなり体もより密着して…
「あ…」
そこで再び頬に朱が差す
お尻に私のよりも一回りもふたまわりも大きいモノがあたる感覚がしたからだ
その硬い砲身が尻肉にぐいと押しつけられればその熱い脈動が布越しでも伝わってくるかのよう
考えるまでもなくわかる。私の味で興奮してくれたのだ
そして今、もっと多くの「私」を求められている
「する…の?」
返事代わりに降りてきた手は女茎を撫でるとそのままその下のすっかり濡れそぼっていた女の部分へと向かっていく
拒む理由はひとつもない
ただ今日は早起きしたわりには寝坊になるかもしれない
でも、ま…それもいっか…♥

編集にはIDが必要です