第一話 [#l87540c0]

その一 [#s8a56e7e]

「あら、虹鱒じゃない。どうしたのこれ」
僕は自分で罠を作って試した旨を話し、彼女にその魚籠を手渡した。
「そういえば最近は茸か筍ばっかりで、魚を食べてなかったわね。もしかして気を利かせてくれた?」
と言うより、何日も居候させてもらってるのに何もしないのでは居心地が悪い。
だから出来ることをしたかった、という方が近いと思う。
「あんたまだ小さいのに、結構しっかり者なのね…。じゃあ、せっかくだし。とびっきり美味しく焼いてあげましょうか」
彼女は小刀で魚の腸を取り除くと、塩をふって竹ひごを刺し、火のともった囲炉裏の中に突き立てる。
水が流れるかのような、実に見事な手際だった。
「筍ご飯もまだ残ってるし、ちょっと早いけど夕飯にしましょ」
彼女が土間の向こうの竃を一瞥すると、すでに入れてあった薪に火が着く。彼女いわく、妖術だとか。

竹林で迷子になった僕が彼女、藤原妹紅に拾われて、一週間が経っていた。

その二 [#bc04de47]

「竹細工の職人だっけ? 器用なものねえ…」
食事を終えた妹紅さんは、僕の作った魚籠をしげしげと眺め回している。
職人なのは両親であって僕はまだ卵だけど、訂正する意味も無さそうなので曖昧に頷いた。
「でも、ありがとうね。釣りは時間がかかるしその場を動けないから、こういうのがあると助かるわ」
妹紅さんは一人暮らしが長いらしく、釣りだの狩りだのをすることも珍しくないとか。
普段はこの竹林で道案内をしてるそうだけど、確かに釣りは片手間にやるものではないだろう。
「何かお礼しなくちゃね。と言っても、今は里で買ってきたお饅頭くらいしか…」
そもそもが恩返しのつもりでやったのに、ここでお礼をされては話がこじれてしまう。僕は丁重にお断りした。
「もー、子どもの内くらいは年長者に甘えなさいよ。可愛くないわねえ」
そうは言っても、僕と妹紅さんは背丈も同じくらいだし、さんを付けるのもお世話になってるからで、年長者と認識するのは
「ま、その話はおいおいしていきましょう。お茶でも淹れるわね」
手持ち無沙汰になった僕は、魚籠を手に取って、改良出来そうな点がないか検討してみることにした。

その三 [#hce337e2]

藤原邸の風呂は、由緒正しい五右衛門風呂だ。風呂場も広く、椅子や石鹸などの備えもある。
「そうそう、指に絡まないようにゆっくりね。うん、上手上手。やっぱり器用ね」
その風呂場で、どういうわけか僕は妹紅さんの髪を洗わされていた。
彼女の髪は長すぎて、自分一人では洗うのも乾かすのも大変な苦労があるとかないとか。
「かと言って切っちゃうのもね。髪は女の命なんだから」
まあ、確かに手入れに殊のほか気を使っているのはわかる。
こんな野性的な生活にもかかわらず、彼女の髪は人里で見るどの女性よりも綺麗に見えるくらいだ。
「ちょ、ちょっと……やだ、褒めすぎよぉ…」
妹紅さんが背を丸めてしまい、急に洗いにくくなる。そんなに丸くなられては頭頂部が洗えない。
僕は手を伸ばす。彼女の背に下腹部が
「うっきゃああ!」
いきなりのけぞられて、僕は為す術もなく弾き飛ばされ壁に激突する。
「ひ! 人の背中に何てものくっつけてんのよ! ばか! ばか! 野獣!」
頭からお湯を被って泡を落とし、風呂場から走り去る妹紅さんを見送って、僕はゆっくりと気絶した。

その四 [#nae26b7d]

「…ごめん。ホンットごめん。思わず混乱しちゃったのよ。許して」
枕元には拝むように両手を合わせる妹紅さん。
何でも、あれから半刻ほどして頭が冷えてから、僕を回収して布団に寝かせてくれたんだとか。
「…ねえ、大丈夫? 何か顔色が…」
言われてみると、何となく寒気がする。これは…風邪をひいたに違いない。
まあ、全裸で半刻も倒れていればどんな馬鹿でもひくだろう。
「ど、どうしよう…! うちには薬なんて…。でも、あそこにだけは行きたくないし……あわわわ」
見ていて気の毒なほど妹紅さんは狼狽している。何とか落ち着いてもらおうと、もんぺの裾を握り締めた。
「…………。そ、そうよね…」
どうやらわかってもらえたらしい。僕は安堵して布団の中に手を戻す。
「私のせいだもん。薬がないなら、せめて添い寝くらいはしなくちゃね…」
言いながら服を脱いでいく妹紅さん。どうやら僕の意図はまるっきり伝わっていないようだった。

その五 [#qdb1e835]

「ど…どう? 寒くない?」
ぴったりと密着した妹紅さんの素肌は、すべすべで柔らかくて、ひんやりとして、とても気持ちいい。
「そ、そんな細かく説明しろって言ってるんじゃないわよ。それと、私が冷たいんじゃなくってあんたが熱いの」
なるほど、そうなのか。
でも、余計な熱が妹紅さんの素肌を通して出ていくようで…とっても気持ちいい。
「感想はもういいから、おとなしく寝てなさい。しばらくは…こうしていてあげるから」
抱き締められる。なだらかな胸が、ほんのりと温かい。
とくん、とくんという鼓動も、ずっと聞いていると…とても気持ちが落ち着いて――…
「……ねえ、もう寝た?」
そっと、妹紅さんが離れる。僕は半ば以上まどろんだまま、仰向けに寝かされた。
「ね、寝てるわよね…? ちょっとだけ、ちょっとだけなら…」
ふわりと、唇に唇を乗せられる。
それが意味するところを何となく知っていた僕は、混乱のあまり再び気を失いそうになっていた。

その六 [#rbf7615f]

「まだ…まだ起きないで…。もうちょっと、もうちょっとだけだから……」
今度は唇を押し付けるように重ねられた。にゅる、と何かが口に入り込み、たまらず全身がびくりと震える。
「お、起きた…? 起き…て……ない、わよね…? …ちゅ、ちゅる…」
大きな反応に驚いたものの、僕がまだ寝息を立てているのに安心した妹紅さんは、再び舌を入れながら口づけをしてきた。
「んっ…ふっ、ふぅ…ちゅる、れる…ちゅうぅ…れろ、れるれる…」
……何だろう。彼女の吐息が、発熱中の僕の吐息より熱く湿ってきている。
それに、胸板に当たる彼女の控えめな胸に、しこりのような感触がある。それに下腹部のあたりまでがしっとりと熱い。
布団の中は今、加速度的に蒸し暑くなっていた。
「ダメ…耐えなきゃ……我慢しなきゃダメなのに…」
ぐにゅる、と不思議な感触を伴って、おちんちんに何かが擦りつけられた。
布団に隠れてよくわからないが、体勢からするとたぶんお互いの股間が擦り合わされている。
生まれて初めての感覚に、僕は
「やだ…おっきくなってきてる……。我慢、できなくなっちゃうぅ……」
自分でも気づかない内に、喘ぐように熱い吐息を漏らしていた。

その七 [#eea10bbe]

