マクロスFのキャラクター、早乙女アルトとランカ・リーのカップルに萌えた人たちのための二次創作投稿所です。




「新未来4」 BYアヤ



この前、街のカフェにアルトくん達を見かけたんだよ。
その奥にピンクブロンドが見え隠れしていて、ちょっとだけ心がざわついた。
「お待たせ。本当にごめんね。」
「いえ。わざわざありがとうございました。」
お店から出てきた目の前にいる男性は一緒に仕事をしている俳優さん。
仕事前にぶつかってしまって、コーヒーで染まってしまった私の私服の代わりにと休憩時間にお店で新しい服を買ってくれた。
実は前にちょっとだけ心惹かれていたヒト。
ドラマのお仕事で共演して、少し不器用で笑顔が似合う人で、なんとなく良い雰囲気になったりして。
だけどその度にアルトくんがチラついていた。
「ランカちゃんは僕を通り越して誰を見ているのかな?」
さすが俳優さん、観察力も良いんだなと思った。
好意を寄せてくれているのは気付いていたから申し訳なかったけれど、どうしてもアルトくんを忘れるなんてできなかったの。
「うわっ、大変!撮影時間ギリギリ。」
「えー。急がないと!」
行くよ!って、手を握られて少しだけドキドキして走った。
ごめんなさい。これがアルトくんだったらなって、彼の背中にアルトくんの長い髪が揺れる姿を重ねてた。
ねぇ、アルトくん。
あなたの心には、まだシェリルさんが変わらずにいるの?
一緒にふざけ合って笑い合って、楽しくて幸せで。
でも、アルトくんがこの関係にほっとしているのが分かるから今の距離をキープしてる。
16歳のあの日、もう会えないかもしれないから勇気を出して告白したけれど。
何でかな?今はすごく怖い。
たぶんアルトくんの一番近くでまた笑い合えているから、この幸せが崩れるのが怖い。
アルトくんが帰ってくるまでは、彼が笑って生きていてくれたらそれで良いと思ってた。
今だってそう思っている事は嘘じゃない。
だけど、本当は1人の女として想って貰いたい。
私ってこんなにも欲張りなんだね。
そして、こんなにも臆病だ。



目覚めたのはSMSの宿舎で、枕元から手繰り寄せたアラームが鳴り続ける携帯には昼に近い時間が表示されていた。
今も同室であるミシェルは、ほとんどクランと借りている家へと帰る。
その為、ほぼ1人で部屋を使っている。
しばしぼーっとして、起き上がると固まった身体を解す。
昨日はSMSの表向きの運送事業に借り出され、一日が終わった。
愚痴りながらも運搬作業に勤しむが集中出来ない。
なかなかバルキリーに乗れない苛立ちと、先日見かけたランカと一緒にスクープされたという男を見てから感じ始めたもやもや感。
この感情が所謂「嫉妬」なんだとは分かっている。
だけど、何でだ?
ランカは俺の一番の女友達であって、それ以上では無い・・・はずなのに。
傍目から見ても相当イライラしていたらしい。
「お前はストレス溜め込みすぎ。ちょっとは発散させろよ。」
ミシェルに引き摺られて、仕事帰りに何時もの面子で取り合えず一杯。
のはずが、かなり飲んだらしい。
酔った勢いで何か喋った気はするがさっぱり覚えちゃいない。
確か今日は午後から仕事が入っていたはず。
それも、今の俺にはめちゃくちゃテンションが上がるやつ。
それを思えば、多少のイライラは感じなくなっていた。
熱いシャワーを浴びて残ったアルコールの残骸を飛ばし、軽く空腹を満たす為に部屋を後にした。




