マクロスFのキャラクター、早乙女アルトとランカ・リーのカップルに萌えた人たちのための二次創作投稿所です。




始まりの向こうでside−A  BYアヤ





「ちょっと!私は頭下げられる様な事、された憶えないわよ。」
頭を下げたら、シェリルの拳骨によってテーブルに頭を打ち付けた。




俺は、二人の女に惹かれた。
超時空シンデレラ、ランカ・リー。
銀河の妖精、シェリル・ノーム。
シェリルの来艦によって、ランカとシェリルに出会った。
一緒に行動する事が増えて、面倒事に巻き込まれる事も多かったが。
それでも、どこかその日常に満足もしていたし、俺の世界が広がったんだと思う。
二人のそれぞれの魅力に惹かれて好意は持ったが、「恋」ではなかった。
「その最後の瞬間まで、俺はお前の傍に居る。」
「私に勇気を頂戴――。」
ミシェルが逝き、ランカがフロンティアを去った。
もう、失いたくなどなかった。
だから、傍にある温もりを守ってみせる。
そう、思った。
「あいつの歌が俺達を滅ぼそうとするなら――俺は、ランカを殺す。」
「アルト。それがお前の・・・愛か?」
愛かどうかなんて、分からなかった。
ただランカという存在が、俺の中で育っていた事を思い知った時だった。
政府からのランカ・リー抹殺命令が出た時、この期に及んでもまだランカを信じていたかった。
しかし、それでも殺さなければならないのなら、俺が。
他の誰でもない、この俺の手で。
そう、思った。




ランカが戻り、2人の歌姫の歌で戦争は終結した。
俺はまだまだ本物の空に夢中で、「恋」がどんなものであるのか知らなかった。
学校で同級生が話していた恋話。
ミシェルに無理矢理聞かされた、男と女のアレコレ。
それなりの男女の知識も持っているし、年頃の男の考える事は俺でも変わらないだろう。
それでも、いまひとつ恋だと確定させるものがなかった。
あの日まで。
ランカが精神的に不安定になって入院した時。
どういう状況にあるのか分かるはずだったのに、気遣ってやる余裕もなく。
ランカと話して、伝え合う事の大切さを痛感した。
あの日から、また一緒に時間を過ごすことが多くなった。
一緒に食事して、たまに一緒に眠りこけてオズマかブレラに怒られ。
怒って、笑って、時に泣いて。
ランカとの時間は穏やかで、素のまんまの自分が大口開けて笑っていた。
ランカが歌手活動を再開させて、忙しくなっても連絡は取り合っていた。
勿論、シェリルとも。
SMSの仕事としてどちらかに護衛に呼ばれ、オフだからと引っ張り回され。
3人の時間も、これはこれでどこか落ち着くんだよな、と思っていた。
だけど、何時からだろうか。
俺の目が、ランカを追い始めたのは。
ピンクブロンドの人目を引くシェリルが傍に居ても、俺の目は翡翠色を追った。
笑ったり、眉を下げたり、くるくると変わるその表情。
紙飛行機を折りつつ、出来栄えを確かめながら見てしまうランカの笑顔。
頬が緩むのを自覚して、その度に顔を引き締めた。
「アルトくん。」
俺を見つけると、嬉しそうに駆け寄ってくる。
そんな無防備なランカに信頼されてるという気持ちと、兄の様に思われているんじゃないだろうか、という思いが湧く。
兄では嫌だ――そう思った時、俺の気持ちは確信に変わった。
まだ、「たぶん」が付いたけど。
シェリルがランカとの勝負の事を言ってたが、今もランカの気持ちが俺に有るのかなんて分からない。
だけど、当たり前の様にランカの頭を撫でる俺の手から逃げないから。
この想いをどう伝えたものか。
こんな時にミシェルが居たら、なんてミシェルを当てにして情けなくないか?




「アルトくんが好きです。」
それを聞いた時の衝撃ときたら。
ああ、これが恋する者の気持ちなのか。
驚きと歓喜。
俺が先に言いたかった、と少し残念な気持ち。
そして、ランカが抱いている恋心。
答えを聞くのが怖い、関係を崩してしまったらどうしよう。
それでも、答えが欲しい。
そんな想いが俺の中に満ちていく。
色んな感情がランカの中で渦巻いて、少し泣きそうになっていて。
可愛くて、愛しくて。
ああ、どうしてくれようか。
俺はランカのその顎を上げさせて、触れるだけの口づけを落とした。
柔らかくて、暖かいそれ。
「ちゃんとした返事は後でやるから、大人しく待ってろ!」
赤くなった顔を見られまいと、叫びながら走った。
ああ、必ず帰ってこなければ。
そう思って、バルキリーの操縦桿を握った。




