<おまけ2>…時系列では(番外編 信郎梅子)と同時期

「くしゅんっ」
神田と共に、とりあえず例の大騒ぎな医局を後にした松岡が意外に可愛らしいくしゃみをした。

「先生、お風邪ですか?」
「いや、この時期に風邪もないだろう。たぶん誰かが僕に対して噂話か、良からぬ事でも考えて…」
「先生、季節によって風邪をひかないという説は正しく有りません。少ない時期があるというだけです。
 訂正してください」
弥生から指摘された、自分と目の前の女性の共通点を少しずつ悟りながら、
「…わかった、今のは失言だった、訂正する」
「『くしゃみは噂話をされたから』というのも、根拠の無い迷信なので、できれば訂…」
「訂正する!」

先ほどの山倉と弥生の病院内でのとんでもない行為で頭がいっぱいだった松岡は、
神田の生真面目さに多少いらだち始める。

『しかし…あの状況をケンカととらえるとは、あまりにも社会経験が少なすぎるのでは…』
松岡は、神田の全く動じた様子の無い横顔を、薄暗い廊下の元でじっと見つめる。
そのあどけない顔つきやスラリとした体型だけならば、医局の連中に騒がれてもいいほどの可憐さなのに、
個性的過ぎる性格が知れるやいなや、彼女をそういう対象としてみる輩(やから)は消え失せたようだ。

『彼女が、あまりに世間のことに疎すぎた昔の自分と同じならば、
医療とは別にも、それなりの教育が必要かもしれないな…』と、松岡は一人考える。
ここでもお節介な姿を見せてしまう、なんとも報われない(…いや逆に、もしかしたら思いがけず報われることがあるかもしれない)、
とことん人の良い松岡敏夫なのだった…。

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