ぐにゅると奇妙な感触があって。
それから鋭利な痛みと、それを圧倒的に上回る、麻痺と痛痒の狭間のような未知の感覚が、立て続けにおちんちんに襲いかかってきて、
「きゃあっ!」
思わず叫び出していた。それに心底驚いた妹紅さんもまた、短い悲鳴を上げる。
「あ、あああ……入れちゃった…入れたせいで起きちゃったああ……」
妹紅さんが、今まで聞いたこともないほど鼻にかかった、震えた声を出す。
その声はまるで鼓膜ごと僕の頭を溶かすようで、謎の感覚に包まれたままのおちんちんが痺れるように熱くなる。
「やぁっ…! な、中でまたおっきく……痛ぅっ!」
絹を裂くような声と同時に圧迫感が高まる。引き搾るかのような動きに、僕は知らずに腰を使い出す。
「ひぁっ! あ、あ、あ、ふぁっ!だ、ダメ……今動いちゃダメぇ……」
くぐもった水音が、蒸し暑い布団の中に、何度も何度も立っては消えて、そのたびに妹紅さんは切なそうな吐息を漏らした。

その八 [#bd2e312a]

背丈は同じくらいなのに、妹紅さんの腰は僕よりだいぶ細いと、両腕を回して初めて気付いた。
その柳のような腰を抱き、僕はしゃにむに腰を打ち付ける。
理由はよくわからない。ただ、そうしたいから。そうすると、知らない感覚が僕の身も心もとろけさせてくれるから。
「あんっ! ひぁ、ああ、はぁっ!」
妹紅さんの声音から苦痛の色が消えていく。そういえば僕がさっき感じた痛みもいつのまにか消えている。
あとに残ったのは未知の感覚に従うまま腰を振る僕と
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ♪」
僕の知らない感覚に浸りながら腰を使う妹紅さん。やがて溶け合いそうな熱が、腹の下からせり上がって、最後のひと突きと同時に爆ぜた。
「うああぁっ! あ、あああ…あ…」
僕の頭を掻き抱いて、がくがくと震えながら、妹紅さんは。
「……………。ごめん……」
ものすごく気まずそうだった。

僕達はとりあえず布団を替えて、それからもう一度お風呂を沸かした。

その九 [#f610a829]

湯船に浸かりながら、妹紅さんは長い長い弁解を始めた。
僕は気にしていなかったけど、彼女が話したいと言う以上、止めることもない。
「…命長ければ恥多しってね」
そう彼女は切り出した。
語られたのはいずれもお伽噺のようで、それでいて生々しく、恐ろしいほど簡素に纏められていた。
「…そんなわけでね、男が怖いのよ」
大雑把に言うと、彼女は女一人での流浪を強いられ、その最中には心ない男たちに酷い目に遭わされたことも一度や二度ではなく。
やがて男を愛することはおろか、触れることさえできなくなったという。
「それでも、今は会話くらいならできるまでになったのよ。おせっかいな知り合いのおかげでね」
始終淡白だった妹紅さんの声に、わずか感情の色が差す。
きっと大切な人なのだろう。そう思った。
「で、さっきのは……たぶん気の迷いだと思う。思うけど…その…」
妹紅さんが、どんどん水没していく。鼻先あたりまで湯に浸かりながら、ごぼごぼと。
――気持ちよかった。
そう言ったような気がした。

その十 [#e571e1ce]

気の迷いであったかどうかは、もう一度試せばわかる。
僕がそう提案すると、妹紅さんは真っ赤になってさんざん口ごもった末に
「…じゃあ、お風呂から出たらね」
そう言って、さっさと体を拭いて出てしまった。浴槽に蓋をして、僕も慌てて後を追う。
「ゆっくり入っててもよかったのに。バカね」
脱衣所で真っ白な髪を丹念に拭きながら、妹紅さんは呆れたように微笑んだ。
確かに病み上がりの身としてはもっと温まっておくべきだろう。
でも、僕だって知りたかった。あれが気の迷いのなせる業だったのかを。
「お、思い出すんじゃないわよ…バカ……」
ばさ、と視界が暗転する。妹紅さんが髪を拭いていたタオルを頭から被せられたのだ。
「でも…待ってる」
引き戸を閉められる寸前、蚊の鳴くような声で、そう聞こえた……ような気がした。

その十一 [#z0668233]

お互い全裸で、何故か布団の上に立って差し向かう。背丈は同じくらいなので嫌でも目が合う。
妹紅さんは先刻から何度も目を逸らし、意を決して正面から見据えてきては、また目を逸らすを繰り返していた。
「そ、そんなまじまじ見ないで…」
全裸が恥ずかしいのか、さっきの一件を思い出しているのか、妹紅さんは顔だけにとどまらず、生白い肌を全面的に桜色に染めている。
何度も胸元や股間を隠そうとするが、僕が隠さないでいるからか、すぐに腕を下ろしてしまう。
「な、何とか言ってよ……っ!」
一歩を踏み出すと、あからさまに体をすくませてしまう妹紅さん。
やはり怖いのか。さっきのは本当に気の迷いだったのか。僕にすら、恐怖を…。
「あんたの体……こうして見ると結構男っぽいから…。でも、平気……あんたは、あんただもん……平気よ」
両腕が差し出される。僕はその中にもう一歩踏み込んで
「ほら、やっぱり平気じゃない」
抱き締めた妹紅さんは笑っていたけど、やっぱり少し震えていたので
「んむ…っ」
あの時の彼女に倣い、そっと唇を重ねてみると、震えはすぐに止まってくれた。

その十二 [#y097207e]

改めて考えると、抱き合いながら舌を絡めるというのは結構凄いことをしている気がする。
口づけのたびにぴちゃぴちゃと、舌が絡まるたびににちゃにちゃと、口の中に響く音が直接脳を刺激するようで。
それだけでおちんちんは反り返らんばかりに固くなる。
「んっ……もう少し強く触ってもいいから…。うん、これくらいで」
試しに胸を触ったら、彼女からも乳首を触られた。甘ったるい痺れが広がり、膝が落ちそうになる。
今のと同じくらいの力加減をしろ、ということだろうか。
「ひぁっ…! や、何これ……自分で触るより全然……はっ!」
妹紅さんが両手で口を塞いでも、僕はお構いなしに乳首をいじる。
せっかく覚えた力加減を忘れないように、丁寧に、丁寧に。
「んふっ…! ん、んんっ…ひん、い、んぅ、ん、んんんんっ!」
瞬間、びくりとのけぞった妹紅さんが、白髪を乱れさせながらぺたりと布団に座り込んだ。
抱き起こそうと近寄る僕を、おもむろに片手で制すると
「い…いいから、あんたはそのまま立ってて。今度は私から……ね?」
その手で柔らかく僕のおちんちんを握ると、妹紅さんはあろうことかその先端に舌を這わせ始めた。

その十三 [#f0f08eeb]