「アルト、お前腕は鈍ってないだろうな。」
「当たり前だ。どんなオーダーでもこなしてみせるさ。」
「ミシェル先輩、アルト先輩を煽らないで下さいよ。学生の時のようなトラブルはごめんですよ。」
「ルカも言うようになったねぇ。」
コンサート会場の一角にある控え室から聞こえる騒がしい声に、ランカはくすりと笑って目の前の扉をノックした。
「皆さんお疲れさまです。今日はアクロバット飛行よろしくお願いします。」
顔見知りの面子であっても仕事である以上礼儀は一応通さないと、と思い仕事前の挨拶に出向いた。
「歌姫直々に挨拶とは光栄だね。」
なんてちゃかしてミシェルくんが挨拶するから、緊張なんて無くて皆で笑った。
「ランカさんはいつも挨拶回りしてるんですよね。ナナセさんが褒めてましたよ。」
「まだ芸歴8年目のひよっこだもの。」
そう、まだ芸能活動を始めてまだ8年。
シンデレラの様に階段を駆け上って、なんて言われてるけど運が良かっただけ。
慢心しないようにスタッフさん達への挨拶回りは必ず行っている。
気持ち良く仕事をしたいから。
「そう言えば、なんでアクロバットの仕事がSMSに回って来たんだ?美星のパイロットコースの奴等でも十分だろうに。」
うーん、と言いながらミシェルくんを覗い見る。
「どこかのお節介さんが、姫が飛びたくて飛びたくて死にそう!なんて連絡してきたから。」
「おいっ!ミシェルっっ!!」
「おおっと!俺は先に行ってるな。」
「ミシェル先輩。待って下さいよ。」
アルトくん以外はそそくさと皆スタンバイしに行ってしまった。
「ったく、ミシェルのヤツ〜。・・・まぁ、アリガトな。仕事回してくれて。バルキリーに乗れない分、無性に飛びたくてな。」
「ふふっ、相変わらずだね。」
本番前なのにリラックスできてくすくすと笑いがこみ上げてきちゃう。
だから、ちょっとだけ聞いてみたくなったの。
「あっ、そういえば。この前街のカフェでアルトくん達見かけたよ。」
「ああ、あの日か。途中でシェリルが合流してきてな。世間話してった。」
「そっか。」
シェリルさんと会っていた(皆で、だけれど)のは知ってる。
何とも思っていなかったら、本当の事言ってくれるよね。
だから嘘をつかれなくて、なんとなくほっとした。
でも、恋人でもないのにこんな事でほっとしている自分が何か嫌だなと思う
「俺もお前の事見た。一緒にスクープされてた何たらっていう俳優と。」
「えっ?何で知ってるの?」
「ミシェルとルカが、な・・・。」
アルトくんは芸能関係の記事なんかチェックしないから、気付かれないと思っていたのに。
「あいつってお前の何?」
「何って・・・。」
そんな事聞かれるとは思ってなかったからドキッとした。
アルトくん、何か機嫌悪くなってる?
「あの人はドラマの共演で演技の事で相談にのってもらたり、仲良くしてもらっているだけで。うん・・友達って言うか・・・。」
「じゃあ、お前は一緒にスクープされた男と相も変わらず馴れ馴れしく手を繋いでべったりするのかよ!」
いきなり怒鳴られて、ビクッと肩が震える。
目の前のアルトくんにこんな風に怒られるの始めてで、一瞬息が止まるかと思った。
なのに、心拍数が上がってドキドキし始めて。
「ランカさん。スタンバイお願いしますね。」
「ハイ。今行きます。」
ナナちゃんグッドタイミングだよ。
何事も無かったようにアルトくんを残して控え室から飛び出た。
あんなアルトくん始めてだった。
もしかしてヤキモチ・・・やいてくれたのかな。
アルトくんが少しでも気にしてくれている。
それだけで嬉しくて、心臓がバクバクしていた。
それをコンサート前の興奮だと言い聞かせる。
ナナちゃんが作ってくれた衣装で着飾って、舞台の幕を開ける。
今日も歌であなたへの想いを響かせる為に。



「抱きしめて、銀河の果てまで。」
七色のホログラムの海が自分を取り巻いて、空はアクロバット飛行のスモークと共に白い結晶を降らす。
イントロが流れ出すとコンサート会場のお客さんたちが湧き上がる。
腹の底にずしりと響くサウンドと広がっていく自分の歌声。
渦巻くお客さんの熱狂と地面を踏みしめるオト。
コンサート会場のすべてが一つの銀河になって、私のお腹がきゅうっとなって、シェリルさんじゃないけれど銀河の最果てまでイッてしまうような気持ち。
アルトくんがいるからかな、歌がすべり出るように溢れていく。
全てが順調で最高だった。
クライマックスのホシキラではせり上がった舞台の上。
ああ、私の歌(心)をもっと響かせて。
なのに、神様は意地悪だね。
鈍い金属音と共に強い振動が伝わって私の身体は落下中。
全てがスローモーション。
ゆっくりと移り変わる視線はコンサート会場の天井を移して、舞い上がる私の翡翠の髪。
落下しているのだと分かっていても不思議と恐怖はやってこないの。
歌が絶えず溢れ出て、音楽が止まっても歌声は途切れない。
大丈夫、アルトくんがいるもの。
「ランカァアアア。」
ほらね、腕を伸ばせば彼との距離までと数センチ。
翼を広げたあなたはやっぱり鳥の人だね。
がっしりと抱きとめられて、ふわりと浮き上がる。
一瞬アルトくんの首に抱きついて「大好き」と聞こえないくらいの声で囁いて、腕を解くと、また歌い始める。
EXギア越しのアルトくんを感じて、このままずうっと一緒に飛んでいたいなぁ。


何度でもまた会おうね。
こうしてまた、出会えるから。
だから何度だって伝えたいこの想いを、もう一度ぶつけてみよう。



続く

このページへのコメント

アヤさん・・
すきっ
続きが待ち遠しい・・

0
Posted by アマテ 2011年07月14日(木) 07:26:31 返信

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

どなたでも編集できます