マクロスFのキャラクター、早乙女アルトとランカ・リーのカップルに萌えた人たちのための二次創作投稿所です。



小話「愛しい人」 BYアヤ




初めてランカの部屋に上がった日。
不覚にも眠りに堕ちて、数十分。
目覚めて見上げた彼女に、目眩がした。
あまりにも無防備すぎるだろ?
濡れ髪をタオルで拭きながら、キャミソールワンピース姿で座り込むランカ。
俺を試しているのか?
俺だって男なわけで。
恋人に対して、それなりに「欲」ってもんがあるんだぞ。
いつまでも紳士でなんかいられない。
少しくらい、覚悟はしてたんだろ?




今日は、胸がざわついて仕方ない。
いつもの通りに、忙しい仕事をこなしていくのに一日の大半を消費してしまう。
いつもの通りなのに、合間合間に悲しくて辛いような気持ちになる。
この銀河で、誰かが悲しい思いをしているのかもしれない。
それがアルトくんでないことを祈るしか出来ない。




夕刻になって日が沈みかけた頃、某テレビ局のロビーに彼の姿を見付けた。
「アルトくん!」
「・・・よお、ランカ。」
恋人同士になって、忙しくても毎日電話なりメールなり欠かさない。
だから彼からのメールで、コールが掛かって出動した事は知っている。
勿論心配はしていたけど、仕事に押されて考えない様にしていた。
アルトくんの様子を見る限り、怪我などはしていないみたい。
でも、彼の様子がどこか可笑しい。
「お仕事ご苦労様。・・・大丈夫?」
「ああ。どこも怪我してない。」
「そうじゃなくて・・・。」
「ランカさん!次の歌番組の収録に遅れますよ。」
聞きたいのは、アルトくんの心の方。
だけど、仕事は待ってはくれない。
「は〜い。すぐ行くね、ナナちゃん。・・・ごめんね。今日はまだ仕事があって、終わるの夜中になっちゃう。」
「・・・待っていても良いか?」
彼の瞳が、酷く揺れ動いている気がして。
アルトくんの様子が気になって、黙って頷いた。




夜中になってようやく仕事が終わって、彼の姿を探せば夕刻と同じ場所。
あれから何時間経った?
ずっとあそこで待っていたんだろうか。
「アルトくん!」
「・・・ランカ。仕事終わったのか?」
ソファに沈んで、腕組みして閉じた瞳。
眠っていたのだろうか。
私に気付いた彼が顔を上げた。
「終わったのか?じゃないでしょ。ずっとココで待ってたの?」
「否。お前の仕事の様子とか少し見てた。」
「ごめんね。楽屋で待っていて貰えばよかった。冷えたでしょ?」
「大丈夫だ。こんなんで参ったりしないさ。」
確かに、SMSのパイロットとして鍛えられている。
だけど、心配にはなるんだよ。
「こんな時間だし、私の家に来る?」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫。」
SMSの護衛が頻繁に就いてくれている。
スキャンダルの面では大丈夫だと思う。
男の人を家に上げるという意味では・・・。
でも、今のアルトくんを一人になんか出来なかった。
ナナちゃんとはテレビ局で別れて、アルトくんの車で家路に着いた。




「広っ。」
部屋に上がったアルトくんの第一声は、これだった。
「社長がどうしても、って。ハハっ。」
ベクタープロのトップアイドルに相応しい部屋。
そう言ってエルモ社長に見せられた部屋は、最上階のワンフロア。
エルモ社長の持ちビルだから文句は無いんだけど、未だに不相応な気がして仕方ない。
セキュリティの面を言われて、何とか慣れはしたけれど。
「ご飯食べてないんでしょ?ソファに座ってて。」
「まんまり、食欲な「駄目!軽くスープだけでも飲んで!」」
冷凍保存しておいた野菜スープを解凍して、二人でかなり遅い夜食を取った。
食後にお茶を用意して、二人でソファに腰を下ろした。
「隊長、若っ。」
サイドテーブルに置かれたフォトフレームには、過去の写真が順々に映し出されている。
その中には、まだ若いオズマと幼いランカの写真もあった。
「ん?これって。」
「うん。私の唯一の家族写真。」
そこには、父と母とブレラお兄ちゃんと私。
お母さんの研究データに紛れ込んでいたモノ。
データが古くて鮮明ではないけれど、私の大切な思い出。
「お前って母親似なんだな。美人親子だ。」
「おだてても何も出ないよ。アルトくんだって美人親子じゃない!」
「美人は、止めろって。男が美人なんて言われて、嬉しいはず無いだろ。」
アルトくんは少し仏頂面になりながら、視線をフォトフレームに戻した。
何時までも眺めているだけで言葉を発しない。
「ねえ。何かあったの?」
「否、・・・何も。」
「嘘!じゃあ、何でこんな遅くまで待ってたの?」
「・・・。」
何も言おうとしない彼に溜息を吐いて、実力行使。
「うわっ?!」
アルトくんの腕をぐっと引いて、身体を倒させると頭を膝の上に。
所謂膝枕の状態で、彼の前髪を撫でる。
「何でも言ってよ。凄く心配なんだよ?」
「・・・今日、出動あったろ?」
ごろりと体勢を変えると、お腹に頭を寄せて腰には腕を回してきた。
「宇宙海賊の排除で、すぐに投降してきて終わったんだ。けど、何機かは撃墜した。」
海賊と言えども航行能力はほとんど無く、フロンティアに身を寄せに来たようなものだったらしい。
しかし中には投降することを、受け入れられない者もいた。
それを、アルト達が撃墜したのだった。
「俺はパイロットだ。必要とあらば、トリガーを引く。」
「うん。」
「なのに何で、だろうな。命を獲る事が、こんなにも重い。」
過去の大戦では、バルキリーで命のやり取りをしてきた。
辛くても皆を守る為。
でも戦争は終わり、バジュラとだって解り合えた。
解り合えるはずの人類同士が、争うのは悲しいね。
SMS辞めても良いんだよ?
そう言ったらアルトくんは戦うことを止めるのかな?
ううん、きっと飛ぶことを止められない。
アルトくんは、鳥の人だ。
辛くても、きっと飛び続ける。
そういう人だから、私が言えるのはこれだけ。
「辛かったね。でも、アルトくんは守ってくれたよ?皆の事も、私の事も守ってくれてるよ?・・・ありがとう、アルトくん。」
泣いているんだろうか?
肩と腰に回された腕が、震えていた。
私の言葉は、彼への慰めとして正解だったのかな?
アルトくんの頭をぎゅっと抱きしめる事しか出来なかった。