乳首とは全く異質な、鋭角的な刺激が走る。
股間を走り、背筋を貫き、脳に刺さるような刺激に、僕は思わずとろけた声で喘いだ。
「気持ちいい…?」
つう、と竿に舌が這う。こそばゆいような痺れるような感覚に、今度こそ僕は膝が崩れて尻餅をついた。
「そんなに気持ちいいんだ…。でも、まだ終わってないのよ…?」
白髪を引きずり、四つん這いの妹紅さんが僕の股間に顔をうずめる。
髪を掻き上げ、口をいっぱいに開けて、そのままおちんちんを咥え込む。
「んんっ! けほ、けほ……。そ、そんなに気持ちよかったの? 嬉しいような物足りないような…複雑ね…」
咥えたまま少し動かれただけで、あの熱が一気に昇ってきて、妹紅さんの口の中に炸裂した。
その正体は、白く濁ったどろどろの体液。
「精液よ、精液。知らないの?」
僕はかぶりを振った。少なくとも寺子屋で習ったことはない。両親から聞かされたことも。
「…まあいいわ。そろそろ本番に入りましょうか。ついでに色々教えてあげるから……ね?」
その瞬間、彼女の瞳に宿った妖しい光に応じるように、おちんちんが固さを取り戻した。

その十四 [#e11fef21]

「いい? 今からもう一度、あれをするわけだけど…」
僕の腰に膝立ちで跨がった妹紅さんが、そう言って軽く咳払いをする。
「終わるまで、私をずっと抱き締めていること。それか手を握ってること。いいわね?」
それはまた何故に
「返事は?」
はい。
「よろしい。じゃあ、そのまま体を起こして。そう、それでそのまま抱き締める……い、いくわよ………っ」
妹紅さんの下ろした腰の中に、おちんちんが、ゆっくりと呑み込まれていく。ぬるぬると、ずぶずぶと。
「ふふ…やっぱり怖くなんかなかったわ。でも、動かれるのはやっぱり怖いかもしれないから……」
抱き締める力を強めると、彼女からも抱き返してきて。
「優しく動いてね」
耳元で、甘えるように囁いた。

その十五 [#jc062a0d]

妹紅さんの中は熱く、狭隘で、とくとくと脈打ちながら、あらゆる角度から吸い付いてくる。
手とも口ともまるで違う刺激に早くも腰が抜けそうになる。
「ふふ…顔、溶けきってるわよ。可愛い…」
唇が重なり、だらしなく開いた僕の口に舌が滑り込んでくる。
くるくると、ぬるぬると、好き放題に粘膜を舐め回し、その味を楽しんでいる。
「ん、んっ、んぅっ…。そう、とにかく優しく動いて。あんたが優しくしてくれるなら…私も…きっと大丈夫だから…」
甘やかな吐息にふと、悲哀の気配が混じる。
…僕は想像した。彼女が如何に辛い目に遭いながら、如何にして男を恐れていったのかを。
「んっ……あんたの腕の中、気持ちいいよ…。あの怖い感じが、まったくしない…」
すると、妹紅さんの反応に変化が出てきた。
舌を絡めるのも忘れ、僕の首にしがみつきながら、僕の腰に反応するように中を締め付けてくる。
「気持ちいい……あんたに触れてるところ、全部きもちいいよぉ……」
僕は、離れていた唇を再び重ね、今度は自分から舌を入れて攻め立て
「ん! んんんっ、んんんんんー!」
途端に締め付けが小刻みになり、僕は堪らず精を吐き出していた。

その十六 [#v3a686c5]

何となく、僕にもわかってきた。
妹紅さんは不死身で物凄く長生きで色々知ってて大抵のことは一人でもできるし弾幕ごっこもやたらと強いけど。
何百年も昔に負った心の傷から未だに立ち直れずにいる、人並み以上に心の弱い女の子なんだって。
「な…何よ。私より何桁も年下の癖して、わかったようなこと言って…」
だけど、僕を僕として見てくれる。
男っていう枠で括らずに、僕個人に対して接してくれる、人並み以上に心の強い女の子なんだって。
「別に、私は……だってあんたは私なんかを誉めてくれたり、魚を獲ってくれたり、髪を洗うのを手伝ってくれたりするから…何となく大丈夫かなって思っただけで…」
僕で男性不信を治そうとした?
「そ、そういう利用とかじゃなくて……その、男の子に懐かれるなんて久しくなかったし…。第一、あんたの寝顔やたら可愛いし……こ、これでも随分我慢したのよ?」
僕は、何だか堪らなくなって、真っ赤になっている妹紅さんの頭をそっと抱き寄せる。
「……ごめん。嫌いになった…?」
僕はゆっくりと首を振り、そのまま彼女をそっと押し倒した。

その十七[#e3f3bac1] [#t74729a1]

妹紅さんが仰向けに寝かせ、両足の間に顔を埋める。考えてみれば、ここを間近に見るのは初めての
「こらあっ! あんまりじろじろ見てるんじゃないわよ!」
何度もおちんちんを出し入れしたからか、押し広げてみると粘膜が充血している。
それがぬるぬると、てらてらと月明かりを弾いて、とっても綺麗な
「だから解説はいいってばぁ! ううっ…広げちゃやぁ…恥ずかしい…」
何だか涙声になってきたので、お詫びの印に口づけの雨を降らせる。
「にゃあっ?! ちょ、あんたどこ舐め…はんっ、や、やめ…あ、ああ…」
上体を起こして僕の頭を両手で引き剥がそうとするが、舐めれば舐めるほど、彼女の手からは明らかに力が抜け失せていく。
「やだ、やだぁ……そんなとこ、舐められて…恥ずかしいのに……恥ずかしいのに、わた、し……あ、あああっ! ふぁああああっ!!」
何か、熱いものが勢いよく噴き出して、僕の顔面を直撃した。

その十八 [#o4ba7ede]

両肩にかかとを引っ掛けて、そのまま体を前傾させる。
潮を噴いた興奮の冷めやらぬ膣口が真っ赤な花びらを開いて、透明な蜜を垂らしながら
「だから説明はいいったら! そんなことより、ほらっ」
妹紅さんは両手を差し伸べてきた。多分、手を握れという意思表示だろう。
僕は片手の指と指を絡め合い、もう片方の手で先端を導いて
「ふぁぁ…ああっ…。入ってるぅ…」
その手を繋ぐと、改めて腰を前後に動かす。
水平に抜き挿しされるおちんちんの先に、時折り何やら固いものが触れてくる。
「うぁあっ! お、奥……奥に当たってる…よ……」
挿入の角度によるものだろうか。一番奥まで届いたらしい。
そして、それはたいそう気持ちがいいらしい。
「中でビクビクしてる……。イッて…お願い、一緒にイッて! やぁっ、ぅああっ! あああ、ああああっ!!」
腰から下がぐちゃぐちゃに溶けて、弾け飛びながら真っ白になっていく感覚。
搾られながら射精して、僕はそのまま妹紅さんの胸の中に突っ伏して。
「………お疲れ様。聞こえてないだろうけど………ありがとうね」
頭を撫でられる感触に身も心も委ねる内に、やがて本当の眠りに落ちた。

第二話 [#t9093f91]

その一 [#z2ad65f3]