そう、ランカが大人しく待っているわけ無かったんだよな。
結局、式典会場のシェリルと一緒になって歌って。
二人の歌エネルギーと想いの凄さを、直に感じた。
「二人の歌姫に無様な恰好は見せられん。それでもだ、何が何でも生き残れ!」
オズマ隊長の檄が飛び、俺達の闘いは始まった。
まあ、それも短時間で終わったんだが。
歌姫2人の力のおかげだろう。
戻ればまたスーツも着ずに、ひらひらした衣装で座り込んで。
ガリア4での事を思い出した。
「お帰りなさい。アルトくん。」
あの時と同じような満面の笑顔で言うから。
「ただいま。ランカ。」
その小さな身体を抱き寄せて、その耳元で囁いた。
「ランカが、好きだ。」
どちらからともなく顔を寄せて、俺はランカに口付けた。
想いの深さの様な、長い口付けを。
そうして俺達は、恋人という関係に進んだ。





「ちょっと!頭下げられる様な事、された憶えないわよ。」
「いっ――――痛ぅ!?」
「アルトくん!?」
下げた頭に拳骨が降って、テーブルに強か額を打ち付けた。
ランカと恋人の関係になって直ぐ、何時も集まるカフェにシェリルを呼んで、三人でテーブルを囲んだ。
シェリルにランカを選んだ事を告げる為に。
「そう。・・・やっと、か。」
シェリルの反応と言えば、その一言とふわっと微笑んだ表情だけだった。
それでも、シェリルの想いに応えられないのだから頭を下げたのだが。
返ってきたのは、拳骨一つ。
「アルトの事、好きだったし・・・愛してた。」
「―――。」
すまないとは思う。
戦争中、一時とはいえ恋人として共に居た時もあった。
だけど、俺のそれは恋では無かった。
同情かと問われればそれだけではなかったが、俺が今選んだのは、恋をしたのはランカだ。
「前に言ったわよね?ランカちゃんとの勝負に負けるつもりは無いって。「歌」は、ね。」
そう言って、シェリルはウインク一つ。
「ああ。」
「あ〜あ、負けちゃったか。このシェリル・ノームが。」
「シェリルさん・・・・。」
眉を下げたランカが、それでも真直ぐシェリルを見ていた。
「そんな顔しないの。笑ってなかったらアルトの事、奪っちゃうわよ?」
「そっ、それはダメです!」
焦るランカが可愛いらしく、シェリルがランカの頭を撫でていた。
「シェリル。お前の想いには答えられなかったけど、大切な友人である事は変わりないからな。だから・・。」
友人関係は崩したくないなんて、調子良すぎだろうか。
「当たり前じゃない。ランカちゃんはライバルで可愛い妹分。あんたは私のド・レ・イなんだから!」
「ぐっ!?・・・ああ、そうだな。」
「はい、勿論です。シェリルさん。」
奴隷発言には承服しかねるが、まあ今更か。
「じゃあ、これから仕事だから行くわね。」
シェリルはピンクブロンドを風に揺らしながら、背を向けて行った。






「良かったのか?」
角を曲がった所で、足を止めた。
そこには、SMSの制服を着たブレラ・スターンが壁に寄り掛かって居たから。
「聞いてたの?」
「一応護衛中だから、な。」
「あっそう。」
「で?あれで良かったのか?」
「ええ。」
角からそっと覗けば、きっと泣き出してっしまったランカちゃんの肩を抱いているアルトが見えた。
恋敵の為に泣いてくれるようなランカちゃんが、アルトの選んだ子で良かった。
「私はアルトとランカちゃんの想いで、今も生きて歌っていられる。それに、もう独りぼっちなんかじゃ無いもの。」
それで、十分。
悲しくないわけじゃない。
辛くないわけじゃない。
ただ涙を流す様な、もうそんな時を過ぎてしまっただけ。
恋人にはなれなくても、楽しい思い出をこれからも紡いでいける事を知ったから。
「そういうあんたこそ、良いわけ?ランカちゃん。」
「ランカが選んだなら、仕方ない。だが・・。」
「だが?」
「せっかく再会した妹を、すんなりくれてやる気は無い。」
この男も、シスコンだったか。
オズマと血は繋がってなくても、似た者兄弟ね。
「おい、シェリル。そろそろ時間だ。」
「分かってるわ。少し急いでね。」
「了解した。」
ブレラが運転してきた車に乗り込んだ。
さあ、これからどうやってからかってやろうか、あの二人を。




END

このページへのコメント

遅ればせながらあけおめです(^◇^)┛
コメントありがとうございます。最近ブレシェリも美味しい事に気付きまして、ちょみっとブレシェリ入れつつ書いてみようかと(o^v^o)

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Posted by アヤ 2013年01月07日(月) 00:39:56 返信

さっすがアヤさん
期待に答えてくれますね(笑)
その文章力が羨ましいですよ。
それに、ちゃんと書かせて貰ったブレシェリの要素も入ってますし、アルランのシェリル視点という新しいこともありますし、これからの作品も期待させてもらいます。

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Posted by YF-29 2013年01月06日(日) 23:29:21 返信

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