お風呂から上がって髪を拭きながらリビングに戻れば、まだアルトくんは眠っていた。
あの後しばらくして、彼の力が緩んだと思ったら彼から寝息が。
気が緩んだのかな。
頭をそっと膝から下ろして、毛布をかけた。
私は、一日の汗とメイクを落としてしまおうとバスルームへ。
戻っても眠ったままのアルトくん。
このまま泊めてあげようか。
「う・・ん。冷た・・・。」
やっちゃった。
顔を覗きこんだ時に、髪から水滴が落ちちゃったみたい。
起こしちゃった。
「ごめんね。良く寝てたのに、起こしちゃったね。」
「否、大丈・・夫。って、お前!!」
「??」
「なんてカッコしてるんだよ!」
「えっ?って、・・きゃぁぁあ。」
パジャマ代わりに来ていたキャミソールワンピース。
座っていることで、裾は下着が見えそうな感じでギリギリ。
肩紐だって、落ちかけてた。
いつも羽織ってるカーデガンも、下に着けているショートパンツもバスルームに置きっぱなし。
どれだけ気を抜いてるんだろ、私。
「俺だって男なんだぞ。」
「・・・うん。そうだよね。」
そう、彼は男の人。
恋人同士で、キスのその先の事だって・・・。
真っ赤になって俯いていたら、顎をくっと上げられて。
唇にアルトくんの熱を感じて、離れた。
もう一度唇が重なって、舌を絡められて。
とろりと蕩けそうになっていたら、背中に固い感触。
そして、圧し掛かってくる彼の体重。
見えた天井に驚いた。
押し倒された事に気づいて、アルトくんを見上げたら何時もと違う。
瞳の奥に熱いものが焔のように揺らめいてた。
アルトくんのスイッチを入れてしまったのは、私・・・なんだよね?
それを見上げたら、私の身体も熱くなって。
お腹のあたりがきゅっとなって。
「泊まっていっても良いか?」
それが何を意味しているのかなんて、いくら鈍い私でも分かってる。
もう大人なんだし、今日は可愛い下着も着けてる。
「ふ〜ん。じゃあ見せて貰わないと、な?」
デッ・・デカルチャー?!声に出てたの?
くっと上がった彼の口角。
アルトくんが、嬉々として私を抱き上げた。
じたばたと暴れても良いけど、そうしない。
私だって、待っていたから。
彼に全部あげる日を。
ベッドは?って聞かれて、ドアを指差した。
アルトくんの首にぎゅっと抱きついて、寝室に運ばれていく。
全部あげるから、全部食べ尽くしてね。
この後の話は、誰にも秘密。
私の宝物。


END

このページへのコメント

いつもコメントありがとうございます(^O^)今のところまだまだアルラン熱が冷めないので今年もちょこちょこ投稿していきたいです。「愛しい人」のアルトサイド良いかもですね〜近いうちに投稿したいですね〜

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Posted by アヤ 2012年01月02日(月) 22:35:36 返信

こんばんは。紫陽花です。
新年早々にアルラン小説が読めて嬉しいです!とうとうアルトにランカちゃんがもらわれてしまうわけですね!きっと食べ過ぎるのではないかと思います(笑)ランカちゃんを全部もらえるのだから!
アルト視点でも読んでみたいぐらいです!
アルラン小説、ありがとうございます。

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Posted by 紫陽花 2012年01月01日(日) 19:38:03 返信

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