どこからか聴こえてくる歌声で目が覚めた。控え目ながらよく通る声が、どうやら庭から聴こえてくる。
「おはよ。あんたにしては朝寝坊ね」
洗濯物を干していた妹紅さんが、長い長い白髪をたなびかせながら振り向く。
気のせいだろうか、何となく内股で、足腰がもじもじしていた。
「う、うっさいわね! あんたのせいで未だにムズムズしてるのよ!」
僕は苦笑しつつ草履を履いて庭に降り、洗濯物の籠に手を延ばした。
「あれ…手伝ってくれるの?」
僕はどちらかといえば非力だが、人手はあるに越したことはないだろう。
「ま、そういうことなら………ッ! や、やっぱいい! あんたはあっち行ってなさい! っていうか行け!」
一番大きな…布団の掛け布を手に取った瞬間、ものすごい剣幕で追い立てられ。
僕はやむなく薪などを拾いに行くと称して外出せざるを得なくなった。
「お昼までには切り上げるのよー」
妹紅さんが庭先から声を張る。その手の掛け布の真ん中には、未だ頑固にこびりついたままの血痕がはっきりと見えていた。

その二 [#w7d2561c]

この竹林には竹しか生えていないため、まっとうな樹木を薪にするとなると相当な遠出を強いられる。
一人では未だに藤原邸が見える範囲の外にすら出られない僕は、とりあえずすぐ裏手の小川に足を延ばした。
清流に足を浸し、しばし冷たさを楽しんでいると、遠くの方でウサギたちが跳ね回っているのが見えた。
「やっぱりここにいたわね」
釣竿と魚籠を手に、妹紅さんがやって来た。ご丁寧に丸めたゴザまで小脇に抱えている。
「昨日の虹鱒、美味しかったわね」
数は少なかったが大ぶりで、大変食べでがあった。
もう少し魚籠の口を広げる工夫も考える必要がありそうだ。僕は空の魚籠をこまごまといじり始める。
「ま、あれほどの大物はそうそうお目にかかれないわよ。今日は質より量といきましょ。時間はあるから」
言いながら妹紅さんは糸を垂れ、そのまま竿を川辺に突き立てた。見た限り結構深く刺してある。
「これでよし、と。んじゃ、引いたら起こしてね」
胡座を組んだ僕の膝に頭を乗せてゴザの上に寝そべると、妹紅さんは本当に寝入ってしまった。

その三 [#jd42eb5c]

一意専心。職人に必要なのは集中力であると、僕はそう両親に叩き込まれた。
見よう見まねで魚籠を編めたのも、この教育の賜物だろう。
……しかし、改めて見ると妹紅さんはやっぱり美人だ。僕と同い年くらいにしか見えないのに、どこか大人びて見える。
しかし、やっぱり寝顔は僕と同い年くらいなのだ。
――ふと、唇が視界に入る。小さくて、しっとりと柔らかな…。
僕はかぶりを振った。職人たる者、色香に惑わされていては話にならない。集中だ僕。
してみると、驚くほどあっさりと魚籠が編めてしまった。口の部分を少し広げるのにも成功しているし、耐久性にも問題はない。
…僕は急に手持ち無沙汰になった。
釣竿に今のところ反応はない。さらさらと流れる清流と、どこかで鳴いている蛙の声だけが聞こえる。ウサギはいつしかいなくなっていた。
僕は再び妹紅さんを見る。……彼女が寝息を立てるたびに、控え目な胸が上下する。
あの白い服の下には、あの筆舌に尽くしがたい素敵な触り心地のおっぱいが――
そこまで考えた時、ふと魔が差した。
ちょっと触るだけなら大丈夫、と…。

その四 [#z7e1aae4]

薄手の白い…確かブラウスと言っただろうか。すべすべの布地に、慎重に指先を触れさせる。
「んっ…」
反射的に手を引いて、ついでに周囲も見回した。…もちろん誰もいない。
視線を落とすと、妹紅さんは相変わらず寝息を立てている。
僕は深呼吸をして落ち着きを取り戻すと、意を決して再び掌を下ろした。
…ぱふっ。
感動的なまでに柔らかな手応え。少しざらついた固さがあるのは、多分さらしを巻いているからだろう。
不意に、指を動かしたい衝動に駆られる。もし動かせば当然おっぱいを揉むことになり、そうなれば妹紅さんはまず間違いなく目を覚ますだろう。
僕の手先は緊張のあまり、おっぱいに触れたまま石化した。
……その時、水面で浮きがぱしゃりと動いた。あまりに唐突な展開に僕は半ば混乱しながら寝ている妹紅さんをそのまま揺さぶって
「ひえぁっ!?」
結果的に、全力でおっぱいを揉みしだくことで彼女を起こしてしまったのだった…。

その五 [#o50b6466]

釣果は結局それなり。釣った魚は川辺で焼いて食べたが、その間の妹紅さんは一言も口をきいてくれなかった。
「まったく……私でも一週間は我慢できてたのに、何であんたはあの短時間すら我慢できないのよ」
乱暴な手付きでちゃぶ台に湯呑みを置きながら、妹紅さんはようやく口を開いてくれた。
僕は魔が差したことと半ば事故だったことを改めて説明し、平謝りに謝った。
「あーもう、それはもういいってば! …私だって結局は、あんたを襲っちゃってるわけだし…」
それにしては目覚めと同時の平手打ちに結構な力が入っていたような
「それはそれ、これはこれよ。…まあ、改良した魚籠も役に立ったし、今日はこれで許したげるけど」
妹紅さんはそっぽを向いてしまった。口では許すと言っていても、
やはりそうそう割り切ることは
「……もっと堂々と襲えばいいのに…おっぱいくらいなら、別に…」
よく聞こえなかったので聞き返したら、再び平手を見舞われた。

第三話 [#jedcb48b]

その一 [#td0bcf12]

夕方からの雨によって昼間から干していた洗濯物は軒並み台無しになった。
…正確には、回収を急ぐあまり妹紅さんが物干し台を倒してしまい、洗濯物が軒並み泥だらけになったのだ。
ついでに言うと、そばで取り込みを手伝っていた僕も泥を被った。
「しょ、しょうがないでしょ! 急いでたんだから…」
確かに洗濯物が夕立に遭えば誰だって急ぐ。しかし、だからといって
「ああもう、悪かったわよ! わざとじゃないんだってば!」
まあ、過ぎたことは仕方がないとして、問題はこの後だった。
着の身着のままで拾われた僕には着替えがない。いや、あるにはあるが着替えに使っていた服が泥だらけなのだ。
このままでは僕は全裸で過ごすことになるだろう。多分、明日の昼間までは。
「わ…わかったわよ。昨夜みたいに温めてあげればいいんでしょ…」
妹紅さんの結論は決して短絡的なものではない。
湯上がりの熱は布団の中でも冷めるし、火鉢に火を入れたまま寝るなど論外だ。人肌で温め合うのが恐らく最も正解に近い。
「じゃあ灯り消すけど……いいって言うまでこっち見るんじゃないわよ?」
燭台の火が消え、闇が訪れる。
その中から聞こえてくる衣擦れの音がやけに生々しく耳に響いて、僕は思わず生唾を呑んだ。

その二 [#k4610c35]

