国際取引法　久保田先生

１．2004年度（前期）
２．国際取引法IB
３．久保田隆先生
４.　【持ち込み不可】

問題1（知識問題）：以下の記述の誤りを修正し、誤りの理由を述べなさい。
（1）既存の契約を修正した場合、コモンロー契約及びUCC（米国統一商法典）が適用される契約に法的拘束力をもたせるには、新たな約因（consideration）が必要となる。
（2）インコタームズによれば、CIFでは買主は運送中の物品の滅失、損傷による損害を填補するための貨物海上保険契約を締結し、保険料を支払わなければならない。
（3）国際運送で用いられる船荷証券と航空運送状は、貨物に関する権利を化体した運送書類であって、それと引き換えでなければ貨物の引渡しを受けることができない。

問題2（一行問題）：書式の争い（battle of forms）の解決方法について論ぜよ。

問題3（事例問題）：
日本法人Aは、米国法人Bとの間で、Bの製品を輸入し、日本で販売する輸入契約を締結する方向で、その契約条件について数ヶ月間、ファクシミリや国際郵便を利用して契約文言の内容を詰める交渉を行ってきた。

(1)途中で交渉が難航したため、以後の交渉を円滑に進めるため、その時点で合意が出ていた輸入価格に関してのみ、レター・オブ・インテント（Letter ob Intent）と題した上で「AはBに10億円を支払うものとする(shall)」とだけ記して文書化して署名した。その後の交渉で輸入価格は口頭で減額される合意をみたが、A社はこの文書に法的拘束力はないので問題ないとしている。A社の判断は正しいか。仮に問題があるとすればどのような点で、どうすれば良かったか。

（2）数日前に最終的な案文がBから送付され、内容的にも納得できるものなので署名して返信しようと思うが、その案文には準拠法の指定がない。Aがこのまま署名した場合、日本の法例によると契約準拠法は何砲になる可能性が高いか。また、その結果、Aは如何なるリスクを負うか。

（3）結局、最終的な契約書においては、Aの抵抗空しく、準拠法は米国のニューヨーク州法と指定され、更に「BのAに対する売掛債権の消滅時効期間を、その発生から20年とする規定」まで設けられてしまった。なお、裁判管轄については何も規定されていない。その後15年が経過し、売掛債権の消滅時効の成否を争うこととなった。Aが採り得る対抗策としては何が考えられるか。

（4）仮にBがアメリカ政府の一部門であった場合、Bによる主権免除の主張を封じるには契約書に如何なる工夫を加えれば良いか。

以上。