障子が通すおぼろな月明かりに生白い素肌をさらして、妹紅さんは胸元と股間を両手で隠しうつむいていた。
「だ、ダメ……やっぱり恥ずかしい…」
昨夜のアレを差し引いても、僕は彼女と一週間、毎日一緒に入浴していた。
流石に手拭いで隠してはいたが、今さら肌を見せるのが恥ずかしいものだろうか。
「は、恥ずかしいに決まってるじゃない…。ここはお風呂じゃないし、その…」
……まあ、何となくわかった。お風呂で肌をさらすのは当然だけど、寝室で肌をさらすのは男女の営みの時だけだから恥ずか
「だから説明はいいってば! もう、先に寝るからねっ!」
妹紅さんは素早く布団に入ると、僕に背を向ける形で横になってしまった。仕方がないので僕も入り込む。
…洗い髪の香りと、妹紅さんの匂いが、僕の鼻腔をとろけさせ、血の巡りを下半身へと
「だから! 説明はいい……って…」
反射的に怒鳴りながら、体を反転させる妹紅さん。
布団の中とはいえ男と全裸で向かい合っていることに気付いたらしく、あっという間に身を縮めてしまった。
「ま、まだ温まらないの…?」
僕は無言で頷くと、ゆっくりと彼女の頭を抱き寄せた。お互い温め合うために。

その三 [#a6e0ca4e]

改めて間近に見ると、妹紅さんの髪は本当に綺麗だ。
同じ白髪でも里の老人のように黄ばんだりしていないし、悠久の刻を生きていながら髪が痛んでいる様子は全くない。
指で梳けば絹のようにつややかで、清流のように指から流れ落ちていく。
「やぁ…! やだやだ、そんな恥ずかしいこと言わないでよぅ……」
目を固く閉ざして、弱々しく首を振る。近くで見ると睫毛がかなり長く、顔そのものもシミひとつない。
「だからやめ……んむっ?!」
顔を向けられるのと同時に唇を重ねた。驚きのあまり石化した妹紅さんの口の中は、
「ん、ふ……や…にちゃ、ちゅ、くちゅ…」
熱くて、しっとりしていて、ぷりぷりしていて、ほのかに甘い。…そういえば、夕飯の後に干し柿を食べたんだったか。
「も、う……調子に乗るなぁっ!」
両肩を押さえ込まれ、そのままのしかかられる。白髪が音のない滝のように、さらさらと流れ落ちた。
「こ…今度は私の番よ。年季の違いってものを見せてやるわ……うふ、うふふ、うふふふふ…」
妖しげな光を瞳に湛え、妹紅さんはどこか捨て鉢に笑っていた。

その四 [#kb82276b]

妹紅さんの生温かい舌が、耳の輪郭に沿って這い、舌先が耳に入り、耳たぶをやわやわと舐め回す。
「あはっ、可愛い声で鳴いちゃって…。ほら、まだ続けるわよ?」
耳の裏から首筋を、ナメクジが這うように舐める。
飽きると小鳥のように首筋の薄皮をついばみ、そのたび脳に、理性に揺さぶりがかかる。
「見てなさい…昨夜あんたが私にしたこと、全部お返ししてやるんだから……ちゅ」
耳や首とは異質な感覚、明白な快楽が全身に伝播する。
少し乳首を吸われたたけで、股間の熱が最高潮に届きそうになっている。
「そうそう、あれは恥ずかしかったわよ。舐めてイかされるなんて思ってもみなかったわ……はむっ」
腰が勝手に跳ねた。あの小さくてしっとりした、ぷりぷりの唇が、僕の勃起ちんぽを吸い上げ、しゃぶり立てている。
しかも、片手で乳首をつまんで捏ね回すおまけつきと来ては
「んんっ! ん、んっ……こくん。…ふふ、どう? 恥ずかしいくらい気持ちよかったでしょ?」
喉を鳴らして一滴残らず吸い出してから、妹紅さんはしてやったりという眼差しを僕に向けていた。

その五 [#u194b426]

…妹紅さんの目がおかしい。あれは多分、まず間違いなく恥ずかしさのあまり混乱している目だ。
少し誉めただけで混乱されたのでは、やりづらいこと甚だしい。なので、僕は逆襲に出ることにした。
「ひゃん!?」
僕の乳首を攻めていた手を掴み、その腕に指先を這わせる。手首から前腕へ、肘を経て上腕から腋下へ。
「や、ちょ、くすぐ……あっ、ひんっ! こら、やめ…ん、はぁ…」
思いの外によく効いている。敏感肌なんだろうか。
僕は試しに、すっかり力の抜けた妹紅さんの手を握り、人差し指を口に含んでみた。
「んぁっ! やだ、何これ……あ、知らない…こんなの知らないっ…!」
指を這う舌の感覚に、妹紅さんは昨夜の復讐も忘れて崩れ落ちる。
僕は指を解放すると、彼女を改めて布団に寝かせ、その上に覆い被さった。
「…………。ずるい……」
僕は聞こえなかったふりをしながら唇を重ね、おもむろに片手を乳首に、片手を秘裂に添えると
「ぶぁっ! だ、ダメ! 今そんな、両方なんてされたら……!」
お構いなしに、気が済むまで十指を運動させたのだった。

その六 [#t7737285]

「ぁあっ…はっ、ぅあっ…はぁ…」
唇を離すと、妹紅さんは肩で息をしながら、じっとりとした視線を僕に向けてきた。
「あんた……何で、そんな…落ち着いてるのよ…。私よりずうっと年下の癖して……納得…いかない……」
息も絶え絶えだが、ようするに年下の僕が落ち着き払っているのが気に入らないようだ。
…とは言っても、僕は昨夜まで間違いなく童貞だったし、皮すら剥けていなかった。
当然、閨の経験だって昨夜が初めて。妹紅さんは正真正銘、僕の初めての人だ。
「…じゃあ、何でよ」
多分、それは妹紅さんが年上とは思えないほど純情で、可憐で、少しばかり迂闊で粗忽だからかと。
「……随分な言い種じゃないの」
でも、そんな妹紅さんのこと、凄く好きです。
「――――――え? …っあ、ああああっ!」
純情な妹紅さんに、告白と同時の挿入は、かなり堪えたようだった。

その七 [#df8fa5de]

「やだ……やだ、やだやだやだ!」
いきなり首をぶんぶん振られて、思わず腰の動きが止まる。
顔を近づけてみると、うっすらと涙が滲んでいた。一体どうしたのかと訊けば
「だ、だって……変じゃない。告白する前に、その…しちゃうなんて」
先に手を出したのは間違いなく妹紅さんだが、僕は黙って続きを促した。
「本当はこういうのって順序があるじゃない。告白するにしても、その前に交換日記とか、和歌を贈ったりとか」
そういえば、そんな時代の人でした。
しかし妻問い婚上等の時代の人が男を家に上げたとなると、これはやはり順序が違うことになる。
「あの時は……あんた、迷子になって泣いてたじゃない」
みっともない話だが、僕は確かに泣いていた。でも、それが何だと
「子どもが独りで泣いてたら…ほっとけるわけないじゃない……」
或いは、ずっとずっと昔から、子どもの頃から、子どものまま流浪を強いられ続けた妹紅さんの、
それは魂の慟哭であったのかも知れない。
僕は、黙って、ただ泣きじゃくる彼女を抱き締めた。

その八 [#efe2c902]

こんな非道な話があるだろうか。
確かに先に手を出したのは妹紅さんだが、彼女は過去の自分に僕を重ね、完全な善意で僕を救ったのだ。
事情を知らなかったとはいえ、僕は彼女の純情を嘲笑い、善意を裏切ったようなものだ。
「あいたっ……ちょっ、苦しい…」
ごめんなさい。僕はそう、とても素直に口にする。何の打算も他意もなく、彼女を胸に抱きながら。
「もう…。男の子が泣くんじゃないの。私だって色々あったんだもん、全部わかってもらえるなんて思ってないし……」
不意に、頭を撫でられる。僕と同い年くらいにしか見えない癖に、まるで母親のような優しい手付きで。
「子ども一人を許すくらいの器なら持ってるつもりよ。だから……」
不意に、両足で腰を固定される。次いで膣内が急激に締まり、萎れていたちんぽは見る間に復活した。
「泣いてる暇があるなら、少しでも私を悦ばせて。……ね?」
僕は、ゆっくりと腰を動かし始める。まるで初めての時のような、新鮮で鮮烈な快楽に浸りながら。

その九 [#u4efdc54]

気持ちいい。気持ちいい。
昨日までの、否、さっきまでの快感とは、明らかに質が違う。
ちんぽが生殖本能に反応する時とは、何もかもが異なる。
「そう。それが好きってこと」
妹紅さんが、僕の下で微笑む。
その目を、声を、肌を、香りを、彼女の存在自体を感じるたびに、胸が切なく締め付けられる。
「そう。それが愛しいってこと」
唇を重ねる。舌を絡ませる。唾液を送り合う。
やることは同じのはずなのに、粘膜が触れ合う以上の感覚が確かにあって、僕はたまらず彼女の奥に射精する。
「ふあぁっ…。そう。それが――」
強く抱き合う。唇を貪り合う。
柔らかな肌が密着し、そこから何もかもが溶け合い、混ざり合って、ひとつになっていくような感覚に酔い痴れて。
「――幸せってことよ」
最後の一滴まで搾られて、妹紅さんの胸の中に崩れ落ちる。柔らかくて、とてもいい香りだ。
「…私も好きだよ、あんたのこと」
妹紅さんは、ついばむような口づけをしてから、もう一度抱き締めてくれた。

第四話 [#i7bb8907]

その一 [#db60ca14]

襖の向こうからの芳香に強烈な空腹を覚えた僕は、自分が全裸であることも着替えがないことも忘れて布団から這い出した。
「おはよ。今朝は早いのね」
三角巾にエプロンといういでたちの妹紅さんがそこにいる。
台所にはすでに完成した料理も散見され、彼女がどれほど早起きかを窺わせた。
「早寝早起きは健康のもとよ」
冗談とも自虐とも取れることを言いながら、刻みネギを鍋に投下する。
「今朝は偶然、魚籠に大物がかかってたのよ。朝から出していいものか迷ったけど……若いんだから大丈夫よね、多分」
刺身、塩焼き、串焼き、骨の唐揚げ。そして、どんぶり飯。どうやら大物とはウナギらしい。
「そういうこと。夜雀がいればタレを少し分けてもらったんだけど、あれは夜行性だからね。でも、塩だけで作る白焼きもなかなかよ?」
と、何の前触れもなく竃の火が消える。どうやら汁物が出来上がったようだ。
「さ、妹紅さん特製ウナギ尽くしの完成よ。しっかり味わって、きっちり精をつけるようにね」
出来立ての胆吸いをお椀によそいながら、妹紅さんは優しく微笑んだ。

その二 [#m089fc5a]

「うわぁ……見事な食べっぷりね…」
妹紅さんは感心を通り越して若干引いているようだが、美味しいものは美味しいんだから仕方ない。
「おかわりはまだあるし、お料理は逃げないんだから、もっとゆっくり食べなさいよ…」
そうは言っても、ヤツメではないウナギなんて、普通に生活していては滅多に食べられるものではない。
思わず飢えた獣のようにがつがつと食べてしまうのも無理はないはずだ。
「……あんた、やっぱり子どもね」
ちゃぶ台の向かい側から、やにわに手を伸ばされる。白い指先が僕の口元を拭い、そのまま彼女の口へ。
「おべんと、ついてたわよ」
……何だろう。物凄く恥ずかしくなってきた…ような気がする。
「奇遇ね、私もよ…。やだ、顔熱い……やるんじゃなかった…」
それからしばらく、二人してウナギがのたうつように畳の上で身悶えた。

その三 [#g637caf3]

「へえ、なかなか似合うじゃない」
当座の着替えとして、僕は妹紅さんの服を借りることとなった。
真っ赤なもんぺの履き心地は割と快適で、腰回りがぴったりなので肩紐は必要なさそうだ。
「ま、下はこれでいいとしても……問題は上着よね。男物として使えるのはあれくらいだったし…」
縁側の向こう、庭先に見える物干し台に目をやる。
僕の自前の服と、ここで借りていた着替えは、まだ洗濯したばかりで半日は乾かないだろう。
着替えは犠牲になったのだ。妹紅さんのドジの犠牲に…。
「…あんまり図に乗ってるともんぺひん剥いてスカート穿かせるわよ」
調子こいてすみませんでした。
…しかし妹紅さんがスカートを持っていたとは驚きだ。少なくとも今までに目にしたことは一度もない。
「時々ね、知り合いが贈ってくるのよ。妹紅はもっと着飾るべきだってね。何着も渡されて置き場がなくなったら、今度は箪笥まで…」
座敷の隅の立派な箪笥は頂き物だったようだ。しかし、その人物は並のお節介焼きではないだろう。
「まあね。……でも、いい奴よ」
僕にも着られる上着を探して、妹紅さんは鼻唄混じりに箪笥の中を漁るのだった。

その四 [#eb817605]

「それにしても…」
妹紅さんがため息をついた。まあ、言いたいことは大体わかる。
「こんなにたくさんあったなんて…」
やっぱりだった。
ただでさえ洒落っ気のない妹紅さんのこと、いざスカートを穿くとなると迷いに迷うだろうとは思ったが、もうかれこれ一刻になる。
「こういうヒダヒダの入ったやつは可愛いんだけど、大体が異様に短いし……これじゃ太もも丸出しになっちゃうじゃない…」
そっと独り言に耳を傾けると、一事が万事この調子だ。
確かに短いが、これくらいならどこぞのメイドだって穿いている。
「ちょっと! 何いきなり独り言に割り込んで来てんのよ!?」
こちらに意識を向ける余裕はあったようだった。
「当たり前しゃない。あんたに見られるのを前提に選んでるんだから。…あ、でもこう短いとドロワがはみ出すわね。このショーツってやつを試そうかしら……」
前提である僕の視線を全く気にせず下着を脱ぐ妹紅さんに、僕は大いなる矛盾を感じざるを得なかった。

その五 [#v614334c]

「と、とりあえず一番気に入ったのを穿いてみたけど……どう?」
白いブラウスはいつも通りだが、真っ赤な吊りスカートと生白い太ももが目に眩しい。
脚を見せるだけで印象とはこうも変わるものか。
「そ、そんなに変わったんだ…。それで、その……似合う?」
閻魔様の罰が怖いので正直に言うと、毎日その格好でいて欲しいくらい似合っていると思う。
どこの誰かは知らないが、彼女にこのスカートを贈った人物は、里の広場に銅像とか建てられていいほど偉大な功績を残したのではなかろうか。
「やぁ………そんなに誉めないでよ。恥ずかしいんだから……」
スカートの裾を握り締め、真っ赤になってうつむく妹紅さん。
無理矢理に太ももを隠しているようだが、その分だけ他の丈が短くなっていき、今にも横から見えそうに
「見るなあっ!」
一喝された。
「ううっ……せめて脚だけでも隠さないと、人前にも出られない…」
再び箪笥を漁った結果、太ももを半ばまで隠せるほど長い靴下が出てきて、これが採用されたのだった。

最終話 [#j2c21085]

その一 [#oeea254d]

結局、妹紅さんは今日一日、一歩も外に出なかった。
さすがにああも短いスカートで人前に出る勇気はなかったということだろう。
「人里で晒し者になるくらいなら、私はひきこもるわよ」
職業柄、人里でもある程度名が通っている以上、無茶は出来ないということだろう。…しかし。
「……な、何じろじろ見てるのよ。私の脚に何かついてる?」
膝まで覆う黒い靴下と、太ももがほぼ丸出しになるほど短い真っ赤なスカート。
その狭間である生白い太ももが、どうしても目を惹く。
「だからって凝視するんじゃないの。流石に一日中は失礼よ?」
またしてもスカートの裾を引っ張って太ももを隠す。
白いショーツが横と後ろから丸見えだと、そろそろ教えてあげるべきだろうか。
「と、とにかく洗濯物は乾いたわよ。早くそのもんぺを返して」
一刻も早くスカートからおさらばしたいらしい。妹紅さんは意気揚々と、僕を押し倒して脱がしにかかった。
「こら、暴れるんじゃないの! この、待ちな……さいっ!」
ずるりともんぺが脱がされて、妹紅さんが硬直する。僕が、下に何も着けていなかったからだ。

その二 [#ke2e2fc3]

「…あんた、下着は?」
そこの洗濯物の山を指差す。と言うか、畳んだ段階で気付かなかったんだろうか。
「ちょっと……何で隠さないのよ」
それは妹紅さんがのしかかっているからです。あと、苦しいので僕のみぞおちからどいてもらえないでしょうか。
「………何言ってるの。あんた、今日は散々に私の脚を見てたじゃない」
確かに見た。じっと見ていた。ずっと見ていた。
しかし、それと局部を見られる羞恥心は、果たして本当に釣り合うものか。
「ふふん、こうして見ると半分くらいしか剥けてないのね。おとなしくしてれば小っちゃくて可愛いものだわ」
妹紅さんが僕の腹に深々と腰かける。ちょうど長椅子に座るような格好で。
そのついでに、おちんちんを指でぺちんと弾く。直截的な鈍痛が腰から背中を走り抜けた。痛い。
「あんたみたいに視線で女を辱しめるような悪ガキは、少しこらしめてやらないとねえ…」
未だかつてなく黒い笑顔を浮かべる妹紅さんは、もんぺに穿き替えることすら忘れているようだった。

その三 [#df9af522]

「あら、先っちょが濡れてる。あんた、私のもんぺ汚してないでしょうね…」
妹紅さんの指先が、鈴口を何度も何度も往復する。
ちんぽはすでに固くなり、真っ赤に充血していて、先走りの汁は溢れたそばから彼女の指に絡められ、ぬるぬると僕を刺激し続ける。
「ふふ、みっともなくて可愛い声……。もっと聴かせて?」
指先が鈴口に押し付けられる。何度も、何度も。
そのたびに僕の口からは、情けない喘ぎ声が溢れ出して、彼女を悦ばせてしまうのだ。
「やだ、ゾクゾクしちゃう…。私って、こんなやらしい趣味があったんだ…」
自分の肩を抱いてひとしきり悦楽に身震いすると、妹紅さんはいきなり僕の顔面に膝立ちで跨がった。
「ほら…あんたもするのよ。精一杯のご奉仕を…ね」
目の前には、妹紅さんのお尻がある。白いショーツは股の部分に盛大な染みを浮き彫りにして、彼女の興奮を物語る。
「ひぁんっ! そ、そう…その調子よ…。やっぱり器用ね、あんた…」
くちゅくちゅと、ちゅぷちゅぷと。互いの性器を貪る音だけが、静かな座敷に響いていた。

その四 [#u3c9ed78]

妹紅さんが頭を上下させる。そのたびに凄まじい快感が腰から波打って、指先まで溶けそうになる。
「ちゅぷ、くぷ…じゅぶ、ぢゅ…」
一心不乱の口技に僕は早くも根負けしそうだった。
今の状況で先にイッたりしたら、後で何をされるか知れたものではない。
僕は苦し紛れに彼女の局部を全力で舐め上げた
「ひゃんっ?!」
思いっきりのけぞる妹紅さん。どこかに急所でもあったのか。
僕は舌を一旦引っ込めると、代わりに十指を総動員して女陰を余さず愛撫する。
「ふあ…ひゃっ、は、ああ……あん! きゃ、ひああっ!」
……見つけた。米粒のような、この部分。
僕は舌を尖らせると、先端を思いっきりそこに突き立てた。
「あ、あああっ! だ、ダメ、そこダメ、そんな、あ、あああああっ!」
彼女が気を遣るのと同時に、またしても潮を噴かれ、それは当然のように僕の顔面を直撃した。
「うううっ……また噴かされた…。恥ずかしい…死にたいよぉ…」
四つん這いのまま悶絶する妹紅さん。僕はその腰を掴むと、わななく膣口に亀頭を添えて

その五 [#k10fad41]

「やだ……ショーツ穿いたままなのにぃ……」
そんなことを言われてもちんぽは入ってしまっている。
股の部分を横にずらして挿入したが、穿いたままというのは妹紅さんにとって落ち着かないものらしい。
「や、やだぁ……顔見えないの、やだぁ……」
……体の反応だけを見るなら、彼女は悦んでいる。
四つん這いにされて、後ろから組み敷かれて、いきなり挿入されたにもかかわらず、はしたない水音を立てて悦んでいる。
「お願い……前からしてよ…」
なのに、悦んでいるのに嬉しそうではない。魂が満たされていない。
永遠を生きる彼女にとって、それは恐らく死と同義。
「あは……やっと見えた…♪」
正面から抱き合う体位にしたら、泣いたカラスがもう笑った。現金にもほどがある。
…でも、彼女のそんなところが、僕は好きだったりする。
「ふふ…嬉しい。嬉しすぎて困るくらいよ。ね、早く動いて…」
ご要望に応えて、僕は妹紅さんのお尻を手で支えながら腰を振り始めた。

その六 [#mce05d2c]

それにしても、妹紅さんのこの服装を見ていると、どうにも心が揺らぐ。
嫌な感じではなく、むしろ歓喜や興奮に近いのだが、この感情の呼び名がわからずに僕は当惑してしまう。
「あっ、ぅん……いつもより、固いじゃない…。この格好、そんなに気に入ったの…?」
僕は正直に頷いた。うまく言えないが、ここで嘘をついたら僕自身の魂までも欺いてしまうような気がしたのだ。
「……そんな顔されたら、また着ようって気になっちゃうじゃない…」
妹紅さんは多分、心底呆れている。
僕がどんな顔をしていたかは知らないが、大望が叶ったので気にしないことにした。
「じゃ、そろそろ……ここに頂戴」
下腹部をそっとさする妹紅さん。期待に輝いていながら、どこかに諦観の混じった目の色。
…僕は少しでもそれを払拭してあげたくて、がむしゃらに腰を振りたくる。
「ふあぁ、んっ……あ、中で暴れてる…。出して、そのまま来て…!」
一番深いところに先端を押し当てて、感情のまま精を吐く。
彼女の鼓動に合わせて蠢く肉襞が、優しくも貪欲に僕の精気を搾り抜く。
「あ、ああっ……出てるぅ…」
全身を愉悦に震わせながら、妹紅さんはずっと僕にしがみついていた。

その七 [#p18bc1bc]

手渡された櫛で、頭のてっぺんから毛先までを、慎重に、丁寧に、一直線に梳いていく。
それは風呂上がりの恒例行事だった。
「そう、ゆっくりでいいから丁寧にね。うん、上手。ぁ…気持ちいい」
妹紅さん自慢の白髪は、髪飾りをほどいているとその長さが改めてよくわかる。
そして、この長さでこの美しさを維持する辛さもよくわかる。
「髪は女の命だからね。…ま、本当は他にも理由があるけどさ」
櫛をゆるりと動かしながら、駄目元で訊いてみると、意外にもあっさり答えが返ってきた。
「この髪はね、切ってもすぐに伸びるのよ。逆に、ほったらかすとこれより伸びないの。絶対にね」
――蓬莱人は絶対に老いず、それ故に成長もしない。髪を切ろうが怪我をしようが、一度死ねばすぐ元通りになる。
だから、妹紅さんは。
「いつ死んでもいいように、手入れは欠かさないの。本当に死ねるのがいつになるかは知らないけど…ね」
とても儚く、悲壮で、諦観に満ちた瞳を鏡の中に見た僕は、櫛を捨てて彼女を後ろから抱き締めていた。
「……それで充分よ。ありがと」
僕の腕をそっとほどくと、妹紅さんは振り返りざまに口づけをしてくれた。

その八 [#fcf67db4]

決して来ない死を待ち詫びて、せめて美しく、見映えよく死にたいと願う彼女を前に、僕はただ泣いていた。
あんなに強く抱き締めたのに、まるで涙が止まらないのだ。
「……もう、世話が焼けるわね…」
妹紅さんは僕を鏡台の椅子に座らせると、頭を抱き締めてくれた。柔らかくて、いい匂い。
「たかだか十歳そこそこのヒヨコが、不死鳥に同情なんかしなくてもいいの。あんたの命はひとつきりなんだから、好きなように羽ばたきなさい」
そんな。そんなことを言われたら。置いて行かれるようで、悲しい。
今から置いて行くことを見越されたのでは、僕の立つ瀬がない。
「大丈夫よ。私はいつでも、いつまでもここにいる」
でも、僕は。僕は、貴女に。
「……。うん。実は私もね、あんたに側にいて欲しい。出来れば死ぬまで一緒にいて欲しいの。だけど」
唇が重なる。舌が絡む。彼女の頬に、涙が伝う。
「………。一緒には死んであげられないから。だから、せめて今だけでも…」
もう一度唇を重ねる。これ以上の言葉は、もはや必要なかった。

その九 [#x98e0b6a]

「もう……少し口づけただけでこんなにして…しょうがないわね」
すでにギンギンに固くなったちんぽに対面するように、妹紅さんがひざまずく。
鏡台の椅子に座る僕の股間にできた小さな山を、何と服ごと口に含む。
「あむ、もふ、んむ、ふもっふ…」
唇の締め付けや舌の動きが半端に伝わり、気持ちいいのにもどかしい。
そう思っていたところで、ようやくちんぽが解放された。
「さっきまで泣いてた癖に…。まさか今朝の鰻が効いたのかしらね?」
今にもはち切れんばかりにいきり立つ僕に呆れながらも笑いかけてから、丁寧に舌を這わせる。
片手で玉を揉みながら、片手で竿をしごいて、舌で、唇で、まんべんなく
「あんっ! …ふふ…熱くて気持ちいいわ。これが生命の熱なのよね…」
顔にかかった精液を舐め取り、妹紅さんは微笑む。
あの黒い笑顔でも大人ぶった笑顔でもない、恐らく等身大の笑顔で。
時が止まった時点での、藤原妹紅その人の笑顔で。
「もっと…もっとしましょ…。私があんたを忘れられなくなるまで…」
思いっきりしなだれかかられて、僕らはもつれ合いながら布団に倒れ込んだ。

その十 [#xf36245b]

「あったかい…」
僕の胸に頬をうずめ、妹紅さんはうっとりと呟く。
するすると懐に手が入り込んで、いたずらに乳首を掠めながら上着を脱がせていく。
「ほら、私のも脱がせて。…くれぐれも優しくね?」
妹紅さんがどいたので、僕も体を起こして手を伸ばす。しゅるりと帯がほどけて落ちる。
一枚、また一枚とはだけては落ちる寝間着の衣擦れが、何故か僕の羞恥まで煽る。
「何か…脱がせ方、やらしい…」
眉根を寄せ、耳まで紅潮させて、妹紅さんが小さく抗議する。
普通に脱がせたつもりだったので、僕は思わず苦笑してしまう。
「あっ……。やだ、見ないで…」
今頃になって羞恥心が復活したのか、妹紅さんは胸元を隠す。
その手をどけさせると、泣きそうな顔で囁いた。
「忘れられなくなるくらい…して」
僕は彼女を抱き締めて、返答代わりに唇を重ねた。

その十二 [#v1310a80]

「ああっ! 熱い…熱いよおぉ!」
三度目の射精を胎内に受けて妹紅さんが叫ぶ。
嬌声は悲鳴にも似て、それでも僕の鼓膜を溶かす。
「ひあっ! やっ、凄い、熱いぃ…! これ、あ、ダメ、変になるぅ…!」
子宮口から溢れた精液が、未だ固いままのちんぽに押し戻され、肉襞に塗り籠められる。
ただでさえ熱い精液に摩擦熱が加わり、妹紅さんの膣内はまさに灼熱と化していた。
「あ、ダメ…また……ああ、来る、おっきいの来るぅ…」
首を両腕で、腰を両脚で固定される。胸も腹も密着して、そこから溶けてしまいそうだ。
「ぁう、あ…あああ…飛ぶ、飛んじゃう……離さないで…離れないで! ひあっ、ああっ! ああああ、あああああああああっ!!」
…溶ける。とてつもない熱に、どろどろの秘肉に包まれて、幾度も幾度も射精しながら溶けていく。
僕の意識も、理性も、僕と彼女の境目も。何もかも…何もかもが……。
「……。大好き……」
薄れゆく意識の中、何故か、泣いている妹紅さんが見えたような気がした――

その十三 [#z63d62da]

――それから幾年月が経ち、僕は親の跡を継いで、細工職人となった。
人里でもそれなりに名が売れ、それなりに繁盛し、商売は軌道に乗っているが、僕は未だに身を固めずにいる。

日が落ちて店を閉めると、僕は決まって迷いの竹林に踏み込む。
細工の素材を採るために、ではない。
「あんた、まだ独り身なんだって? 親御さんに苦労をかけると閻魔様に叱られるわよ? ううん、知らないけどきっとそう」
いつまでも変わらず僕を迎えてくれる、愛らしい不死鳥に逢うために。


この永遠の竹林で、僕の初恋は、たぶん死ぬまで続くのだ。


<終>

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